ディシジョンオートメーションは「ビジネスのデジタル化」の救世主となる存在か?

「ビジネスや業務をデジタル化したいが、うまくいかない」と悩む企業は少なくない。昨今ではRPAなども注目を浴びているが、単純作業だけではなく、人間の“判断”の部分もデジタル化するべきだ――という考え方が広まりつつある。それが「ディシジョンオートメーション」だ。

» 2017年11月30日 10時00分 公開
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日本企業に“デジタルトランスフォーメーション”は本当に必要か?

 ヒトやモノがデジタルデータで直接つながり、地域や時間、移動といったさまざまな制約を気にすることなく、新たな仕組みやビジネス価値を作り出す――。昨今、エンタープライズIT業界では、これからの社会や企業に大きなインパクトをもたらす“メガトレンド”として「デジタルトランスフォーメーション」が注目されている。

 デジタルトランスフォーメーションが注目される理由は、ITの進化が既存のビジネスモデルやプロセスを破壊するケースが出てきているからだ。既存ビジネスを脅かす、UBerやAirBnBなどの事例が盛んに取り上げられ、「変わることができなければ、人も企業も時代に取り残され、淘汰されてしまう……」といった“不安をあおる言葉”があふれている。

 確かに時代に合わせて、企業が変わらなければいけない面はあるだろう。しかし、新たなビジネスモデルを作ることだけが、企業に必要な「イノベーション」ではない。刺激的な言葉で誤解してしまいがちだが、イノベーションの本来の目的は、新たなビジネスチャンスを得たり、売上を高めたりすることで、競争優位や変化する環境への適応性を得ることにある。

 その観点で考えれば、既存ビジネスや業務のデジタル化を進めることで生産性を高めたり、意志決定の高速化を図ったりといった新たな価値を創ることも、立派な“イノベーション”といえるだろう。欧米の企業と比べ、経営層よりも現場に知見やノウハウがたまりやすい日本企業にとっては、この方が、プロジェクトが進みやすい面もある。

 自らが市場の「ゲームチェンジャー」にならずとも、「変化するゲームに適応した企業」になること。これも企業が成長し、生き残るために有効なイノベーション、つまりはデジタルトランスフォーメーションではないか。肩肘を張らずに、今の業務やビジネスをまっさらな目で見直してみる。これがトランスフォーメーションへの第一歩だ。

「RPA」はビジネスのデジタル化を促す取り組みの1つだが……

 そうした変革の一手段として、業務のデジタル化や自動化を進める技術「RPA(Robotic Process Automation)」が注目されている。複数ファイルをまたぐ転記や、情報収集を目的としたWebページ巡回などのバックオフィス系定型業務をソフトウェアに代行させることで業務効率化を図る。金融業界ではメガバンクを中心に、RPAツールの大規模な導入事例が増えており、一定の成果を挙げている企業も多い。

 誰にでもできる単純作業が自動化によって劇的に効率化され、導入コストもそれほど高くはない。そんなRPAは、現場にノウハウがある日本企業が自動化を進めるにはいい方法だ。浮いたリソースやコストを新規ビジネスの創出など、より付加価値の高い業務に割り当てられるようになるのもメリットの1つだろう。

 しかし、数多くの事例を見ていると、RPAにはデメリットや限界があることも分かってくる。RPAツールによって業務を自動化するには、「入力データを整理する」「複雑に絡み合う作業を単純化していく」といった事前の準備が必要になる。仕様やボタンの位置が少し異なるだけでも、簡単にRPAツールはエラーを起こしてしまうからだ。プログラムされたロボットは文字通り、決まった動きしかできないため“例外”が認められない。

 こうなると、業務を自動化したはずが、逆に作業が増えてしまい、結局、人がこなすべき業務が減らない――という矛盾が生じてしまう。これが原因で、ビジネスのデジタル化や、働き方改革に失敗する企業も少なくないのが現状だ。

ディシジョンオートメーションは「ビジネスのデジタル化」の救世主となる存在か?

