DX推進企業に見る6つのアナログな行動指針とは? 調査で明らかになったDXを実現する組織の特徴DX動向調査【続報】

DXをうまく進められる企業には、企業の組織風土そのものに特徴があることが大規模調査で明らかになった。6つの特徴はデジタルとは違うところにあるようだ。

» 2020年04月17日 10時00分 公開
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 IT系のみならず日本の多くの業界で注目され、推進が叫ばれているデジタルトランスフォーメーション(DX)。「国内大企業の44%がいまだPoC段階……大規模調査で判明したDX推進の『本当の障壁』とは?」で報告した通り、多くの企業がデジタル戦略への準備に取り組んでいるが、一方で進捗(しんちょく)に苦しんでいる企業もあることが判明した。

 先述の記事においては、ITインフラの最適化を繰り返し、社内にある未踏の埋蔵データの活用など足元のデジタル化に取り組むものの、その進捗は企業によってさまざまだとして6つのトピックスを報告した。

 日本の大企業におけるDXの取り組みの浸透度合いや実行力、デジタル化の真価は現在、どのようになっているのか。サーバ製品「PowerEdge」などを擁し、顧客のDXを強力に推進してきたデルテクノロジーズはアイティメディアと共同で、従業員1000人以上の会社479社を対象に独自の「DX動向調査」を実施した。その結果、DX進捗を実現している企業には組織や仕事の仕方、人事政策などに共通点があることが判明した。

 調査はデルでPowerEdgeを担当するインフラストラクチャ・ソリューションズ統括本部が主体となり、従業員規模1000人以上の国内企業に従事するデルの顧客ならびにアイティメディアの登録ユーザーに対してオンラインで実施した(2019年12月実施、有効回答:479)。調査では自社のDXの概要、推進組織、予算状況、インフラ方針、テクノロジー採用の状況など71項目をたずねた。

 なお、有効回答479社の規模構成は、総務省統計局が算出した国内企業の従業員別構成比(注1)と近い結果となった。このことから本調査の結果は「日本企業全体の反応」として一定の信頼度があると考えられる。

調査対象 従業員別構成比 調査対象 従業員別構成比(注1)《クリックで拡大》

*注1:総務省統計局「平成28年経済センサス-活動調査」(平成30年6月28日)との比較。


 今回のDXについての大規模調査の意義について、デル執行役員の清水博氏は「DXの取り組みに積極的な企業が増えつつある状況を明らかにできた半面、現状では障壁を前に次の一歩を探っている状況にある日本企業の実態も垣間見えた」とみる。

 さらに「DXが進捗している企業には、幾つかの共通項が存在することが明らかになった。例えば、デジタルな世界と対照的ともいえる人事制度の改革やアナログな施策が充実している。また、EX(従業員満足度)を高める工夫もされている。この調査レポートで明らかになった先行企業の共通行動が、DXを進捗させる上で一つの参考指標になれば」と分析する。

調査結果についてコメントするデル執行役員の清水博氏 調査結果についてコメントするデル執行役員の清水博氏

 デルテクノロジーズでは、グローバルの指針として企業のDXの進捗状況別に、DX推進企業といえる「デジタルリーダー(Digital Leaders)」「デジタル導入企業(Digital Adopters)」、DX推進企業に変化しつつある「デジタル評価企業(Digital Evaluators)」、DX推進で後れを取る「デジタル フォロワー(Digital Followers)」「デジタル後進企業(Digital Laggards)」の5つのグループに分類している。

 今回の調査もこの分類に沿って分析した。本稿は、その調査結果の一部から日本企業におけるDXの現状と、DXの進捗度合いが高い企業に特徴的な点を要約して紹介する。

 DX動向調査のサマリー(1〜6の速報は別途解説を参照) DX動向調査のサマリー(1〜6の速報は別途解説を参照)《クリックで拡大》

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 またデジタルリーダー、デジタル導入企業が該当する「デジタル推進企業」の37.5%では、経営企画部がDXを推進していることが明らかになった。この割合はIT部門やDX推進部門よりも高く、本部と事業部間の調整作業や、ビジネス感覚を考慮したIT活用の推進など、経営企画部門の立場的な特徴が現時点でのDX実現に向けて強く貢献できている実態が確認できた。

