変化と競争のスピードが激しい飲食業界。「Soup Stock Tokyo」を運営するスマイルズは、経営の可視化を目指してMicrosoft Dynamics AXを選択した。最新クラウドERP導入の舞台裏とメリットを紹介する。
現代の企業には、迅速な意思決定を通じて市場の変化に対して先手が打てるスピード経営が求められている。特にビジネス環境が目まぐるしく変化し、幾多の企業が厳しい競争を繰り広げる小売、さらには顧客の志向の変化や季節ごとのサービスの変更が求められる飲食業界では顕著だ。店舗やWebなど顧客接点のデータや業務システムのデータからビジネスにつながるヒントを得る試みが広まり、そのためのプラットフォームとしてクラウド型ERPへの関心が高まっている。
食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo」を中核に、ネクタイ専門店やセレクトリサイクルショップなどの多様な業態を運営するスマイルズ(東京都目黒区)は、顧客ニーズへスピーディーに対応できる経営を目指して「Microsoft Dynamics AX」(以下、Dynamics AX)を選択。ビジネスの可視化に向け、Microsoftおよびパートナーの横河ソリューションサービスとともにクラウドERPの構築に取り組んでいる。
経営企画本部 情報システム部副部長兼経営企画室の佐藤一志氏によると、スマイルズでは販売実績や原材料の購買といった各種データをそれぞれのシステムで、本部へ報告し、集計していた。しかし、指標や報告のタイミングなどはシステムごとで異なることと、本部での集計作業には人の手間と時間がかかっていたのが課題だった。そこで経営データを集約、活用するための共通プラットフォームとして着目したのが、クラウド環境に対応した最新のDynamics AXだ。
Dynamics AXは会計や生産管理、販売管理など経営管理で求められる機能と、データ活用を可能にするビジネスインテリジェンスの機能を備え、使いやすさや導入のしやすさを特徴に世界中の企業で採用されているERPソリューションだ。多言語多通貨対応や、多くの国の規制対応されているのも大きなメリットである。最新版のDynamics AXは、ERPの機能がMicrosoft Azure上のクラウドサービスとして提供され、クラウドのスピーディーな拡張性と信頼性、モバイルからのアクセス、開発のしやすさなど、これまで以上に柔軟性の高いERPシステムを実現する。
スマイルズが構築しているシステムの全容は、クラウドサービスのMicrosoft AzureとOffice 365を基本インフラとして、その上で稼働するDynamics AXとPower BI(データ分析)、データウェアハウス(DWH)などから構成される。店舗のPOS(Point of Sales)端末やタブレット端末から販売データや購買データがDWHに送信される。クラウド上に集約した各種データをPower BIを使って分析したり、Dynamics AXのダッシュボードでビジネスの状況を把握したりできるようにする。
ここでのポイントは、Webデータを活用するためのプロトコル「Open Data Protocol」(OData)だ。最新のDynamics AXでODataがサポートされたことにより、各店舗からAzureへのデータ接続が可能になり、Azure上でのデータ連携や、分析したデータのアプリケーションへの取り込みなども容易にできる。
これによって各店舗のデータを集計・加工する従来のフローが無くなり、本部での集計や分析作業に伴う手間やタイムロスの大幅な解消を実現しているほか、ヒューマンエラーを抑止できる。ODataであれば、社員が使い慣れたExcelでも必要なデータを簡単に取得できるほか、Microsoftの新しいアプリケーション実行環境「Universal Windows Platform」(UWP)によってPCやスマートフォンといったさまざまなデバイスからもデータを活用できるようになる。
「ERPに求める機能はDynamics AXに標準で備わっていますので、なるべくERP本体に手を加えることなく、業務の変化に応じて柔軟に新しいアプリケーションを追加したり変更したりしたいと考えていました。アプリケーションの要件は常に変化しますので、利用企業がアジャイルなアプリケーション開発に集中できるようになるのもDynamics AX導入の大きなメリットでしょう」(佐藤氏)
システム環境をMicrosoftの製品やサービスにそろえることで、Microsoftの開発環境に慣れたエンジニアのリソースを活用しやすい。なお、Dynamics AXの開発に必要な言語のX++をVisual Studioにアドオンで使用できるため、必要な固有技術のスキルは最小限であり、多くが標準的なWindowsの開発技術でできるため、開発者が慣れた環境で新機能を開発していける。
