製品開発者に聞く、サーバ起点でシステム運用を変えるアプローチサーバからシステム運用を変える

富士通はPCサーバ「FUJITSU Server PRIMERGY」において、「統」「柔」「省」という視点からシステム運用の変革に取り組んでいる。これら漢字一文字それぞれには、富士通が企業の課題を解決するモノづくりを継続して追求していくという意味が込められている。

» 2014年02月04日 00時00分 公開
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複雑化する運用の課題をサーバから解決

 サーバ仮想化による物理環境の集約や、システムを迅速に構築できるクラウドの積極的な採用が広がりつつある。しかし、クラウド/仮想化環境ではサーバ、ストレージ、ネットワークなどの物理/仮想インフラ全てを一元的に管理する必要があり、運用業務の複雑化という新たな課題が発生した。

 この課題を解決すべく、サーバ分野で国内トップクラスのシェアを誇る富士通は、サーバ視点で複雑なシステム運用をシンプルに変える「統」「柔」「省」の3つの取り組みに力を入れている。この取り組みについて、富士通 プラットフォーム技術本部 プロダクトソリューション技術統括部 部長の松島秀男氏は次のように話す。

 「以前から運用の改善を支援するさまざまな機能を提供してきたが、もっと活用していただくために、PCサーバのコンセプトをより明確にした。『統』とは、ファシリティを含めてデータセンターを統合的に制御すること、『柔』はネットワークを含めて柔軟に接続できること、そして『省』は省エネルギーや省オペレーション、仮想化による省減・省力化を意味する」

 それでは富士通が掲げる「統」「柔」「省」について具体的にみていこう。

インフラ全体の一元化管理へ

 まず「統」の狙いは、データセンターのインフラであるサーバやストレージなどのICT機器に加え、ラック周囲のファシリティまでを一元的に管理し、運用コストを削減することにある。その中核製品に位置付けるのが、「FUJITSU Software ServerView Infrastructure Manager(ISM)」。仮想化統合によって複雑化するインフラ全体をシンプルにする管理ソフトウェアだ。

 ISMは物理/仮想サーバや物理/仮想ネットワークに対応することに加え、これまでは情報システム部門があまり意識をしなかったサーバ、ストレージ、ネットワークなどのICT機器とファシリティの両面から運用の効率化や最適化を支援する機能を提供するという。

統 ICT機器だけでなく電源やファシリティを含めた統合管理を実現

 IAサーバ事業本部 データセンタープロダクト事業部 サーバソフト技術部 部長の美間俊哉氏は、「従来、これらは知識とノウハウを蓄積した専門家でなければ対応することが難しく、運用管理業務も属人化しがちだった」と話す。ISMはこの属人化を排除し、簡単な操作、一括操作、自動化によって作業ミスを防止して作業レベルを統一する。

 「今までのサーバ管理ソフトウェアはサーバを単体で見ることが中心であり、複数のサーバやストレージ、ネットワーク、ファシリティの状況を全体的に把握し管理するには十分ではなかった。ISMがこれらの管理に必要な機能を提供することで、お客様が日頃熱心に取り組んでおられる運用の自動化や最適化の適用範囲や方法をさらに広げることができるようになる」(IAサーバ事業本部 データセンタープロダクト事業部 サーバプロダクト開発部 部長の津留清氏)

 今回、富士通ではISMにストレージ、ネットワークなどのICT機器、さらにはそれらを格納するラック、UPS(無停電電源装置)、PDU(電源タップ)などのファシリティも管理できる機能を持たせた。OSや仮想ソフトの種別に依存しないエージェントレス運用を意識したものになっている。

 ISMの最大の特長は、ラックビュー画面をメインに据えたWebベースのグラフィカルな管理画面だ。ラックビュー画面には機器の搭載位置が視覚的に表現され、この画面にインフラ監視に必要な情報を集約できる。例えば障害などの異常発生時には、ラックビューの該当部分の表示が変化し、管理者がすぐに位置を特定できる。ラック周辺に設置したUPSやPDUなどのファシリティからの情報もここに集約することができる。

統 グラフィカルなラックビューで業務効率を向上

 また、ISMでは迅速なサーバ増設を可能にするというプロファイルテンプレートを用意している点も大きな特長だ。追加されたサーバをISMが自動的に検出し、プロファイルに従ってBIOSやRAID、ハイパーバイザ、ネットワークなどの設定を自動で行う。富士通の検証によると、サーバを手動で設定するのに比べて最大74%の手番数を削減できるという。業務アプリケーションや仮想化環境などの運用管理システムと連携するためのプラグインや、企業が独自に利用するビル管理システムとの連携に柔軟に対応できる手段も提供する。

