エンタープライズ:インタビュー | 2003/10/10 15:02:00 更新 |
Windows Media 9に見るテクノロジーとビジネス 第3回
Interview:Windows Mediaのトップが語るデジタルメディアビジネスの可能性 (2/2)
マジディマール 問題の解決方法はいろいろあると思いますが、BMW FilmsはWM9テクノロジーを利用して非常にユニークな実験をやっています。ハイクオリティなコンテンツを利用して、ユーザーに特別なロイヤリティを提供することで結果として自動車をもっと売ろうというマーケティングプログラムです。
BMW Filmsの場合は、一般コンシューマー向けのWeb配信とデジタルシネマという2つのコンテンツ展開があります。私たちが協力してこのプロジェクトを行ったのですが、デジタルシネマについてはBMWのセクションを必ずWMで見るというもので、マイクロソフトにとってもBMWにとってもプラスになりました。
私たちが担当したのはプロジェクションです。撮影してできた映像をWMにエンコードして、DVDにしたり、DSLネットワークを通じて映画館への配信を行いました。ある映画館では間違ったクリップが届いていて、上映30分前にそれに気がついたのですが、オンラインに切り替えて正しいものを受け取り上映できたという話がありました。これはWMの技術がなければできなかったことです。
デジタルメディアのサービスは、いろいろなアイデアを試してみて、おそらく最終的にはいくつかが生き残るという形になるでしょう。私たちとしては、このようにさまざまなことが試せる、柔軟性のあるシステムを提供していくことができます。DRMシステムはまさにその1つです。
WMの圧縮フォーマットをオープンにした背景
ZDNet WM9は先月、SMPTE(全米映画テレビジョン技術者協会)に映像コーデックの仕様を提出していますが、どのような意図があったのでしょうか?
マジディマール 先ほど説明しましたとおり、WMのライセンスはかなりよい体系にしているのですが、それでも企業によってはマイクロソフトに依存するのは嫌だと考えるところが少ないながらあります。そういったことから、SMPTEに仕様を提出しました。SMPTEからダウンロードすれば、マイクロソフトとコンタクトなしに使えるようになりさまざまなコンシューマー機器に利用頂けます。
ZDNet 標準化された結果、いまの仕様と変わってしまうということはありませんか?
マジディマール SMPTEはこれまで、ソニーなどのプロプライエタリな放送技術を公開したりしてきたわけですが、その後もソニーの技術との互換性は意識されました。歴史的に見てもそれはないでしょう。公開された後もマイクロソフトの技術と互換性があれば、それは私たちにとってもユーザーにとっても価値あることだと考えています。ドキュメントや仕様のフォーマットは変わるかもしれませんが、結局、SMPTEの出すスタンダードに準拠していれば、マイクロソフトの技術との互換性が保たれるという最終的な部分、つまりPCとコンシューマー機器などさまざまなデバイスの間で、互換性のあるコンテンツがユーザーに提供されるという点が重要であると考えています。
MPEGのコンソーシアムが新しいスタンダードを作るのと違い、SMPTEは標準を作るのではなく、仕様を公開しオープンにすることをしています。例えば、MP3はMPEGが公開したスタンダードですが、これをベースに何かを出荷するには、MP3のライセンスを持つトンプソンと契約します。これと同じ構造がSMPTEとWMに当てはまるようになります。
ZDNet SMPTEは業界にとってどれくらいの影響力を発揮するのでしょうか?
マジディマール ANSI(米国規格協会)の下にある組織なのですが、非常に影響力があるといえます。世界中にリファレンスも持っており、MPEGに匹敵する業界団体といえるでしょう。例えば、テレビのスタンダードはすべてこのSMPTEの下で作られていますし、映画館のプロジェクション技術など、AVに関するほとんどのコア技術がここを通じているといっても過言ではありません。
ZDNet 海外の事例は日本のヒントになると思います。WMを使った海外での取り組みを教えてください。
マジディマール たくさん例がありどこから紹介していいか分かりません(笑)。
コンテンツデリバリーの形はさまざまに変化が起こっています。つまり、WMを使っていろいろなことができわけです。例えとしてテレビでいえば、現在、地上波・衛星・ケーブルがありますが、効率の高いWMを使えば、限られた帯域の中で画質を落とさずにチャンネル数を3倍にできたり、HDに移行できるというメリットがあります。
欧州のDAB(Digital Audio Broadcasting)では、WMを利用することで、既存のチャンネルのキャパシティを変えずに、2チャネルから6チャネルに増やすことを実現しています。キャパシティやシステムも同じで、ただフォーマットを変えるだけで実現されたわけです。
デジタルオーディオのチャネルで、ビデオを見せることも行いました。これにより、車の中でニュースやアニメをDABのチャネルで同じように見れるようになりました。
また、TV over IPというエキサイティングな取り組みもあります。IPネットワーク上でテレビ番組を配信し視聴するというものです。いままでテレコム会社やISPはAVサービスを始めたいと思っていても、ケーブルや衛星にはコストの面で太刀打ちできないという問題がありました。しかしWMの技術を使うことでTVサービスが行えるようになりました。先月ではモナコテレコムがIPネットワーク上でWMを実装してTV番組の提供を行っています。
ZDNet 日本でもインターネット上でテレビを流すという取り組みが行われていますが、こういったところにビジネスを成功させるヒントがあるかもしれませんね。
マジディマール インターネット上のストリーミングというのは画質が悪いのでなかなかお金を取るのは難しいのですが、ケーブルとか衛星と同じ画質になればビジネスになりうる可能性は十分あると思っています。
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[堀 哲也,ITmedia]