インタビュー
2004/02/17 21:24:00 更新


Interview:IBMソフトウェア事業を統括するミルズ氏、ターゲットはあくまでミドルウェア

米IBMのソフトウェア事業を統率するスティーブン・ミルズ氏が来日した

 米IBMのソフトウェア事業を統率するスティーブン・ミルズ氏が来日した。同氏は143億ドルで世界2位となる同事業を指揮している。30年近くの間に、ビジネス・インテリジェンス・ソリューションズ、パーベイシブ・コンピューティング、ISP&e-コマース・ソリューションズといった事業部門において、いずれもリーダー的な役割を担ってきた。

 来日した同氏が、同社の戦略を含めたソフトウェア業界の今後の方向性について話した。

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スティーブン・ミルズ氏

――IBMのソフトウェア事業全般について教えてください。

ミルズ IBMのソフトウェア事業は現在、売り上げが150億ドルで世界第2位です。製品のラインアップで言えば世界一となっています。研究開発、営業、スタッフなど合わせて5万人が従事しています。

 製品は主に、OSとミドルウェアに分かれており、特にミドルウェア分野で120億ドルを稼ぎ出しています。ミドルウェアは具体的に、エンドユーザーコンピューティング、メッセージング、データベース、セキュリティ、アプリケーション開発、コラボレーションなどに分かれています。一般にミドルウェアは、アプリケーションをサポートする基盤として、スケーラビリティ、堅牢性を向上させたり、異なるアプリケーションを統合するなど、重要性が益々上がってきています。

 ユーザー企業は今、サプライヤーやカスタマーなど、さまざまなシステムと相互接続することで、ビジネスプロセスをより迅速に処理することを目指しています。銀行、メーカー、小売業者など、どの企業もこれを求めています。このように、エンドツーエンドで統合されたシステムをベースにしたビジネスモデルを実現することが、IBMのオンデマンド戦略の中核と言えます。

 この10年間、IBMはメインフレーム、UNIX、Windows、Linuxなど、複数のプラットフォームを統括し、商品群として拡販してきました。そして、2003年以降は、元々のIBM以外のプラットフォームにもフォーカスを当てています。Notesを提供するLotusは電子メール、インスタント・メッセージング(IM)、コラボレーションなどの機能を提供するミドルウェアの中心的な製品です。また、システム管理のTivoli、ソフトウェア開発ツールのRationalなどを含め、大企業だけでなく、中堅企業もフォーカスに入れた戦略を立てています。

――IBMが戦略を実行する上で他社と差別化できる要因は?

ミルズ システム構築のノウハウや、ストレステストを行うラボ環境などを総合的に提供できることが強みです。企業として専門知識を顧客企業に提供するアウトバウンドのカルチャーがあることも特徴です。

―― ユーザー企業への製品やサービス提供方法への考え方は?

ミルズ われわれは今62種類の製品ブランドを持ち、金融、自動車、小売など、ユーザー企業がアプリーションを作りやすくなる環境を提供しています。どこの国でも、業種ごとのユーザー企業が抱える問題は共通していることが多く、ワールドワイドの主要市場をターゲットにビジネスを展開していきます。

 また、顧客の経営課題を解決するためには、アプリケーションベンダーと協業しなくてはいけません。IBMはアプリケーションを自社で提供するよりも、ベンダーと協業関係を結ぶことを重視しています。企業がアプリケーションを導入する場合、データベースなどのミドルウェア、サーバやストレージといったハードウェア、カスタマイズや運用サービスなど、付随していろいろなものを購入してもらう機会ができるので、旨みのあるビジネスでもあります。

 アプリケーションビジネスは非常に細分化されているため、個別に競合するのは得策とは言えない。OracleやMicrosoftなど、他社には自らパートナー企業と対抗しているケースもよく見かけます。IBMはあくまでも基盤となるミドルウェアとサービスに注力していきます。

オープンソースとの競合

――オープンソースについてどう考えますか?

ミルズ 確かに、オープンソースのコミュニティによって、安くていい機能が実装できるなら需要はあるでしょう。ただ、われわれも、ユーザーのニーズに合わせ、WebSphereやDB2を費用対効果が高くなるように提供しています。先日、ソニーがデバイスの組み込みデータベースにDB2を採用したと発表しました。機能性、堅牢性、サービスを考慮した結果、オープンソースではなくDB2を選択してくれたのです。

基幹システムでもLinuxに人気が集中

――今後の基幹システムについて、現在主にメインフレームやUNIXサーバで運用されている環境はどのように変化していくでしょうか?

ミルズ 今後、UNIXタイプのOSとしてLinuxが一番人気になると考えています。SunのSolarisなどが消えるわけではないでしょうが、Linuxはインテル系のプロセッサ上でも、RISC系プロセッサでも、メインフレーム上でも稼動できる点に優位性があります。また、カーネル2.6の出荷で多数の企業が基幹システムへの採用を始めています。

 Linuxの強みは、既存のスキルを有効活用できること。UNIXやC言語、Javaを知っていれば、Linuxを利用しやすいのです。今後、Windows以外の選択肢としては一番人気になるでしょう。

――Notesの将来的なロードマップに注目が集まっています。

ミルズ Notesは、企業が日々の業務で利用する普遍的なミドルウェアと言えます。今後はWebSphere上でも稼動するようになります。

 今後、IBMとして、NotesとWebSphereとの統合製品「Lotus Workplace」への移行を顧客にお願いすることはしません。今後10〜12年の間も、100万以上のNotesサーバが稼動しているでしょう。NotesとWebSphereはミックスで使えるようになります。バックエンドは見えないようにしながら、ユーザーのニーズに応じて両製品をうまく組み合わせた形で提供していくこともできます。

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