エンタープライズ:インタビュー 2003/12/03 01:00:00 更新


Interview:Sybaseのジョン・チェンCEO、「今後すべての製品はワイヤレス対応へ」

C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2003で講演するため、米Sybaseのジョン・チェンCEOが来日した。「今後出すべての製品はワイヤレスをサポートする」と話す同氏に、今後の展開について聞いた

 NEC主催で12月3日から3日間行われるC&Cユーザーフォーラム&iEXPO2003で講演するため、米Sybaseのジョン・チェンCEOが来日した。ここ数年、モバイルデータベースやモバイルミドルウェアの分野で高いシェアを獲得している同社は先日、「Unwired Enterprise」というコンセプトを発表した。企業のシステムをフロントエンドから基幹システムまで、ワイヤレスで連携させることで、ユーザー企業の業務の効率化を促すコンセプトだ。

 「今後出すべての製品はワイヤレスをサポートする」と話す同氏に、今後の展開について聞いた。

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ジョン・チェンCEO。

ZDNet NECのイベントで講演することについてどう感じていますか?

チェン とてもエキサイティングなイベントで、多くの日本企業にSybaseを知ってもらう機会を持てて光栄です。私がSybaseに入社して6年が経ちますが、NECとの関係は今がベストの状態です。もともとバンキング分野で共通のビジョンを持っていましたが、今それをワイヤレス分野にも拡張しています。ソフトウェアやミドルウェアでも協力する話をしており、今後も続いていくと考えています。

ZDNet Sybaseはかつてはリレーショナルデータベースベンダーとして知られていましたが、ここ数年はモバイル分野での活躍が目立ちます。一時は低迷しているとも伝えられたSybaseを再生させたことについてどう捉えていますか。

チェン さまざまな人がその質問をするので、本でも書こうかと思っています。(笑)Unwired Enterpriseは、モバイルデータベースやミドルウェア、ポータルなど、Sybaseが持つすべてのモバイル製品を総合した上で、エンタープライズレベルのソリューションとして提供することを意図しています。われわれは6年前からモバイル分野に取り組んでおり、これまで基本的な戦略は一切変えていません。

 ある意味では規律をもった会社とも言えます。常に改善する努力を怠らなかったことと、多くのやろうとしなかったこと、ほかの誰かがやっていないことを忍耐強く実行してきたことが、成功に結びつく要因になりました。

ZDNet Sybaseの発展のためにパートナーシップを重視するということですが、現在具体的にはどうなっていますか?

チェン まず、WiFiの普及に伴い、Intelがワイヤレス環境にコミットしています。新しいコンピューティングの方法論では、人が情報にアクセスするというよりは、情報が人を探すようなイメージになります。また、多くの人が利用していくためには、ハードウェアが安価になる必要があり、さらに、すべてのIPアドレスを捕捉できるような環境へと展開していくでしょう。その意味で、Intelといい関係を築いていることはSybaseにとって非常に大きい。

 また、ASPサービスを展開するsalesforce.com、先日はSAPが、Sybaseの製品をサポートすると発表しています。

ZDNet SAPはどのようにSybase製品を利用しますか?

チェン 2つあります。1つは、SAPの中小規模企業向けパッケージ「Business One」がSybaseのデータベース上に実装されることになりました。もう1つは、SAPのメッセージング機能を実装する上で、モバイルサーバとして採用されています。

ZDNet Unwired Enterpriseを展開する上で想定する典型的なユーザーの姿は?

チェン 大規模企業のミッションクリティカルシステムに利用してもらいたいと考えています。

 韓国のヒュンダイ・デパートでは、レジのPOSシステムにSybaseのモバイルデバイスが導入されました。商品の輸送などを含めて、バックエンドシステムとフロントエンドシステムを連携させる上で、モバイルデバイスが大きな役割を担います。

 SFA、保険会社の見積もりや請求書作成での利用、POS、航空会社、小売、宅配、ヘルスケアなど、どの業界のソリューションとしても展開できる考えています。

ZDNet 日本でのパートナーシップはどうなっていますか?

チェン 日本市場では、NEC、NTTデータ、東芝ソリューションズ、カシオ、そのほか多くのシステムインテグレータとパートナーシップを組んでいます。

ZDNet 2003年が終わろうとしていますが、振り返るとどんな年だったでしょうか?

チェン 2003年は、財務的には非常にいい年でした。AvantGoの買収などにより、ワイヤレスポータルなどでシェアを上げることができました。モバイルデータベース分野でシェアが73%、モバイルミドルウェアも22%でカナダのResearch In Motionを抜いていずれも1位です。さらに、データベースモデリングツール分野でも「PowerDesigner」が首位に立ちました。

 また、パートナーシップも多く結ぶことができました。2003年だけでも、NEC、Fujitsu Software、BearingPoint、Tibco、Intel、SAP、中国のDigital Chinaと関係を構築しました。

ZDNet Unwired Enterpriseの下で、具体的な製品戦略はどのようになるでしょうか?

チェン 今後の方向性には幾つかポイントがあります。すべての製品にワイヤレスオプションを付けること、メインのデータベースはリアルタイムデータベースにすること、すべての製品はLinuxをサポートすることです。

ZDNet Sybaseには、ワイヤレス製品だけでなく、ビジネスインテリジェンス分野のIQなどの製品もあります。それらの製品をどのように展開していきますか。

チェン まず、バックエンドに近い分野をUnwire Server、PCとのアクセスするような層をEdge Serverと分けて考えます。

 Unwire Serverは下の階層から、企業ポータル、データウェアハウス、電子メール、インターネット、エンタープライズアプリケーション、CRMなどに分かれます。このうち、エンタープライズアプリケーションより上の領域については、パートナーシップでカバーします。そして、それ以下はSybaseが自社製品を提供していきます。

 一方で、Edge Serverの領域では、ノートPCと基幹システムをワイヤレスで連携する技術です。モバイルデータベースやモバイルミドルウェアなど、Sybaseが優位性を持つ製品群をフルラインで提供していきます。

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[聞き手:怒賀新也,ITmedia]