エンタープライズ:ニュース 2003/09/25 17:35:00 更新


TRONの坂村氏とMS古川氏が手を組んだ「T-Engine+CE .NET」

反目関係にあるとみられていたライバル同士が手を組んだ。マイクロソフトがT-Engineフォーラムに参加することを明らかにした。T-Engineのオープンアーキテクチャ上で、Windows CE .NETとT-Engineの長所を生かした開発が実現される。

 T-Engineフォーラムと米Microsoftおよびマイクロソフトは9月25日、東京・港区のホテルで共同記者会見を開き、マイクロソフトがT-Engineフォーラムに参加することを表明した。反目関係にあるとみられていたライバル同士が手を取り合うことで、T-Engineのオープンアーキテクチャ上でWindows CE.NETが稼動し、T-EngineとWindowsの長所を活用した次世代デバイスの開発が実現される。12月に行われる「TRONSHOW」では、T-Engine上でWindows CE .NETが稼動しているプロトタイプのデモを含め、成果を発表する予定だ。

坂村氏と古川氏

21世紀は“協調の時代”。手を取り合うT-Engineフォーラム坂村氏とMicrosoftの古川氏


 東京大学の坂村 健教授が会長を務めるT-Engineフォーラムは、2002年7月に発足したユビキタスコンピューティング環境の実現を目指す技術フォーラム。T-Engineは、同フォーラムが標準化したCPUボード、リアルタイムOSのT-Kernel、セキュリティアーキテクチャeTRONを中核に構成されるプラットフォームだ。デジタルカメラや携帯電話への採用が進んでいる国産OSとして注目度の高い「TRON」を発展させ、リアルタイム性を要求される自動車のエンジン制御、情報家電など組み込み型システム分野で採用が進む。さまざま機器がネットワークにつながるユビキタス社会実現に向けて、244の各国企業や研究機関が参加している。

 一方のマイクロソフトは、90年代半ばからWindows CEといったOSで組み込み分野に参入。PC分野で生かした実績を基に、操作性の高いユーザーインタフェース(UI)や、多くの対応アプリケーションといった資産を抱える。Windows CE バージョン3.0からは、パートナーに対してソースコードへのアクセスを可能にしており、最新版となるWindows CE .NETでは、さらに幅広いソースコードへのアクセス、ソースコードの改変、再配布を可能にしたプログラムを実施している。

 坂村教授はこれまで、マイクロソフトおよびWindowsを敵対視するとも取れる発言をしており、T-EngineとWindowsは反目の間柄だとされていた。ところが今日の会見は、そういった「衆目の一致するところ」を一蹴するような内容となり、報道陣を驚かせた。

坂村氏

「だが、マイクロソフトはT-Engineフォーラム賛同企業の一つでしかない」と坂村氏


 「機械相手に制御を行うリアルタイムカーネルと、人間を相手にする情報系OSカーネルはもともと技術的なフォーカスが異なるもの。(反目しているという世間の見解は)なんでこうなっちゃたのか」と会見の席に望んだ坂村教授。同じくMicrosoftの古川 享バイスプレジデントは「80年代は双方が異なる目的に対して別々に進んだ。この時期に、“けんか”じゃないかと大きな誤解を生んでしまった」と説明。

 今回、マイクロソフトがT-Engineフォーラムに賛同を示したことで、リアルタイムOSとしてのT-Engineと、情報系OSのWindows CE .NETの長所を融合させ、1つのプラットフォーム上でお互いが協調しながら動作することが可能になる。「この2つが協力することで、新しいことが実現できる」(坂村教授)。

 例えばデジタルビデオカメラでは、光学系の制御やフォーカス制御といったリアルタイム性の求められる処理をTRONアーキテクチャに任せ、WindowsスタイルのUIやマルチメディア系の処理をWindows CE .NETアーキテクチャに担当させることで、より高度な機能を持つカメラを短期間で開発し、市場に投入できるというメリットが期待される。

 T-Engineフォーラムは、T-Engine上で動作するT-Busというハイブリッドアーキテクチャのためのミドルウェアを策定しており、別のOSと共存する環境の整備を始めている。両OSは、このT-Busを用いて相互接続を実現する。

古川氏

「ゲイツ会長は、エキサイティングだ! と言ってくれた」と古川氏


 マイクロソフトはT-Engineフォーラムの発足当時からコンタクトを開始、具体的な動きとなったのは今年の2月からだった。古川氏がビル・ゲイツ会長にこの話をすると、「(技術的にも、顧客にとっても)エキサイティングだ!」と答え、T-Engineフォーラムへの参加に前向きな姿勢を見せたという。

 坂村教授は、「21世紀は“協調の時代”だ。力ずくでマーケットを取るのではなく、協調するところは協調すべきだ。今回の発表は、マイクロソフトもオープンアーキテクチャの上でやってみようという1つの決意と取れるし、今後どういう展開をするのか興味がある」と語る。「私は相撲の土俵を作っているだけ。もしオープンアーキテクチャ上でマイクロソフトが高い成果を上げれば、それは外国人力士が優勝しただけのこと。しかたありません」という。

 古川氏は、「これは顧客からの期待でもある。すでに多くのユーザーがTRONとWindowsの両方を毎日使っているはず。これをきっかけに新しい産業が生まれ、雪だるま式に転がってほしい」と今後の展望を語る。

 マイクロソフトは、T-Engineフォーラムへの幹事会員として入会する予定で、近いうちに国内体制を整え開発をスタートさせる。開発には、調布の開発センターとMicrosoft本社の開発のスタッフがあたる。12月の「TRONSHOW」で、T-Engine上で動作するWindows CE.NETのプロトタイプが登場する。

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[堀 哲也,ITmedia]



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