従業員約300人、中小企業のアイティメディアが「Windows 10」を導入した理由アイティメディアの「Windows 10」導入物語(前編)

リリースから約1年半がたったマイクロソフトのOS「Windows 10」。最近ではその有用性が認知され、導入する企業が増えてきています。実はアイティメディアも2016年4月からWindows 10を導入しました。その理由と苦労した点について、情シス担当に聞いてみました。

» 2017年04月19日 10時00分 公開
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 リリースから約1年半がたったマイクロソフトのOS「Windows 10」。OSアップグレード方法やアプリストアなど、過去のWindowsと異なる点も多く、リリース当初は様子を見る企業が多かったようです。しかし、最近ではその有用性が認知され、導入する企業が増えてきています。

 実は「ITmedia」を運営しているアイティメディアも、2016年の4月からWindows 10を部分的に導入し始めました。なぜこのタイミングで導入に踏み切ったのか。導入に際して不安や苦労はなかったのか。アイティメディアで情報システムを担当する石野に話を聞いてみました。

Windows 10導入を1年前倒し、一体なぜ?

photo アイティメディア 総務部 石野博之

――アイティメディアでは、2016年4月からWindows 10を導入したPCを貸与し始めましたよね。このタイミングでOSを切り替えたのはなぜでしょうか?

石野: アイティメディアには全体で約300台のノートPCがあるのですが、そのOSは全てWindows 7でした。Windows 7の延長サポートが切れるのが2020年1月14日なので、そのタイミングまでに全てのマシンを移行し終える必要があります。

 ウチではPCのリプレースが3年周期なので、2017年4月に導入するPCはWindows 10にしなければならない。「そのタイミングで移行すればいいかな」と思っていたのですが、マイクロソフトがサポートポリシーを変更したことで状況が変わりました。

――第6世代Coreプロセッサ(開発コード名:Skylake)搭載機における「Windows 7/8.1」のサポート期間が短くなった件ですね。

石野: そうです。その後、マイクロソフトはそのポリシーを撤回しましたが、旧OSのサポートポリシーが変更になるリスクを考え、Windows 10の導入を本気で考え始めました。アイティメディアの場合、必要なサポートはOSのバグフィックスとセキュリティホール対策くらいですが、PCのリプレースまでにそれが無くなってしまうのは厳しい。

 ちょうどそのころに、Surface Pro 4を試す機会があったのもWindows 10を検討する後押しになりました。アプリケーションの動作検証までできたのが良かったですね。そして2016年4月からWindows 10 Proを搭載したマシンを貸与し始めました。

Windows 10を導入する「3つのメリット」

――Windows 10について、使ってみてどう思いました?

石野: 普通に“ちゃんと使える”なというのが第一の印象でしたね。もちろんOSをWindows 10に変えただけで何かが劇的に変わるというわけではないのですが、少なくともWindows 10にしておくことで今後メリットになると思った点が3つありました。

 まずは「BitLocker」です。Windows 7では「Ultimate」か「Enterprise」のみで使えた機能ですが、Windows 10では、OEM向けにプリインストールされるPro版でも使えるようになりました。これによって、今までは暗号化ソフトを別途購入していたのですが、BitLockerでまかなえるようになったわけです。

 もちろん、ちゃんとした管理ツールがあるソフトウェアの方がいいという考え方もありますが、ウチの場合はユーザーがパスワードを忘れたときの対処ができれば十分で、運用上問題がなさそうだったので、こちらを優先できそうだなと。

 2つ目はWindows Hello for BusinessやSAML(Security Assertion Markup Language)での認証に対応できることですね。ウチは今、Windowsをドメインに入れずに使っています。Macを使っている人もいて、ドメインに入れることで便利になるアプリケーションがファイルサーバくらいしかないのと、無線LANしか接続環境がないので、ドメインに入れたところでログインスクリプトがちゃんと走るか確証が持てないのが理由です。

