エンタープライズ:ニュース 2003/12/19 11:24:00 更新


ClusterPerfectの「今すぐ使えるビジネスグリッド」を売り込む東芝ソリューション

OracleWorld 2003 Tokyoで、東芝ソリューションがリアリティのあるグリッドソリューションをアピールした。同社の主力製品のひとつであるClusterPerfectを導入すれば、可用性やワークロードの観点からサービスの実行を自動制御できるという。

 12月18日、東京ビッグサイトで開幕中の「OracleWorld 2003 Tokyo」で、東芝ソリューションが「ClusterPerfect」で実現する「ビジネスグリッド」をアピールした。

 ClusterPerfectは、高可用性や、ワークロードに応じた自動負荷分散、あるいはジョブスケジューリングなどの機能を備えたサービス実行管理ソフトウェア。2〜4ノード構成を対象にしたHAソリューションのClusterPerfectと、4ノード以上で予備サーバを共有できる「N対Mのバックアップ」が可能なClusterPerfect EXが用意されている。この10月、東芝の社内カンパニーだったe-ソリューション社が分社し、東芝ITソリューションと統合して生まれた同社にとっては、プラットフォーム製品の核となるもの。IDC Japanによると、Solaris、Windows、Linux版を合わせた高可用性クラスタソフトウェア市場(2002年)ではトップシェアと実績もある。

 システムの複雑化によってデータセンターの運用管理コストが企業の足かせになっている。グリッドコンピューティング、自律型コンピューティングといったITインフラ技術や、ユーティリティーコンピューティングのような新しい利用形態は、こうしたITシステムが抱える課題に対処したものだ。OracleWorld Tokyoでも、Oracle 10gが提供するグリッド機能が大きくクローズアップされている。

 東芝ソリューション プラットフォームソリューション事業部商品企画部の望月進一郎参事は、グリッド、自立型、ユーティリティーではいずれも「仮想化」「プロビジョニング」、そして「サービス実行管理」という3つのコア技術が重要になってくると話す。これまでのサービス実行管理は、運用管理者がシステムの状態を監視し、自分で判断しながら制御を行ってきたが、ClusterPerfect EXを導入すれば、ポリシーに基づき、可用性、ワークロード、ジョブスケジューリングといった観点からサービスの実行を自動制御できるようになるという。

 ClusterPerfect EXがライバルに対して最も差別化できている機能のひとつが、既に触れた「N対Mのバックアップ」機能だ。

 稼動サーバに対して予備サーバをペアで用意し、障害が発生すれば、それぞれ処理を引き継がせるもの。稼動サーバが10台あれば、予備サーバも10台必要になる。

 これに対してN対Mバックアップでは、予備サーバを共有するもので、例えば10台の稼動サーバを3台の予備サーバでバックアップし、サーバ資源を効率的に使うことができる。

 ただ、N対Mではそれを実現するソフトウェアへの要求が複雑になることは容易に想像できる。以下のような排他、あるいは依存といったルールがあるからだ。

  • あるアプリケーションはSolarisでしか稼動しない
  • アプリケーションAとBは同じサーバに共存できない
  • AとBは同じサーバで稼動させなければならない

 ClusterPerfect EXでは、こうしたサービス実行のポリシーをGUIで設定できるツールを用意しているほか、Solaris、Windows、Linuxが混在する環境を一括管理し、予備サーバを障害が発生したサーバと同じ実行環境でSANブート(共有ディスクからブート)させ、処理を引き継がせることも可能となっている。

障害を予測し事前回避も

 多くの高可用性クラスタソフトウェアが障害発生後に対処するのに対して、ClusterPerfect EXではパートナーらと協力し、将来の障害を予測して事前に回避する機能も提供している。

 例えば、この4月には日本アイ・ビー・エムと協業を発表し、eServer BladeCenterをベースとしたオートノミックコンピューティング環境を実現している。ブレードサーバのリソース使用状況や温度などを監視し、将来の障害を予測することができるIBM Directorと連携することで、サーバダウンを事前に回避できるというもの。

 望月氏によれば、こうしたサーバの切り替えにもClusterPerfect EXならではの工夫があるという。流れはこうだ。

  • 障害が予測されるサーバの実行環境で予備サーバを起動
  • その間にアプリケーションを稼動中の安全なサーバに退避
  • 予備サーバが起動完了後、アプリケーションを移動

 もちろん、一連の作業はポリシーベースで自動的に行われる。

 12月16日にはF5ネットワークスジャパンを加えた3社へと協業が拡大され、F5のロードバランシングソフトウェア「BIG-IP Blade Controller」と連携させ、サーバに対する負荷に応じて自動的にサーバを追加したり、減らしたりする機能も実現していくという。2004年1月には、こうした成果を「ワークロードプロビジョニング」機能としてリリースする予定。WebサーバやOracle9i RAC(Real Application Clusters)の負荷を把握し、しきい値を超えればサーバを増やし、下回ればサーバを減らすといった柔軟なサーバ資源活用が可能となる。

 望月氏は、「われわれは、既に利用可能な仮想化やプロビジョニングの技術とClusterPerfect EXを組み合わせ、リアリティのある“ビジネスグリッド”を提供していきたい」と話す。

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「今すぐ使えるグリッド」を強調した望月氏


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[浅井英二,ITmedia]

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