アナリティクスと戦略の専門家が集う新組織、IBMが目指す“真”の顧客価値創造とは?

技術革新によるデジタル化がここまで進んだことで、新技術への対応度が企業の明暗を分けるまでになった。また、さらなる競争力強化に向け、ビッグデータの活用も進みつつある。こうした中、IBMは新技術による多様なデータ分析を支援すべく、アナリティクスと戦略コンサルタントの専門家を集めた新組織「Strategy & Analytics(S&A)」を立ち上げた。その狙いや具体的に提供するソリューションとは一体何か。米IBMの同部門統括責任者が語った。

» 2014年03月31日 10時00分 公開
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データから新たなビジネス価値を創出

 近年になり企業経営層からも大きな関心が寄せられるようになった「ビッグデータ」。先進的な企業では、意思決定する上でもはやデータが不可欠になるなど、さまざまな領域で成果が見られるようになっている。

米IBMのGlobal Business Services Global Managing PartnerでStrategy and Analyticsを担当するマーク・チャップマン氏 米IBMのGlobal Business Services Global Managing PartnerでStrategy and Analyticsを担当するマーク・チャップマン氏

 では、ビッグデータの理想とされる活用法とは、果たしてどのようなものか。この問いへの解は、企業が置かれた状況によってさまざまだが、共通点も存在する。それを端的に表しているのが、カジノの本場である米国・ラスベガスの事例である。

 この地ではかつて、多くのカジノがいかさまの被害に悩まされてきた。各種対策も講じられたものの、日々、異なるカジノで不正が行われるために、被害を完璧に防ぐことは現実的に困難であった。

 そうした状況を打開したのが、防犯カメラで撮影された映像をオンラインで解析し、カジノ荒らしをリアルタイムで突き止める顔認証システムである。いまや同システムはあらゆるカジノで導入され、カジノ荒らしは過去のものとなった。

 米IBMのGlobal Business Services Global Managing PartnerでStrategy and Analyticsを担当するマーク・チャップマン氏は、「デジタル化の進展により、データ分析を通じた課題へのリアルタイム対応も可能になりました。しかも、問題の傾向をパターン化し、いわば、データを深掘りすることで、データからの新たな価値創出も現実のものとなっています」と、企業におけるデータ活用の可能性を説明する。そうした中で、デジタル化のメリットを享受し、企業の成長につなげるためには、新たな技術のより精力的な企業活動への取り込みが肝要となっているのだ。

戦略コンサルティングとアナリティクスを一元化

 技術の重要性の高まりは、IBMが発刊する経営層への調査レポート「IBM Global C-suite Study」からも明らかだ。最新の2013年版によると、「自社に影響を及ぼす外部要因」として「テクノロジー」を挙げる経営者(CEO)が最も多く、ほかのCxOも上位3つ以内に挙げている。

CEOからみた重要な外部要因(出典:IBM Global C-suite Study 2013年度版) CEOからみた重要な外部要因(出典:IBM Global C-suite Study 2013年度版)

 ITの急速な進化が社会に与えてきた影響を考慮すれば、この結果は必然とも呼ぶべきものであろう。例えば、ソーシャルメディアなどの登場により、顧客と企業とのあり方は大きく変貌を遂げており、従来型のマーケティング手法ではなくこれらへの柔軟な対応も不可欠となっている。C-suite StudyでもCIO(最高情報責任者)の8割以上が、これまでのバックオフィスではなく、顧客接点を持つフロントオフィスへの投資を増やすと回答している。

 こうした変化への対応の取り組みをさらに進化させるために、IBMではストラテジー&トランスフォーメーション(S&T)やビジネス・アナリティクス&オプティマイゼーション(BAO)などの部門を統合した新組織「Strategy & Analytics(S&A)」を立ち上げた。米国本社で今年1月に発表、日本でも2月に発足した。現在、サービス内容の統合、最適化の最終フェーズにある。狙いはより迅速かつ高度な戦略コンサルティングとデータアナリティクスを両輪にしたソリューションの提供にある。

 「ビッグデータ活用の道のりは決して平坦ではありません。だが、その実現の先には、他社に対する大きな優位性が確立できるはずです。IBMはその支援に向けたコンサルティングサービスを数多く手掛け、実績を上げてきました。S&A部門が組織されたことで、ストラテジストやデータサイエンティスト、ソリューションアーキテクト、リサーチャーなど多様な知識を備えた人材がワンチームとなり、迅速なサービスの提供、また、さらに高いレベルでの顧客の要望に応えられるようになったのです」(チャップマン氏)

着実な目標達成に向けた反復型アプローチ

 S&Aでの基本となる活動は次のようなものだ。まず、同社の最新ソリューションのプレゼンテーションを通じて技術的な可能性を提示する。次に、顧客の要望などを踏まえ、S&Aの専門家が、それぞれの知見を基に問題点を探り、その解決に向けた中・長期的なシナリオをまとめ上げる。その上で、シナリオ達成に向けた短期的なプロジェクトを繰り返し実行する。

 また、並行して行われるのが、データ分析用プラットフォームの構築である。その整備に当たっては、プロトタイプからテスト、実証までを反復し、段階的に機能や規模を拡大させる。

 IBMがこうした反復型手法を採用した一番の目的は、プロジェクトの着実な遂行にある。「一足飛びに大きな目標達成を目論むと、当然ながらリスクはそれだけ増し、期待された成果が上がらないことも現実には多いのです。だが、反復的に小さな取り組みを繰り返すことで、成果を確認しつつ着実にゴールに近づけるのです」(チャップマン氏)

