オンデマンドオペレーティング環境は、下の図2のように2つのレイヤからなる。「人」「プロセス」、そして「情報」を統合することによってビジネスに柔軟性をもたらす「インテグレーション」レイヤと自動化や仮想化によってITを簡素化する「インフラストラクチャマネジメント」レイヤだ。もちろん、これらのITインフラがオープンスタンダードに準拠していなければならないことは言うまでもない。
それではこのレイヤにIBMソフトウェアの各ブランドを重ねてみるとどうなるだろうか。ちょっと視点は違うが、図3がそれだ。
インテグレーションレイヤには左から顧客、パートナー、社員といった「人」を統合するLotus、「プロセス」を統合するWebSphere、そして「情報」を統合するDB2が並び、Tivoliのインフラストラクチャマネジメントレイヤがそれを支える格好だ。
さらに言えば、今年に入ってIBMは、顧客に対してはブランドというよりはむしろソリューション(IBMではスペシャリティと呼ぶ)を前面に打ち出し始めている。当面、「セキュリティ」「ポータル」「ビジネスインテグレーション」といった12のソリューションが用意され、それらの専門家集団を目指した組織再編も進んでいる。
「顧客は“DB2を買いたい”とか、“Tivoliが欲しい”とは言わない」と話すのは、日本アイ・ビー・エムでソフトウェアのブランドとスペシャリティの双方を担当する川原均理事。背景にあるのは、顧客のニーズだ。ブランド中心から顧客中心への転換ともいえる。
もちろん、個々の製品が競争力を失ってしまえば元も子もない。製品開発は引き続き強化しつつ、もっとオープンなブランドへの脱皮を狙っている。
川原氏は、「ブランドの価値を高めるには、例えば、DB2を情報管理のためのパーツとしてもっと広く使ってもらえる、いわばエコシステムを作り上げる必要がある」と話す。
IBMはオープンソースの統合開発環境「Eclipse」で大きな成功を収めている。IBMのミドルウェア製品群がすぐにオープンソース化されることは考えにくいが、同社は各ブランドをだれでも使えるパーツとして提供し、競合するコンピュータベンダーもIBMのミドルウェアに自社のソリューションを載せて販売できるようにしたい考えだ。
業界挙げて「ソリューション」の大合唱が聞こえる中、技術や製品の輪郭がボヤケてしまいがちだが、IBMはブランドとソリューションという2レイヤに分け、いわばクルマの両輪としてその価値を高めようとしている。
話を北京のIBM Forumに戻すが、フラハティ氏は「オンデマンドオペレーティング環境は、SOA(Service Oriented Architecture)の考え方に基づいている」と話す。各ブランドを組み合わせたソリューションの次は「サービス化」だ。WebSphereは「Business Choreography Services」として、DB2は「Information Management Services」として必要に応じて組み合わせて使えるように各製品はデザイン段階からサービスを志向するようになる。
こうして幾つかの方向から「e-ビジネス・オンデマンド」を眺めてみると、これまでよりずっと見通しがよくなるものだが、さらに「今さら人に聞けない」ということがあれば、5月中旬と6月初め、東京と大阪で開催される「IBM Software World 2004」に出掛けられてはどうだろうか。
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