セキュリティPCの採用で真のモバイルワークスタイルを確立日立製作所4万人がテレワークを実践

新しいワークスタイルとして注目されているテレワークは、すでに多くの企業に取り入れられている。その代表的な実践事例が、日立製作所自身のシン・クライアントによるワークスタイル改革である。2月5日に開催された日立テレワークソリューションセミナーでは、その具体的な取り組みが紹介された。

» 2008年02月27日 10時00分 公開
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情報漏えい対策から始まった日立の取り組み

 日立製作所は、2007年9月に選定された「第8回 テレワーク推進賞」(日本テレワーク協会主催)において、日本テレワーク協会会長賞を受賞した。これは、4万人の従業員を対象にしたシン・クライアントによるテレワークの大規模実施事例であり、「場所や時間に縛られない」「定席を持たない」「紙に縛られない」をテーマに取り組んだワークスタイル改革の成果である。

 日立がワークスタイル改革に取り組み始めたのは、2004年のこと。当時は、情報漏えい事件が頻発して社会問題化するとともに、2005年4月の個人情報保護法施行を目前に控え、情報漏えい対策の気運が高まっていた時期だった。

photo セキュアユビキタスソリューションセンタ センタ長 岡田純 氏

 「日立でも、ノートPCを持ち運んで仕事するモバイルユーザーが非常に多くなっていました。ノートPCの中には、当然のことながら、アプリケーションや会社のデータが入っています。また、いろいろな場所のPCを使って仕事をするために、USBメモリなどの外部記録媒体にデータを入れて持ち歩く機会も多くなりました。そうした仕事環境の中で情報漏えい対策を進める必要があり、そのソリューションとして日立が取り組んだのが、シン・クライアントだったのです」(日立製作所 セキュアユビキタスソリューションセンタ センタ長 岡田純氏)

 日立では、端末内に一切の情報を持たないディスクレスのシン・クライアントを「セキュリティPC」と名付け、モバイルユーザーの多い営業職、SE職から導入を開始した。一般的なシン・クライアントは、ローカルのネットワーク環境で導入されることが一般的だったが、日立は情報を持ち歩くモバイルユーザーこそ、シン・クライアントの環境が必要だと考えたわけだ。

 導入当初は、持ち運んで利用するセキュリティPCから社内の自席にあるデスクトップPCをリモートコントロールする「ポイント・ポイント型」のシステム構成だった。セキュリティPCは、本人認証のための仕掛けを追加して「成りすまし」による不正アクセスを防止するとともに、USBメモリなどの外部記録媒体へのデータ書き込みや紙への出力などは行えない仕組みだ。

 「モバイルでできるのなら、オフィスの中でもできるだろうということで、セキュリティPCによるシン・クライアントのソリューションは、そのままワークスタイル改革の実現へと発展していきました。そして、自席を持たないフリーアドレス、IP電話の導入、さらにネットワーク環境を整備することで、ユビキタスなワークスタイルの実現を目指したのです」(岡田氏)

コスト削減とワークスタイル改革を両立

 ユビキタスなワークスタイルの実現に向けて、日立が次に取り組んだのが、自席にあるデスクトップPCの集約だった。セキュリティPCをオフィスでも使用すれば、自席にデスクトップPCが存在する必要はない。データセンターに集約すれば、クライアントPCの保守・運用にかかるコストも削減できる。

 「オフィスでも同じセキュリティPCで使い、オフィスで使っていたPCはセンターに集約する。センターに集約するのなら、実装効率を上げるために、ラックに収めよう。そういうコンセプトで作ったのが、クライアントブレードです」(岡田氏)

 つまり、従業員はオフィスでもモバイルでも同じセキュリティPCを使い、その実体はセンターのクライアントブレードにあるというものだ。このシステム構成を日立では「ポイント・ブレード型」と呼び、個別の非定型業務には好適な環境だと位置づけている。

 さらに、個人のデスクトップ環境をサーバ上で共有するシトリックスの「Citrix Presentation Server」を利用してセキュリティPCで操作する「センター型」のシステムも構築可能だ。

 「ポイント・ブレード型もセンター型も、利用の仕方としてはまったく同じで、セキュリティPCを利用してアクセスします。使い分けは、キーモバイルの中に格納されている接続先の設定で行います。日立のシン・クライアント ソリューションは、基本的にこれら3つのシステム構成になっています」(岡田氏)

 日立では、ポイント・ポイント型とポイント・ブレード型で4万ユーザー、センター型で1万ユーザーの合計5万ユーザーでシン・クライアント環境を運用しており、2007年度内(2008年3月まで)には7万ユーザーまで持っていく予定だ。

 このワークスタイル改革によって、日立ではさまざまな効果を得ることができたという。

 「コストの削減効果では、オフィススペース全体を30%削減することができました。また、共通スペースの不足を解消し、会議室やミーティングコーナーを倍増することができました。一方、ワークスタイル改革も進み、お客様への対応時間は30%以上も増え、見積もりや提案にかかる時間も50%以上削減できました」(岡田氏)

image オフィススペースの有効活用や業務効率の向上などに目に見える効果があるという

 シン・クライアントによるワークスタイル改革によって、日立ではオフィススペースの有効活用が実現できただけでなく、顧客とのコミュニケーションが活性化し、意思決定の迅速化も実現できたわけである。

さらに拡大するテレワーク適用事例

 日立のセキュリティPCによるシン・クライアント ソリューションは、日立自身の積極的な取り組みもあり、すでに多くの企業に採用されている。岡田氏によると、この3年間で約200社以上の企業に採用されたという。

 ワークスタイル改革を目的とした事例では、フリーアドレス化によるスペースの有効活用を目指したものが多いという。ある企業では、オフィスの移転に合わせてワークスタイルを刷新しようと、セキュリティPCとIP電話を導入し、本人認証にはキーモバイルを使用するという日立とまったく同じ方式で採用されている。また、ワークスタイル改革が主たる目的ではなく、クライアントの運用管理にかかるコストや手間を低減するために、セキュリティPCとCitrix Presentation Serverによるシン・クライアント環境を構築する企業も増えているという。

 その一方で、雇用型ではなく内職副業型のテレワーク事例もある。ある企業は、結婚により通勤できなくなった専門職の女性に対し、自宅のセキュリティPCからオフィスのPCにリモートアクセスするポイント・ポイント型のシン・クライアント ソリューションを導入したという。これは、結婚後の在宅勤務というワークスタイルの変革を実現したのに加え、企業にとっても優秀な人材を確保できるというメリットがもたらされた、これからのテレワークの理想形と言える好例だ。

 ワークスタイル改革に有効なシン・クライアント ソリューションだが、シン・クライアントにはまだまだ改良の余地も大きいと岡田氏は言う。

 「実は、セキュリティPCは、ネットワークがないと何もできないタダの箱になってしまいます。これでは使いにくいという声もあり、オフラインでもテキストを作る程度の機能を持たせ、作成したテキストをセキュアに保管して、実際にターゲットのシステムにつながったときにアップロードする仕組みを開発しました。このように日立自身が使い勝手を確かめながらブラッシュアップを続け、お客様に提供していきたいと考えています」(岡田氏)

image 当日は岡田氏の講演自体もセキュリティPC環境で行われた

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提供:株式会社日立製作所
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2008年3月26日