ただの自動化ツールではない、RPAが“ビジネス判断を極限まで高速化”する未来とは

これまでデスクトップやシステムの作業を自動化する“ツール”として広がってきたRPAに、別の役割が加わろうとしていることをご存じだろうか。クラウド型RPA「WinActor Cast on Call」を開発したNTT-ATは、RPAで社内外のあらゆるデータをつなげ、意思決定にまで作用する機能を開発中だという。その動機と将来のビジョンとは。

» 2020年03月30日 10時00分 公開
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 人手不足解消や働き方改革の切り札として、各方面から大きな期待を集めているRPA。既に多くの企業が導入して成果を挙げているが、一方で効果が出ない場合もある。規模が小さな企業にとってはコスト面で導入のハードルが高いなど、課題は多かった。

 これらの課題を解決し、中堅・中小企業を含む幅広いユーザーにRPAのメリットを提供するだけでなく、RPAのさらなる可能性を示してみせたのが、NTTアドバンステクノロジ(以下、NTT-AT)が2019年9月に提供を始めた「WinActor Cast on Call」だ。これは、純国産のRPA製品として既に多くの実績を持つ「WinActor」を従量課金制でユーザーに提供するもの。専用のWebサイトで完成済みのシナリオを使用することで、シナリオ開発なしでRPAが使える。

RPAの新たな提供モデル「WinActor Cast on Call」はどうやって生まれたか?

 これまでコストやスキルの制約によりRPAの恩恵を受けられずにいた中堅・中小企業や地方自治体などから注目されているWinActor Cast on Callだが、一体どんな経緯で同サービスは生まれたのか。NTT-ATの山本顕範氏(AIロボティクス事業本部ディスラプティブイノベーションビジネスユニット ビジネスユニット長)によれば、「お客さまのことをもっとよく知りたい」という思いがそもそものきっかけを作ったという。

NTT-ATの山本顕範氏

 「お客さまがWinActorをどのように利用されているかを知るには、弊社の担当者が直接訪問してお話を伺うしか方法がありませんでした。そこで、ユーザーの利用実態をシステムから把握してサービス向上につなげる方法はないかと検討していました。クラウド上でシナリオを公開し、利用された回数を分析することでWinActorの利用形態を把握したいと考えたのが、WinActor Cast on Callの構想につながりました」(山本氏)

 WinActorを使った業務コンサルティングを行う企業などに山本氏らが話を聞いたところ、多くのユーザーが「帳票処理」「Excelでの数字集計」といった似た業務にWinActorを適用していることが分かったという。

 同じような業務の自動化のためにいちいちシナリオを作成しているというなら、そうした業務に対応したシナリオをNTT-ATで作成・公開し、多くの企業が共有できるようにすればいい――。そんなアイデアから生まれたのが、WinActor Cast on Callだった。

実は大企業でも中小企業でも変わらないニーズ

 RPAを本格的に導入するとなると、プロジェクトの規模に応じて数千万〜1億円以上の予算が必要になる。しかしWinActor Cast on Callは従量課金形式で安価に利用できるため、多額のIT予算を確保できない中堅・中小企業や地方自治体などから問い合わせが来ているという。2018年12月には、北海道をはじめ道内9自治体が参加し、WinActor Cast on Callを使った「共同利用型RPA」の実証実験を実施した。

NTT-ATの服部孝志氏

 同実証実験に当たり、何度も北海道の現場を訪れたというNTT-ATの服部孝志氏(AIロボティクス事業本部ディスラプティブイノベーションビジネスユニット 担当課長)は「現場の方がRPAを知らなくても、仕事を楽にしたいという思いがあれば興味を持ってくれます。最初は『RPAとは何なのか』を現場に説明し、理解していただくところから始まりました」と話す。

 「多くの地方自治体は現在、深刻な人手不足に悩まされています。今回の実証実験の背景には、そうした自治体が複数寄り集まって、共通業務を1つのサービスにまとめてRPAで自動処理すれば人手不足を解消できるのではないかとの狙いがありました。実際この実証実験では、職員の作業を最大で9割低減できることを確認でき、成果を公表すると他の自治体からも『ぜひうちでも試してみたい』と問い合わせを頂きました」(服部氏)

 この他にも、各業界で標準化された手続きや業務プロセスを定めているケース用のシナリオをWinActor Cast on Callで公開して企業間で共用すれば、業界全体で業務効率化を促進できる。

 現時点では中堅・中小企業のユーザーが多いというWinActor Cast on Callだが、山本氏は「大企業にとっても利用価値は高いのでは」と話す。

 「例えば総務、人事部門における社会保険関連の業務や給与関連の業務などは、企業規模による違いはほとんどありません。こうした分野では、中堅・中小企業向けのRPAシナリオはそのまま大企業でも使えます。また、大企業は社内のさまざまな業務システム間のデータ連携に多大な手間とコストをかけています。この部分を効率的に自動化したいというニーズを満たすために、WinActor Cast on Callに着目する大企業もこれから増えてくるでしょう」(山本氏)

