2010年6月、日立の統合システム運用管理「JP1」の最新版「JP1 V9.1」が発売された。バージョンアップでは、情報システムへの投資コスト削減効果が期待できる仮想環境を強力に支援する新機能が目玉になっている。
長引く不況の中、企業のIT投資は相変わらず抑制傾向にある。しかし、IT設備や機器には、減価償却のタイミングや機材そのもののライフサイクルがあるため、いつまでも投資を渋ることはできない。そうした中、コスト削減効果が見込める仮想化技術が注目を集め、サーバ仮想化やクライアント仮想化の導入事例は急速に増えている。
しかし、仮想化技術を導入したとしても、手放しでコスト削減効果が得られるわけではない。ハードウェアなどの物理環境に加え、仮想化された環境の運用管理も行う必要があるので、徹底したコストの効率化を求めるには仮想環境を想定した運用管理を実践する必要がある。
こうした、仮想環境における運用管理の課題を解決するために、運用管理ソフトウェアで国内トップクラスの実績を誇る日立の「JP1」がリビジョンアップした。2009年に発売された「JP1 V9」では、より複雑化・大規模化したシステムに対するITリソースの効率化、および運用管理を担当する情報システム部門の業務効率化を実現するための機能が追加されたが、新バージョン「JP1 V9.1」では、さらなる強化を図った。また、業務の効率化については、情報システム部門だけでなく、業務システムを利用するユーザー部門も含めた運用業務の最適化を実現する機能が追加された。
仮想環境においてITリソースを効率化するには、従来は運用管理担当者が仮想化ソフトウェアや運用管理ソフトウェアの各種ツールを併用して利用実績を調べたり、リソースの割り当て/設定/配備を見直したりしながら、手作業で行うことが多かった。そのため担当者には大きな負担がかかる一方、ITリソースが最適化できるかどうかは、結局その担当者の力量に左右されるという、不確かなものだった。しかも、“その都度の対応”になるため、目先の最適化を実施することが精一杯であり、中長期に渡ったITリソースの最適化を計画することは非常に困難だった。
日立がJP1 V9.1の機能強化で目指したのは、そうした課題解決に取り組める機能を用意すること。これが、ITリソースプールの運用サイクル全体をワンストップで一元管理するとともに、過去の利用実績と今後の利用計画を把握・分析し、将来にわたって最適化を実現できる新機能が追加された背景になる。
この課題を解決するために用意されたのが、「JP1/IT Resource Management(JP1/ITRM)」という新製品である。このツールでは、空きリソースの検索、リソースの予約、サーバの配備、利用実績の確認・見直しという運用サイクル全般にわたる一連の流れを一元的に管理できる機能を提供する。このため、別々のツールを使う必要がなくなるため、運用管理者にかかる負荷を軽減することができる。さらに、ITリソースが必要になったときすぐに利用できるようにリソースを準備しておくプロビジョニングを自動実行したり、実績に応じてマイグレーションやチューニングを実行したりといったこともできるようになる。
また、検索から準備期間、実際の利用期間、予約状況などが一目で把握できる画面構成になっており、Windows、Linux、UNIXなどの各種OS、VMware、Hyper-V、Virtageなどの各種仮想環境、さらには仮想化と非仮想化の混在環境などヘテロな環境でも統一したオペレーションで操作・運用管理できるという特長がある。
中長期で必要なITリソースの保有量の把握が難しいという課題もある。従来の運用管理では、現在の利用状況は把握できるものの履歴がないため傾向をつかみづらかった。そこで、JP1/ITRMでは、ITリソースの使用実績に加え、リソース使用計画も可視化できる機能が用意された。中長期的な観点でITリソース保有量の削減・拡張計画を立案する際に役立てることが可能だ。
JP1/ITRMの優れた点はまだある。ITリソースを追加・増設するたびに、あるいはITリソースの構成が変わるたびに、エージェントをインストールしたり、設定作業を行ったりするのは、手間のかかる作業だが、JP1/ITRMならばITリソースの検出から制御までの一連の管理をエージェントレスで実行できる。ITリソースを変更しても、新たに設定しなおすことなく実績を確認可能だ。
仮想環境でさらに問題になるのが、システム構成を変更した際に影響範囲を調査するのに時間がかかることだ。構成が複雑になると、影響範囲の関連を追いきれない。システム構成やサーバとアプリケーションの関連を図式化して管理していても、そのメンテナンス作業で、大変な思いをすることになる。
