「IoTやAIを活用した新たなシステムへの取り組みが求められる中、既存環境の運用業務は増える一方なのに人は増えない現状で、どうやって“攻め”と“守り”を両立すればいいのか……」そんな情報システム部門の課題を解決し、ITで企業の成長を加速させるための方法とは。
「ビジネスのデジタル化にはスピード感が欠かせない」――。そう考える企業が増え、るのに従い、情報システム部門に新たなミッションが課せられるケースが増えている。既存システムの運用に加え、「新たなビジネス展開に向けた仕組みづくりを考えてほしい」というわけだ。
しかし、複雑化する企業システムを前に、途方に暮れている人も多いのではないだろうか。「運用管理業務は増える一方なのに人がなかなか増えない現状で、どうやって“攻め”と“守り”を両立すればいいのか、業務部門によるデジタルビジネス立ち上げに情シスはどう貢献すればいいのか……」
こうした課題を解決するためにはどんな方法があるのか、情報システム部門はまず、どこから手をつけたらいいのか――。ジャーナリストの松岡功氏が、「NEC Cloud Solutions」事業でクラウドサービスを担当する木村好孝氏とオンプレミスのクラウド基盤を担当する掛川哲司氏に、その解決策を聞いた。
松岡 ビジネスのデジタル化を素早く進めるためにクラウドを導入する企業が増えています。企業の情報システム部門はクラウドを導入するにあたってどこを注視しているのでしょうか。
木村 実は、情報システム部門のお客さまがクラウドに対して最も知りたいのは運用です。「NECは、自社のクラウドサービスをどのように運用管理しているのか」と聞かれることが本当に多く、それだけお客さまが既存システムの運用に随分苦労していることの現れだと思います。そこで、NECが実践している具体的な運用形態や改善方法を紹介すると、非常に喜ばれます。
掛川 私はオンプレミスのクラウド基盤を担当していますが、同じ状況ですね。当社は、クラウドサービスとオンプレミスの基盤技術や運用の知見を共通化しているのですが、情報システム部門のお客さまからは、「基盤技術より運用の話から聞きたい」と言われます。それだけ運用に対する問題意識が高いのでしょう。
松岡 それは興味深いですね。情報システム部門の仕事は、運用が8割、新たな取り組みが2割とも言われていますが、割合の大きい運用の効率化に対する問題意識が強いのでしょうか。
木村 そうだと思います。情報システム部門にとっては、システムの稼働環境がクラウドであれオンプレミスであれ、「運用を効率化すること」が共通課題です。そのため、私たちがクラウドサービスを提案する際には、まずオンプレミス環境も合わせた情報システム全体の運用を効率化することが非常に大事だと考えています。
掛川 私も同じです。お客さまから、NECのクラウド基盤に加えて「他社のクラウドサービスも利用したい」という要望をいただきます。当社はそうした統合運用も手掛けているので、「運用の話から聞きたい」という要望も増えてきました。これからは、マルチクラウドにも対応したハイブリッド環境における統合運用ニーズが高まっていくでしょう。
松岡 企業の情報システム部門は、クラウド導入も見据えつつ、どう運用を改善していけばよいのでしょうか。
木村 情報システム部門のお客さまにまず取り組んでいただきたいのは、既存システムの運用状況を詳細に把握することです。企業の情報システムが今抱えている最大の課題は、さまざまな業務システムが個別に稼働する「タテ割り」の状態です。これまで情報システム部門は、それぞれの業務部門の要求に応じて個別にシステムを用意せざるを得ませんでした。
本来は情報システム全体のガバナンスをしっかりと効かせたいところですが、現実としてはさまざまな業務システムが個別に稼働していて全体を把握するのが難しいわけです。さらに、システムごとに処理する業務の内容が異なっていても、共通する部分が多い運用まで個別に行われているケースが多々見受けられます。とても非効率的ですね。
このような状態の運用を改善するには、「タテのものをヨコにする」、すなわち、タテ割り状態になっている運用について、各システムで共通している部分は一元化し、システム全体に横断(ヨコに)して使えるようにします。
松岡 「タテのものをヨコにする」という表現は分かりやすいですね。その際に、クラウドの運用ノウハウを生かせるということですか。
木村 そうです。先ほどクラウドサービスとオンプレミスの基盤技術や運用に関する知見を共通化しているとお話ししましたが、要はクラウドサービスの運用にかかわる知見をオンプレミス環境の運用に活用して、効率化できるということです。そうなると、共通化された運用環境で必要なクラウドサービスを導入できるようになります。
情報システム部門にとって、やはりオンプレミスもクラウドも統一された考えに基づく運用環境にすることが、長年の運用の課題から脱却していくための最善の策でしょう。
掛川 情報システム部門は、新たな統合運用環境の下でシステム全体にガバナンスを効かせていけるようになるでしょう。2割にとどまっているといわれていた新たな取り組みのためのリソースをもっと多く割けるようになるはずです。こうした運用の改善を経て情報システム部門は、業務部門に対して各種のITサービスを提供する「社内のサービスプロバイダー」になっていくと思います。
