ただの「データ保管」では事業継続できない――データ復旧まで視野に入れた災害対策システムとは?中堅中小企業に贈るバックアップガイド【基礎編】

東日本大震災をきっかけに、多くの企業が不測の事態に備えて事業を継続するためのさまざまな施策に取り組んでいる。その取り掛かりとして最初に見直すべきなのが、データのバックアップとリカバリの仕組みだ。

» 2013年02月18日 00時00分 公開
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障害対策から災害対策へ

 企業のビジネスがITに強く依存する現在、不測の事態が発生しても事業を継続させるには、最低でもビジネスに関係するデータを消失しないことが必要だ。データを保護する重要性は、ビジネスにITが利用されるようになった古い時代から説かれてきたことであり、誰もがその必要性を認識している。それを実現するために、データをバックアップするさまざまな仕組みが登場し、多くの企業に導入されてきた。

 ところが、東日本大震災とその後の電力不足により、従来の仕組みでは不十分であることが明らかになった。なぜなら、従来のバックアップは、主にハードウェアやソフトウェアの障害対策を想定したものだからだ。

 「障害」と「災害」の違いを考えてみよう。ハードウェアやソフトウェアに起因する障害なら、同じロケーションにバックアップしておいたデータから復旧すれば済む。しかし地震や火災といった災害の場合、オフィスごと、引いては事業所ごと破壊される可能性がある。「うちは大丈夫だ」と思う向きもあるかもしれない。しかし煙草の火にスプリンクラーが反応してしまい、水ぬれによってバックアップサーバが故障する可能性だってある。これも立派な「災害」と言えるのだ。

 災害対策というと、従来は大企業に求められる取り組みと考えられがちだった。しかし、データの価値は、企業規模によって変わるわけではない。むしろ日々の業務データがすぐに収益に直結する中堅中小企業のほうが、情報への依存度が高いといってもよい。多くの企業は、ある程度のデータ保全対策をしているだろうが、災害時のデータ復旧までも視野に入れ環境を整えている中堅中小企業はどれだけあるだろうか? 障害対策から災害対策へ――これが今、中堅中小企業に求められていることなのだ。

事例で紹介 事業継続を視野に入れた災害対策システムとは?

 災害時にも業務を継続するために、どのような手法があるのだろうか? ここでは、本番系サーバのデータを遠隔地の待機系サーバに複製(レプリケーション)する「遠隔サーバレプリケーション」というソリューションを取り上げたい。

 遠隔サーバレプリケーションでは、本番サーバが停止しても、手動で待機系のサーバに切り替えられる。データは本番系サーバからほぼリアルタイムに複製されているため、データ消失のリスクは最小限だ。

障害発生時には手動で待機系サーバに切り替える。比較的導入時の負担が少なく、またテープバックアップよりも迅速にシステムを復旧できる

 ここで、ある中堅企業の事例を紹介しよう。宮城県仙台市の食品商社であるサトー商会では、東日本大震災に伴う1週間の停電によって、本社の主要な業務が停止してしまった。その経験から、災害対策システムの構築に着手したという。

 本社から離れた別拠点に待機系サーバを設置し、主要な業務機能(EDI受注機能・専用伝票機能)をレプリケーションすることとした。本番系での日次バックアップが完了した時点で複製することとし、またデータの変更部分のみを転送する仕組みにしたことで、ネットワーク回線費用も低減できた。

 サトー商会のシステムは「CA ARCserve Replication」を用いた、NECのソリューションである。一般に初期導入コストは約100万円から(サーバあるいはNASを2台とバックアップソフトウェア)となるが、既存のハードウェアを活用できるのであれば、待機系のサーバ(あるいはNAS)とバックアップソフトウェアだけを用意すればよいのでさらに導入コストは下がる。

 いいことずくめのように思える遠隔サーバレプリケーションだが、採用するには1つの条件がある。それは「遠隔地に拠点が必要」ということだ。

レプリケーション先にはクラウドホスティングも利用できる

 複数の事業所を持つ企業であれば問題はない。だが単一のオフィスで事業を営む中小企業にとって、バックアップのためだけに拠点を増やすのは、現実的ではない。

 そこで登場する選択肢が「クラウド」である。待機系サーバをクラウドにホスティングできれば、わざわざ拠点を追加する必要はない。またハードウェアの購入やメンテナンスも不要だ。

 しかし業務データをクラウドに置くことについては、信頼性やセキュリティの観点から、不安に感じる企業も多いだろう。

 こう言った課題に対し、NECではデータバックアップ先としての待機系サーバをBIGLOBEクラウドホスティング上に構築するソリューションを提供している。NECによって検証済みの環境情報が公開されており、ユーザーは手順書に従って設定するだけで環境を構築できる。