 ただ、Azure ADとWindows Hello for Businessで生体認証を利用することで、いろいろな複数のサービスに1つのIDでセキュアにログオンできることから、ユーザーの認証を今後楽にしてあげられるかもしれない。それを統合管理しようとか、クラウドサービスでも活用にしようとなると大変なんですけど、新しい認証をサポートし始めた点が好印象でした。

photo Windows Hello for Businessによる生体認証を、石野は高く評価している

 3つ目はその延長で、Office 365やMicrosoftのクラウドサービスを使う場合は、Windows 10にしておいた方が絶対楽だという点ですね。アイティメディアではまだOffice 365は使っていませんが、今社員の多くが使っているOffice 2007のサポート終了(2017年10月)が迫っていて、それに合わせてOffice 365を導入するか考えています。

 こうした理由もあって、OS変更のデメリットがないなら変えておこうか、というのが正直な理由です。いつかやらなければいけないことなので、早めに動いておこうと考えたわけですね。

検証、導入時に苦労したポイントは?

――「Surface Pro 4」を使ったときにWindows 10の検証をしたということですが、どれだけ時間がかかったんですか?

石野: 2015年の11月末ぐらいから始めて、年末くらいには今のアプリのままで問題ないということが分かっていました。もともとWeb企業なので、ブラウザベースのアプリが多くてOSに依存するアプリが少ないのが要因として大きかったです。一部IEベースの業務アプリがあったのですが、それも大きな問題はありませんでした。

 もし困るとしたら、ユーザーから見てスタートメニューが変わるくらいかなと思っていましたが、実際に変えてみたところ、そういう質問はありませんでした。みんな普通に受け入れているなという印象です。

――Windows 10を導入する際に問題はありましたか?

石野: 機能自体が悪いわけではないけど、ウチのセキュリティの考え方に沿わない機能は確かにありました。例えばOneDrive。法人向けのOneDrive for businessを買っているわけではないので、個人のOneDriveに何でもかんでも保存するのを会社として推奨するかというとそうではありません。

 Windows 10の良いところとして、認証がさまざまな方法でできて楽になる点があるのですが、Windows Hello for BusinessでMicrosoftアカウントと統合されてしまうと、会社でそこの統制が取れなくなってしまいます。なので、現時点ではMicrosoftアカウントでの認証っていうのを止めているところが大きなポイントです。それ以外、特に制限している機能はないですね。

 アイティメディアの場合、ストアアプリも、編集の人がレビューで試せなかったら困りますし。だからユーザー自身に管理権限も渡しています。知識があれば変えられる状況ではありますが、最低限守るべき設定をした上で渡して、設定がされていることをチェックする管理ソフトウェアを入れて対処しています。ウチの会社はITリテラシーが高い人が多いので、移行時のトラブルが少ないというのはあると思います。

「Enterprise」ではなく「Pro」を選んだ理由

――アイティメディアでは、Windows 10 EnterpriseではなくProのプリインストールマシンを使っていますよね。これには何か理由があるんですか?

石野: 正直なところ、全体で300台くらいだと自分たちでキッティングしてしまった方が早いというのがあるんですよね。一度に入れ替えるのが100台未満の年もありますし、ウチは幾つかの機種から選んでもらっているので、機種ごとだとさらに台数は少なくなります。これが何千台というような規模感だったら、間違いなくEnterprise版でイメージを作って展開する方が楽でしょうけれど。

photophoto アイティメディアでは「VAIO S13」(左)や、Dellの「Latitude E5280」(右)など、複数のPCが選べるようになっている

 あとキッティングでインストールするような、デスクトップアプリケーションがOfficeくらいしかなかったり、部ごとの細かな設定がないというのもありますね。そういうのがある企業はイメージを作ってしまった方が早いでしょう。

 アイティメディアでは2017年度から、社員が選べるPCのラインアップに2in1型の機種を取り入れました。今後はさまざまな機種を取り入れて、もっと社員の生産性が上がるような仕組みが作れればと思っています。


 タイミング良くSurface Pro 4を使えたという“運”もありますが、計画的にWindows 10の検証を進めて部分導入へと踏み切った石野。自宅のPCでは、仮想マシン上でWindows 10のInsider Preview(開発中のバージョン)を使って、新バージョンの検証をしているそうです。

 アイティメディアの「Windows 10」導入物語、次回の中編では、石野が日本マイクロソフトの方とともに、社内のワークスタイル改革や、中小企業のWindowsデバイス選びのポイントについて考えていきます(中編へ)。

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提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2017年5月26日

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