IT予算が限られがちな中堅・中小企業にとって、レガシーシステムのリプレースに割り当てられる予算に余裕はない。サポート終了を迎えながらも国内でいまだに一定のシェアを持つ「Windows Server 2008/2008 R2」や「Oracle Database」を抱えた中堅・中小企業の情報システム担当者は、リプレースのための予算確保に苦慮したことだろう。
だが、今は事業継続のための本格的なテレワーク環境の整備や従業員の安全を確保するための投資が最優先事項だ。“塩漬け”システムのリスクを理解しながらも身動きが取れない読者も少なくないはずだ。
本稿を制作するアイティメディアもそうした企業の一社だ。実は、こうしたコスト問題を回避する方法がある。その鍵を握るのがAMD製のCPU「EPYC」(エピック)を搭載したサーバだ。だが既存システムとどこまで互換性があるのか。いったいどのくらいコストを圧縮できるのか。そこを探るために、アイティメディアのエンジニアを取材した。
情報システム担当者の中には、AMDと聞くと、多くはグラフィックスカードを想像するかもしれない。だが近年はCPU「Ryzen」の発売以降、CPUメーカーとしても一定の評価を獲得しつつある。PC市場のトレンドに追従するようにAMDは2017年にサーバ向けCPUとしてEPYCを発表した。2019年にはアーキテクチャを刷新して性能を高めた「第2世代EPYC」をリリースし、現在は複数のサーバベンダーがAMDのサーバ製品を取り扱うまでの地位を確立した。本稿で紹介する日本ヒューレット・パッカード(HPE)もそうしたサーバベンダーの一社だ。
なぜAMDサーバが短期間でサーバCPUとして評価されるに至ったのか。情報システム担当者にどんなメリットをもたらし、企業のIT環境をどう変えていくと期待されているのか。アイティメディアの情報システム部K(以下、情シスK)が、HPEの小川大地氏(テクノロジー エバンジェリスト)と阿部敬則氏(サーバ製品本部カテゴリーマネージャー)に率直に疑問をぶつけてみた。
当社情シスKが管理するのは従業員やスタッフ合わせて約300人が利用するアイティメディアの社内システムだ。アイティメディアでは社内システムのクラウド化を進める渦中にあるが、それでも世の多くの企業と同様、オンプレミスのサーバが残り、複数の業務システムが混在する環境だ。ライセンス切れのシステムなどはないが、既存システムのリプレースに潤沢な予算はかけにくい。この意味では、世の多くの中堅・中小企業と同じ状況といえる。
とはいえ、物理サーバはIntel CPU搭載サーバで見積もりを取るケースがほとんどだ。情シスKがまず抱いた疑問は「そもそも今なぜAMDサーバが注目されているのか」だ。
「AMDサーバはハイエンドのラインアップでのコストパフォーマンスの良さに注目されがちですが、それだけではありません。限られた予算と人員でやりくりせざるを得ない中堅・中小企業は、AMDサーバの採用でコストを抑制しつつ、その分をクラウドやテレワーク、Web会議システム、モバイル対応といった、今必要とされる取り組みに振り向けられることに徐々に気付き始めたようです」(阿部氏)
では、いったいどのくらいのパフォーマンスの向上やコスト削減が期待できるのか。
CPUのコア数やスレッド数でみると、「Intel Xeon」プロセッサが1ソケット当たり最大28コア56スレッドなのに対し、EPYCプロセッサは1ソケット当たり最大64コア128スレッドとスペックでは上回る。製造プロセスにおいても7nmプロセスを実現したことから、従来の14nmプロセスのプロセッサと比較して、エネルギー効率を40%も向上させた。
「24コア48スレッドのモデルで比較すると、EPYCプロセッサはXeonの5分の1ほどの価格です。ソケット当たりのパフォーマンスも高く、Xeonプロセッサ2基分をEPYCプロセッサ1基でまかなえるケースもあります」(阿部氏)
HPEは、XeonプロセッサとEPYCプロセッサの両方に対応したサーバ製品を提供しているが、CPUソケット数で課金するソフトウェアの場合、AMDサーバを採用して1ソケット当たりの性能を高め、ライセンス費用を削減した方が全体の支出を抑制できる。
「HPEで試算したところ、一般的なXeon構成のシステムをEPYCで構成し直すと、4ソケット必要なところを2ソケットで済む場合があります。この場合、CPU以外を含む全体でおよそ30%のコスト削減が可能です」(小川氏)
とはいえ情シスKによると、「自分がリプレースを考える場合、命令セットの実装の違いでアプリケーションに不具合が出たり、パフォーマンスに影響が出たりはしないのか」と互換性やシステム移行後の運用効率も心配だという。
