クラウドが企業で広がるためのブレークスルーは? ヤマハ発動機と京王バスが語る秘訣

企業におけるクラウド利用はまだ道半ば。約半数の企業はクラウド導入をしていないのが実情だ。導入を成功させ、業務部門に浸透させるには何が必要か。先進的な取り組みを行う成功企業に聞いた。

» 2016年12月05日 10時00分 公開
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 企業におけるクラウド活用は一般的になりつつあるが、クラウド導入に踏み切れない企業はまだまだ多いのが実情だ。

 アイティメディアが行った読者調査では、パブリッククラウド(主にIaaSやPaaS)を導入しているのは38.7%、プライベートクラウドは28.9%。導入予定としている企業はパブリッククラウドが12.1%、プライベートクラウドが14.5%である。約半数の企業がまだ、クラウド導入に踏み切れていない計算だ。

 セキュリティやコストの問題など、企業がクラウド導入に踏み切るための“壁”は多い。企業がクラウドに適応し、コストやスピードというメリットを生かすには何が必要か――。

 サイボウズの年次カンファレンス「Cybozu Day 2016」で「エンタープライズITにおける、クラウドシステムアーキテクチャ」をテーマとするパネルディスカッションが行われ、積極的なクラウド導入で知られる京王電鉄バスの虻川氏とヤマハ発動機の原子氏が取り組みを語った。

photo サイボウズの年次カンファレンス「Cybozu Day 2016」の2日目に、「エンタープライズITにおける、クラウドシステムアーキテクチャ」と題したパネルディスカッションが行われた

クラウドへ舵を切るきっかけは震災。BCPが推進力に

 読者調査によると、パブリッククラウドの用途は、Webサービスが17.2%と高く、システム開発が13.3%、情報系システムが12.5%と続く。業務システムについては12.1%、基幹システムは8.6%など、業務に本格的に活用している企業もある。京王電鉄バスもヤマハ発動機も、業務システムや基幹システムのクラウド化を推進する、先進企業といえる。

photo ヤマハ発動機 企画・財務本部 プロセス・IT部 デジタル戦略グループ 主務の原子拓氏

 ヤマハ発動機の原子氏は、クラウド移行の背景として「静岡県磐田市に拠点を置くヤマハ発動機は、東南海地震への準備を進めており、東日本大震災以降、BCP(事業継続計画)の切り札として、クラウドを捉えています」と語る。

 京王電鉄バスの虻川氏は原子氏の言葉に同意しつつ、「最初に社内を説得するには、合理的な理由と、メンタル面で納得できる要因が必要」と補足した。京王電鉄バスがクラウドへの移行を始めたのは2011年ごろで、当時のメディアの論調は、クラウドに否定的だったという。

 当時は“Amazonでクラウド”といっても社内では理解されないため、通信キャリアで経営層の認知度が高いKDDIのクラウドを採用することで社内を説得。既にクローズな社内ネットワークで利用している通信キャリアに直結したサービスを利用することで、セキュリティ周りの信頼感も含め、話が通りやすくなったという。クラウド移行の承認が降りた後は、仮に止まったとしても業務全体への影響が少ないシステムから移行を進めた。

photo 京王バスは業務全体への影響が少ないシステムからクラウド化を進めていったという

 クラウド移行によって生まれる効果はさまざまだが、虻川氏は「導入効果は業務改革。情シスの業務はかつて運用保守の比率が高かった。クラウドや運用の自動化によってその比率が下がり、今まで手を付けられなかった仕事に手を付けられるようになりました」と説明する。原子氏も同意し、「クラウドサービスは自動的に機能が増えて成長していく。これはありがたい」と続けた。

小さな成功体験の積み重ねが、情シスのモチベーションを高める

photo 京王電鉄バス 管理部システム業務推進担当 課長の虻川勝彦氏

 話題はサイボウズのクラウド型アプリ開発サービスのkintoneに移り、虻川氏と原子氏が自社の活用法を紹介した。kintoneを使って150以上のWebアプリを開発したという京王電鉄バスは、情シス全員がkintoneの使い方をマスターしており、業務部門にも「情シスにアプリ開発を頼めばkintoneですぐに作ってもらえる」という意識が浸透しているという。

 「ほしいアプリの話を聞きながらその場で作ってみせて、“こんな感じでどうか”と確認できるのが業務部門から好評です。kintoneは最初から小さな成功体験が数多く作れるのがいいですね。情シスのモチベーションもが上がっています」(虻川氏)

 クラウドは利用する業務部門が活用してこそ浸透する。原子氏も「エンタープライズアプリの開発は、通常、何カ月もかかるが、kintoneなら素早く開発できる」と同意した。

クラウド前提でシステムを捉え直す“意識変革”が必要

photo モデレーターとしてITmedia エンタープライズ編集部 池田憲弘が登壇した

 クラウドを検討しつつも、導入をためらう企業は少なくない。これからクラウドを導入しようという企業が、注意すべきポイントはどこにあるのだろうか。

 原子氏は「変化に負けず、楽しみながら進めること」を挙げる。クラウドは「入れて終わり」ではなく、入れてからの変化が大きい。導入時には、システム構成や活用に対する考え方を変える必要があり、そこにはアーキテクチャやネットワーク設計、IaaSとSaaSの組み合わせといったことから、法規制対応といったルールの見直しまでも含まれる。

 「ヤマハ発動機は製造業でもあるので、新しいことに挑戦する文化があるのがいいところです。今は2020年に向け、クラウドを中心としたITインフラを構築しています。楽しみながら変革を進めていくことが大事だと考えています」(原子氏)

 一方の虻川氏は「情シスもビジネスへの直接的な貢献が求められる時代になった」といい、「会社全体のリソースを見て、優先的に何をやるべきかを考える。その手段としてクラウドを捉える必要があるでしょう」と指摘する。

 クラウドの導入を成功させるには、さまざまな情報収集やノウハウの蓄積が必要であり、コミュニティーでの情報交換も欠かせない。両氏とも情報交換の場に顔を出すだけでなく、自社の事例をインタビューや講演を通じて発信している。時には同業他社の情シスとも情報交換するというから驚きだ。

 これからクラウド化を検討する企業に対するアドバイスを求められた両氏は、「自分たちはここまでクラウドを導入するのに5年ほどかかったが、世間の見方も変わってきており、今導入しようと思えば、もっと早く、そして簡単に導入できるでしょう」と話す。クラウド導入に踏み切るきっかけや成功のタネは至るところにある。あとはそれを探して実行するだけだ。

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提供:サイボウズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2016年12月18日

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