サービス指向で、プロセスを回しながら育てる――ITILの導入・構築手法

野村総合研究所(NRI)は11月2日、「NRI System Management Conference」を東京・大崎ゲートシティホールにて開催した。今回はITILや運用改善をテーマにした4つのセッションが開催されたほか、会場にはNRIのコンサルタントやエンジニアによる相談コーナー、Senju Family製品のデモ展示コーナーも設けられ、多くの来場者で賑わった。

» 2006年11月20日 10時00分 公開
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賑わいを見せるSenju Familyデモ展示コーナー

アウトソーシング事業のノウハウをサービスとして展開

システムマネジメント事業本部 部長 渡辺浩之氏

 カンファレンスの冒頭、挨拶に立ったのはNRI システムマネジメント事業本部の渡辺浩之部長。2007年9月竣工を目指して建設中の新たなデータセンターは、Uptime Institute社の指針で最高の『Type IV』というグレードに準拠し、ファシリティを高度に多重化することで高い可用性を実現する計画だという。

 「こうしたデータセンターを用いたアウトソーシング事業のノウハウ、特に運用改善やITIL導入に関する部分は、われわれシステムマネジメント事業本部が提供するサービスに役立っています」と渡辺氏は語り、サービスレベル向上や運用コスト削減、リスク管理、さらに、いわゆるJSOXなどのコンプライアンスにおいても、これらのノウハウを活用したコンサルティングやソリューションなどのサービスを提供、顧客のビジネスに役立っていることを紹介した。

システム部門は「まわし10年」にこだわり利用部門との強固な連携を

 最初のセッションは、「『保守・運用』を起点とした情報化推進の実践――情報システムのライフタイムバリューの向上」と題して、システムコンサルティング事業本部 産業ITマネジメントコンサルティング部 上席コンサルタントの浦松博介氏が行った。

システムコンサルティング事業本部 上席コンサルタント 浦松博介氏

 浦松氏は、情報システムのライフタイムを「つくり1年、まわし10年」と表現し、開発よりも長期にわたる保守・運用業務の重要性を示した。

 「『まわし10年』の期間に情報システムを一層活用してもらうことで、情報システムのライフタイムバリューすなわち事業貢献価値の向上を目指すべきだと考えています」(浦松氏)

 そのためには、「組織・人」「プロセス」「基準・ルール」「サービスレベル管理」「利用部門との関係」という5つの要素でマネジメントを強化し、保守・運用業務の質とコストの「見える化」を実現するとともに、保守・運用業務の活動証跡を分析することにより、次の課題解決や情報化の意思決定につなげることが重要だという。

 さらに、IT利用部門の総合窓口としてビジネスプロセス全体を把握した「ビジネスリレーションマネジャー」を置き、全ITサービスの保守・運用を統括する「ITサービス統括マネジャー」との間での連携体制を作ることで、事業運営サイクルと情報化ライフサイクルプロセスとを一体化させ、業務の変化に即した対応が可能な「つかいまわせるIT」を提供していくことができるようになるとした。

ITサービスマネジメント標準フレームワーク(SSMF)の積極的な活用

 システムマネジメント事業本部 千手サービス事業部の松本好弘氏は、「Senju Familyの考えるITサービスマネジメントとは――ITIL/COBIT/ISO20000を支えるITサービスマネジメントフレームワークSSMF v2.0とそれを支える製品群のご紹介」というセッションの中で、ITILの運用に際しては、今後需要が増すと想定されるISO20000や2008年4月から始まるJ-SOX法への対応を意識して実施していくべきという考えを強調した。

システムマネジメント事業本部 松本好弘氏

 「そのためには、システム指向マネジメントからサービス指向マネジメントへの移行が欠かせません。まずはIT部門の意識改革を行い、ユーザーとプロセスを中心とした考え方に慣れてもらうことが重要です。その上で、ゴール(ToBe)を設定して現状(AsIs)とのギャップを把握、ゴールへの道筋を描き、実行した後には達成度を評価していくという業務の流れを確立していきます」(松本氏)

 NRIが提供するITサービスマネジメントフレームワーク「SSMF(Senju Service Management Framework)」は、企業がITILのフレームワークに従ってITサービスマネジメントを導入していくための具体的なガイドラインで、3つのP、すなわちProcess(プロセスの最適化)、Product(システム基盤の最適化)、People(人材の最適化)を網羅しているという。

 最新版のSSMF V2.0では、世界標準であるISO/IEC 20000をベースとしたプロセス分類とし、より客観性のあるリファレンスとなった。さらにCOBITを取り込んでシステム運用に関連するプロセスにも対応したほか、内部統制も全プロセスに盛り込まれた。

 「ITサービスマネジメント実践においては、プロセスの設計内容によっては、コスト増や生産性低下をもたらすケースがあります。標準フレームワークの活用、ツールを用いた効率化、そしてITサービスマネジメントという攻めの部分とITガバナンスという守りの部分に対する意識改革、この3点が重要だと言えるでしょう」(松本氏)

