AIチャットbotを、社外の顧客向けではなく社内の問い合わせ対応に使う企業が増えている。市場シェアNo.1のAIチャットbotサービス「hitTO」を提供するジェナが、数多くの導入プロジェクトを通して見つけたAIチャットbotの活躍に必要な「成功のための3つのポイント」とは。
AIチャットbotを、社外の顧客向けではなく社内の問い合わせ対応に使う企業が増えている。例えば、情報システムや総務人事といった部門の社員は、社内システムの管理や総務、人事手続きなどの業務に加え、「各種申請の方法を知りたい」「使っているPCにトラブルが」といった問い合わせを社員から受けるケースが少なくない。AIチャットbotをうまく活用すれば、そうした問い合わせ対応に社員が忙殺されるのを防ぎ、かつ必要なときにいつでも即座に質問に答えられるというわけだ。
ただし、「いざAIチャットbotを導入しても、現場にうまく定着しない」「期待したほどの効果が出ない」といった悩みを抱える企業もある。一体何が成功と失敗を分けるのか。そんな疑問に、社内問い合わせ対応に特化したAIチャットbotサービス「hitTO」を手掛けるジェナの代表取締役、手塚康夫氏が答えた。同氏によれば、同社が今まで手掛けた150以上の導入プロジェクトを通して見えてきた、AIチャットbot活用の成功を支える重要なポイントが3つあるという。
2006年に創業したジェナでは、創業以来軸としてきたモバイルアプリの開発サービスに加え、2015年頃から人工知能(AI)のテクノロジーに着目し、2017年初頭にAIチャットbotサービス「hitTO」をリリース、今では業種や業態を問わずさまざまな企業で採用されている。ジェナの代表取締役、手塚康夫氏は「コミュニケーションが資産に変わる」と題するセッションを通じて、AIチャットbotの活用事例を紹介した。
AIへの注目が高まったきっかけの一つは「IBM Watson」だろう。ジェナはIBM Watson日本語版のリリース当初から「IBM Watson エコシステム・パートナー」としてAIチャットbotサービスを展開し、2017年から2018年にかけて、Watsonのビジネス展開に最も貢献したパートナーとして「Best Partner of the year」を2年連続で受賞し、2019年に行われたAIチャットbotサービスの調査では、市場シェアNo.1を獲得している。(注)
(注)出典:テクノ・システム・リサーチ「業務自動化ツールのマーケティング分析」
AIチャットbotについて、手塚氏は「人間が自然に話す言葉で話しかけたり、質問を入力したりすると、AIが質問の意図を解釈し、最適な答えを返してくれる」と説明した。
これまでの問い合わせ対応は、電話やメールを介して、知識やノウハウを持った「人」が行うことが多かった。これらの問い合わせ対応をAIチャットbotに肩代わりさせるメリットの一つは、問い合わせ対応コストを削減できることだ。また、ユーザー側にとっても、人による問い合わせ対応の場合は質問から回答を得るまでにいくばくかのタイムラグが発生しやすい一方、AIチャットbotからはリアルタイムに回答を得られるため、「回答を待っている間にも業務を止める必要がなく、仕事のスピードが上がる。休日や夜間でも対応してくれるので生産性向上につながる」(手塚氏)という。
さて、AIチャットbotというと、今まではどちらかというと顧客サポート向けという印象を持たれがちだった。確かにhitTOを採用した企業の中には、顧客からの問い合わせにうまく活用しているケースもある。だが、手塚氏によれば、同社が最も注目しているのは、「社内向け」の用途だ。
「情報システム部門やITヘルプデスクが受けている社内システムや利用デバイスなどに関する質問や、総務や人事がよく聞かれるような、結婚したり子供が生まれたりした際の手続き、あるいは出張手続きに関する問い合わせなど、社内のさまざまな問い合わせ業務の効率化にチャットbotが有効だと考えている」(手塚氏)
実際に同社が提供するhitTOのユーザー企業のうち約9割が「社内利用」の目的で活用していることが明らかになった。例えば、ITヘルプデスクにhitTOを活用している大京では、毎月1000件を超えていた電話による問い合わせ件数を30%削減する効果が得られたという。
さまざまな場面で活躍が期待されるAIチャットbotだが、手塚氏によると「お客さまとお話しする中で、しっかり成果を上げるには3つのポイントがあることが分かってきた」そうだ。
1つ目は、「回答精度の向上」だ。
チャットbotに質問しても適切な回答が得られなければ、ユーザーはそっぽを向いてしまう。「では、回答精度を上げるためにどうしたらいいか。通常はAI自体の精度に目が向きがちだが、一番重要なのは初期段階の適用業務の選定だ」と手塚氏は述べた。
