日本IBMでLotusビジネスを技術的な側面から推進する部署が、Lotusテクニカル・セールス&サービスだ。ここには先進的かつヘビーなLotusユーザーがそろい、コラボレーションツールを駆使したスマートな働き方を実践しているという。それはまさに、近未来のワークスタイルを映し出している。
「日本アイ・ビー・エム(日本IBM) ソフトウェア事業 Lotusテクニカル・セールス&サービス」という部署では、Lotusブランドの製品やサービスを顧客に提案する際に技術的な説明を行うとともに、Lotus事業部の営業活動を支援しているという。
テクニカル・セールス以外にも、Lotus製品関連のワークショップの開催から新製品発表の準備、ユーザーに対するトラブル対応まで、担当する業務は幅広い。サービス部隊がLotus製品を提案するための情報提供や、カスタマーサポートセンターの顧客満足度を上げるための品質改善も、業務の一部だ。テクニカル・セールス&サービスという部署はLotusに加え、WebSphere、Rational、Tivoli、Information Managementの各ソフトウェアブランドにも設けられている。
Lotusで同部門を統括するのが、日本IBM ソフトウェア事業 Lotusテクニカル・セールス&サービス 部長の牧裕一朗氏だ。旧Lotusと統合した際の2001年に日本IBMに入社し、ロータス時代の1995年から15年以上にわたりLotus関連の業務を担当してきた。
「深夜に国外のメンバーとディスカッションすることもありますが、わたしの仕事は朝、自宅で電子メールを処理することから始まります。仕事上のステークホルダーが多岐にわたるため、オフィスの自席が仕事の拠点です。営業部門の責任者とミーティングをする場合は会議室に行きますが、それ以外は業務情報や共有事項を、自席から部署のメンバーに伝達しています」(牧氏)
そんな牧氏の一連の業務を円滑にしているのが、ソーシャルソフトウェア「IBM Lotus Connections」だ。Lotus Connectionsは、企業内外の情報共有基盤となるブログやコミュニティーサイトなどを作成できるソーシャルソフトウェアのスイート製品。牧氏の部署では、この機能を活用した専用のコミュニティースペースを用意し、社内の情報共有に役立てている。
「日本IBMでは、総務や人事などの部署から回覧指示のある情報がマネジャーあてにメールで届きます。他部署ではそのメールをマネジャーがメンバーに転送していると思いますが、われわれの部署では『日本IBMの情報』『米IBMの情報』『Lotusブランドに関する情報』といったカテゴリーごと情報を分け、Lotus Connections上のアクティビティーで共有しています。各メンバーの受信ボックスがメールで溢れることはありません」(牧氏)
多くの企業において、必要なメンバーに情報を伝達する仕分け作業は、マネジャーの担当業務だろう。必要なメンバーのあて先を1つずつ指定して電子メールを送るのは、マネジャーにとって骨の折れる仕事だが、牧氏にとっては負担の掛かる仕事ではない。Lotus Notesに届いた電子メールをLotus Connectionsのコミュニティースペースに作られた専用フォルダにドラッグ&ドロップすれば、即座にメンバーと共有できるからだ。専用フォルダに情報が集約されているため、必要があれば迷わずそこをアクセスすればよくなったと、メンバーからの評判も良い。
メンバーへの仕事の指示にも、Lotusのツールを活用している。例えば顧客に緊急のトラブルが発生し、対応の担当者を指定する必要があるとしよう。そのためには、メンバーが今どこにいてどんな仕事に取り掛かっているのかを早急に把握しなければならない。それを実現するのが、インスタントメッセージングや在席確認、Web会議の機能を持つ「IBM Lotus Sametime」だ。
その場合牧氏は、Lotus Sametime経由でメンバーのステータスを確認。トラブルに対応できる適任者を見つけ、ただちに業務内容を伝える。Lotus Sametimeではメンバーの外出状況も一目で分かるため、連絡が滞ることはない。「部署のメンバーには、Sametimeへのログインを徹底させています。最近はLotus Connections内のマイクロブログ機能やインターネット上のTwitterの“つぶやき”も見て、メンバーの業務把握に努めています」(牧氏)
Lotusテクニカル・セールス&サービスに所属するメンバーも、Lotusのツールを徹底的に活用しているようだ。牧氏直属の森谷直哉氏は現在、「次世代コラボレーション・エバンジェリスト」という役割を担っている。
主な仕事は、トレンドを捉えながらコラボレーションというテーマに沿って中長期的なコミュニケーションインフラの方向性を顧客と話し合うことや、提案活動の支援である。Lotusソフトウェアの最新の製品動向やロードマップ、研究開発部門の先進的な技術の紹介を通して、この分野におけるIBMビジョンを広く伝えることも重要な仕事の1つである。
IBMグローバルの次世代コラボレーション・エバンジェリストチームのメンバーである森谷氏は、日本IBM Lotusテクニカル・セールス&サービス以外にも、組織上のレポートラインを持っており、米IBM側の情報を日本で共有する役割も果たしている。
森谷氏は「グローバルのエバンジェリストチームでは、2週間に1回、定例ミーティングが開催され、最新の戦略や製品動向も議題となります。そのメンバーに牧は入っていません。牧をはじめとする日本のマネジャーとの情報共有は不可欠であり、そのためのコミュニティースペースをLotus Connectionsで作っています」と話す。ここにミーティングの議事録や関連メール・資料、あるいは活動メモを残すことで、情報や状況の共有を進めているのだ。
