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2004/05/18 22:22 更新


「企業変革を支えるのはIT」──ますます高まるIT部門と柔軟なITインフラへの期待

都内で「IBM Software World 2004」が開幕した。オープニングの基調講演では、日本IBMの三浦執行役員やガートナーの日高社長らが登場し、競争力を維持するためには柔軟なITインフラが不可欠だとした。

 5月18日、都内で「IBM Software World 2004」カンファレンスが開幕した。オープニングの基調講演には、日本アイ・ビー・エムでソフトウェア事業を担当する三浦浩執行役員やガートナージャパンの日高信彦社長らが登場し、競争力を維持するためには柔軟なITインフラが不可欠だとした。

 現職に就く以前はトヨタ自動車を8年間担当した三浦氏らしく、自動車業界を例に挙げた。

 「幾世代にわたって存続している企業は、外的環境の変化に素早く対応してきた。米国の自動車産業を見ても、価格、多様な車種、品質と時代と共に消費者志向でビジネスモデルが変わり、今や環境に優しい自動車を求め始めている」(三浦氏)

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この1月からソフトウェア事業を担当する三浦氏


 自動車業界に限らず、企業を取り巻く環境は激しく変化している。しかも、グローバル化の波が寄せてから久しい。

 「経営層の意図を実現するのがIT部門。厳しい競争を生き残るため、IT部門への期待はますます高まっている」と三浦氏。

 IBMは、顧客企業の成功を支援すべく「e-ビジネス・オンデマンド」構想を全社挙げて推進している。e-ビジネス・オンデマンドとは、ビジネスモデルの変革と創造をもたらす新しい経営モデルのことだ。サム・パルミサーノCEOが就任してから半年後の2002年秋、顧客らが市場の変化に即応できる企業、すなわち「オンデマンドな企業」へと進化できるよう支援していくイニシアチブとして発表している。

「ITは重要」と多くのCIO

 昨年5月、ハーバードビジネスレビュー誌に掲載された「IT doesn't Matter」(もはやITは重要ではない)の論文が話題を振りまいたが、ガートナージャパンの日高氏は、「CIOのほとんどは“IT does Matter”と言っている」と今年のトレンドを紹介した。

 それによると、「効率的かつ柔軟なインフラの構築」がトップで「効率的かつ柔軟なインフラの管理」がそれに次ぐという。

 日本の企業のIT環境は、メインフレームを中心とする既存システムに対して、次第にパッケージアプリケーションが比率が高まっており、しかも企業間、あるいは企業と消費者の連携が進むなど、必然的に複雑な異種混在環境となっている。n:n の接続では破綻は見えており、ガートナーが「Enterprise Nervous System」(ENS:企業神経システム)と呼ぶ、柔軟なインフラの広範な採用が見込まれている。

 今や流行語ともなった「サービス指向アーキテクチャ」(SOA)も、こうしたENSに支えられた新しいアプリケーションの在り方といえる。ガートナーの有名な「ハイプ曲線」に当てはめれば、現在、SOAは明らかにハイプ(過度な期待)の状態にあり、一時的な幻滅期を迎えることが予想されるが、次にはイベント駆動型アーキテクチャも控えている。2つの新しい分散型コンピューティング方式によって企業のアプリケーションの在り方が変われば、システムは外的変化に即応できる柔軟なものとなる。

 「ENSによってアウトソーシングも進化する。特定の業務プロセスを丸ごとアウトソース(BPO)したり、ビジネス変革を進めながらアウトソース(BTO)できるようになる」と日高氏。

 日高氏は、情報システム部門のスタッフに求められるスキルも年々変化してきていると指摘する。技術的なスキルの重要性が相対的に低くなる中、代わってITマネジメントやビジネスマネジメントのスキルが求められるようになるという。

 「IT部門は経営の意図を実現する組織」とし、新しいIT部門の在り方や柔軟なITインフラの重要性を強調した。

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[浅井英二,ITmedia]

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