高密度サーバ市場にIBMが放つ「NeXtScale System」の可能性データセンター基盤の新潮流

大量のx86高密度サーバを必要とするデータセンター市場に向けて、IBMは新たなシステム製品ファミリー「IBM NeXtScale System」を立ち上げた。「シンプル」「自由自在」「スケール」がコンセプトの新製品は、IBM流のこだわりの設計思想を取り入れつつも、極めてオープンな運用環境と将来に備えた拡張性を実現している。

» 2013年10月21日 10時00分 公開
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IBMらしくない? 新たなラインアップ

 日本IBMが9月に発表した「IBM NeXtScale System」は、大量のx86サーバを必要とするデータセンター市場に向けて開発された新たなシステム製品ファミリーだ。

 x86サーバ市場は近年、仮想化やクラウド化の進展によって、かつてみられたような成長ペースが見られなくなったといわれる。ただ、この傾向は企業のITインフラ領域におけるものであり、むしろデータセンター事業者やクラウドサービスプロバイダーの領域では今も多くの物理サーバが必要とされている。

日本IBM システムx製品事業部 ビジネス開発 System x Specialty担当部長 Systems & Technology エバンジェリスト 東根作成英氏

 「データセンターでは企業顧客のディザスタリカバリやBCPへの対応に伴うIT基盤の強化ニーズに加え、ソーシャル、モバイル、ビッグデータに代表される『第3のプラットフォーム』やHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)、グリッドコンピューティングの技術を生かしたテクニカルコンピューティングといった新たなニーズへ対応すべく、限られたスペースで効率的に大量のワークロードを処理できるインフラが求められています。当社ではシンプルかつ柔軟でありながら、拡張性にも優れたシステムを開発し、データセンターのお客様に新たな価値をご提供したいと考えています」(システムx製品事業部 ビジネス開発 System x Specialty担当部長 Systems & Technology エバンジェリストの東根作成英氏)

 日本IBMは、これまでSystem xやミッションクリティカル向けのPowerファミリー、同社の豊富な知見を詰め込んだハードウェア、Flex SystemやFlex Systemをベースとしたエキスパートインテグレーテッドシステム「PureSystems」などに代表される信頼性に優れたシステム製品を企業ユーザー向けに展開してきた。NeXtScale Systemは、こうした製品で培ったノウハウを取り入れながらも、データセンターユーザーが求めるシンプルで自由度の高いシステムを実現するために、徹底したオープンスタンダードのアーキテクチャを採用している点が、これまでのIBM製品ではあまりみられない特徴となっている。

 「純粋にオープンな技術とすることで、データセンターのユーザーが自身のスキルセットを生かして必要としている構成を容易に実現できるようにしています。従来あったブレード型サーバはアプリケーション実行環境として統合されたシステムを志向しているため、シャーシごとにネットワークスイッチやストレージをも統合することが可能ですが、逆に同じ筐体の中の構成は統一しなければならないといった制約を伴いました。NeXtScale Systemはこの制約を廃し、将来において必要とされるワークロードも意識したシステムを容易に構築できるよう汎用性に優れたソリューションとなっており、これは他社には無い特徴といえます」(東根作氏)

「シンプル」「自由自在」「スケール」の理由

 IBM NeXtScale Systemは、最新の「インテル Xeon プロセッサー E5-2600 v2 ファミリー」を採用した1Uハーフサイズのコンピュート(サーバ)・ノード「IBM NeXtScale nx360 M4」、業界標準の19型ラックにIBM NeXtScale nx360 M4を最大12ノード収容可能な6Uサイズのエンクロージャー「NeXtScale n1200」を基本構成としている。

 IBM NeXtScale nx360 M4は、1ノードあたり最大2ソケット(24コア)を搭載でき、1Uサイズの従来型サーバに比べて約3倍のコア集約率を実現した。標準の19型・42Uのラックにフル実装した場合は最大84ノード・2016コアという極めて高密度なサーバ・ノードの実装を可能にしている。また、高密度でありながら、最高速のプロセッサーを搭載することが可能となっている。性能へのこだわりと高密度設計が、高い設計能力で両立しているところが特徴的である。

IBM NeXtScale nx360 M4

 フロント部に拡張I/Oインタフェースとして標準のPCI Express 3.0スロット、メザニンカードコネクタ、1GbEポートを備え、ファイバチャネル(FC)やInfiniBand接続も含めたネットワークケーブル類を前面部に集約できるようにしている。

 ドライブベイは、3.5型HDD×1/2.5型HDD×2/1.8型SSD×4のいずれかを選択でき、Hadoopのような大容量データの分散処理やリアルタイムコンピューティングなどのさまざまなワークロードに対応することが可能だ。システム管理ではSystem xで実績のある統合管理モジュール「IBM Integrated Management Module 2(IMM2)」を搭載し、業界標準のIntelligent Platform Management Interface(IPMI 2.0)に対応、HPCでのPlatform LSF、Platform HPC等の各種スケジューラーを利用することができる。

 1Uハーフという極めて限られたスペースでありながらも、データセンターのコールドアイル/ホットアイルによる効率的な冷却のために、膨大なシミュレーション時間に基づくエアフロー設計が成されている。CPUの脇に整流板を配置して適切なエアフローを確保しつつ、CPU と直結されるPCI Expressのスロットをソケット近くに配置するなど高効率の処理能力との両立を実現し、IBMが伝統的に重視している徹底したハードウェア設計へのこだわりが強く反映されている点がユニークといえよう。

 さらに、nx360 M4ノードに対応して用途に応じた拡張性を提供するための「Native Expansion(NeX)」というオプションも提供する(2013年第4四半期の予定)。

