デジタルトランスフォーメーションの潮流や少子高齢化、人手不足を背景に、急速に企業導入が進むRPA。だがこれに伴い、RPAが誰にも管理されない“野良ロボット”化し、ガバナンスやセキュリティ面のリスクを増大させてしまう問題も増え続けている。これに対し、「ビジネスへの貢献」が強く求められているIT部門としては、どのような対応ができるのだろうか?――伊藤忠テクノソリューションズ(以下CTC)と日立製作所に、一つの“具体策”を聞いた。
デジタルトランスフォーメーション(DX)トレンドが進展し、IT部門においても、迅速なビジネス展開を支えるインフラ運用の一層の効率性・確実性に加え、「ビジネスへの貢献」が最重要課題の一つとなっている。
こうした状況について、多くのシステム運用現場を支援しているCTCの渥美秀彦氏は、「IT部門には、これまでのようにシステムの安定運用を守るだけではなく、“攻める役割”が強く求められるようになっています」と指摘する。
「もちろん、IT部門自体は直接的な利益を生むわけではありません。ただ、運用効率化などによってコスト削減を進めることは、利益を生み出す1つの手段です。仮に1億円のコストを削減できたら、それは1億円の利益を出したことに等しい。そうした貢献の仕方も含めて、IT部門自身が『稼ぎ出す力』をいかに獲得するかがますます重要になっていると考えます」(渥美氏)
統合システム運用管理「JP1」を長年にわたって提供している日立製作所においても、複雑化・大規模化したインフラの運用効率化に対するニーズは年々高まっているという。
日立製作所の黒田圭一氏も、「運用効率化による利益への貢献」に加え、「経営層やビジネス部門に対して、“より直接的に貢献できるプラスアルファの価値”を提供することが、IT部門のミッションとして一層重要な要素になっていると考えます」と強調する。
しかし、「ビジネスへの貢献」と一言で言っても、具体的に何をすればいいのか、「運用効率化」以外のアプローチを探すのはなかなか難しいのが現実だ。そんな中、CTCと日立製作所が共同で提案するのが、「ビジネスの現場における効率化と自動化」の支援だ。
「2019年1月23日に販売開始した『JP1 Version 12』では、企業導入が急速に進んでいるRPA(Robotic Process Automation)の運用管理を通じて、IT部門がビジネスに貢献できる仕組みを提案させていただいています」(黒田氏)
では、「IT部門が“ビジネスに貢献”できる仕組み」とは、具体的にはどのようなものなのだろうか? まず、JP1 Version 12には2つの新製品が加わった。1つは「JP1/Client Process Automation(以下、JP1/CPA)」だ。JP1/CPAは、RPAが実行する定型業務など、「クライアント環境におけるバックオフィス業務の自動化」を制御・監視する製品。RPAで行う業務はもちろん、表計算ソフトによるデータ集計や、ファイルやメールの送受信といったPCで行う他の業務も制御・監視できる。
もう1つは、JP1/CPAが実行する複数の業務の実行順序や実行状況を、一元管理するための連携製品、「JP1/Client Process Automation Option for Automatic Job Management System 3(以下、JP1/CPA Option for AJS3)」だ。これらを組み合わせることで、“基幹業務も含めた業務全体の自動化”を実現できる。
CTCでは、このJP1/CPAとJP1/CPA Option for AJS3に着目。RPAツールとしてグローバルで大きなシェアを持つ「UiPath」と連携させ、「バックオフィス業務を自動化するソリューション」を提供するという。
CTCの加悦良康氏は、RPAの導入が進んでいる背景として、大きく2つのポイントを指摘する。
「1つは人的リソースが限られている中、定型的な業務を迅速に行うことで『攻め』にかける時間を作り出すこと。もう1つは、業務の正確性を高めることです。社内業務はもちろん、社外の顧客に対しても少ない時間でより多くの業務をこなす必要性が高まっています。その分、人的ミスが生じやすくなっているわけですが、RPAを利用すればスピードと正確性を両立することができるのです」(加悦氏)
ただ、そうしたメリットを期待して、不用意にRPAを導入してしまった結果、思わぬ問題が生じてしまう例が後を絶たない。1つは作成したロボットを誰も管理しない“野良ロボット”の問題だ。管理されていないために、「セキュリティやガバナンス面のリスクが生じる」「ロボットの動作不良が原因で業務が遅滞/停止してしまう」「動作不良の原因を短時間で特定できない」といった問題が生じてしまう。
