エンタープライズ:インタビュー 2003/08/07 19:32:00 更新


Interview:米Sybaseチェン社長、「技術はツールへと変化する」

Sybase TechWave 2003では、ワイヤレスへの取り組みとリアルタイムデータベースが強調された。ジョン・チェンCEOに同社の戦略や事業の方向性について聞いた。

 米Sybaseは8月4日から7日まで、フロリダ州オーランドにおいて、年次カンファレンス「Sybase TechWave 2003」を開催している。同社は、企業向けモバイルソフトウェア大手のアバンゴーの買収を2月に完了し、分社化したiAnywhereと連携してワイヤレス分野に注力する。一方、データの流動性を高め、異種混合システム間の連携を図るコンセプト「Information Liquidity」を打ち出し、統合をキーワードに製品やサービスを展開している。今回のTechWave 2003では、Tibco Softwareとの協業によるリアルタイムデータベースが強調された。ジョン・チェンCEOに同社の戦略や事業の方向性について聞いた。

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ジョン・チェンCEO

ZDNet 今回のSybase TechWave 2003における技術的なポイントは何ですか?

チェン テーマはワイヤレスです。現在WiFi技術が普及してきています。Sybaseにはモバイル端末向けのiAnywhereがあり、モバイルデーターベース市場でのシェアは73%に上っています。ワイヤレス分野で持つ技術により、企業市場を中心に大きなビジネスチャンスにつながります。

 Sybaseのワイヤレス技術には日本のNECやカシオ、富士通、シャープなどが興味を持ってくれています。12月にはNECのユーザー向けカンファレンスで、ワイヤレスに関して私がスピーチすることになっています。

ZDNet 今回のTechWaveでは、米Fujitsu Softwareとの協業が発表されました。Fujitsu Softwareは米国の企業ですが、今後日本市場での展開をどのように考えているでしょうか?

チェン Fujitsu Softwareから協業の話を受けたときは驚きました。同社がメインフレームをはじめとしたすばらしい技術を持つ企業だからです。Sybaseにとっては「すごいこと」だと思っています。

 また、日本の富士通とのコンタクトもあります。現在は、日本市場において大きな展開段階に向かう途中にあたると思っています。とにかく、Sybaseが持つ技術力の高さがベースになっていくことは間違いありません。

ZDNet 現在アプリケーション業界では、PeopleSoftのJ.D.Edwardsに端を発し、OracleによるPeopleSoft買収案などが持ち上がり、動きが激しくなっています。

チェン Sybaseはこれまで、ロイターやブルームバーグといった金融業界にフォーカスするなど、どちらかと言えば、バーティカル(垂直的)なアプリケーションを得意としてきました。しかし、現在では、ERPなどのアプリケーションの重要性を認識しており、昨年戦略提携を結んだPeopleSostとも良好な関係を持っています。

9.11後の世界

ZDNet 2001年9月11日の同時多発テロの影響が、企業などの情報システムのあり方自体に影響を及ぼしていることはよく耳にします。例えば、米連邦議会で議決されたパトリオット法(愛国者法)が一例です。

 パトリオット法は、疑わしい口座同士の資金のやり取りをFBIが自動監視することで、テロ組織への資金移動やマネーロンダリングを防止しようということが主旨となる法律です。これによって、米国らしさの象徴でもある自由やプライバシーが脅かされるとして、波紋を呼んだ一方で、怪しい人物を特定するために顧客の過去の取引履歴や所得、住所などさまざまなデータやアプリケーションを統合しなくてはならない点で、システム対応が大変になりました。この問題に対して、SybaseのPATRIOT compliance Solutionが採用され、問題を解決していると聞いています。

チェン テロの前は、銀行口座間で不自然な動きがあったとしても、その事実をFBIに報告するだけで済んでいました。しかし、テロ後は、小さなトランザクションに対しても、詳細な顧客のプロファイルも併せて5日以内に詳細な報告をしなくてはならなくなりました。この条件はあまりにも厳しいとして、現在訴訟問題になっているところですが、ここに、Sybaseの技術が利用されていることは事実です。

 Sybaseは、バラバラの情報を統合させる技術は非常に高い。このシステムは、日本の三井住友銀行にも導入され、高い評価を得ています。

ZDNet Tibcoとの協業が今回の目玉となっています。

チェン Tibcoとの協業によって、JMS (Java Message Service)により、データベースをリアルタイムで利用するという環境を提供できます。ソフトウェアは昔はバラバラに存在するものでしたが、今はそれを統合し、一つのプラットフォームとして利用していく流れになっています。

 その意味では、技術が成熟し、経営者にとってのツールへと変わってきていると言えます。

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[ITmedia]