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» 2020年06月24日 10時00分 公開

コスト、セキュリティのリスクをどう回避するか:ポストコロナ時代、ITを主体的に活用するための鉄則とは

新型コロナウイルス感染症をきっかけに、テレワークが急速に浸透している。今回のパンデミックは多くの企業に対し、ビジネスを遂行する上でITが不可欠であることを改めて痛感させた。しかし、急な変化に伴って“従来のリスク”が一層高まることも忘れてはならない。ポストコロナ時代に、ビジネスを効率的かつ安全に推進するために不可欠な取り組みとは何か。

[PR/ITmedia]
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テレワークの本格化で露呈した「落とし穴」

 新型コロナウイルスの影響を受け、多くの企業がテレワークの導入を急ぎ進めることとなった。これに伴い、人事評価や労務管理、ITツールの不足、コミュニケーションの在り方といったさまざまな課題が浮き彫りになっている。コストやセキュリティ、コンプライアンスの問題は企業に深刻な影響をもたらすにもかかわらず、いまだ認識が十分とは言えない。

 企業活動のテレワークシフトは、各種クラウドサービスやソフトウェアを使った“IT前提の働き方”が加速することを意味する。現在はWeb会議システムなどのコミュニケーションツールを中心にクラウドサービスの導入が進んでいるが、今後はインフラレイヤーにおいてもハイブリッド/マルチクラウド化の流れがさらに強まるだろう。クラウドはもちろん、その他のITリソースを状況に応じて迅速かつ柔軟に取り入れるスタンスが、より一層求められるようになることは間違いない。

 このような状況になったとき、ITリソースをどう選ぶかによってコストやセキュリティ、コンプライアンスに関するリスクは大きく変わる。「オンプレミスで稼働させていた基幹システムのデータベースを丸ごとクラウドに移行したら、ソフトウェアライセンスコストが数億円も増加した」といったことも起こり得る。自社の目的や状況に応じた最適な手段や組み合わせを判断できなければ、甚大なリスクを負うことにもなりかねないのだ。

 そこで不可欠となるのが、どのベンダーの、どのサービス/ソフトウェアを、どのように使うのかを戦略的に判断、管理する「ベンダーマネジメント」である。しかし欧米と比較すると、日本企業におけるベンダーマネジメントへの理解は十分ではない。ITが全てのビジネスを支え、差別化要素にもなるポストコロナ時代、企業はベンダーとITにどう向き合えばよいのか――日本ベンダーマネジメント協会 代表理事の武内 烈氏とウチダスペクトラム常務執行役員の岡田恭介氏に、アイティメディア統括編集長の内野宏信がベンダーマネジメントの具体像を聞いた。

“ポストコロナ”の世界で重要性を増す「ベンダーマネジメント」

――COVID-19のパンデミックを受け、半ば強制的に新しい働き方へのシフトが起きました。それに合わせて、業務遂行のプロセスにもこれまでとは異なる在り方が求められています。こうした状況をどうご覧になっていますか。

武内氏 日本ベンダーマネジメント協会の武内 烈氏

武内氏: MicrosoftのCEOサティア・ナデラ氏は2020年5月、同社主催のイベント「Build」の基調講演において「COVID-19の影響で2年分のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進んだ」という趣旨の発言をしました。まったくその通りで、現在多くの企業が「ビジネスがいかにITに依存しているか」を改めて痛感しています。パンデミックをきっかけにITツールやセキュリティの重要性がより認識され、ビジネス=ITという世界に急速に近づいていくと思いますね。

岡田氏: 多くの企業が以前からDXに取り組んでいました。そして現在、COVID-19によって緊急避難的な改革が進んでいます。このことでメリットが生まれた半面、課題も急速に明らかになったのではないでしょうか。例えば、社員をどう評価するかといった人事労務やセキュリティ、ITコストの管理などについて、抜本的な見直しが求められています。