レコメンド機能を使って、組織の業務自動化をサポート

 NTT-ATは今後、企業内の業務プロセスの自動化や省力化を、ユーザーの利用状況に応じたシナリオレコメンド機能を提供することで向上させようとしている。

 服部氏によれば、こうした自動化の仕組みを実現する上で、WinActor Cast on Callが管理するRPAの「ログ」が大きな役割を果たすという。

 「WinActor Cast on Callには、ユーザーアカウントが業務を自動実行した履歴がログとして全て残っています。このログを解析することで、利用状況や料金を確認するだけでなく、自動化でどれくらい時間が節約できたのかが可視化できます。さらに業務プロセスを構造化、ルール化できるため、次のステップを自動化するための計画が立てられるようになります。これによって、あるイベントが発生したら、次に起こるイベントを即座に予測したり、次に取るべきアクションをユーザーにレコメンドしたりできるようになります」(山本氏)

 WinActor Cast on Callのログデータを解析することで、ユーザーによる業務上の判断や意思決定を支援するというわけだ。さらには、WinActor Cast on Callを人事システムなど外部システムと連携させれば、「次に発生するこのタスクを実施する上で、どの人がふさわしいか?」「本来このタスクにはこの人が向いているが今は不在なので、どの人を代わりに充てるのがふさわしいか?」といったことをシステムが自動的に判断し、ユーザーにレコメンドすることも将来は可能になる。

 さまざまな業務システムの利用状況をログからリアルタイムに把握し、同時に過去のログを解析するサイクルは、今後さらなる加速が期待される。そうなれば、レコメンド機能もより職場の状況に合った形に進化できるだろう。現在のところ考えられるのは、WinActor Cast on Callが業務遂行の「最短コース」をユーザーに提示できるようになる未来だ。例えば、各業務を最も効率的に遂行できる従業員を自動的に割り出し、「あなたの次の作業はこれ」「あなたはこっちの仕事を手伝って」といったように指示を出してくれる――といった機能も考えられる。WinActor Cast on Callが各業務システムのログを基にさまざまな業務プロセスを連携させ、それらの運用を最適化してくれるという仕組みだ。

ログデータを基にした「あらゆる取引のための社会基盤」を目指す

 今後WinActor Cast on Callは、Web APIを通じて外部のさまざまなサービスとの連携を深めていくという。これにより、社会インフラ設備に設置したIoTデバイスが生成したデータや、公的機関が公開しているオープンデータなどを取り込み、RPAのシナリオの中で活用できるようになる見込みだ。

 「取り込んだデータをWinActor Cast on Callのシナリオで自動処理することで、例えばインフラの異変を自動的に検知して効率的に保守作業を進められるようになったり、人口統計の動向を分析して自治体の行政施策に生かしたりできます」(山本氏)

WinActor Cast on Callは今後、さまざまな新機能追加、配信を予定しているという《クリックで拡大》(出典:NTT-AT)

 また、RPAのシナリオを検索、ダウンロードできるWinActor Cast on Callの「シナリオマーケット」の機能強化も進めるという。現時点ではユーザーが自社の業務に合致したシナリオを検索、ダウンロードできる機能を備えているが、近い将来にはユーザーが自身で開発したシナリオをマーケット上に公開し、それを他のユーザーが利用できるようにし、シナリオにスコア付けできる機能も加える予定だという。

 ユーザー同士でシナリオの取引が可能になれば、シナリオ作成者には利用回数に応じて報酬が支払われ、ログデータを基にした「人気シナリオランキング」「ユーザーにパーソナライズされたお薦めシナリオの提示」などの機能も実装される予定だ。

 さらには、最小限の業務を実行する個々のシナリオ(=アトムシナリオ)をばらばらに利用するだけでなく、あらかじめ幾つかのアトムシナリオを組み合わせて特定の業務を自動化するアトムシナリオの“塊”を提供することで高度な自動処理を実装できる「アトムシナリオ・マーケット」も、2020年度中に公開する予定だ。

 アトムシナリオの仕組みを使えば、プログラミングスキルがないユーザーでも、まるでレゴの部品を組み上げていくような感覚で業務プロセス自動化の仕組みを実現できるようになる。また、シナリオを幾つかの部品に分割しておくことで、万が一問題が発生した場合でも、その原因の切り分けが容易になる。今後同社では、このアトムシナリオの“部品”と、それらを組み合わせるためのツールを順次提供していく予定だ。

 「当初は『ツール志向』だったRPAでしたが、私たちはそれをWinActor Cast on Callで『シナリオ志向』へと進化させました。そしてこれからは、これをさらに『ログ志向』へと進化させたいと考えています。この理想の実現に向けて、これからもWinActor Cast on Callの機能強化を進めるとともに、私たちが考えるビジョンを積極的に外部に訴求していきます」(山本氏)

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提供:エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2020年4月21日

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