ニュース
2004/05/18 15:27 更新


サン、Java Desktop Systemを国内で6月2日出荷、会見ではMSとの相互運用にも触れる

「マイクロソフトとの相互運用がデスクトップにも及ぶかもしれない」。末次氏からは、Java Desktop Systemが他のデスクトップLinuxとは異なる方向性を持つ可能性が語られた。

 「Sun Java Desktop System」といえば、中国政府で大量導入を決定(2003年11月)イギリス政府での試験運用(2003年12月)、アイルランドの銀行ではATMに1万台導入予定など、着実なシェア獲得を見せるデスクトップLinux。SUSE Linux Desktop Variant、GNOMEがベースとなり、サン独自のJavaコードでデスクトップ環境を作り上げている。2003年のSUNNetwork 2003で、ジョナサン・シュワルツ社長兼COOがコメントしたように、ターゲットは企業ユーザー、クライアント運用のコスト削減と選択肢を提供する製品として注目されている。

 5月18日、都内ホテルで開かれた会見では、国内でも6月2日からの販売開始が発表された。ITmediaエンタープライズでは、すでにSUNNetwork 2003で配布されたベータ版で早期レビューを行ったが、今回リリースされる製品は、「Release 2」と称され、日本市場に合うようメニュー表示を始め、日本語入力システム(ATOK X for Linux)、フォント(リコー明朝、ゴシック体)、プリンタドライバ(NEC、エプソン、沖データ、ゼロックス)などが付加された製品となる。

 価格は、企業ライセンス価格で年間5,500円/デスクトップ、2,700円/ユーザー(6カ月限定、早期導入キャンペーン)。キャンペーン後は、11,000円/デスクトップ、5,500円/ユーザーとなる。店頭パッケージ販売は行われない。

 会見冒頭で、代表取締役社長のダン・ミラー氏は、「コスト削減、複雑性の削減におけるもの。多くのCIOは、デスクトップを取り巻く管理、ライセンスの煩雑さを指摘している。システム管理も頭痛の種であり、相互運用性でも問題を抱えている」と語った。

 常務取締役・営業統括本部長、末次朝彦氏からは、「さまざまな局面で選択肢が求められている。Linuxの可能性として、クライアント利用で48%の延び(IDC調べ)、38%がWindowsからの代替えを調査中(米フォーチュン誌による1000社アンケート)だ」と言い、デスクトップ市場の現状を指摘する。

 また、先ごろのマイクロソフトとのアライアンスについても触れた。「いかにして10年間、相互運用環境を作り上げるかという発表だったが、Java Desktop SystemにおいてもWindowsとの相互運用性が考えられる立場にある。すでにあるWindowsを否定しても始まらない」とコメントする。詳しくは述べられなかったが、今後、デスクトップLinuxの方向性として、新風となる可能性を秘めた発言かもしれない。マイクロソフトが持つデスクトップのユーザビリティノウハウなどは、今もっともデスクトップLinuxに欠けている点だからだ。

 業界初披露となったSUNNetwork 2003では、主にLooking Glassのインパクトさで会場を沸かせ、機能性についてはあまり触れられなかった。2004年2月に国内で行われた「Java Technology Conference 2004」でも同様だ。

 今回の会見では、Java Desktop Systemの優位性について、管理機能面が大きくクローズアップされた。企業内でクライアントの管理を遠隔操作で行える点や、部門ごとに「コンフィグレーションマネージャ」機能によりデスクトップのポリシー管理が可能なことを強調する。また、OEM供給が具体化していることにも触れ、会場には東京フォレックス・フィナンシャルによる搭載ノートPCが展示された。

 3Dレンダリングでウィンドウを回転させインパクトさを見せつける「Looking Glass」(関連記事)についても若干の進展があった。同、コンシューマ向けのデスクトップテーマは、2004年夏に配布される開発者向けのツールキットで配布予定だという。コミュニティへ提供することで、今後の成長を期待する狙いだ。

 会見最後でミラー氏は、「Java Desktop Systemには3つのディストリビューションを考えている。エンタープライズ向けの今回発表した物、OEMパートナーを通して行われる物、そしてコンシューマ向け市場への物」と語った。

 現行リリースのJava Desktop Systemは、ユーザビリティを語るまでもないWindowsのデスクトップとの違いがある。これを壁と感じるのは容易く、Windowsクローンを目指すならば、あえて乗り換える理由はコスト面しかないだろう。利便性重視であればWindowsを使い続ければよいはずだ。しかし、シュワルツ社長兼COOが語るように、ターゲットは比較的機能を限定する企業ユーザーであり、コンシューマ用途での多彩なデバイスをサポートするという観点ではない。ミラー代表取締役社長が最後に触れたコンシューマ向けの展開には急務となるが、末次氏が語るマイクロソフトとの相互運用がデスクトップのインタフェースにまで及べば、デスクトップLinuxの認識までもが大きく化ける可能性を秘めている。

関連記事
▼レビュー:SunのクライアントOS「Java Desktop System」を検証する
▼マーズ・ローバを追い風にしたシュワルツ氏、日本でも高いJava Desktop Systemへの関心
▼顧客らは革新的なITシステムを求めているとサンのミラー社長
▼Sun 3days レポート

関連リンク
▼サン・マイクロシステムズ
▼東京フォレックス・フィナンシャル

[木田佳克,ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.