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» 2019年03月25日 10時00分 公開

「現場のチカラ」が切り開く業務改革 ボトムアップ重視でRPA活用に挑むジュピターテレコム(J:COM)

導入が手軽な分、取り組みの巧拙でプロジェクトの成否が分かれやすいRPA。特に現場をどのように巻き込むかは各社が工夫しているところだ。J:COMでは、経営企画部が社内に横断的組織を立ち上げ、時に外部の力を借りながら、RPAの導入を契機としたボトムアップでの業務改革の取り組みを進めている。

[PR/ITmedia]
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 ソフトウェアロボットが、人間の代わりに業務を代替してくれる「RPA(Robotic Process Automation)」。生産性の向上が企業の大きな課題になりつつある今、RPAを導入する企業は業種を問わず増えている。

 業務システム全般に当てはまる話ではあるが、ことRPAにおいては、現場部門の協力が不可欠だろう。自動化できる業務の洗い出しから、ロボットの開発まで、開発ベンダーや一部の部門だけがいくら頑張っても、プロジェクトは失敗に終わるのではないか。現場をどのように巻き込むか――導入に成功した企業はさまざまな工夫をしている。

 国内最大手のケーブルテレビ事業、番組供給事業統括運営会社のジュピターテレコム(J:COM)もそんな1社。同社は、経営企画部が旗を振り、業務改革のために社内を横断する組織を立ち上げ、「挑戦を楽しみながら、互いに切磋琢磨する社内環境づくり」を行うことで、各現場が自主的に改善を図っていく取り組みを支援している。

情報システム部門よりも経営企画部よりも、現場が先に動いていた

 J:COMがRPAという言葉を耳にしたのは2016年のこと。業績は順調であったが、多くの企業が課題として抱えがちな人員不足への対応や、生産性の向上が急務になりつつあった。また、世間ではデジタルオートメーションに挑戦する企業もちらほら出てきていた。

 RPAについては当時、日本国内はもちろん、海外でも成熟した成功事例は少なく、先行した企業が果敢に挑戦していた状況だ。経営企画部では、全社的な業務効率を向上させるための取り組みをさまざまな切り口から検討していたが、ツールの1つであるRPAにまでは手が回っていなかった。

 「経営企画部として業務改革を進めたかった中で、その使いやすさからRPAに注目はしていました。しかしながら、当社にはソフトウェア技術者が必ずしも多い訳ではないため、導入の仕方には工夫が必要だとも感じていました」と経営企画部 副部長の尾崎さんは話す。

 こうした中、関心の高い一部の部署が自らIT部隊を説得し、開拓者的にRPAの導入を進めていた事実を知ることになる。“開拓者”として先陣を切っていたのは、「オペレーションセンター(個人客が加入する際の手続き、金融機関からの引き落とし処理などを行う)」と「資材調達(サービスを提供するためのネットワーク構成機器を調達する)」の2つの部署だった。どちらも社内初の試みとして同じタイミングで進められていた。

 もちろん、立ち上げまでの苦労もあったが、2017年度の活動に対する社内表彰において、RPAを活用したオペレーションセンターの業務改革の取り組みが、果敢な「挑戦」として表彰された。これをきっかけに、全社でRPAが知られていくことになる。

現場の自主性をサポートする組合活動「ちょいデジ」の誕生

photo RPAトレーニングの早期修了者3人を組合活動への貢献として組合長(本宮執行役員、写真右端)から表彰

 先行事例を見た他部署から「ウチでもRPAを」という声が出てくるようになったため、経営企画部としては、ツールとしてRPAを活用することをきっかけとした業務改革の促進ができないか、と考え始めた。

 その一方で、他社の事例において、必ずしも取り組みの巧拙から導入がうまくいかない例があることも認識していた。そのため、社内で広く展開するにあたっては、IT統制や内部統制などへの影響や、採算などを検討する仕組みが必要と考え、経営企画部が主体となるRPA化推進の全社プロジェクトを立ち上げることにした。

 ただし、RPAによる“現場オペレーションの自動化”を進めるには、実際に業務を行っている方々のニーズをくむ必要があるため、このプロジェクトをあえてボトムアップ型で取り組むことにし、その推進母体として「ちょいデジ協同組合」を2018年6月に立ち上げた。

