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2004/05/11 19:54 更新


IBM、「Workplace」をマネージドアプリケーション構想の柱に

IBMは5月10日、現在開発が進む「Workplace」製品を通じてさまざまなアプリケーションを柔軟に配信し、コスト削減につなげるという、新たなクライアントソフト戦略を明らかにした。

 IBMは、コンポーネントベースのアプリケーション配信アーキテクチャ「Workplace」を拡張し、Lotus製品群以外にも利用範囲を広げる考えだ。IBMのソフトウェア部門の責任者、スティーブ・ミルズ氏は5月10日、IBMが開発中のリッチクライアントプラットフォームを、アプリケーション配信用のハブとして利用する計画について説明した。MicrosoftのOfficeスイートを含む各種のアプリケーションをサーバ上で集中管理し、このハブを通じてエンドユーザーに配信するという。

 IBMのWorkplace製品は、企業が支払うハードウェアやソフトウェアライセンスのコストを削減するわけではない。企業は、ユーザーに配信するすべてのアプリケーションをライセンスする必要がある。IBMによると、Workplaceの狙いは、生産性を向上させ、デスクトップの管理にかかるコストを減少させることにあるという。

 ニューヨークで行われた記者会見でミルズ氏は、「最大の経費節減は、人件費の削減と生産性の向上によってもたらされる。PCやデバイスなどは安いものであり、経費節減は期待できない。われわれが業務プロセスにおける人的側面の効率を高めることができれば、それだけ顧客に経済的メリットがもたらされる」と語った。

 IBMの「Workplace Client Technology」は、今年1月に開催された同社の「Lotusphere」ショウで初めて紹介され、今四半期中にリリースされる予定。この技術はEclipseをベースとするプラットフォームで、クライアントデバイス上にWebSphere層とデータベース層を配置する。IBMのサーバソフトウェアと連携することにより、各種のプラットフォームへのオフラインアクセスや同期アクセスを可能にする。

 この戦略は特に目新しいものではない――1990年代にOracleとSun Microsystemsが提唱したシンクライアント構想の一種と言えるもので、Hewlett-Packardも昨年、シンクライアント構想に再び取り組む方針を表明した。

 フリーの技術アナリスト、アミー・ウォール氏は、「目新しい点は、IBMがすべてを統合しようとしていることだ」と指摘する。

 ウォール氏は、デスクトップを集中管理する方法を模索している大企業がWorkplaceに関心を示すとみている。また、Workplaceによってデスクトップを少しずつ構築していくという手法も企業の関心を引くだろう、と同氏は予想する。企業は、一部のユーザーにはMicrosoftのOfficeアプリケーションだけを使わせる一方で、別のユーザーにはほかのアプリケーションを使わせるといった具合に、アプリケーションをさまざまな形で組み合わせることができる。

 IBMがWorkplaceで最初に取り組もうとしている二つのビジネス分野が、ドキュメント管理とメッセージングである。メッセージング分野では、「Lotus Workplace Messaging」ソフトウェアの次期版が用いられる。ドキュメント管理分野では、新たに発表された「Lotus Workplace Documents」ソフトウェアを提供する。いずれも今四半期中にリリースされる予定だ。IBMでは、ほかのビジネスプロセスについても、ビジネスパートナー各社と共同で早急に開発する予定だとしている。

 IBMでメッセージング製品を担当するケン・ビスコンティ副社長によると、Workplace Documentsに組み込まれるプラグインにより、Microsoft Officeファイルの管理が可能になるという。同氏は、WorkplaceでOfficeを管理しているベータテスターがいるかどうかは明らかにしていない。

 IBMのWorkplace製品は、最初にWindowsとLinuxに対応し、年内にはMacintoshもサポートされるという。Workplaceでは、サードパーティーアプリケーションが対応していないOS上でそのアプリケーションを動作させることはできない。Microsoft Officeは、Windowsが動作するクライアントデバイス上でしか動作しない。

 「Siebel SystemsやAdobe SystemsといったIBMのパートナーも、Workplaceで自社製品にアクセスするためのプラグインを開発する予定だ」とビスコンティ氏は話す。Office用プラグインは、Workplace Documentsの一部として無償で提供されるという。

 Workplaceアーキテクチャは、「Workplace Client Technology Micro Edition」を通じてモバイルデバイスもサポートする。Nokiaが9月にリリースを予定している電話機能付き携帯型コンピュータ「Nokia 9500 Communicator」は、Workplaceソフトウェアを利用してエンタープライズアプリケーションにアクセスすることが可能になるという。

 IBMでLotusソフトウェアを担当するゼネラルマネジャー、アンブジュ・ゴヤール氏の推定によると、IBM Workplace Client Technologyの費用は、1ユーザーに付き年間24ドル。ボリュームライセンスの場合、Workplace MessagingおよびWorkplace Documentsの費用は、1ユーザーに付き月額1ドルになる見込みだとしているが、ビスコンティ氏によると、これらの製品の小売価格は、1年目が1ユーザーに付き29ドルになるという。

 5月10日の説明によると、Lotus WorkplaceソフトウェアがIBMの広範な技術スタックと緊密に結合されるのに伴い、IBMのソフトウェアグループでやや孤立してきたLotus部門の役割が明確化する。ゴヤール氏が2003年初めにLotus部門の責任者に指名されてから、同部門とIBMのほかのグループとの連携が強まり始めた。ゴヤール氏はLotusを担当する前には、IBMのソフトウェアグループでソリューションと戦略の責任者を務めていた。

 「私が戦略責任者になった時点で、Workplaceと呼ばれていたかどうかは別として、Workplaceプロジェクトが進行中だった。当社はバックエンドの処理が非常に得意だという認識を抱いていた。われわれはこの能力をユーザーに提供したいが、彼らが既存の資産を捨てなくても済むような形でそれを実現する必要がある」とゴヤール氏は語る。

 Lotusの従来のユーザーベースであるNotes/Dominoの顧客は、大幅に異なるアーキテクチャを基盤とするWorkplaceの出現に戸惑っているが、ゴヤール氏はLotusphereでユーザーに与えた保証を5月10日にも繰り返した。「今後もNotesとDominoの開発を継続し、Notes/DominoベースのアプリケーションはWorkplaceを通じてアクセスできるようにする」と同氏。

 実際、IBMはNotesとWorkplaceを連携させるスケジュールを早めようとしている。ゴヤール氏はLotusphereで、2005年末にリリース予定のNotes/Dominoリリース8では、Workplaceポートレットを通じてDominoアプリケーションが利用できるようになると話していた。しかし同氏は5月10日、来年1〜3月期に予定されているリリース7で、このプラグインを用意したいと述べた。

 「この目標に向けてがんばっている」(同氏)

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