 RPAツールを使ったデジタル化に失敗する大きな理由は、人間の能力を甘く見てしまっているところにある。

 人間の思考というのは、「Aというパターンならばこう」「Bというパターンならこう」というように単純化できる部分は意外と少ない。逆に、無限にある状況を勘や経験で絞り込み、“曖昧”な形で判断し、処理できることが人間の強みだといえる。人工知能が「雑談」に弱い(雑談ができているように見えても、実は決まったパターンで答えていたり、会話がかみ合っていなかったりする)というのも、それが理由である。

 そのため、業務を真にデジタル化しようとすれば、この“人間の判断のプロセス”にアプローチできなければ効果は上がりにくいのだ。

 この、“人間の判断のプロセス”をデジタル化できないか――という考え方が、欧米を中心に広がりつつある。それが「ディシジョンオートメーション(Decision Automation)」と呼ばれる概念だ。RPAが手作業を自動化するのに対し、ディシジョンオートメーションは判断や専門知識をデジタル化する1つの方法だ。

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 先ほども挙げたように、人間の判断というものは複雑で、場合分けとフローなどで単純にプログラム化しようとすると膨大なコードが必要になり、一度作り上げると自由度が少ないものになってしまいがちだ。変化が激しいビジネス分野であれば、判断を構成するルールの追加や変更の頻度は高くなる。

 ルールに沿って自動化を試みるという点では、一昔前に流行した「BPM(Business Process Management)」や「BPR(Business Process Reengineering)」などと似ているようにも見えるが、最初にルールをガチガチに作り込んで、業務の全体最適を目指すのとは異なり、実業務に即した形でルールを柔軟に追加、削除できる“部分最適”のアプローチに向く。

 業務部門にとって扱いやすい考え方というところも大きなポイントだ。現場にノウハウがたまっている状況を考えると、激しい環境の変化にさらされている昨今の企業には、ディシジョンオートメーションの方がうまく回りそうな予感はある。

 とはいえ、ディシジョンオートメーションが“完全無欠”のアプローチというわけではない。ビジネスに影響のある数的な要素は何があるのか、それぞれの要素が判断にどのような影響を及ぼすのか。そして、各要素がどれだけ変われば、判断にどれだけの影響を及ぼすかをしっかりと数値化するだけの力が必要だ。業務部門の万人が習熟できるとは言い難い。

 だが、「あいまいな“判断の中身”をひも解き、可視化・標準化すること」のビジネスに与える影響は計り知れない。ディシジョンオートメーションは人間の能力に一歩近づく考え方と言えるだろう。

ディシジョンオートメーションで大きな成果を挙げた企業も

photo アシスト 東日本技術本部 情報基盤技術統括部 プログレス推進部 課長 佐藤彰広氏

 ディシジョンオートメーションのソリューション群「AEDAN」を提供しているアシストによると、このアプローチで既に大きな実績を挙げている企業も少なくないという。その1つがある生命保険会社だ。

 「その企業では、新契約の引き受け査定の業務をディシジョンオートメーションによって自動化しています。データの確認や不備があったときの対応など、各判断を構成するルールを、数千という膨大な数の業務ロジックに落とし込みました。

 これにより、保険の新規受付件数が3倍以上に増加したにもかかわらず、申し込みの受付から、契約成立までの時間を従来の約半分に短縮することに成功しました。このスピードは業界では最短クラスとのことです」(アシスト 東日本技術本部 情報基盤技術統括部 プログレス推進部 課長 佐藤彰広氏)

 また、このほかにも経理部門における売上計算業務を自動化した例などもあるという。複雑な判断を要する経理業務を、全て人力で行っていたため、作業ミスも少なくなかったが、業務負荷を大幅に削減し、売上計算ミスもゼロになったそうだ。

 どちらの事例も、トップダウンではなく現場のミドル層からスタートし、徐々にトップを巻き込みながら大きな取り組みへと発展していったといい、現場主導のデジタルトランスフォーメーションの好例といえる。佐藤氏によると、このほかにも「最大化」や「割り当て」「リスク管理」「選定」といった判断にディシジョンオートメーションは向くそうだ。

 「事例が増えれば増えるほど、判断を自動化するためのロジックは増えていきます。今後、ディシジョンオートメーションによって、自動化できる判断というものは増えていくと思われます」(佐藤氏)

 「RPAではあまり効果が上がらなかった」「現場主導で起こせるデジタルトランスフォーメーションを検討したい」といったニーズを持つ企業には、ディシジョンオートメーションは大きな可能性を秘めたアプローチといえるだろう。

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提供:株式会社アシスト
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2017年12月29日

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