 「本来の目的は業務改革であり、締めるところは真面目に締めないと、RPAの導入が目的と乖離してしまうことがあり得ると考えています。とはいえ“現場オペレーションの自動化”ですので、あまりに堅苦しい取り組みになってしまうと、現場の皆さんの声も捉えられなくなってしまうというジレンマがありました」(尾崎さん)。

 この「しっかりした全社の統制」と「現場から声を上げやすい運営」を両立させるために“組合”の形式、すなわち「相互扶助のための部署横断的な組織」を作ったという。

 ちょいデジ協同組合では、参加者が声を上げやすいよう、「まずやってみる」「プロセス(挑戦)を褒める」「転んでもただでは起きない」という3つの方針を掲げ、各人が情報を共有しやすい環境を用意している。また、部署として正式に人をアサインすることを参画の条件としたため、若年層や非管理職の人材、実運用を担う担当者が、組織長が認知する中で柔軟に活動に参加することが可能となった。

 組合活動では、定例会を開催し、案件の相談や開発状況の共有、統制・社内ルールの周知、そしてプロジェクト推進のアドバイスなどを行っている。更に、毎月勉強会を開催して、導入者による苦労話や留意点を共有する場も設けているという。成功事例はもちろん、失敗やプロジェクトの停滞、担当者ならではの悩み相談も、組合員全体にとっての貴重な経験知となっている。

 また、経営企画部はあくまでも黒子であり、各活動は構成員の自主的な動きによって成り立っている。組合員からの要望を“現場の声”として取り入れて運営した上で、経営層へ状況を報告していく役割のみを担っているという。

photo ちょいデジ協同組合で利用している外部セミナーの様子

社内周知に「マンガ」を活用、社内展示会も開催

photo 経営企画部の活動や中期計画を説明するマンガ連載の中で「ちょいデジ」を紹介。参加への心理的なハードルを下げている

 経営企画部は、組合活動以外にもRPAを活用した業務改革の可能性を更に広げていくため、社員約1万8000人が利用する社内イントラネット上で経営企画部が連載するマンガや、定期で発行する社内報の媒体を活用して「RPAとは何か」「どういった活動をしているか」等を紹介した。こうした丁寧な広報、周知活動で認知がさらに進み、組合への問い合わせや参加者は増えているという。

 さらに、組合活動や周知の取り組みを通じて“RPAのイメージが湧きにくい”“興味はあるが、誰に相談したらいいか分からない”といった声があったことから、実際のソリューションなどを紹介する「社内展示会」を開催することにした。展示会ではベンダー各社の協力のもと、実際に目で見て、手で触れ、具体的に案件を相談するという機会を用意。その結果、組合の構成員はさらに増え、2019年3月時点で約130人になったそうだ。

 こうした裾野の広がりから、検討を始めた案件は数多く生まれた。現在は、PoCの実施や精査を通じて、効果の高そうな案件を抽出し、PoC含め現在既に41件の開発(8万時間相当)が進んでいるという。

photo 社内展示会「ちょいデジEXPO」の様子

社内セミナーも活用、UiPathオンライントレーニング修了者も続々

 会社としては複数のツールを活用することを前提としているが、さまざまな切り口から評価した結果、現在主力として活用しているのが「UiPath」だ。豊富な機能、トータルコストの面で優れていると考えたため、導入部署がツール選定する際に組合として推奨している。

 PoCを通じて把握したことでもあるが、中長期的には運用コスト改善のために一定程度の内製化が必要であり、コーディングレス開発も欠かせない要件となっていたことも選定の理由の1つとなっている。「あくまでもツールであるため、ユーザーがUiPath以外のツールを選ぶ余地も残してあります。教育プログラムも充実しているため、現状大きな不満はありません」(尾崎さん)

 RPAのROIを高めるためには、要件定義から開発のプロセスを一部内製化することが避けて通れない。従って、ツールの「教育プログラム」が充実していることも重要なポイントとなる。

 この教育プログラムとして、UiPath導入時に提案を受けたのが、SCSKサービスウェアが提供している「外部セミナー」だ。現在、UiPathのトレーニングプログラムにJ:COMの各部署から複数の社員を組合として派遣しているという。

