VMwareやHyper-Vに加え、Virtage――それはクラウドを見据えたサーバ仮想化技術

景気の逆風をむしろ追い風にして普及するサーバ仮想化技術。多くのサーバベンダーがVMwareやHyper-VによるIAサーバの仮想化に取り組む中、高性能/高信頼というメインフレームのDNAを受け継いだサーバ仮想化機構「Virtage(バタージュ)」を加え、ソリューション展開を図るのが日立製作所(以下、日立)である。

» 2010年02月15日 10時00分 公開
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本格的な「サーバ仮想化」時代の到来

 2008年に米国のサブプライムローン問題に端を発した世界的不況は、大手投資会社や自動車メーカーを経営破たんに追い込むなど、各業界の企業に今なお悪影響を与えている。業績が落ち込んだ企業の多くは、経営の構造改革に着手し、コアコンピタンス以外の事業を見直したり、事業に最低限必要な投資以外を抑制したりしてきた。事業を支えるITへの投資も例外ではなく、どの企業もコストを抑えようと努力している。

 そうした中、投資額を抑制するだけでなく、IT基盤の強化にも効果があるとして注目を集めたのが、サーバ仮想化技術だ。この技術は、このところ急速に性能が向上して企業システムの中核を担うようになったIAサーバを論理的に分割し、1台の物理サーバを複数台のサーバとして扱えるようにする。これにより、かつては業務アプリケーションの数以上に用意する必要があった物理サーバ台数の削減が可能になり、IT投資が抑制されることになるわけだ。

 結果として厳しい経済状況がむしろ追い風となり、企業システムへの導入が急速に進むこととなった。当然のことながら、その背景にはサーバ仮想化技術の発展と、仮想化によって複数の業務システムが稼働しても十分な性能を発揮できるハードウェアの進化があるが、いずれにせよ本格的なサーバ仮想化の時代が幕を開けることとなった。

サーバ仮想化の歴史はメインフレームにさかのぼる

 黎明期から普及期へと移行したサーバ仮想化技術だが、一般的には「IAサーバを論理的に仮想化する技術」を指すものと捉えられている。そのため、比較的新しい技術だと考えられがちだが、実はそうではない。サーバ仮想化技術の歴史は、メインフレームの全盛期にさかのぼる。

 1980年代、企業システムの中核にはメインフレームが存在していた。日本語で「汎用機」と呼ばれたように、それこそさまざまな業務システムが稼働していた。メインフレームが複数の業務システムを実行できた仕組みこそ、サーバ仮想化技術の始まりなのだ。

 当時のメインフレームは、数千万円、あるいは1億円以上もする高価なコンピュータであり、業務ごとにメインフレームを導入することなど、大企業でも無理な話だった。とはいえ単一の業務をこなすだけの用途だと、メインフレームは確実にオーバースペックだ。そこで生まれたのが、メインフレームを論理的に分割して、命令やI/Oを仮想的に実行し、複数の業務で利用するという技術。当時のメインフレーマー(メインフレームのメーカー)は、例外なくこうした機能を提供していた。

 この技術は、プロプライエタリなメインフレームをオープン化してダウンサイジングするという名目で1990年代に普及したUNIXサーバにも引き継がれた。つまり、サーバ仮想化技術そのものは、決して新技術というわけではないのだ。

 しかしサーバの主流が、メインフレームと比べて非常に安価なIAサーバに移行した後も、すぐにサーバ仮想化技術が利用されたわけではない。IAサーバはそもそもPCがベースであり、アーキテクチャ自体も単一のシステムを稼働させることが前提である。また、処理性能も十分ではなかったことが理由だった。だが、IAサーバが高性能化するにつれ、ホストOS上にハードウェアをエミュレートするという仮想化ソフトウェアが登場し、その普及とともにIAサーバにもハードウェアが仮想化をサポートする機構が搭載されるようになった。そこからIAサーバの仮想化技術が発展したのは、周知の通りである。

 そしてIAサーバのプロセッサが複数のコアを備えるようになった現在、IAサーバもかつてのメインフレームやUNIXサーバと同様、単一の業務をこなすには性能過剰になりつつある。そうした余力のあるハードウェアリソースを使い切る最適な方法がサーバ仮想化技術だと考えられるようになった。

