ビジネス成長に向けた“本気”の技術交流 海外に負けない日本のITパワーを示せ!

日本の有力ソフトウェアベンダーが集結したメイド・イン・ジャパン・ソフトウェア・コンソーシアム(MIJS)。企業の競争力強化に向け、情報システムの重要性がより高まる中で、MIJSはベンダーの立場からシステム整備の支援に力を入れている。ユーザー企業が直面するさまざまな課題に対し、MIJSはどのような活動を展開しているのか。MIJSで副理事長を務める、システムインテグレータ代表取締役社長の梅田弘之氏と、製品技術強化委員会委員長を務める、アプレッソ代表取締役社長の小野和俊氏が語り合った。

» 2013年11月26日 10時00分 公開
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日本のITの競争力はカスタマイズにあり?

梅田 IT活用における日本企業の一番の特徴として、システムのカスタマイズが諸外国に比べて圧倒的に多いことが挙げられます。MIJSはパッケージベンダなのでこの現状には否定的なのですが、これが必ずしも悪いことだとは言えません。カスタマイズは現場作業の効率化のための極めて有効な手段であり、企業規模が大きなほどその恩恵も大きくなります。もちろん、カスタマイズのコストがメリットを上回るとなれば本末転倒ですが、一般に行われるカスタマイズは、処理量が多い場合に経営効率を高めるための合理的な手段といえます。

MIJS 副理事長の梅田弘之氏 MIJS 副理事長の梅田弘之氏

小野 その考えにはまったく同感です。日本企業はIT活用で海外に後れをとっているとの指摘がありますが、現実を見ると宅配便システムは世界でも最先端を走るなど、日本のシステムは世界的にも決して引けを取ってはいません。これも顧客の要望に耳を傾け、継続的にシステムのカスタマイズを行ってきた賜物だと思います。

 ただ、日本企業のIT部門はカスタマイズの例に代表されるように、良くも悪くも、現場の声を中心に仕事を進めてきました。しかも、ここにきてIT部門発の業務改善を経営層から求められるようになり、IT部門の責任と仕事は増え続けています。その結果、IT部門による新たなチャレンジが困難になっていることは大きな問題と言えそうです。

IT部門自身のプロジェクト管理を

梅田 そこで求められているものの1つが、IT部門自身のプロジェクト管理の徹底でしょう。IT部門が新しいことにチャレンジするためには、年間スケジュールを作成し、タスクと予算と人員を個々のプロジェクトに割り振った上で、実績まで管理してプロジェクトの“見える化”を図る。多忙な中で時間を捻出するためにも、より効率的に働くための仕掛けが求められているのです。

小野 新たなチャレンジを認めさせる上で、社内的な地位向上も重要です。そのためにIT部門は、ユーザー部門にとって“役立つもの”を作り上げる必要があります。

 ただし、過去を振り返れば、問題に気付きつつも各種のしがらみによってそれらを放置していたケースも少なくありません。そのことが出来上がったソフトウェアの品質を低下させ、IT部門の地位低下を招く原因の1つになっていました。

 こうした状況から脱却するために、開発途中でも開発の方向性を柔軟に見直せるカルチャーの醸成は欠かせません。アジャイル開発の普及により、より早期の成果物の評価が技術的にも可能になりつつあります。あとは意識変革に取り組むことで、必ずやIT部門の地位を底上げできるはずです。

過剰品質は是か非か

梅田 現代のシステムは、パッケージ製品がもはや当たり前のように利用されています。そうした中、とりわけ日本製品の強みとして強調したいのが、使い勝手の良さです。事実、カスタマイズ要望にきめ細かく対応できるよう、機能面で事前に対策が講じられているほか、スペックには表れない部分にも配慮が払われています。加えて、日本企業の厳しい品質要求に確実に応えられていることも見逃せません。一度その良さを体験すると、海外製品を利用する気が失せてしまうほどです(笑)。

MIJS 製品技術強化委員会委員長の小野和俊氏 MIJS 製品技術強化委員会委員長の小野和俊氏

小野 ただし、過剰品質であることは諸刃の剣であることも理解しておく必要があります。品質を高めるには入念なテストが不可欠ですが、そのために新たな機能や業界標準への対応が遅れることもしばしばです。逆に海外ベンダーはスピード感に優れ、単純比較では海外製品の方が機能は豊富であるのです。

梅田 日本製品は機能の完成度にこだわるので機能の実装に後れを取ります。機能の充実度とスピードのバランスをいかにとるべきか。ベンダー各社にとって、これは大きな宿題と言えます。また、それ以外にも問題は存在します。国内を見ると、製品自体の機能や品質に明確な差はないにもかかわらず、ERPやOSなどでは海外製品が市場をリードしています。この理由として、オンプレミス型やSaaS型といった提供方法の多様さや、新たなテクノロジーの素早い取り込みなどで国内ベンダーは後塵を拝していることが挙げられるでしょう。

 また、海外に目を転じれば、これまで各社が市場開拓に取り組んできましたが、言葉や商慣習などがネックとなり、いまだに大きな成果は上がっていません。

 これらの問題を解消すべく、メイド・イン・ジャパン・ソフトウェア・コンソーシアム(MIJS)ではさまざまな委員会を組織しています。例えば、プロダクトビジネス推進委員会では、ソフトウェアやサービスの利用促進、販売増強、マーケティング力の向上を目的に、ビジネスモデルにまで踏み込んだ支援活動を展開しています。また、製品技術強化委員会では、アジャイル開発やユーザービリティに関する研究などを通じ、トレンドの迅速なキャッチアップの支援に注力しています。

 さらに、海外展開委員会では、海外でのマーケティングや流通のノウハウ提供、国内外のアライアンス構築支援といった支援活動を行っているのです。一連の活動を通じて着実に各社の海外展開は前進しており、近い将来、目に見える成果が表れると確信しています。