「Lotus Connectionsでは、必要なメンバーだけを集め、アクセス制御を設定したコミュニティースペースを簡単に作成できます。そこではスレッド型の掲示板で意見を交換したり、アクティビティーでタスクを管理したりできます。業務のトピックごとにアクティビティーを作っており、その数は常に数十になっています。自分が取りかかるべきタスクを優先度順や締切日順で横断的に一覧表示したり、Lotus Notesのカレンダーに重ね合わせて視覚的に把握し予定を調整したりしています」(森谷氏)
複数のメンバーでチームを組んで仕事をする場合、タスク管理に電子メールと添付ファイルが使われることが少なくない。だが、最新のファイルを把握することが難しく、肝心な情報がプレゼンテーション資料やスプレッドシートにしか記載されていない場合もある。従来のタスク管理では、「誰がいつまでに何をすべきか」という肝心な情報が伝わりにくく、確実なフォローも難しい。状況や経緯の把握という観点でも、電子メールではその整理が容易ではない。チームのメンバーが増減した場合であっても、アクティビティーにそれが残っていればスムーズに引き継ぎができる。コラボレーションツールのLotus Connectionsを使うことで、情報や分担を効率的に浸透させられるのだ。
端末や場所を選ばずにいつでも情報にアクセスできる点も、Lotusツールの優位点である。
「業務の確認は会社ではLotus Notesを、移動中にはiPhoneを使っています。Lotus Notes Travelerを使うことで、iPhone上でもパソコンのNotes環境と同様に業務とプライベートのスケジュールを重ねて閲覧・調整できます。Lotus ConnectionsのiPhone用画面でアクティビティーも確認できるので、オフィスの外にいるときも同じタスクリストを参照できるわけです。また、テクニカル・セールスという分野に特化した業務上、資料作成や情報収集に多くの時間を費やします。完成したコンテンツはメールで送らず、Lotus Connectionsのファイル共有機能にアップロードしておき、必要であれば通知のメールだけを送ります。資料の閲覧者がコメントも残せる機能もあるので、それを反映させ、資料の完成度を高めています。コメント以外にも、ダウンロードした人や数などのフィードバックが得られます。数が増えると励みにもなります。情報収集の過程で見つけた情報源は必ず共有ブックマークとして公開することで、自分がつかまらなくとも誰もが同じ情報にたどりつけるのです。こうした仕組みを使い、自分の仕事時間の確保にもつなげています」(森谷氏)
Lotus Connectionsによって、Lotusテクニカル・セールス&サービス部門ではスマートな働き方が定着したという。だが、定着した働き方を変えることは意識の変革を伴う。特にソーシャルソフトウェアを徹底的に活用し始めたのは、ここ数年だ。現在、その働き方を日本IBM全社に浸透させるため、Lotus製品の活用を促進する活動にも取り組んでいる。
具体的には「添付ファイル送っていた人にリンクだけを送り返したり、社内の打ち合わせでは積極的に自分のデスクトップ環境を見せたり、Lotusツールを実際に使ってみせて解説する」(森谷氏)といった具合だ。体感することで「気づき」を持ってもらい、自ら行動の変革を促すという形だ。またエグゼクティブ(経営層)がLotusツールを使えるようにする“お助けチーム”の活動も並行して進めている。「企業のトップが使っていれば、社員は“自分も取り組まなければ”という意識を持つでしょう。今では社内ブログで自分の声を届けているエグゼクティブも少なくないです。こうした活動を通して日本IBMはもちろん、お客様やパートナー様、そしてさらに広くLotusツールを浸透させていこうと考えているのです」(森谷氏)
その活動の主役の1つはコラボレーション機能をSaaS(サービスとしてのソフトウェア)型で提供する「IBM LotusLive」だ。「ファイルを共有しながらWeb会議をするなど、エグゼクティブに実際にLotusLiveを使わせることで、業務の効率が上がることを体感してもらいます。その効果がトップダウンで社内に伝わると、全社員によるお客様そしてパートナー様とのコミュニケーションへの利用も進みます。その効果を狙い、テクニカル・セールスのメンバーを各エグゼクティブのもとへ派遣しているのです」(牧氏)
LotusLiveを入り口にすることで、外部との情報共有も容易に実現する。企業間コラボレーションを想定したLotusLiveでは、アップロードした資料について、取引先の企業や顧客企業とも共有できる特徴を持つ。「Lotus Connectionsによる社内のファイル共有やタスク管理とまったく同じ仕組みを社外とのやりとりに適用できます。会社の垣根を越えたコラボレーション環境が実現します」(森谷氏)
「IBMは現在クラウドコンピューティングに注力していますが、クラウドと既存のオンプレミス(社内運用)型システムの両方を適材適所で使い分けることが重要です。LotusLiveのWeb会議やファイル共有、タスク管理などの機能を試験的に使い、実際に社内に展開する際にはオンプレミス型のLotus Connectionsを使う。外部とのコラボレーションでLotusLiveとLotus Connectionsを併せて活用していただくことで、企業に新たなワークスタイルがもたらされることを望んでいます」(牧氏)
IBMでは、LotusLiveとLotus Connections、つまりクラウドと社内システムをシームレスに利用するための機能強化や、対応するモバイル端末の拡充も視野に入れている。
「使い始めてしまうと、人や情報との接点の持ち方が変わり、自分の働き方もガラッと変わります」
森谷氏はLotusの魅力をこう語る。Lotusがもたらす先進的な働き方――それは近い将来にわれわれが体験する新たなワークスタイルなのかもしれない。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2010年3月19日