 プログラムは入門編と基礎編に分かれており、入門編では4体のロボットを開発できるが、少なくとも基礎知識までを学ぶことで、コーディングはせずとも、要件定義や業務フローの可視化など、業務効率化を進めるための知識を得られる機会となっているそうだ。

 「始めに2人ほど受講させてみたところ評価が高かったため、参加人数が多い場合はJ:COM社員だけのセミナーも開催してもらっています。運用保守など、導入検討時に見えていなかったポイントについての気付きの機会にもなっているようです」(尾崎さん)

photo SCSKサービスウェアが提供している、UiPathのトレーニングプログラムのテキスト。J:COMでも、受講者からの評価が高いという

 現在、組合のメンバーには、RPAの導入が業務改革につながっていくよう、可能な限り入門編の受講を勧めている。現時点で受講予定者は90人を超え、メンバーの大半が受講できた状態だという。更に今後は、よりレベルの高い、RPAを実際に活用するための業務アセスメントの手法や、実業務の中で開発までを手掛けることも、意欲的なメンバーには機会を提供したいと考えているという。

 「基礎編の受講者には、受講から3カ月以内に、UiPathのオンライントレーニング『RPA Developer Foundation』の修了を目指してもらっています。既に7人の社員が社内で『RPA Developer Foundation Diploma』を取得しました。年度内に10人以上の修了者が出ることを期待しています」(尾崎さん)

 関東圏以外でもSCSKサービスウェアのセミナーは開催されているため、J:COMの全国の拠点から、参加しやすい開催場所のセミナーへ参加してもらっているという。

RPAの導入は業務改革のあくまでも「入口」

 同社のRPAの活用は、今後組合での活動を中心に全社展開、本格導入を進めていく途上にあるが、事務局の経営企画部では、本来の目的である「業務改革」に向け、現在次の一手を考えている。

photo ジュピターテレコム 経営企画部 副部長の尾崎仁さん

 「導入までのさまざまな議論、検討を経て、RPAは“あくまでも入口でしかない”ことに改めて気付きました。あくまでツールではありますが、その効果を最大化するためには、導入や運用にかかるコストをより細かく見るだけでなく、より規模の大きい自動化や、業務そのものを止めて、シンプルにしていくことも重要だと考えています」(尾崎さん)

 その目的を達成するためには、業務フロー全体を理解して整理できる人材を増やす必要がある。そのために、尾崎さんはSCSKサービスウェアが提供する「アセスメントトレーニング」の導入も検討している。

 RPAを導入するまでの前準備、すなわち、業務プロセスを可視化し、その目的を確認すること、そしてその最適化を図ること。こうしたコンサルティング的な事前の検討は、業務改革としての効果を最大化するために、極めて重要だ。

 「そもそも、この業務を継続する必要性はあるのか」「RPAを使う必要があるのか」「単なるツールの導入や置き換えではなく、もっと効率的にならないか」「自動化した場合の中長期的なメリットとデメリットは」――。このような検討ポイントでの判断を見誤ると、本来の目的を達成できないプロジェクトとなる恐れがある。アセスメントトレーニングは、RPA導入を契機とした“IT以外”の部分をも学べるセミナーとして有効だと考えているそうだ。

 まだ初期段階であるため、外部のコンサルタントに任せている部分も多いが、今後、自動化ツールとしてRPAを広く活用していく際、最後はこの部分がボトルネックになる。業務部門のメンバーがコンサルティングも行えるようになる、ここまで行けば「RPAを道具として使いこなすことができるようになった」と十分いえるのではないか。

 「現在のボトムアップの取り組みが、いずれ部署全体、全社に広がれば、時間がかかってもきっと自由自在にRPAを道具として使いこなしていく時代が来ると思っています。社員自らがデジタル技術を道具として活用し、自発的に業務を改善できるようになるのが理想ですね」(尾崎さん)

 社員が自ら業務改革を進めていくこと。J:COMが挑戦するRPA導入をきっかけとした取り組みの先にあるのは、社員の意欲を高める「風土改革」につながるのではないか。現場の自主性を生かし、時には外部の力を借りながら、変革を進めていく、同社の事例が参考になる企業は多いのではないか。

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提供:SCSKサービスウェア株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2019年4月24日

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