 サーバ仮想化技術を利用すれば、業務ごとに分かれていた多くのIAサーバを統合できる。仮想サーバ上の業務システムは、物理サーバのスペックの影響を最小化できるので、レガシーなシステム環境を最新のサーバに移行することも可能になる。サーバの台数を削減できれば、投資コストを抑制できる。また仮想化したIAサーバで構築したIT基盤は、社内にプライベートクラウドとして展開することも可能だ。こうしたことからサーバ仮想化の導入数は右肩上がりに急伸している。今後の企業システム形態として話題となっているクラウドコンピューティングも、必要なハードウェアリソースを柔軟に用意できるサーバ仮想化技術が基盤になっている。

高性能/高信頼性というDNAを受け継ぐVirtage

 日立製作所 エンタープライズサーバ事業部 第二サーバ本部 ビジネス統括部の福田劍充 主任技師 日立製作所 エンタープライズサーバ事業部
第二サーバ本部 ビジネス統括部
福田劍充 主任技師

 このように、当たり前になろうとしているサーバ仮想化技術にいち早く着目し、能動的に取り組んできたのが日立だ。ほとんどのサーバベンダーは、仮想化ソフトウェアベンダーやプロセッサベンダーが開発したサーバ仮想化機能を採用するという、いわば受動的な立場だが、日立は違う。メインフレーマーとして培ってきた仮想化技術のノウハウを活用し、独自のサーバ仮想化機構の開発に取り組んだのだ。それが「Virtage」であり、それを標準搭載(BS320のPCI拡張サーバブレードおよびBS2000)したブレードサーバが統合 サービスプラットフォーム「BladeSymphony(ブレードシンフォニー)」である。

 「現在主流のサーバ仮想化技術は、パフォーマンスにオーバーヘッドが掛かります。対してVirtageには、そのオーバーヘッドが非常に小さいという特徴があるのです。Virtageはハードウェアレベルで実装されているため、利用者は仮想化層を意識することなく、物理情報をそのまま使えます」

 そう話すのは、日立製作所 エンタープライズサーバ事業部 第二サーバ本部 ビジネス統括部の福田劍充 主任技師だ。

 「Virtageは、メインフレームやUNIXサーバで仮想化技術を開発してきたノウハウをIAサーバに適用したものです。サーバ仮想化技術では、信頼性が最も懸念される部分ですが、それを重点的に向上させるために、日立が独自に開発しました。仮想環境から直接I/Oにアクセスできる方式なので、ハードウェア透過性が高く、信頼性と性能を物理環境と遜色のないところまで向上させています」(福田氏)

 現在、企業で多く利用される仮想化ソフトウェアというと、ヴイエムウェア社の「VMware」やマイクロソフトの「Hyper-V」が主流だが、Virtageはそれらと根本的な構造が異なっている。とりわけI/Oの仮想化方式に違いがある。

 Virtageでは、仮想サーバがハイパーバイザと仮想化アシスト機構を介して直接I/Oをコントロールする(インテルの分類によると、パススルー方式と呼ばれる方式になる)。それに対し、VMwareは仮想マシンモニタ(VMM)がI/Oをエミュレートし(エミュレーション方式)、Hyper-Vは仮想化機能の管理を司るサービスVMがI/Oをコントロールする(サービスVM方式)。

 エミュレーション方式の場合、ある仮想サーバにI/Oの障害が発生したときに同じ物理サーバ上のすべての仮想サーバに影響が及ぶ恐れがある。サービスVM方式の場合は、サービスVMで障害が発生してしまうと同様にすべての仮想サーバが影響を受ける。ところが柔軟性よりも性能と信頼性を重視するパススルー方式では、各仮想サーバの独立性が高く、I/Oの障害が発生しても影響範囲が極めて小さいのだ。

VMwareとHyper-Vもフルサポート

日立製作所 ソフトウェア事業部 プラットフォームソフトウェア本部 第1プラットフォームソフトウェア設計部の守谷亨 主任技師 日立製作所 ソフトウェア事業部
プラットフォームソフトウェア本部
第1プラットフォームソフトウェア設計部 守谷亨 主任技師