 初期導入の際、自社側に設置するNASとバックアップソフトウェアで約60万円が掛かるほか、サービス利用料として月額約2万円(500ギガバイト)が必要となるが、物理的に待機系サーバを用意するよりも、初期費用を抑えられる。BIGLOBEクラウドホスティングは国内のデータセンターで運用されており、SLA(サービスレベルアグリーメント)も99.99%を謳っている。より信頼性の高い環境を自前で用意する手間やコストを考えれば、有効な選択肢と言えるだろう。

データバックアップ先として待機系のサーバをクラウドに置くことで、導入および運用の負荷とコストを低減できる

何もしていないなら――まずは単体バックアップから取り組もう

 ここまで迅速なデータ復旧まで視野に入れたソリューションを紹介してきたが、「実は、通常のバックアップすら十分ではない……」という企業もあることだろう。

 そのような企業に、バックアップの第一歩としてお勧めしたいのが、最も小規模、かつ導入が容易なソリューション「単体バックアップ」だ。これは、テープやRDX(リムーバブルハードディスク)などのメディアに定期的にバックアップを実行し、耐火金庫に保管したりメディアを遠隔地に搬送したりしてデータを保護するというもの。必要なコストは、使用するメディアと搬送方法にもよるが、約20万円から。比較的安価に導入できる。

 例えば、1日1回など情報の更新タイミングに合わせてテープメディアにバックアップし、それを業務終了後に耐火金庫に保管して、週に1回遠隔地の倉庫に搬送するというオペレーションを行う。有事の際には、メディアにあるデータをリストアして復旧する。すでにテープバックアップなどを運用している企業では、データ搬送が加わるだけで、ディザスタリカバリの仕組みを構築できるというメリットがある。

 ただし、課題も少なくない。メディア搬送をマニュアル通りに行えるかという運用リスク、リストアの遅延や搬送頻度が低いのも課題だ。また、被災状況によってはシステム再構築に必要なサーバなどを別途用意しなければならないので、急いで復旧したいシステムには適さない。だが災害時のデータ復旧に無防備な状態と比べれば、業務の継続性には雲泥の差がある。

複数システムの事業継続を重視したソリューションとは?

 今回、遠隔サーバレプリケーションを中心に、クラウドや単体バックアップなどを絡めて中堅中小企業に適した災害対策システムを紹介してきた。

 だがこれらも、あらゆるニーズに応えられるソリューションというわけではない。例えば、待機系サーバへの切り替えが手動のため、ミッションクリティカルなシステムには必ずしも適さないという課題がある。また、管理がいくら容易でも、サーバ単位で設定しなければならないので、サーバ台数が多いシステムでは対応が難しいこともある。

 次回の応用編では、複数システムのディザスタリカバリを想定した「統合・遠隔バックアップ」、および業務継続の即時性を重視した「遠隔クラスタ」などを紹介しよう。

※ 文中の価格には、構築費用・ネットワーク環境費用等は含まれません

今回の記事で紹介したソリューションの位置づけ

アナリストの目――ノークリサーチ シニアアナリスト 岩上由高氏

「データをコピーしておく」だけでは自社のビジネスは守れない

岩上由高氏

 グラフ1は年商500億円未満の中堅・中小企業に対して「事業継続を実現するためのIT活用の状況」を尋ねた結果である。なかでも年商50億円以上では、実に60%から70%以上もの企業がITによる事業継続の「担当/計画を明確にする」と回答している。

 この意識の変化は、中堅・中小企業のデータ保全策にも影響を及ぼしている。従来は「手作業でコピーして終わり」であることも多かったが、東日本大震災以降は事業継続計画や担当者を明確化した上で「確実な保管と復旧を考えたデータ保全」に取り組みつつあると考えられる。

グラフ1:事業継続を実現するためのIT活用の状況(クリックすると拡大)

 グラフ2もご覧いただきたい。年商500億円未満の中堅・中小企業に対して「東日本大震災以降、事業継続を実現するためのIT活用に必要な費用に関する考え方に生じた変化」を尋ねた結果である。

グラフ2:東日本大震災以降、事業継続を実現するためのIT活用に必要な費用に関する考え方に生じた変化(クリックすると拡大)

 年商50億円以上の企業で見ると「以前に想定していたよりも高額の費用が必要」といった回答は約30%から40%に達している。事業継続の実現には相応のコストがかかることを中堅・中小企業が認識しつつあるわけだ。自社オフィス内でのデータ保管には地震だけでなく火災/停電/不正侵入といったリスクも伴うため、データセンターでの保管が検討されるケースもある。単にコストを抑えるだけでなく、総合的な観点で事業継続を考える中堅・中小企業が増えてきたといえるだろう。

※出典:ノークリサーチ Quarterly Report特別篇1 「中堅・中小企業の事業継続投資に関する変化と今後」(ノークリサーチ)(グラフ1,2とも)

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日