この懸念に対して小川氏は「SQL ServerやOracle Database、オープンソースソフトウェアの『MySQL』や『MongoDB』など、業務アプリケーションで使われる主要なミドルウェアはAMDとアライアンス関係にある。実際に稼働実績があることが、互換性に対する懸念を払拭(ふっしょく)する根拠になるのでは」と語る。AMDはこうした互換性に関する情報の開示に注力しており、各種アプリケーションの検証結果を積極的に公開している。
AMDサーバに関する国内でのユースケースも複数公開されている。例えばWindows Server 2008/2008 R2のサポート終了をきっかけに1ソケットのAMDサーバを導入した山﨑建設の事例だ。
「物理サーバ2台を仮想化してシングルプロセッサのAMDサーバ1台に統合し、運用管理のコストと手間を削減しました。ソフトウェア/ハードウェアを含む全体の調達コストは想定の6割ほどに抑えられたということです」(阿部氏)
HPEとAMDは、強固なパートナーシップの下、EPYCプロセッサの初期仕様の策定やプロセッサ開発、顧客への最適な選択肢の提供などに取り組んできた。そうした協力関係に加え、HPEがさまざまなサーバ製品を展開した実績を基に、中堅・中小企業をサポートしていく。
製品ラインアップの豊富さもHPEの特長だ。性能の高いEPYCプロセッサの特長を生かしたハイエンドモデルは各社提供しているが、EPYCのコストパフォーマンスに注目して中小企業向けのエントリーモデルから取りそろえるのはHPEだけだ。HPEでは汎用(はんよう)モデルのGen10サーバに加え、PCIe Gen4対応や1Uサーバに最大24本(最大168TB)のディスク搭載を可能にしたGen10 Plusサーバモデルを併売。加えてHCIや高密度モデルなどのポートフォリオ拡張にも余念がない。価格とシステム規模の折り合いを付けたい情報システム部門にとって、幅広い選択肢からニーズに合った最良のモデルを選べることになる。阿部氏は、「AMDサーバだからといって選択をしない理由は何もない」と断言する。既に展開している検証機の貸出プログラムだけでなく、EPYCプロセッサをHPEと共同推進するパートナープログラムも検討中だ。
コストパフォーマンスに分があるからといって機能面にも抜かりはない。「HPE ProLiant」のAMDモデルはセキュリティ機能を盛り込んだ最新のマネジメントプロセッサ「Integrated Lights-Out 5(iLO 5)」を搭載。オンラインファームウェアの改ざん検知・自動復旧など、HPEならではのハードウェアのセキュリティ機能を利用できる。「Windows Server 2019」で提供される最新のセキュリティ機能にも対応し、Windowsと連携した強固なセキュリティを実現可能だ。
他にもクラウド型でプロアクティブな予測検知機能などを特徴とする無償のサーバ管理サービスである「HPE InfoSight」、サブスクリプション型の製品提供モデル「GreenLake」など、中堅・中小企業だからこそ利用したいサービスが利用できる。
「中堅・中小企業が抱える課題は多種多様です。コストパフォーマンス、セキュリティ、クラウドなどへの強みを生かして、中堅・中小企業に最適なサーバを届けます」(小川氏)
最後に阿部氏は、AMDサーバを新たな取り組みのきっかけにしてほしいとし、こう話す。
「PCやサーバ向けCPUの世界に新風を吹き込んでいるAMDは、これからの新しい時代において、お客さまが従来型のサーバ選択から脱却する1つのきっかけになると思います。コストパフォーマンスの高いサーバでIT投資を最適化し、リモートワークやモバイル対応など新しい分野での取り組みを進めてほしいと思います」(阿部氏)
情シスKは取材の後、「正直を言うと、直近でハードウェアの調達案件がなかったこともあり、サーバ製品の動向を追い切れていませんでした。こんなに情報があったのに調べていなかったのですが、今後、自分でも情報収集してみたいですね」と関心を持った様子。ここでは伝えきれなかった情報もAMDやHPEのWebサイトには豊富に掲載されている。まずは、それらの情報へアクセスしてみることをお勧めしたい。
現在、数多くの方が在宅勤務を強いられる中、サーバ管理者にとって、サーバをリモート管理することの重要性がこれまでになく高まっている。
そこでHPEでは本記事の中でも紹介している「HPE Integrated Lights-Out(iLO)」のフル機能を使用するための「iLO Advancedライセンス(有償)」の評価用無償ライセンスを2020年12月31日まで期間を拡大して提供している(通常期間は60日間)。
システム管理者は、自宅からでもサーバをリモートで容易に管理できる。
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提供:日本ヒューレット・パッカード株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2020年5月10日