経費精算業務が働き方改革の命運を握る――RPA×AIで3時間の重作業をどこまで短縮できたかくしゃくしゃな領収書も、透かし文字も正しくテキスト化

UiPathとファーストアカウンティングが、経費精算業務の自動化ソリューションを打ち出した。RPAと、くしゃくしゃの領収書も読み取れるという高度なAI OCRが組み合わさることで、経費申請のシーンや経理担当者の業務をどれほど変えられるのか。

» 2019年10月28日 10時00分 公開
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 定型作業の自動化によって業務の効率化を促すRPA(Robotic Process Automation)。だが、現時点で対象となるのは一部の作業にとどまり、その前後の「人が目で見て確認したり、判断したりする作業」が残る。

 より広い範囲を自動化して人材を付加価値の高い業務に振り分けたい。こうした希求から、RPAが不得意とする領域の自動化をAI(人工知能)との連携で実現するソリューションが登場し始めた。

 RPAベンダーのUiPathと、会計分野に特化したAI OCR(光学文字認識)ベンダーのファーストアカウンティングが共同開発した経費精算業務の自動化ソリューションも、その一つだ。ファーストアカウンティングのAI OCRは「くしゃくしゃになった領収書の内容も読み取れる」という高い文字認識精度を誇る。既に幾つかの企業で導入され、従業員と経理担当者の生産性が大きく向上した。

 両社が協業に至った背景から共同開発にかける思い、ソリューションの具体的なメリット、「RPA×AI」の未来まで、UiPath パートナーソリューション本部 本部長の中薗直幸氏と、ファーストアカウンティング 社長/CEOの森 啓太郎氏が語り合った。

ファーストアカウンティングの森 啓太郎氏(左)とUiPathの中薗直幸氏(右)

最先端のAIソリューションとUiPathの出会い

中薗氏: 共同開発した経費精算業務の自動化ソリューションは、スマートフォンのカメラやスキャナーで取り込んだ領収書の画像を、ファーストアカウンティングさんのAI OCR技術を使ってデータ化し、UiPathのRPAで経費精算システムやERPシステムに自動的に入力するというものです。

 この協業は、私と森さんの個人的な出会いがきっかけでしたよね。もともと私は大学でニューラルネットワークを専攻していて、AI技術の動向に人一倍興味を持っていました。中でもファーストアカウンティングさんのソリューションは、数あるAIベンダーの中でもいち早くROI(投資対効果)を出せるものと注目していました。

森氏: 中薗さんと知り合ったころはまだ研究開発段階でしたが、AIに対する理解がとても深い方だと分かり、「いつかは仕事でご一緒したいな」と思っていました。私たちの製品は、スキャンした領収書や請求書の内容を、深層学習を用いたOCR技術で高精度に読み取り、テキストデータに変換するというものです。

 その上で読み取ったデータを処理する手段が必要だと考えていました。当時からこの部分はRPAに頼るべきだと構想していましたが、自社で独自にRPAを開発する余裕はありません。RPAベンダーと組むことが近道でした。

 UiPathさんは、当社のお客さまからも「動作が極めて安定している」と高く評価されています。AI技術に詳しいエンジニアもそろっていて、日本でも多くの導入実績とノウハウを積まれています。

中薗氏: ありがとうございます。研究開発の段階から既にRPAとの連携を構想していたとは、実に高い先見性をお持ちですね。個人的にも経費精算の作業は最も面倒で嫌いな仕事の一つなので、それを楽にできるということは非常にうれしいことです。

森氏: 経費精算業務は「働き方改革の敵」のような存在ですよね。とても煩雑な作業なのに売り上げに直結するわけでもない。処理のために残業する人もいますし、日中に作業をするとなぜか怒られるということもある。こうした作業こそ、真っ先に自動化すべきなのです。

人手による経費精算作業を上回る精度を達成

中薗氏: ファーストアカウンティングさんは、2019年7月の「UiPath AI EXPO」にも出展していただきました。来場されたお客さまも製品の圧倒的な効果をじかに体験されたことでしょう。

森氏: おかげさまで当社ブースは大盛況でした。来場された方がお持ちの領収書を、未学習の状態で読み取ってみせると驚かれていました。

中薗氏: 私も試しましたよ。一般的なOCR技術では認識できそうにないほどポケットの中でくしゃくしゃになってしまった領収書も正しく読み取れたので「これはすごい」と感嘆したのを覚えています。

 例えばJRの領収書には「JR」という透かしが入っています。一般的なOCRは透かしの文字を誤認識してしまい、本来取るべき数字のデータが取れないのですが、ファーストアカウンティングさんのAI OCRは正しく判別して記入内容だけを読み取ります。とにかく精度の高さに驚かされました。

森氏: 当社は、会計に特化した深層学習のモデルを独自構築し、大量の教師データを継続的に学習させています。たとえ領収書が手書きであっても、日付や合計金額、電話番号、支払先といった必要な情報を高精度に読み取れるようにしているのです。

中薗氏: もう一つ驚いたのが、社名の代わりにロゴマークが記載された領収書でも、社名をテキストデータに変換できた点ですね。

森氏: さまざまな会社のロゴマークを取得できるネットワークを使って、ロゴから社名を読み取れるようにしています。特許も持っていますよ。

タクシーの領収書の読み取り結果

森氏: 金額や取引先などのデータを基にAI技術を使って勘定科目を推論し、仕訳分類まで完了できることも高く評価いただいています。仕訳科目は企業によって異なりますので、当社はお客さまごとに合った仕分けができるようAIを学習させ、科目選択をカスタマイズできるようにしています。簿記2級の方が行う仕訳の確認作業と比べても遜色ない品質を実現しています。