 「市場と顧客」「オペレーションとサプライチェーン」「ファイナンス」「テクノロジー」「組織と人材」の5つの主要事業領域でS&Aが展開する多彩なコンサルティングサービスのうち、今注目されているソリューションを紹介する。1つ目は、ビッグデータ解析によって、長期に渡り顧客への提供価値を維持・拡大させ、ロイヤリティを獲得するための「nba(next best action)」だ。同ソリューションでは、売り上げや購買頻度など多様なデータを活用し、共通特性によって人々や物事をグループに分けるクラスター分析などを実施。顧客の状態にカスタマイズした販促施策を立案するとともに、その実施までを支援する。

顧客をとらえ直した販促策で営業利益が十数パーセント向上

 海外のある大手家電量販店は、nbaにより大きな成果を上げた企業の1つだ。IBMでは同量販店の顧客と購買データを用いてクラスター分析を実施。その上でIBMは、顧客ごとに最適化された購買メニューの提示や、休眠状態にある顧客の活性化などを柱とする、“Mass”と“One to One”を組み合わせた販促戦略を立案。最終的に、メールやWebなど複数チャネルを活用したキャンペーンを組み合わせて実施し、キャンペーン反応率の数倍向上、営業利益の十数パーセント向上を成し遂げたのである。この事例は、ITによるフロントオフィス改革の典型例と言える。

 「分析で各種傾向を導き出し、そこから効果的な施策を立案、実行するまでには、データ分析やIT、コミュニケーションといった幅広い知識やノウハウが必要となります。そのための人材をワンストップで迅速に提供できるのもS&Aだからこそ。しかも、博士号を持つ人材も豊富に抱えており、最先端の数理技術も容易に活用できるのです」(チャップマン氏)

物流の効率化で年間10億ドルもコスト削減

 2つ目は、データ分析でさまざまな業務の最適化を目指す「PAO(Predictive Asset Optimization)」である。このソリューションで大きな成果を上げたのが、年商1200億ドルを誇る米国の医薬品流通企業、McKessonである。

 同社は、トラックや飛行機などによる多様な物流ルートを整備することで売り上げを拡大してきた反面、ほかの流通企業と同様、利益率の低さに悩まされていた。この問題の克服に向け、IBMのリサーチャーが複数の観点で分析を実施するとともに、社内データを利用して配送ルートごとに利益率を算出するシミュレーションシステムを構築。これにより、顧客との取引条件などを踏まえ、最も利益率の高い物流ルートの選択が可能になるとともに、物流効率化よって年間で10億ドルものコスト削減を実現したのである。

 「サプライチェーンの管理と効率化はメーカーや流通などに共通する経営課題です。だが、複数シナリオを組み合わせたPAOの高度な分析により、物流の最適化とそれにひもづくコストの削減も実現できるわけです」(チャップマン氏)

 もう1つは、不正行為への対応を可能にする「Risk&Fraud」である。同ソリューションでは、行動パターンなどの情報を多角的に分析することで、不審者を速やかに特定し、事前対応によって脅威の顕在化を防止する。ITによるリアルタイムでの不正防止が可能となることから、同ソリューションはCFO(最高財務責任者)を中心に大きな関心を集めているという。

 米国・ノースカロライナ州は医療保障制度の不正請求対策として、2010年から請求分析に着手。従来の不正対策が20〜30%程度の効果に対し、90%の不正解決の実績があるIBM Healthcare Analyticsを活用するなどして、不正な医療費申請を容易に特定できるようになるなど、不正支払いの停止や不正予防に大きな成果を上げているという。

 これら以外にも、患者への処方ミスを防止する目的としたものなど、S&Aは新たなソリューション開発を進めており、今後さらなるメニュー拡充に力を注ぐ計画だ。

経験とノウハウを武器に日本企業のグローバル化を支援

 チャップマン氏によると、多くの日本企業はデータこそ保有しているものの、本格的な活用にまで至るケースは極めて少ないという。

 「経験不足のために、データ分析におよび腰な日本企業も見受けられます。だが、データ活用に成功すれば、それに要した投資を1年以内に回収することも可能です。しかも、データは既に自社で保有しているケースも多いわけです。ビジネスの質を底上げするためにも、この貴重な資産を活用しない手はありません。IBMはさまざまな技術やスキルの提供を通じ、企業のデータ活用をあらゆる側面から支援する考えです」(チャップマン氏)

 一方で、C-suite Studyでは、海外と比べて日本企業の「グローバル化」に対する意識の高さが鮮明だった。実際に、この項目は海外企業においては7位であるにもかかわらず、日本企業では3位に挙げられている。

 以前からIBMでは真に統合されたグローバル企業を目指し、世界中に機能を分散配置して経営資源の最適化を図るなどの企業変革に取り組んできた。その結果、業務とシステム双方のあり方が大幅に見直され、事業の効率性が抜本的に高められている。

 「グローバル化の成否は、効率性をどこまで高められるかにかかっている。そのためのノウハウを豊富に蓄積したIBMとパートナーを組むことで、グローバル化を円滑に進めることが可能になるはずです」(チャップマン氏)

 最新技術とコンサルティングを両輪に、企業経営をグローバルで支援するIBMのS&A部門。活躍の場は今後、さらなる広がりを見せそうだ。

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提供:日本アイ・ビー・エム株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2014年6月30日

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