またAzureをインフラとすることにより、ハードウェアの調達やリソースの管理といった運用にまつわる負荷も大幅に解消される。Microsoft Dynamics製品の管理ツールの「Lifecycle Services」を利用することでプロジェクトを効率的に管理でき、設定したシステム環境もワンクリックで迅速に展開できる効果も計りしれない。
スマイルズは当初、オンプレミス版のDynamics AXを検討していた。しかし、スピード経営の実現には最新技術の積極的な採用が不可欠だと判断。その時に日本マイクロソフトから提案されたのが、早期導入プログラム(TAP)への参加だった。
TAPではMicrosoftの開発チームおよび国内で多数のDynamics AX導入を手掛ける横河ソリューションサービスとも連携。Skype for Businessを利用して週次で日本と中国、米国にいる各担当者が課題やスケジュールを共有し、正式リリース前のDynamics AXについての評価、検証、フィードバックを重ねてきた。
「新しいDynamics AXが当社の目指すシステムの姿に合致すると感じました。TAPに参加することでMicrosoftからリリース前の製品の最新情報を入手でき、横河ソリューションサービスから継続的にサポートしていただける点も大きなメリットでした。新しい技術にいち早く触れることで、将来のシステムやデータ連携をどのように実現していけばよいかを先に考えることができますから、開発を効率的に進めていくことができます」(佐藤氏)
例えば、最新版のDynamics AXがサポートするODataはパッケージで提供されるが、日本の企業が必要とする項目への対応や、データ連携時におけるパフォーマンスの改善などは、スマイルズ、Microsoft、横河ソリューションサービスの共同作業によって実現された。
横河ソリューションサービスにとっても、スマイルズでのプロジェクトは新しいDynamics AXの国内展開に向けて大きな経験になったようだ。「これまでの導入経験を踏まえ、新しいDynamics AXでの設計や開発手法、性能や特徴、プロジェクト運営などを学ぶことができました。これから導入されるお客様に円滑なサービスをご提供できる体制を整えています」(プロジェクトマネージャーを務めたERPビジネス本部ソリューション1部の片岡祐介氏)
今回のプロジェクトは2015年7月にスタート。2016年1月には従来の業務システムから新しいDynamics AXへのデータ移行を行い、2月初旬に第一段階としての本格稼働を開始させた。プロジェクト開始から最新版リリースまでの間に3つのコミュニティ技術プレビュー(CTP6〜8)が公開されたが、スマイルズでのDynamics AX導入はMicrosoftや横河ソリューションサービスの支援によって、スームズかつスピーティーに行われた。スマイルズでは今後もさらなるデータ連携とその活用の幅を広げていくためのアプリケーションの開発やタブレットデバイス、IoTなどの利活用を進めていく計画だ。
ERP構築および連携する業務システム開発としては非常に短い期間だが、スマイルズのように照準を絞った第1段階から段階を踏みながら迅速な開発と利用範囲を拡大・変化させていくアプローチは、アジャイルに流通・小売業のビジネスのスピードへ追随できる、クラウドベースのERPを最大限に生かすものだ。システムは固定化するものではなく、業務で実際に使いながら日々変化していく。その変化のスピードに対応可能な構築を求めているスマイルズの戦略とDynamics AXの特長を最大限に生かした構築事例と言えよう。
「まずはデータの可視化を通じてビジネスがどのような状況にあるのかを知るという文化を根付かせたいですね。今後もDynamics AXの機能や利用シーンを広げながら、さらなるデータ連携や活用についての検討を深めて、システムを発展させていきたいと考えています」(佐藤氏)
クラウドに対応した最新版Dynamics AXは、スマイルズのような変化の激しい市場を勝ち抜こうとしている企業にとって、信頼性を保ちながらデータ活用とスピード経営を実現する最適なプラットフォームとなるはずである。
横河ソリューションサービスではMicrosoft Dynamics AX 最新版のセミナーを開催します。新バージョンの日本における早期導入顧客の事例や一新されたクライアントのデモンストレーションをご紹介します。
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提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2016年3月31日
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開催日:2016年3月17日(木) 14:30
会場:日本マイクロソフト(東京都港区)
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