「定着させる」ことを主眼に置いたインシデント管理・問題管理の構築手法

 後半の2セッションは、より具体的な話となった。まず、システムマネジメント事業本部 千手サービス事業部の小貝祐樹氏は「サービスデスクを中心としたインシデント管理・問題管理の構築手法――サービスデスクの構築、インシデント管理、問題管理のためのプロセス設計、プロダクト導入、導入後の効果」と題して講演を行った。

システムマネジメント事業本部 小貝祐樹氏

 インシデント管理・問題管理の導入に取り組む前には、まず企業における情報システム部門の責任範囲やあるべき論を再確認し、課題を整理する必要がある。その上で、なぜインシデント管理・問題管理を導入するのか?をプロジェクトメンバで共有し、関係者全員のベクトルあわせを行うことが重要である。

 その次の設計・構築段階では、「ITILの定義を自社の定義に置き換える」作業を行う。ITILを活用することによるメリットの1つとして、“ITIL用語を共通言語として利用できる”点があるが、場合によってはコミュニケーションに支障が発生するケースもある。ここでは、すべてをITIL用語に置き換えるのでなく、各社固有の事情に応じた工夫が欠かせないと小貝氏は言う。

 ここで小貝氏は、NRIの提供するSenju Familyの紹介を行った。Senju FamilyはITサービスマネジメントに役立つソリューションやプロダクトだ。このセッションのテーマであるインシデント管理・問題管理にはサービスデスク製品「CONTACT CAFÉ SP」が対応している。一方、「Smart Enterprise Navigator」(SEN)は、「eXsenju」をはじめとするインフラ管理ツールと連携してさまざまな情報を集約する統合監視基盤だ。CONTACT CAFÉ SPとSENの連携により、ユーザー側とシステム側の情報を一元管理できるようになるという。

 また基盤を構築できたとしても、定着化の段階が待っている。

 「最初のセッションで浦松が述べた通り、当初から完成させるのでなく、運用サイクルを回しながら作り上げていくことが重要です。まず7割くらいを完成させておき、導入・試行フェーズで残り3割を作り込むような感じで進めます。全体での運用に先立ち、一部でパイロット的に実施して一定期間のプロセス改善サイクルを回し、本試行フェーズで最終的なプロセスフローや管理手法を確定させるようにすべきでしょう」(小貝氏)

「サイクルを回して完成度を高める」ための変更管理・リリース管理構築手法

システムマネジメント事業本部 岩田顕氏

 最後のセッションは、システムマネジメント事業本部 千手サービス事業部 岩田顕氏による「開発と運用の分離を意識したリリース管理・変更管理の構築手法――プロセス設計やプロダクト導入における設計構築手法をご紹介」となった。

 ITILにおける「変更管理」は、情報システムに関わる変更を効率的かつ迅速・安全に行うことを目的としている。これに対し「リリース管理」は、承認された変更内容を実際に行う役割で、リリースの計画や手順策定、実行を担当する。これらの活動により、本番環境への不正なアクセス抑制や、変更に伴うインシデントの削減、サービス中断時間の短縮、費用対効果の向上などが期待できる。

 「変更管理・リリース管理においては、システム運用部門だけで完結できません。システム企画・開発部門との連携が不可欠で、組織をまたがった活動となりますから、マネジメント層の関与も重要な要素になります」(岩田氏)

 岩田氏はここで、CONTACT CAFÉ SPを中心とした管理基盤を紹介した。CONTACT CAFÉ SPは変更管理にも対応し、申請承認機能を備えている。インシデント管理、問題管理、変更管理の各機能は、タブ形式で統合されており、画面切り替えで利用可能だ。

 インシデント管理・問題管理とは違い、変更管理においては、変更の規模によって異なるプロセスを使うのが一般的だ。CONTACT CAFÉ SPは、そうした複数の承認プロセスに対応し、申請するルートも切り替えることが可能となっているという。

 「もちろん、変更管理・リリース管理においても、最初から100%を目指すのでなく、継続的にサイクルを回していくことで完成度を高めていくことが重要です」(岩田氏)

運用管理ツール活用セミナー
会期 2006年12月13日(水)12:00〜14:00(参加無料)
会場 野村総合研究所 丸の内総合センター(本社)
スケジュール 12:00〜12:10 ご挨拶
12:10〜12:55 eXsenju V2.5 / Smart Enterprise Navigator / CONTACT CAFÉ SPのご紹介
13:05〜13:50 eXsenju V2.5 / Smart Enterprise Navigator / CONTACT CAFÉ SP活用事例のご紹介
13:50〜14:00 質疑応答
詳細・申込み http://www.go-event.info/nri/senjufamily-event/

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提供:株式会社野村総合研究所
制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2006年12月19日