協業を超えた協業──デル×日本オラクルの第三章

2007年4月、デルと日本オラクルは新たな提携強化の発表を行った。過去幾度か行われたこの種の発表と今回のそれでは大きく異なる点が幾つか存在する。両社が“第三章”と位置づける今回の発表は、顧客の期待を裏切らない──もしくは期待のはるか上をゆく──ものとなっている。

» 2007年05月28日 00時00分 公開
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 2007年4月4日、デルと日本オラクルは新たな提携強化の発表を行った。両社は、これまでもさまざまな分野で協業してきているが、今回の提携強化は過去からのものとは異なり、両社にとって大きな変革をもたらすものとなっているという。

 過去に発表している米国本社同士の戦略的なアライアンスパートナー関係もあり、デルと日本オラクルは双方の製品の動作検証や最適な製品構成組み合わせの提案、両社で協力したマーケティング、セールス活動など、さまざまな共同事業を行っている。両社の協業による効果を考えてみると、デルには中堅、中小企業との直接的な接点を持つ強力なダイレクトモデルがあり、一方の日本オラクルにはエンタープライズ分野での多大な実績がある。互いに得意分野が異なることから、両社の協業はお互いを補完し合い対応の幅を大きく広げるという相乗効果が見込めることが容易に想像される。

 今回の提携でも、この部分の強化が1つの狙いだ。デルの「スケーラブル・エンタープライズ戦略」と日本オラクルの「グリッド・コンピューティング戦略」を共通のエンタープライズ戦略として融合し、中堅・中小企業から大企業までのあらゆる規模の顧客に、パフォーマンスおよび可用性、拡張性の向上が容易に可能なITシステムの構築を、適正価格で推進することがうたわれている。

 これだけであれば、従来の延長線上にある提携の強化に過ぎないと思われるかもしれない。しかし、今回、デルは日本オラクルのパートナープログラム「Oracle PartnerNetwork(OPN)」の最上位プログラム「Certified Advantage Partner(CAP)」の契約を締結し、日本オラクルとの直接取引が可能な体制となった点を見過ごすと、これまでの協業との違いを見誤ってしまうことになる。

 前述のとおりワールドワイドレベルで強力な戦略アライアンスパートナーという立場であったにもかかわらず、従来はデルが直接オラクル製品のライセンスを販売・保守サポートできる契約は締結していなかった。そのため、仮に顧客がデル経由でオラクル製品のライセンスを購入しても、保守契約はほかのオラクルパートナーと締結する必要があったのである。現在、日本オラクルとCAPの契約を締結している企業は、今回新たに加わったデルを含めてもわずか9社。CAPには、販売するオラクル製品のライセンスの取扱高はもちろん、強固な製品のサポート体制とスキルが求められる。デルはCAPとなったことで、オラクルに関する製品の販売、ソリューションの導入、そして展開から保守に至るまで、ワンストップで提供する体制が整ったことを示したのである。デルは、業界標準技術採用のx86サーバのみを提供するユニークなベンダーであるが、x86上のOracleシステムをワンストップで提供することで、さらにデータベースシステム全体の標準化とシンプルな購入・構築・保守の実現を推進するものである。

 デルと日本オラクルのパートナー関係は、ワールドワイドでの提携関係の始まりを第一章とすると、2003年から始まった営業活動を中心とする国内での独自の取り組みが第二章、そして今回の提携強化が第三章と位置付けられる。第三章となった両社の取り組みの内容と、そこから生まれる顧客のメリットについて、デル マーケティング&オペレーションズ本部 アライアンス&ソリューションズ部 部長の瀬戸弘和氏と日本オラクル システム事業統括 グローバルアライアンス戦略本部 プラットフォームアライアンス推進部 ディレクター 島田淳氏に話を聞いた。

顧客にオラクルのソリューションをデルがワンストップで提供する

――第三章となる今回の提携関係に至った過程を教えてください

photo デル マーケティング&オペレーションズ本部 アライアンス&ソリューションズ部 部長 瀬戸弘和氏

瀬戸 Oracle9i、そしてOracle Real Application Clusters(RAC)の発表があった2000年12月以降、米国本社同士のワールドワイドでのアライアンス活動が本格化し、それを受けた形で日本でも両社の協業を開始しました。Oracle9i、Linux、Oracle Real Application Clusters(RAC)という組み合わせで認定構成をいち早く提供し、ツタヤオンライン様のミッションクリティカル分野での採用実績なども早い段階で獲得しました。これにより、Linuxでのエンタープライズ分野の開拓を行ったのです。これが両社の提携の第一章です。