 信頼性と性能に優れたVirtageだが、日立は何も“Virtage一辺倒”というわけではない。方式が違うため、それぞれのサーバ仮想化技術には一長一短があるというのが、日立の見解だ。これまで述べてきたように信頼性と性能を期待するのなら「Virtage」、柔軟性や運用性で選ぶのなら「VMware」、価格と導入容易性を重視するのなら「Hyper-V」というようにそれぞれのポジショニングを設定。目的のシステムに最適な仮想化技術の利用を提案している。

 「VMwareでは、ハードウェア認証の部分でヴイエムウェアと密接に協業しています。例えばサーバとストレージを接続するHBA(Host Bus Adapter)といった要となる部分を日立が自製し、その認証を取得してVMwareの信頼性を高めています。VMwareは仮想化環境の管理・運用を支援する機能が優れており、日立が提供するクラウドサービスの一部ではVMwareを利用しています」と、日立製作所 ソフトウェア事業部 プラットフォームソフトウェア本部 第1プラットフォームソフトウェア設計部の守谷亨 主任技師は話す。


日立製作所 ソフトウェア事業部 プラットフォームソフトウェア本部 第1プラットフォームソフトウェア設計部 高以良 仁 主任技師 日立製作所 ソフトウェア事業部
プラットフォームソフトウェア本部
第1プラットフォームソフトウェア設計部 高以良 仁 主任技師

 併せてHyper-Vについても日立では、「マイクロソフトと協力して各種の検証を実施しており、それをホワイトペーパーとして公開しています。運用管理の面でも、当社の統合システム運用管理「JP1」とマイクロソフトの「Microsoft System Center」との連携を進め、物理サーバと仮想サーバの混在環境におけるシステムの安定稼働とリソースの有効活用を実現しようと、取り組みを進めています」(日立製作所 ソフトウェア事業部 プラットフォームソフトウェア本部 第1プラットフォームソフトウェア設計部 高以良 仁 主任技師)としている。

 さらにユニークなのが、Virtageの仮想サーバ上にほかの仮想化技術を導入するという使い方だ。ハードウェア透過性が高いVirtageならではの取り組みだが、その一例として現在、クラウドコンピューティングにおける基盤として「Hype-V on Virtage」を技術開発しているという。これはまず、クラウド事業者のハードウェア(BladeSymphony)をVirtageで論理分割(LPAR:Logical PARtitioning)し、クラウド利用者はその論理分割されたサーバ上にHyper-Vを導入して、さらに細かい単位の仮想サーバ環境を構築するという手法。「Virtageを有する日立にしかできない、サーバ仮想化の普及を後押しする新技術です」福田氏は胸を張る。

クラウド環境の柔軟性を向上する「2階層サーバ仮想化技術」の応用例 クラウド環境の柔軟性を向上する「2階層サーバ仮想化技術」の応用例

「仮想化工房」――仮想化提案の支援窓口

 サーバ仮想化技術に関しての日立ならではの特筆すべき取り組みもある。その一つが7年間のハードウェア保守サービスを提供する「ロングライフサポートサービス」だ。

 「従来の5年間のハードウェア保守サービスでは、ユーザー企業のシステムライフサイクルに必ずしも十分に対応できませんでした。日立のBladeSymphonyは、省電力、冷却、温度管理などの自社技術と高信頼・高効率部品の選定によって長寿命を実現しています。7年間のハードウェア保守サービスによって、ユーザー企業のライフサイクルコストを低減できると考えています」(福田氏)

 もう1つ、大きな取り組みと言えるのが、「仮想化工房」という仮想化提案支援窓口を設置していることだ。これは、日立がこれまでに蓄積してきたサーバ仮想化のナレッジを販売パートナーや日立の営業・SE部隊にフィードバックし、サーバ仮想化の導入におけるシステム構成案を作成したり、運用を間接的に支援したりしようというもの。東京・品川にあるハーモニアス・コンピテンス・センターに常設の仮想化デモ環境を用意するとともに、同センターにおいてサーバ仮想化に関してのセミナーも開催している。

 VMwareやHyper-Vなどメジャーな仮想化ソフトウェアも手厚くサポートするとともに、日本でIAサーバの仮想化技術を開発している唯一のサーバベンダーである日立。特にIT基盤のプライベートクラウド化を図る企業にとって、サーバ仮想化を導入する際の心強いパートナーと言えるだろう。

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提供:株式会社日立製作所
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2010年3月16日