 さらに、読み取った結果と仕訳内容が正しいかどうかを経理部門がチェックする作業も自動化できるのです。経理担当者は「読み取りの信頼度が低い」とAIが判断した項目を確認するだけで済みます。実は領収書の読み取りよりも、入力の正確性を確保する「Check AI」による自動化の方がROIも高くなります。経理部門の作業工数を約半分にまで減らせます。

中薗氏: 工数削減だけでなく、経費精算の精度向上につながることもポイントですね。

森氏: 人手による経費精算の精度はせいぜい7割程度だといわれていますが、当社の技術によって9割程度まで引き上げられます。単に作業を自動化できるだけでなく、経費精算の精度も人手をはるかにしのいでいるので、まさに「経費精算のシンギュラリティ」を達成したと言えます。

3時間かかっていた経費精算作業を30分に短縮

中薗氏: ファーストアカウンティングさんの技術とUiPathのRPAを連携させることで、経理業務の自動化範囲はさらに広がり、大幅な生産性の向上を実現できます。既にSBモバイルサービスさんが経費精算業務の自動化ソリューションを導入していて、高い効果を上げています。

 実はUiPathでも一部の従業員が利用しています。まだ勘定科目の自動仕訳の仕組みは取り入れていませんが、従来3時間かかっていた経費精算作業を30分にまで短縮できています。自動仕訳を導入すれば、さらに15分程度まで短縮できると見込んでいます。

森氏: 経費精算にかかる時間をこれだけ短縮できれば、営業担当者はもう1件お客さま先に訪問できますよね。現場レベルではコスト削減というよりむしろ売り上げアップに貢献できることがメリットです。

 先ほども申し上げたように、コスト削減や生産性向上の効果が大きいのは、領収書の内容チェック作業を行う経理部門ですね。取引先との価格交渉や社内の構造改革といった本来やるべき仕事に注力できますし、作業をアウトソーシングしていた場合は外注費を削減できます。

経費精算業務の自動化ソリューションによる経理業務の自動化

中薗氏: 副次的な効果として、ソリューションの導入をきっかけに経理業務のフローを整理できることも挙げられますね。RPAやAIが業務改革のきっかけになるというケースは珍しくありません。当社やファーストアカウンティングさんは、導入企業に対してBPR(Business Process Re-engineering)に関するアドバイスをしています。

森氏: 情報システム部門といった導入担当者の価値を社内でアピールできる機会になるという見方もできますよ。業務現場からは「経費精算が楽になった」、経理部門からは「工数を大幅に削減できた」「ミスがなくなった」と感謝され、経営陣からは「コストを削減できた」と評価してもらえるわけです。情報システム部門は社内の人気者になれると思います。

RPA×AIを実際に体感できる「UiPath Go!」「UiPath x AI Lab Japan」も開設

中薗氏: 今回の経費精算自動化の仕組みはRPAツールの「UiPath」ですぐに利用できます。コンポーネントの形にまとめて、マーケットプレースの「UiPath Go!」に登録してありますので、ダウンロードしていただくことで誰でも簡単に試せるようになっています。

森氏: すぐに試せて効果を確認できることは大きなメリットですよね。多くの企業でAI技術を使ったソリューションのPoCが実施されていますが、案件化したものはごくわずかです。つまり企業はAIベンダーに対して、PoCのためだけに多額の費用を支払っているのです。

 案件化のめどがないPoCでお金を稼ぐようなビジネスモデルは健全ではありません。当社は基本的にPoCを行わず、導入当初に解約可能期間を設けて、本契約をスタートする提案をしています。UiPathさんと共同で開発したソリューションも手軽に試せる点が大きな強みだと考えています。

中薗氏: UiPathも2019年9月に、経費精算業務の自動化ソリューションをはじめ、RPAとAI技術を組み合わせたさまざまなソリューションを期間限定でお客さまに体感いただける「UiPath x AI Lab Japan」を開設しました。さらに、RPAとAIを実際に組み合わせて実証実験をしてみたいというお客さまには「PoC導入支援キャンペーン」も実施しています。RPAとAIの可能性は非常に広いのですが、実際に見て、体感してみて初めて価値が分かることも多いので、興味をお持ちの方はぜひ一度「UiPath x AI Lab Japan」に足を運んでいただき、キャンペーンにもお問い合わせいただければと思います。

RPA×AIを現実にして、人が創造的な価値を生み出せる世界へ

森氏: 経理担当者は本来、データ入力作業者ではなく「経営参謀」であることが理想です。UiPathさんとの協業によって理想を実現するための手段が提供できるようになりました。多くの経理担当者を定型作業から解放し、より価値の高い業務に専念できる環境を提供できればと考えています。

中薗氏: RPAベンダーの立場から見ても、ファーストアカウンティングさんのような「実際に効果を出せる」AIベンダーさんとの協業は、RPAの自動化範囲を拡大し、より高度な業務自動化のニーズに応えられるようになるという点でとても貴重な機会です。

 当社は現在、AI技術との連携に注力していますが、これを一つのモデルケースとして「RPA×AI」の具体的なソリューションを増やし、パートナーの方々とともにノウハウを積みながら、お客さまに提供していきたいと考えています。

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提供:UiPath株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2019年11月21日