 第二章のきっかけが、オラクルのエキスパートによる電話営業部門、Oracle Directとの連携です。それまでは、いわばマーケティング活動を中心とした連携でしたが、両社の営業リソースも連携させる取り組みを始めたのが第二章のポイントとなります。大企業に多くのインストールベースを持つオラクルと協業することで、システムベンダーとしてどんなサービスを提供していく必要があるのかということを、デルとしてきちんと把握したのがこのころです。

島田 オラクル側からすれば、Webや電話という直接的な顧客との接点をもったセールス活動の中から、中堅、中小規模の企業にどのような情報を提供していけばいいかが分かったのが第二章です。時間をかけずにサイトでシステム構成を決めて購入するといったスタイルは、システムインテグレーターなどのパートナーを通じ物が流れるビジネスを手がけてきたオラクルの立場からは、ある種カルチャーショックすら受けました。

 また、ワールドワイドで両社がパートナー契約を締結したのもこのころです。米国本社には、デルのハードウェアとオラクル製品の組み合わせを認証する専門のエンジニアリング部隊も設けられ、提携関係もより強化されています。こうした取り組みを進めた結果、3年ほど経過した2006年には、デルはオラクルのリセラーとして世界でNo1になっています。

瀬戸 電話の問い合わせをきっかけに、それをつなげて営業活動を進めるのは、ラグビーでパスを続け最後にトライを取るようなものです。時にはタックルされモールを作ったりラックになったりの苦労もあります。順番に業務を受け渡していくのは、少ない人数で効率的にできる反面、弊害もあります。短期間で集中するやり方が定着してしまい、ものごとを3カ月単位(四半期毎の決算)で考える文化がデルには染み付いてしまいました。オラクルのようなエンタープライズ向けの製品を扱うにあたっては、6カ月、あるいはそれ以上の期間継続的に顧客をサポートしていく必要があり、従来のわたしたちの文化ではうまく機能しない部分も感じており、専任のプリセールスやコンサルの部隊が必要だということを強く認識したのです。

 こういったことを踏まえ、今回の第三章ではオラクルのシステム全体をデルがワンストップで提供できるようにしました。コンサルティングやサポートの専任部隊を設け、顧客に対しトータルかつ中長期の視野に立ったソリューションを提案できるようになりました。

――第三章の提携での顧客のメリットは?

瀬戸 オラクル製品を使いたいが予算の関係で二の足を踏んでいる、あるいはオラクル製品は難しいのではと考えている顧客もいるでしょう。そういった顧客との接点をデルはたくさん持っているので、オールインワンで提供できる体制は顧客にも大きなメリットがあると考えています。例えば、規模的に最初の段階でOracle Real Application Clusters(RAC)まで一気に導入するのはオーバースペックかと思えた案件でも、その後顧客ビジネスが拡大しOracle Real Application Clusters(RAC)をさらに追加することが最近はよくあります。

 こういった顧客への対応も、これまではほかのパートナー企業に頼っていたわけですが、例えばオラクル製品に強いパートナー企業でもハードウェアはどうか、バックアップやストレージについてはとなると、必ずしもそれらに強いとは限りません。課題が浮上するたびにさまざまなベンダーに相談するのではなく、システム全体をシームレスに対応してもらえれば、顧客には時間的にもコスト的にもそして手間の面でもメリットは大きいはずです。

photo 上図構成は「Dell | Oracle Real Application Clusters for Standard Edition (SE RAC)パッケージソリューションMD3000 SASモデル」。こうしたオラクルのシステム全体をデルがワンストップで提供/サポートできるようになった意義は大きい ※画像をクリックすると拡大表示します

 デルが直接提供するハードウェア、OSはもちろんですが、代理店が提供するOSまでを含めワンストップでサポートできる体制は、至上命題だと考えています。その上のオラクル製品を含め、ソリューション全体をサポートする。これからは、オラクル製品に関するものはオールインワンでデルが受け付けます。