 NeXではまず、ストレージの拡張コンポーネント「Storage NeX」、PCI Expressの拡張コンポーネント「Accelerator NeX」の2種類が用意される。Storage NeXでは7基のドライブベイやSASケーブル、HDDを備える。nx360 M4ノードの1基のドライブベイを合わせると、最大8基の3.5型ドライブベイを備え、最大で32テラバイトのストレージが搭載できる計算となる。Accelerator NeXでは標準のそれを置き換えるライザーカードが提供され、フルサイズ・フルレングスのPCI Expressスロットが2スロット提供される。搭載するアダプターはコプロセッサ(NVIDIA GPGPUもしくはIntel Xeon Phiを選択可能)が提供される。NeXコンポーネントは、nx360 M4ノードの上部に組み合わせて利用できるようになっており、内部バスを介してエンクロージャーの内部で直結できる設計となっている。

NeXtScale n1200

 エンクロージャーの「NeXtScale n1200」は、背面部に900ワットの電源ユニット(ホットスワップおよびn + 1、n + nの冗長構成に対応)、冷却ファン、電源ユニットおよび冷却ファンのコントローラをのみを備えるシンプルさが特徴である。これもエンクロージャーの仕様にされることなく、将来における新たなワークロードへの対応を容易にするための拡張性を考慮したものだ。

 「エンクロージャーには高密度実装と同時に高い信頼性も求められることから、電源ユニットでは当社の1Uサーバや2Uサーバと同じものを採用し、冷却ファンも2Uサーバと同一となっています。実績があり、容易に調達できる部品を活用することで信頼性の向上につながり、コストダウンのメリットもユーザーに提供できます」(システムx製品事業部 ビジネス開発 システムズ&テクノロジー・エバンジェリストシニアITスペシャリストの早川哲郎氏)

日本IBM システムx製品事業部 ビジネス開発 システムズ&テクノロジー・エバンジェリストシニアITスペシャリスト 早川哲郎氏

 こうしたハードウェアにおけるさまざまな特徴は、既存のデータセンターが抱えるスペースや電力といった課題の解決にも貢献する。床の耐荷重に制約がある場合でも、サーバ台数を従来に比べて約40%も増やすことができ、消費電力においても従来型の1Uサーバに比べて5〜10%の削減が可能とのことだ。

 日本IBMではPureSystemsをはじめ他のシステム製品で数多くの利用実績がある「IBM Intelligent Clusterソリューション」をNeXtScale Systemでも提供する。顧客の要望に応じて、NeXtScale Systemをラックに組み込み、ケーブリングや管理用IPアドレスの設定、動作検証を実施してから出荷するもので、膨大な数のサーバ台数を導入するような場合に、サーバルーム内での開梱から動作検証に至る煩雑で非効率な作業の手間を省略できる。

用途にこだわらない

 NeXtScale Systemのコンセプトである「シンプル」「自由自在」「スケール」とは、言い換えれば、NeXtScale Systemが特定用途のワークロードに向けたソリューションでは無いこと意味する。適用可能な領域としては、ホスティングやコロケーションといったものにとどまらず、ビッグデータの分散処理や大規模な仮想化のワークロード、クラウドサービスプラットフォーム、そして同社が「テクニカルコンピューティング」と呼ぶHPCの技術を生かした汎用的かつ高度な分析業務に至るまで、非常に広範な用途を想定したものである。

 「自由自在とはすなわち柔軟性を意味します。例えば、GPGPUを組み合わせることで、3次元のCADデータを実行するためのワークステーションを仮想化してデータセンターに集約し、さまざまな場所から利用したり、データを円滑に共有したりといったニーズに応えることができます。このような新しいニーズは今後、爆発的に広がっていくのは間違いありません」(東根作氏)

 これまでに提供されてきた高密度サーバのソリューションによっては、例えば、小さいワークロードを大量に処理することに特化したものなど、特定用途に最適化されたハードウェアを採用しているものも少なくない。

 そうした形では新しいニーズに対応していこうという時に、インフラ全体も新しく構築しなければならなくなる。そのために必要なコストも時間も膨大だ。特にクラウドのような仕組みを活用して新しいビジネスを迅速に立ち上げたいと考える企業などのエンドユーザーのニーズは強まっており、データセンターとしは既存のインフラや業界標準のテクノロジーを活用してこうしたエンドユーザーの要求に応えることが至上命題といえるだろう。

 IBMは、「Software Defined Environment(SDE)」というコンピューティングモデルを提唱している。これは、変化し続けるアプリケーションのワークロード特性に応じて、システムリソースを自動的に瞬時に最適な形で配置し、新規ビジネスの迅速な立ち上げといったビジネスニーズへの即応を可能にするものだ。

 「もちろん現時点の構成はNeXtScale Systemのファーストステップに過ぎません。SDEによっていろいろなワークロードを最適な形で利用していける基盤であり、お客様が検討あるいは想定されていることに対し、将来にわたる拡張性を提供し続けることが、NeXtScale Systemの開発の方向性になっています」(早川氏)

 NeXtScale Systemは、まさしくこのSDEを志向したソリューションであり、既存のワークロード処理から次世代のコンピューティングモデルへの発展をオープンスタンダードな技術をベースとしながら、実現していけるプラットフォームといえよう。日本IBMの定評ある保守・サポートも提供される。「シンプル」「自由自在」「スケール」に「信頼」を備えた次世代のプラットフォームは、データセンターに新たな可能性と価値をもたらすものだろう。

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提供:日本アイ・ビー・エム株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2013年11月20日

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