ITmedia NEWS >

今さら人に聞けない「e-ビジネス・オンデマンド」e-Day(1/2 ページ)

» 2004年05月10日 06時03分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 ここのところ中国へ取材に出掛ける機会が増えた。昨年も北京を二度訪ねたが、今年は3月、4月と続いた。昨年秋から15日以内の滞在であればビザなし渡航が可能になったこともあるのかもしれない。

 かつて「眠れる獅子」と呼ばれた中国が「世界の工場」となってからそれほど経っていないのだが、2001年11月のWTO(世界貿易機関)加盟によって今度は巨大な「市場」へと姿を変えつつある。驚くなかれ、中国は既に米国、ドイツに次ぐ、世界第3位の輸入大国なのだ(WTO調べ)。

 ゴールデンウイーク中の朝日新聞だったと思うが、20代、30代を中心に中国株への投資熱が高まっているのを伝えた。計画を上回る経済成長が続いていることから既に過熱感、高値警戒感があり、株式市場自体は調整局面にあるものの、株価のさらなる上昇への期待は依然として大きい。2008年に北京五輪、2010年には上海万博と国家の威信を賭けたイベントが続く。下げている今こそ買い時とみているようだ。

 3月に出掛けたのも、五輪に向けて情報化投資が急ピッチで進む北京で米IBMが「IBM Forum 2004」を開催したからだ。日本でも毎年、同名のカンファレンスが行われているが、ITの領域ではまだ新興国のそれは、同社が全社を挙げて推進する「e-ビジネス・オンデマンド」構想の考え方を紹介するのが中心で、いわば名刺代わりのような印象だった。

 もっとも、新興市場でなくともe-ビジネス・オンデマンドの理解度はそれほど高くない。東京のIBM Forumでも事情はそれほど変わらない。事前登録者の約4割は「聞いたことはあるが、知っているとはいえない」と回答している。「今さら人に聞けない」という読者のためにe-ビジネス・オンデマンドをおさらいしてみよう。

変化を生き抜く企業

 e-ビジネス・オンデマンドは、ビジネスモデルの変革と創造をもたらす新しい経営モデルのことだ。サム・パルミサーノCEOが就任してから半年後の2002年秋、顧客らが市場の変化に即応できる企業、すなわち「オンデマンドな企業」へと進化できるよう支援していくイニシアチブとして発表している。

 IBMから見た場合、顧客へのアプローチは2つある。「ビジネストランスフォーメーション(変革)」の支援から入るのと、「オンデマンドオペレーティング環境」の構築から入るものだ。どちらから入るかは、顧客企業によるが、大雑把にいえば、前者がCEOへの働きかけであり、後者はCIOへのそれだ。

 オンデマンドオペレーティング環境のエバンジェリズムを担当するローレン・フラハティ副社長によれば、依然としておよそ8割は後者、つまり柔軟なITインフラの構築から入るというが、差別化の切り札となるのは、IBMが培ってきた業界ごとの専門知識だ。e-ビジネス・オンデマンド構想とほぼ時期を同じくして、PricewaterhouseCoopers(PwC)のコンサルティング事業部門、PwC Consulting買収が発表されたことは実に興味深い。

「e-ビジネス・オンデマンドは夢物語ではない。既に500を超える成功事例がある」とフラハティ氏

 フラハティ氏はIBM Forum 2004のゼネラルセッションの中で次のように具体的に話している。

 「ビジネスプロセスを洗い出し、どこに価値があるのか、コストはどれくらいかかっているのかを分析することによって、アウトソースするのか、シェアードサービス化するのか、統合するのか、といったビジネス変革の優先度を付けることができる」

 下の図1は、彼女がゼネラルセッションで使ったスライドだ。一般消費財のメーカーを例に取ったもので、横軸にCRMや製造、調達・物流などが並ぶ。一方、縦軸は戦略、戦術、実行と下にいくほど、より現場の仕事に近くなっている。ITからは独立したビジネスコンサルティングの世界が垣間見える。

図1 ビジネス変革の第一歩、業務の分析

 フラハティ氏は、「効果が高いビジネス変革はたいてい水平的なプロセスに関するもの。それらはどの部門にもあるし、どの会社にもあるものだが、部門ごとにバラバラに構築されたシステムでは統合が難しい」と指摘する。

 そこでIT、すなわちオンデマンドオペレーティング環境の出番となる。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.