島田 オラクルとしても、デル担当の組織を強化しています。Oracle Directなどの連携については従来どおりですが、さらにCAPパートナー企業に対するプリセールスや保守のバックアップ体制など、かなり手厚いサポートができるようになりました。この2社の体制で、顧客に対し継続的にサポートしていきます。

Linuxのミッションクリティカル分野でのリーダーを目指す

――今回新たに両社が狙う市場は?

photo 日本オラクル システム事業統括 グローバルアライアンス戦略本部 プラットフォームアライアンス推進部 ディレクター 島田淳氏

島田 さまざまな分野で協業は行いますが、エンタープライズ分野に注力していくのが1つです。x86サーバの性能が向上しており、メインフレームや大規模なサーバのダウンサイジングの商談が多数発生しています。従来メインフレームやUNIXの大規模サーバで稼働させていたアプリケーションも、x86サーバで十分に対応できる。それに対し、デルのハードウェアとサービス、オラクルデータベース、そしてOracle Real Application Clusters(RAC)の組み合わせでメッセージを出していきます。技術者に、このことを理解してもらうのも重要と考えていきます。

瀬戸 エンタープライズ向けの両社のソリューションも整ってきました。パフォーマンスはまったく問題ありません。ストレージにしても、従来ハイエンドなもので対応していたものも、手ごろな価格のミッドレンジクラスでも十分な性能、信頼性が得られます。

  せっかくOracle Real Application Clusters(RAC)を導入したのに、フェイルオーバーしないじゃないかという顧客の声がありました。データベースだけフェイルオーバーしても、アプリケーションがそれについてこなければ、顧客からすればフェイルオーバーしたことにはなりません。そこでデルとオラクルは、Oracle GRID Centerにて、現実的な顧客のアプリケーションを想定し、バックエンドのRACに加え、Oracle Internet Application Server 10gをアプリケーションサーバとして用いた統合的なシステム環境での検証を行いました。その結果、障害発生時にも極めて迅速にシステム全体としてフェイルオーバーし、トランザクションを継続できることが分かりました。また併せて動的なロードバランシングによって、適切にRACリソースの負荷分散が行えることも結果として出ています。データベースレイヤだけでも、アプリケーションレイヤだけでもなく、プラットホーム全体を検証できたので、その成果を具体的なソリューション・サービス・メニューとして体系化し、エンタープライズな領域の顧客に提供していきたいと考えています。

島田 今回の両社の取り組みで、Linuxにおけるミッションクリティカルな分野で、市場のリーダーとしてのポジションを獲得したいと考えています。

瀬戸 Windowsであれば、マイクロソフトが保証します。提供するベンダーが変わっても、同じレベルのサポートが受けられるでしょう。Linuxについては、ベンダーの努力でサポートの質は変わります。現状、大規模な企業でのLinuxの採用が急成長を遂げていますが、ミッションクリティカル領域でのLinuxのサポートは、ベンダーによって大きな差があります。顧客の選択のポイントを極論すると、最終的にどこまでサポートしてくれるのかということに尽きるのではないでしょうか。ミッションクリティカルで利用したいという顧客の要求に、デルは120%応えていく覚悟です。

島田 エンタープライズLinuxの領域で、顧客のメリットが発揮できるような協業にこれからも注力していきます。日本全国のISVに両社のプラットホームを開放し、利用してもらう取り組みも、さらに広げていきます。

瀬戸 「Linux=デル」というイメージを、ミッションクリティカル分野ではオラクルとともに作っていきます。そのためには、サポートできるLinuxのディストリビューションについても、拡大していくことも検討しています。すでに、CentOSやDebianなどのビッグユーザーも出ています。商用ディストリビューションのサポートは当然で、さらに顧客が期待するものをサポートする。その中には、Oracle Enterprise Linuxのサポートも視野に入れています。デルでは、顧客の環境で必要ならば、足りないドライバについても自らコードを書いて対応するといったことをすでに行っています。もちろんその成果は、コミュニティにフィードバックしています。

島田 まだまだオラクル製品のライセンスがデルから購入できるということを知らない人もいるはずです。きちんと情報発信し、そういった方々にも安心して使ってもらえる、リーズナブルで高性能なソリューションを両社でどんどん提供していきます。



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提供:デル株式会社
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2007年6月10日