 このようにISMは、ICT機器とファシリティの一元的な管理を通じて運用の効率を向上させる以外にもさまざまなメリットをもたらす。例えば、ラックの給電能力とICT機器の消費電力をダイナミックに調整する機能は、電気代の削減に効果のある電力のピークカット運転を可能にする。また、同じスペースで多くの機器が運用できるようになる。

 「ラックに搭載するサーバの台数は安全を見込んで機器の最大消費電力を積み上げて見積ることが一般的だ。しかし、全てのサーバが一斉に最大負荷で動くことはほとんどない。つまり、ラックの給電能力の多くを余らせながら運用しているケースは意外に多い。ピーク電力が自動的に抑制できればセンターの能力を余すことなく使用することが可能になる。例えば、1U/2WAYのPRIMERGYでは、ISMを利用することでスペース効率を40%以上も上げることが可能になった」(津留氏)。

シンプルなネットワークを実現

 今のデータセンターは、クラウド/仮想化によるソフトウェアスイッチの増大や、ネットワークの高性能化に伴うLANとSANの統合化などから、ネットワーク運用の負荷が高まっている。それらに加え、上述したサーバやストレージとネットワークの一元管理も管理者の負荷を高める一因になっている。「柔」で目指すのは、柔軟でシンプルなネットワーク運用の実現だ。

 「サーバ管理者にすると、ネットワーク管理には抵抗感を抱きがちだが、専門家任せでは最新の技術を採用してビジネスに貢献するというのが遅れてしまうおそれもある。富士通はサーバ領域のネットワークをサーバ管理者にも運用できるよう、シンプルなネットワークの実現を目指した」(IAサーバ事業本部 プロダクト開発統括部 ネットワーク開発部 マネージャーの西周平氏)

 同氏の言う、サーバ、ストレージ、ネットワークをシンプルにつなぐ仕組みとして開発したのが、仮想ネットワーク対応スイッチ「コンバージドファブリック(C-Fabric)」である。これは、複数のスイッチを1台の仮想スイッチとして構成し、ファブリックを自動構成する画期的な技術だ。構築・運用の手間をかけずに常に高速応答するネットワークを利用できるようになる。設計で必要なのはサーバとストレージの接続、上位スイッチとルータの接続だけで、あとは自動構成されたファブリックがネットワークの利用率を常時監視し、適正な経路を自動的に選定する。

柔 ニーズに応じたネットワーク構成が可能な柔軟性とシンプルな運用を両立する

 C-Fabricには、一般的なレイヤー2スイッチと同等の「ネットワークモード」、一般的なFibre Channel over Ethernet(FCoE)スイッチと同等の「SANモード」、そして、サーバのLANポートのように振る舞う「ホストモード」の3つの動作モードが用意され、ネットワークの運用条件やシステム構成に応じて最適なモードを選択できる。特にホストモードを利用すれば、サーバとストレージがC-Fabricを介して既存のネットワークに透過的につながり、既存のネットワークからはあたかも1台の単に大きなサーバがLANポートで接続しているように見ることができるため、従来のネットワークの運用管理ルールを変更したり、異なるベンダー機器間の相互接続制約を考慮したりする必要もない。

 C-Fabricでは最大256台までのスイッチを、仮想的に1つのスイッチとして管理できる。設定情報はそのファブリック内で共有しているため、ネットワークの拡張が必要になった場合でもネットワーク設定を変更することなく、オンデマンドで拡張できるわけだ。また、ファブリック内は常に全てのポートと経路を利用できるマルチパスになっているため、スイッチの故障や保守の際にもネットワークを停止する必要がないなど、メンテナンス性も優れている。

 ネットワークの容易な構築・運用を支援する管理ツール「FUJITSU Software ServerView Fabric Manager(SVFAB)」も用意されている。SVFABは、担当者に特別なスキルがなくてもネットワークを管理できるように開発された。SVFABはプラグインの形式を取っており、PRIMERGYサーバ管理ソフト「FUJITSU Software ServerView Operations Manager」に組み込むことで、サーバとC-Fabricのネットワークを統合的に管理できる。