また、業務部門の要望を受けるだけでなく、情報システム部門からも新しいサービスの提案ができるようになればいいですよね。クラウドはまさしく情報システム部門を“元気”にする格好のツールといえますね。
松岡 情報システム部門が社内のサービスプロバイダーになるという視点は、とても興味深いですね。そのベースが統合運用環境だとすれば、NEC Cloud Solutionsでは、情報システム部門に具体的にどのような支援をしていますか。
木村 NECでは、長年にわたってオンプレミスからアウトソーシング、そしてクラウドサービスを通じて培ってきた運用の知見を蓄積してきました。
例えば、最適なコストと運用を維持する運用体制をどう確立するか、自動化と効率化を推進するために運用ツールをどう活用するか、運用プロセスや運用業務設計によるルールをどう徹底させるか、システムやサービスの障害をどう未然に防ぐか――といったものです。
こうした運用の知見は、お客さまがクラウド導入を検討する際に提供しており、NECではこれを「運用のホワイトボックス化」と呼んでいます。具体的には、次の4つの支援策を用意しています。
これからクラウドの導入を検討していくお客さまには、1つ目として運用クリニックやクラウド移行計画を策定する「コンサルティング」、2つ目としてクラウド利用時のプラットフォーム運用やアプリケーション開発、運用業務における「運用標準化支援」といったサービスを提供しています。
業務部門がデジタルビジネスを始めるということは、グローバルにサービスビジネスを始めることにもつながります。NECはグローバルサービス事業を展開するにあたり、国際標準、国内標準、NECグループのベストプラクティスを統合したグローバルサービスマネジメント標準を定義しています。このノウハウもお客さまのサービスビジネス展開に役立てて頂けるかと考えています。
また、既にクラウドサービスの導入を決めているお客さまには、3つ目としてNEC Cloud IaaS/PaaSや他社クラウドのサービス導入を支援し、オンプレミスでクラウド技術を活用するお客さまには、4つ目としてNEC Cloud Systemに基づく「クラウド基盤構築支援」を提供しています。
お客さまには、ぜひこれらの支援策を活用していただき、まず運用の効率化を通じてクラウド導入よるコスト削減やスピードアップを図り、情報システム部門の持てるパワーを「社内のサービスプロバイダー」という役割の実現に向けて存分に発揮してほしいと思います。
掛川 オンプレミスでクラウド技術を活用していく仕組みとしては、NEC Cloud IaaS/PaaSとNEC Cloud Systemの間で統合運用ができるようになっています。
さらにIaaS/PaaSレイヤーについても、NEC Cloud IaaS/PaaSで適用されているOpenStackベースのスタンダード(STD)環境、VMwareベースのハイアベイラビリティ(HA)環境、開発・実行環境、AI(人工知能)やビッグデータ分析環境などを、NEC Cloud Systemでも同じように活用できます。
こうした「シームレスな利用環境」こそが、ハイブリッドクラウド時代における企業情報システムの最適な姿だと、NECでは考えています。ですから情報システム部門は、クラウドを上手に活用しながら社内のサービスプロバイダーとして躍動するためにも、まず運用の改善から始めることをお勧めします。
「OpenStack」だけでは実現できない“7割の要件”にどう対応する?
優れた柔軟性と拡張性から注目される「OpenStack」。導入企業が増える一方で、要件の多様さから大規模クラウドへの活用に二の足を踏む企業も少なくない。OSSのメリットを最大限に生かしつつ、これらの課題を解決する方法を紹介する。
デジタルビジネス実現への道「クラウド運用のホワイトボックス化 8つの極意」
デジタルビジネス早期立ち上げは、IT部門に課せられた新たなミッションだ。だが、限られたリソースでは、コストの8割を占める既存システム運用の見直しが欠かせない。そこで重要となるのが、クラウド運用のホワイトボックス化だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:日本電気株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2017年3月31日
優れた柔軟性と拡張性から注目される「OpenStack」。導入企業が増える一方で、要件の多様さから大規模クラウドへの活用に二の足を踏む企業も少なくない。OSSのメリットを最大限に生かしつつ、これらの課題を解決する方法を紹介する。
デジタルビジネス早期立ち上げは、IT部門に課せられた新たなミッションだ。だが、限られたリソースでは、コストの8割を占める既存システム運用の見直しが欠かせない。そこで重要となるのが、クラウド運用のホワイトボックス化だ。