「業務を標準化・自動化するためのロボットが、かえって業務を属人化・ブラックボックス化させ、ビジネスの遂行を阻害してしまう格好です。これはRPAツールを単体で導入し、管理ツールを導入していないような小規模な環境で特に起こりがちな問題です」(加悦氏)
2つ目は、RPA化する業務が限られているために導入効果も限定的になってしまうこと。一般に、一つの業務が完了するまでには、一連のビジネスプロセスが部門を超えて連携していることが少なくない。その点、ある特定業務を選択してRPA化しても、他の業務とうまく連携できていないために、業務の迅速化・効率化にさほど効果が表れないという問題だ。
「これは各業務を、“点”では自動化できていても、“線”としてつながっていないために起こる問題です。点を線にするためには、RPA化されていない業務も含めて、一連のプロセス全体を連携・管理する必要があります。しかしRPAの管理ツールでは、RPA化した業務しか管理できません。こうした課題は中・大規模な組織になるほど顕在化する傾向にあります」(加悦氏)
CTCでは、具体的には2つのソリューションを提供する。1つは、UiPathロボットを単体(非管理の状態)で導入しているユーザーに向けた「小規模向けソリューション」だ。これはJP1からロボットのスケジュール管理(予実管理)を実施できるようにするもの。JP1からロボットのデマンド実行ができるため、都度、RPAの専用管理ツール使ってロボットにアクセスする必要がなくなる。特に既存のJP1ユーザーにとっては、使い慣れたツールでRPAも管理できるため、管理効率とコスト効率をともに高められる。
もう1つは、すでにUiPathの管理ツール「Orchestrator」を導入しているユーザーに向けた「中〜大規模向けソリューション」だ。こちらはOrchestratorの上にJP1をかぶせて管理するイメージとなる。
「これにより、JP1でRPAも含めた全システムを一元管理できるようになります。特に既存のJP1ユーザーはJP1/AJS3を使って、UiPathロボットのフローも1つのジョブとして登録し、ジョブネットとして実施・管理できるようになります。すなわち、システム運用管理で使い慣れたJP1のジョブスケジューラーからRPAも管理できるようになるのです。一方、既存のUiPathユーザーは、JP1でイベント(インシデント)管理が行えるようになります。また、ロボットの実行ログはJP1上で表示できるので、ロボットに動作不良が起きた場合の状況把握も容易に行えるようになります。これらの機能により、全ロボットを確実に管理し、安全に業務を遂行できる環境が整うのです」(加悦氏)
渥美氏は、JP1とUiPathを組み合わせる狙いと効果について、次のように話す。
「JP1のアドバンテージは、日本企業にとっての使いやすさにあると考えています。誕生してから四半世紀の歴史があり、ユーザーニーズを反映しながらバージョンを重ねてきたことから、日本企業特有の複雑な業務プロセスにも柔軟に対応できる統合運用管理ツールとなっています。さらにJP1/CPA、JP1/CPA Option for AJS3によってRPAの管理も可能になりました。これに世界シェアが高く、国内RPA市場を牽引しているUiPathを組み合わせることで、それぞれの長所を引き出すことができます。これにより、幅広いお客さまのニーズに対応できると考えています」(渥美氏)
CTCはJP1のリセラーとして国内トップクラスの実績を持つ。同時にUiPathについても国内屈指のリセラーとして市場を切り開いてきた実績がある。そうしたJP1とUiPathの豊富な導入・運用実績はもちろん、導入から保守、サポートまでをワンストップで提供できることは大きな強みと言えるだろう。加悦氏は、「業務部門だけではなく、IT部門内でもRPA活用を広げていくことが重要と考えます」と指摘する。
日立製作所の黒田氏は、最後にあらためて「IT部門によるビジネスへの貢献」の重要性を指摘した。
「JP1 Version 12では、『ビジネスに貢献するための付加価値を提供する』というコンセプトの下、さまざまな機能強化を行い、システム運用だけではなく、ビジネスの運用にまでカバー範囲を拡大しています。ビジネス部門のバックオフィス業務も含めてJP1のカバー範囲に加えたことはVersion 12の大きな特長です。今回の共同ソリューションによって、ぜひIT部門として“ビジネスへの貢献”を実現いただきたいと思います」
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提供:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社/株式会社日立製作所
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2019年4月24日