 また、VMwareの「vCenter Server」やMicrosoftの 「System Center Operations Manager」「System Center Virutal Machine Manager」といったハイパーバイザ管理ソフトウェアのプラグインが提供されており、それぞれのGUI画面からファブリックを管理することも可能だ。また、サーバ管理ソフトウェアやハイパーバイザ管理ソフトウェアと連携することで、物理サーバ、サーバ上の仮想スイッチ・仮想マシン、及び、C-Fabricの接続状態を一つの画面上で視覚的に見て管理できる特長もある。

 「仮想環境では仮想マシンを異なる物理環境に移動するマイグレーションが日常的に行われる。通常はその際にネットワーク設定の変更を伴うが、C-Fabricはネットワーク設定情報をプロファイル化し、自動的に移動を検知してネットワーク設定を反映する『AMPP(Automatic Migration of Port-Profile)』機能を提供し、サーバ管理者がネットワーク設定を意識する必要が無いようにしている」(西氏)

誰でも「エコ運用」を実現

 3つ目の「省」の狙いは、文字通り「省力化」である。IAサーバ事業本部 IAサーバ事業部 ボリュームサーバデザイン部 部長の鈴木修一氏は、「省エネルギー、省オペレーション、仮想化による省減の3つの「省」の取り組みを行い、デバイスの最適な制御とファシリティレベルの省力化、電力制御の自動化や環境に依存しない監視、サーバ仮想化統合による物理資源の集約と管理工数の低減を目指した」と説明する。

 まず省エネルギー領域で注目されるのが、ファン制御の最適化だ。富士通は新しいPRIMERGYサーバの設計において熱流体シミュレーションなどの精緻な検証を踏まえてファンのレイアウトを決め、エアフローを最適化した。富士通研究所による吸気温度や部品温度の分析により、ファン制御の最適解を求めた結果、消費電力を8%低減した。

省 ファン制御最適化のアプローチ

 次に特長的なのが、東日本大震災以降に富士通が開発を加速させて製品化し、40度環境での動作を実現した「高温環境対応モデル」と、大型UPSを使わずに停電・瞬断によるシステム停止を防止する「サーバ内蔵型バッテリーユニット」である。高温環境対応モデルは、現在では、対応機種を拡大させ「アドバンスド・サーマルオプション」として主なラックマウント型サーバで実現している。

 「これにより、空調設備のないチラーレスデータセンターが実現でき、省力化に貢献する。PUE(Power Usage Effectiveness)値の大幅低減と、夏場の消費電力約50%削減を実現した事例もある。ヤフー株式会社様では、サーバ内蔵型バッテリーユニットをご採用いただき、PUE値1.044を実現された」(鈴木氏)

※PUEはデータセンター全体の消費電力をICT機器の消費電力で割った値であり、「1」に近いほど電力効率に優れている。

 省オペレーションの実現は、PRIMERGYのメインボード上に搭載された「リモートマネージメントコントローラ(iRMC)」が担う。iRMCにはオペレーションを軽減するインテリジェンスな機能が用意され、中でも電力制御の自動化機能が注目される。この機能により、サーバの電力制御を実行して省電力モードで動作させたり、省電力モードをスケジューリング運用したりできる。

省 CPUの動作周波数制御により2種類のモードを選択可(スケジューリングも可)

 もう1つiRMCで特筆すべきなのが、OSに依存することなくリモートでシステム監視が行える機能であり、RAIDカードも含めたサーバのあらゆるパーツの状態をリモートから統合管理できる。サーバに問題が発生して再起動が必要な場合でも、管理者が現場に出向くことなく解決できるようになる。IAサーバ事業本部 IAサーバ事業部 ボリュームサーバデザイン部 マネージャー 辻孝由氏によれば、今後のiRMCではファームウェアのアップデート機能などを追加し、将来的にサーバ管理者の業務をiRMCで自動化することを目指す。

 仮想化による省減では最新の高速のCPUやメモリなどによる基本性能の向上に加え、I/O性能の向上に取り組んでいる。性能の向上によって、少ないサーバでより多くの仮想マシンを動作させることができ、また、処理時間の短縮により、省エネルギーにも寄与する。

 「特にRAID高速化とSSD対応を進めている。RAID高速化では頻繁にアクセスするデータをSSDに振り分けるCache Cade、一部の処理を無効化してSSDとアレイコントローラ間のデータ転送を高速化するFastPathなどの機能により、83%の性能向上を実現している」(辻氏)とのことだ。


 ここまで「統」「柔」「省」を具体化する機能を詳しくみてきたが、これらは最新のPRIMERGYに順次適用される。サーバを中心にシステム基盤の運用を変革する富士通の取り組みには今後も期待したい。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2014年3月3日