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強まる「クレカの表現規制」 “アダルトと決済”のこれからはどうなる?(1/3 ページ)

» 2024年05月02日 13時00分 公開

 弊誌で4月23日に報じられた「海外ブランドクレカの成人コンテンツ決済停止、長期化の様相 サービス継続を断念するケースも」などにみられるように、ここ最近になり海外のクレジットカードブランドによる成人向けコンテンツへの締め付け強化が目立つようになり、大きな話題になっている。

 例えば2024年3月末から4月上旬だけでも下記のような話題が出ており、その前後やニュースで報じられなかったものまでを含めれば、水面下でかなりの動きがあるとみている。

- 突如「ひよこババア」トレンド入り──クレカブランドの要請で「DLsite」が案内した表現変更が話題に

- DLsite、American Expressも取り扱い一時停止 利用できるクレカはJCBのみに

- Visa/Masterカードの決済停止、成人アニメ老舗ブランドの公式サイトも

 筆者は主にクレジットカードを含む金融関係やECなどの小売サービスを普段執筆のフィールドとしているが、その視点も含め、過去数年間で見てきた周辺の事情をまとめつつ、今後を考察したい。

表に出ないだけで、水面下ではより厳しい規制の動き

 編集部側からの執筆リクエストにもあったが、「前から締め付けの流れはあったが、ここ最近になってアダルトの締付けがさらに強くなってきたのはなぜか?」という疑問を抱いている方が多くいるかと思うので、まずこの点に触れておきたい。

 誤解がないように言えば、締め付けが厳しくなったのは「ここ最近」の話ではなく、少なくとも6〜7年前、おそらくはそれより前から動きとしては続いており、事象が表面化して報道が相次いだのがここ2〜3年の出来事というのが事実だ。つまり、水面下での動きは長年にわたって続いており、その結果が「ここ最近」になって出てきたにすぎない。

 「ここ最近」の動きについて、表面化した部分をざっくりまとめた記事が文春オンラインで山本一郎氏にまとめられていたのでざっと紹介するが、ポイントとしては2点あり、22年7月に米カリフォルニア州中部地区連邦地方裁判所によって出された児童ポルノ判決によって「Pornhub」を運営していたMindGeekのみならず、決済プラットフォームを提供していたVisaが訴訟に巻き込まれたこと、そしてプラットフォーム運営側ではコンテンツを制御しきれない「UGC(User Generated Content)」の分野で自粛やカードブランドによる取引停止が相次いだことが挙げられる。

 前者について、自身の知見に基づいて兼光ダニエル真氏がX(旧Twitter)上でコメントしているが、米国側の動きはともかく、少なくとも“日本”に対する規制としては22年より前から同じような形でコンテンツ配信業者、主に出版社を対象にした規制を伴うカードブランドによる圧力が続いており、22年の判決がそれを助した可能性はあるものの、動きとしてはそれ以前と現在で違いがないというのが筆者の見解だ。

 後述するが、この判決が出る1年半前のタイミングですでに現在問題になっているのと同じような規制キーワードを含むリストが出回っており、カードブランドによる出版社への圧力そのものは同様に何年にもわたって続いている。

 現在、このタイミングで一気に問題が浮上し、多くのメディアなどに取り上げられるようになった理由は、この手の交渉が秘密裏に行われている性質上不明だが、継続して行われていたアダルトコンテンツを持つ各社への交渉のタイミングが一致し、たまたま同じタイミングで出てきたのだと推測している。そのため、カリフォルニア州連邦地裁の判決による影響は「可能性として考えられる」レベルのものだと加えておく。

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