小野 ソフトウェア産業は原材料が不要で、事業規模に比例する形で利益も増加します。そのため、国内だけで事業を展開していては、中・長期的に見てグローバルベンダーに飲み込まれてしまう可能性が極めて高い。日本のベンダーがタッグを組む意義は、この点でも大きいと言えるはずです。

MIJSを技術者の学習の場に

梅田 日本のソフトウェア業界が今後、さらなる発展を遂げるためには、技術者のスキル向上が必須です。ただし、そこで問題なのが、残念ながら日本の技術者の多くが自身の仕事をあまり面白いと思っていないことです。

小野 その理由の1つと考えられるのが、開発の現場で創造性や独創性を発揮できる機会が乏しいことです。開発の仕事は極端に言えば、単純なプログラムミング作業と、デザインパターンなどを利用したアプリケーションの複雑な設計に大別でき、前者になるほど自分のアイデアが入る余地が狭まります。そして、そうした仕事が現実に非常に多いことが、技術者の失望につながっているという具合です。

 もっとも、現状に危機感を抱く技術者も決して少なくありません。クラウドをはじめ、開発を自動化する仕組みは進化を続け、また、オフショアでの開発も拡大しています。これらを背景に、近い将来、国内から開発案件が激減してしまう可能性も否定できず、特定のクラウドでの開発や、データベースのチューニングに精通するなど、売りになるスキル修得してない技術者は生き残ることが困難になりつつあるのです。

梅田 技術者のスキル向上は、一般企業にとっても大きな問題でしょう。そのことは、業務の見直しや新ビジネスの創出において、ITが不可欠な存在であることからも明らかです。

 しかし、高度な知識やスキルを備えた人材の絶対数は限られています。また、自身の仕事に対する関心の低さから技術者の勉強会への自主的な参加も見込みにくく、そのことが結果的に技術者不足の常態化を招いています。

 その点、MIJSの会員企業は育成意識が高く、勉強会などに技術者を積極的に送り出しています。独創性を必要とする仕事を生み出すために、お互いの技術やノウハウを出し合っています。より多くの企業にMIJSを学習の場として活用してほしいところです。

小野 技術者に対するニーズは実際に依然として極めて高いレベルにあります。スキル向上に取り組むことで、技術者は必ずや自分の求める仕事が得られるはずです。また、ソフトウェアベンダーで働くことは、さまざまな企業と協働する機会を得られ、自身のスキルの周知、ひいてはキャリアアップにもつながる点で、決して損になることではないでしょう。

本音ベースの議論で日本企業に活力を!

梅田 MIJSの活動で改めて強調したいのが、得られる成果の多さです。参加企業はいずれも志が高く、そのことが本音ベースでの活発な議論につながっており、製品開発やテストなどで生かせるものも非常に多いのです。1つのノウハウを提供することで、10もの成果を得られることも少なくなく、私自身、成果の多さに感動するほどです。委員会活動はIT企業であればどこでも参加できます。最新技術へのキャッチアップを考える企業にはお勧めと言えますね。

小野 MIJSの参加企業が口を揃えるのは、委員会活動が極めて刺激的だという点です。エンタープライズの世界では一般的に、技術者が他社の技術者と交流する機会はほとんどなく、あったとしても競争相手であるため、話す内容も限られてしまいます。しかし、委員会では企業の壁を越えて、本当に聞いていいのかと不安になるほど生々しい情報まで交換します。MIJSの最初の取り組みは製品連携のためのマスター構造の相互開示でした。このことからも、どれほど深い情報共有を行うのかを理解してもらえるはずです。

 一方で、企業のリソースには限りがあるため、各種の研究やリサーチを行うにあたっては必然的に妥協点を探りがちです。しかし、企業が共同で取り組むことで負担が軽減されるとともに、高い目標の下でより大きな成果につなげられるのです。

 委員会が取り上げるテーマも多岐にわたります。私が委員長を務める製品技術強化委員会では、開発方法論に焦点を合わせた技術的な切磋琢磨や、開発の効率化に向けた活動を行っています。ソフトウェア開発につきもののバグ管理や、人事評価、開発者と品質管理の人材の割合などについての話し合いも行われています。いずれも苦労して積み重ねてきた各社のノウハウの蓄積といえるでしょう。

梅田 委員会活動を通じて毎年、さまざまなアウトプットを絶えず出し続けていることもMIJSの特徴と言えます。製品間連携のための標準化を皮切りに、アジャイル開発やクラウド上での開発における方法論をこれまでに取りまとめてきました。現在は、スマートデバイス向けアプリケーションとの比較を通じて、エンタープライズアプリケーションのインタフェースの改善活動に取り組んでいます。

 MIJSは日本のソフトウェア産業のさらなる発展という共通理念の下、会社の枠を超えて知識やノウハウを共有するための組織であり、前向きに活動するほど、得られる成果もより大きなものになります。日本のベンダー各社にはMIJSを積極的に活用してもらいたい。それがひいては、日本企業、さらには日本の活力向上につながると確信しています。

関連冊子「MIJS Report Vol.5」

国内の有力ソフトウェアベンダーが結集し、国内ビジネス基盤の強化と海外展開を推進する「MIJS コンソーシアム」が発行する情報誌

国内ソフトウェアベンダーによる「MIJS(Made In Japan Software)コンソーシアム」が発行する情報誌。海外進出と国内ソフトウェアベンダーの連携強化のため、さまざまな活動を重ねてきたMIJSの軌跡と今後の展開を紹介する。

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提供:メイド・イン・ジャパン・ソフトウェア・コンソーシアム
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2013年12月25日

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