例えば、総務や人事関連の問い合わせ対応をチャットbot化する際、「AIだから万能だろう」と何でもかんでも任せようとする場合がある。確かに、各種の申請や福利厚生規定のように、「頻繁に聞かれる内容で回答内容がシンプル」という、チャットbotが回答しやすい条件をそろえた問い合わせなら、問題なく対応できる可能性が高い。一方、社員から寄せられる質問が、社内でその分野に詳しい人間が詳しく聞かないと分からないような複雑な内容であれば、無理にチャットbotに答えさせようとするよりも、人間が対応した方が有効な場合もある。
「問い合わせの全てをチャットbotに答えさせるのではなく、適用領域をしっかり絞ることが、後々のチャットbotの回答精度に影響していく」(手塚氏)
2つ目のポイントは「管理工数の削減」だ。
AI全般にいえることではあるが、チャットbotは「一度作ったら終わり」ではない。「ユーザーから適切なフィードバックを受け、それを継続的に学習データに反映してメンテナンスしていくことが重要だ」と、手塚氏は語る。チャットbotにユーザーからのフィードバックを効率的に反映する仕組みを作らなければ、本来は業務の自動化や省力化のためにチャットbotを導入したはずが、学習データの運用作業などの業務の負担が増えてしまい、本末転倒な事態になりかねない。
そして3つ目のポイントは「利用率の向上」だ。
例えば、「社内ポータルや社内Wikiを導入してみたものの、思ったほど使われないまま終わってしまった」という経験はないだろうか。
「チャットbotは、ユーザーが日頃から使い慣れている『LINE』などのコミュニケーションツールと同じ感覚で使える。既存ツールと比較すると、『調べる』ではなく『聞く』という新しいユーザー体験に変わり、これが活用のハードルを大きく下げ、利用促進につながる。それを感じてもらうためにも、まずはいかにユーザーの認知度を上げ、使ってみてもらうかが大事だ」(手塚氏)
hitTOを先行して導入している企業の中には、ベルパークのように、質問に答えるオリジナルのキャラクターを作ることで、社員にとってより身近な存在としてチャットbotを展開、定着させているケースがある。こうした事例について「利用率を上げる取り組みを通じて社内の問い合わせ対応を効率化し、AIチャットbotのメリットを最大限に享受している」と、手塚氏は語った。
ジェナにはカスタマーサクセスチームが存在し、こうした活用促進の事例に加え、AIチャットbotをより使いこなすためのノウハウを提供し、導入企業のAIチャットbotの活用を支援しているという。
講演の後半、手塚氏はあらためてhitTOの特徴を紹介した。まずは、「Webブラウザベースで簡単にオリジナルのチャットbotを作成できること」だ。IBM Watsonに加え、ジェナが独自に開発した自然言語解析エンジン「hitTO AI」も搭載したハイブリッドのAIによって自動学習を実現し、高い精度を実現している。
hitTOが提供するAPIを活用すれば、他システムとの連携や国内で広く使われているビジネスチャットとの連携も可能だ。例えば、「LINE WORKS」や「Skype for Business」「Microsoft Teams」などからも手軽に質問できる。
そして、他にあまり見られない特徴が前述の「カスタマーサクセスチーム」による運用支援だ。学習データの作成支援に始まり、AIチャットbotの回答精度の向上、さらにはAIチャットbotを企業内に広く浸透させるための社内の取り組みを支援していく。「導入しても果たして本当に活用できるかどうか、不安に思う方もいるかもしれないが、専任のカスタマーサクセスチームが導入や活用の支援、成功企業のノウハウの共有を手厚く行うので安心してほしい」と手塚氏は述べた。
「メールや電話、あるいは口頭での会話など、今までは社内外でさまざまな形でコミュニケーションが行われ、コミュニケーションに含まれる業務のノウハウはバラバラに点在していた。これからは点在していたコミュニケーションに含まれるノウハウをAIチャットbotに集約・蓄積し、それを社内で活用すれば、業務効率化や生産性向上に大きく寄与する。AIチャットbotを通じて、コミュニケーションを資産に変える。そんな未来をわれわれは創りたい」(手塚氏)
手塚氏は、「AIチャットbotの活用を、真の意味での働き方改革につなげたい」と語り、講演を締めくくった。
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提供:株式会社ジェナ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2019年6月28日