 調査では、「多くの企業がまだDXにおいてPoC(新概念を実証するための検証)段階にある」という点が明らかになっている。デジタル推進企業では、IT部門だけ、あるいは事業部門だけでは調整できないさまざまな問題を経営企画部門がとりまとめてビジネス化を推進して、うまくDXにつなげている状況が見てとれる。

DX推進部門 DX推進部門《クリックで拡大》

CDO設置はわずか6%、CDO職を認識していない企業はDX進捗に差

 それではDXを推進する責任者としてのポジションChief Digital Officer(CDO:最高デジタル責任者)を置く企業はどの程度あるだろうか。

 調査によると専任、兼任を合わせてもCDOを設置する企業はわずか6%だった半面、IT部門の責任者がDXの推進を兼務する企業が全体の5割弱存在していることが明らかになった。一方、CDO職の役割を認識していない企業ではDX進捗や社内のデータの活用などに大きく遅れている状況も明らかになった。

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 フレデリック・ラルーが著書『Reinventing Organizations』(日本語版『ティール組織』)で提唱した組織理論の形態は、5つに分類される。古典的かつ強権的なマネジメントを特徴とする「レッド」、権力や階級を重視する「アンバー」、成果主義型の階層組織「オレンジ」、メンバーの主体性やダイバーシティを重視する「グリーン」、メンバーに権限と責任が平等に与えられた自律的な組織「ティール」だ。

 調査ではこの分類を基に自社の組織形態を選択してもらったところ、デジタル推進企業は、先進的な自律組織「ティール」「グリーン」より、適正に実力を評価される「オレンジ(達成型)組織」が42%とトップにランクインした。また強固なリーダーシップを特徴とする「レッド(衝動型)」も21%で3位となった。

DX推進に適した企業は DX推進に適した企業は《クリックで拡大》

2025年に向けて人材採用、定着戦略を持つ企業とそれ以外の企業で二極化

 経済産業省の推計によると、2025年にはIT人材が約43万人不足するとされる。そこで調査ではIT、DX関連人材の採用状況も調査した。その結果、3割を超える企業でIT、DX関連人材を積極採用しているが、「デジタル評価企業」では従来のシステムを担当する人材が不足しており、DX実施の人材獲得に向けられない実態が判明した。

 他方「デジタル推進企業」では、今後のIT人材難に備え、シニア、女性、外国人などの積極参画に動き出している。また、従業員満足度や表彰制度、1on1ミーティングなどの施策も充実している状況が明らかになった。DXの実現と従業員満足度を高める組織施策は密接に関係していると類推できた。

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リモートワークをうまく運用できる組織の特徴は? DX調査にみる傾向

今回の調査では、リモートワークの実施状況も調査しています。当初は2020年夏に東京で開催される予定の大規模イベント対策としてのリモートワークの進捗(しんちょく)を調べる目的でした。しかし、この調査はくしくも感染症の流行などの有事の対応能力を示すデータになりました。リモートワークが普及している企業はDXも進んでいることが分かりました。それには、ハードウェア環境以外にも理由があります。

リモートワークの環境整備が、DX進捗に影響

 別の記事「リモートワークをうまく運用できる組織の特徴は? DX調査にみる傾向」でも紹介した通り、今回の調査では、リモートワークの実施状況とDXの状況には相関があることが明らかになった。DXを積極的に推進するデジタルリーダー企業におけるリモートワーク実施率は非常に高い。

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 DXにおいて何が重要かを問う設問では、約半数の企業が「CX」(顧客体験)を挙げた。中でも、DXが進むデジタルリーダー企業では44.4%の企業が顧客の声の分析強化に関心を寄せており、顧客満足度を高める施策にも積極的な傾向がみられた。一方、デジタル後進企業、デジタルフォロワー企業ではそれぞれ27.8%、32.7%と低くなる傾向にあった。

 ここまでで調査結果からDXの進捗度合いが高い企業に特徴的な6つの行動指針が明らかになった。一見するとデジタルと対局にあるようなアナログ的施策のように思えることがDX進捗に影響している。デジタルトランスフォーメーションの「トランスフォーメーション」は、「変容」「変質」などの質的転換を意味する。DXのような企業変革は、そこで働く人の内側からの変革から始まるものかもしれない。

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提供:デル・テクノロジーズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2021年2月16日

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