このような課題を解決するのが、システム構成を自動的に検出し、それを可視化する機能を備えた新製品「JP1/Integrated Management - Universal CMDB(JP1/IM - UCMDB)」だ。このツールを使えば、ハードウェアやソフトウェアの構成変更を実施する際に、事前に影響範囲を確認できるようになる。ジョブ管理製品「JP1/Automatic Job Management System 3(JP1/AJS3)」に対応したアダプタ「JP1/Integrated Management - Universal CMDB Adapter for JP1/AJS3」を導入すれば、JP1/AJS3で管理している業務(ジョブネット)構成を含む影響範囲を、事前に確認できる。
JP1 V9.1には、ITリソースの効率化だけでなく、業務を効率化するための新機能も追加されている。仮想化技術の導入によって、サーバ集約やシステム統合を実現し、形の上で効率化はできたものの、実際に運用管理業務を行う担当者の負担は、むしろ上がっているという現状がある。これは、相変わらず部門間の調整・依頼に対応しければならないからだ。
例えば、営業部門で今日中に売上集計データを欲しいというニーズがあったとしよう。売上集計データが入手できるのは夜間バッチの実行が終わった翌日以降になってしまう。そこで、営業部門は通常と異なるタイミングでの業務実行を情報システム部門に依頼する。しかし、通常は夜間バッチで集計しているので、情報システム部門は他の業務の影響を調整しながら対応しなければならない。こういったイレギュラーな仕事が頻繁に発生すると、情報システム部門の負担は増える一方だ。
そこで、JP1 V9.1には情報システム部門の運用管理担当者の負担を軽減する新しい機能が用意された。「JP1/Automatic Job Management System 3 - User Job Operation(JP1/AJS3 - UJO)」がそれだ。このツールを利用し、運用管理担当者がユーザー部門の業務担当者に業務を公開、決められた範囲内で業務に必要な管理権限を付与すれば、業務担当者自身が必要な業務を実行できるようになる。
この製品は、運用管理担当者を対象にした一連のJP1製品群とは異なり、ユーザー部門の利用を想定しているため、業務担当者にとって親しみやすく分かりやすい画面が用意されているのが特徴だ。メイン画面から機能を選択するだけで、業務の予約、実行・監視、結果の確認などのオペレーションが行える。
これらの新製品に加え、JP1 V9.1では既存のJP1ユーザーから寄せられた要望を中心に、数多くの機能拡張・改良が実施されている。例えば「JP1/Integrated Management - System Center Virtual Machine Manager(JP1/IM - SCVMM)」もその1つだ。このツールは、マイクロソフトの仮想化ソフトウェアであるHyper-V環境を制御するためのもので、統合コンソール製品「JP1/Integrated Management」と連携するためのテンプレートが用意されている。この環境にITリソース管理製品であるJP1/ITRMを追加すれば、Hyper-V環境を含めたITリソースの割り当て・予約などが容易に行える。
また、バックアップ製品「JP1/VERITAS」は、重複するデータをセグメント単位でバックアップ対象外とする重複排除機能を搭載。バックアップ先ストレージの容量を削減したり、バックアップ実行時のネットワーク負荷を軽減したりする効果が得られるようになった。
JP1 V9.1の関連製品は、2010年6月より順次出荷が開始されている。JP1/ITRMは2010年9月に出荷開始予定だが、2010年9月8日に東京ミッドタウンで開催予定の「Hitachi Open Middleware World(JP1 Day)」では、JP1/ITRMのデモンストレーションも行われる予定だ。仮想環境に最適な運用管理体制構築を目指す企業担当者は、足を運んではいかがだろうか。
※記事中の製品仕様および画面は開発中のものです。
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提供:株式会社日立製作所
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2010年9月8日