――IT中心の業務環境に急ピッチで変えていくことを迫られている中で、特にコストは深刻な問題ですね。

岡田氏 ウチダスペクトラムの岡田恭介氏

岡田氏: 2008年のリーマンショックでは、ITコストの見直しや削減が多くの企業の関心事になり、ベンダーマネジメントが注目を集めました。当時はベンダーから製品を調達するコストを適正化したり、運用業務をアウトソーシングしたりする方法によるコスト削減が中心でした。今後のポストコロナの世界では、同じことがより大きな規模で起こってくると考えます。IT活用の在り方がビジネス遂行の在り方とほぼ同義になるわけですから、ベンダーマネジメントの重要性は一層高まり、より精緻な取り組みが必要になるでしょう。

武内氏: 例えば製造業は、自社製品を構成する部品一つ一つの調達コストを正確に管理しています。それと同様に、ITシステムやサービスを開発したり導入したりする場合もそれらの構成要素ごとのコスト管理が必要になるでしょう。ITコストをビジネスコストとして考え、「どのような契約なのか」「課金額はいくらになるのか」「SLAはどうなっているのか」などをマネジメントすることが大切です。

“丸投げ”のままでは、IT予算は破綻する

――ビジネスの目的、状況に応じて適切な手段を正しく判断して管理する。ビジネスを円滑に遂行するためには、そうしたベンダーマネジメントが不可欠ということですね。しかし日本では、ITの問題をベンダーに“丸投げ”する慣習が根強く残っています。

武内氏: 丸投げを続けていれば、いずれIT予算は破綻するでしょう。例えばIBMやOracle、SAP、Microsoftなどから、基幹システムに不可欠な製品をベンダーやSIerの「言い値」で導入したとします。何もしなければ、保守料が年々増加することも、クラウド移行に伴ってライセンスコストが数倍に跳ね上がることもあり得ます。目的に応じてコストの正確な見積もりと予測、コントロールをしなければなりません。

岡田氏: そこで不可欠となるのが「ビジビリティー」――つまりIT資産を棚卸しして可視化することです。上層部から「ITコストを削減しろ」と言われても、今どんなIT資産があるか分からなければ対策の施しようがありません。セキュリティやコンプライアンスの問題も同様です。そのような状態でベンダーの監査や調査が来ても、コスト削減や最適化の手だてのないまま、受動的に対応せざるを得なくなります。実際に、テレワーク推進に伴って各種サービスやソフトウェアの導入が進む中で、IT資産の棚卸し不足がコストコントロールの弱点になっているという話を聞くようになりました。

――欧米ではベンダーマネジメントオフィス(VMO)を設置し、ベンダーマネジャーが調達やコストなどの管理に専任で対応することが一般的になっていますが。

武内氏: そうですね。10年ほど前から専門職化が進み、元Oracle、元Microsoftといった人材が、製品の専門知識を持つベンダーマネジャーとしてユーザー企業で働くケースが増えています。しかし日本企業は外部から専門職を雇わず、社内の人材にさまざまな職種を経験させてゼネラリストとして育てる文化が一般的です。それでは、ITの調達においてベンダーと対等に渡り合う知識を得られません。極端な話、市場平均から何億円もオーバーした提案書を受け取っても「No」と言えずにいるケースもあります。頑張っても包括契約によるディスカウント程度にとどまってしまう。文化の違いがある以上、日本におけるベンダーマネジメントは、欧米と異なるアプローチが必要でしょう。

VMO設置に向けて「現状の可視化」から始める

内野宏信 アイティメディア統括編集長の内野宏信

――とはいえ、VMOの設置は今も必須だと思います。国内ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。

武内氏: 先ほどお話しした通り、日本では組織内にベンダーマネジャーのようなスペシャリストを設置することは難しいのが現実です。その一方で、専門知識を持つ外部リソースの導入でVMO機能の設置や強化をするパターンは比較的うまくいっていると見ています。特に、ビジネスをグローバル展開している企業はスケールメリットを出しやすいため、VMOを設置して調達を効率化する効果が大きくなります。

岡田氏: 日本ベンダーマネジメント協会とウチダスペクトラムも、ベンダーマネジャーの役割を求められるケースが増えています。最近多いのはソフトウェアライセンスに関して「複雑で分からないから解説してほしい」という問い合わせです。より先進的な企業からの「VMOのような組織をつくって集中購買の仕組みを構築したいから、設計を手伝ってほしい」という声も増えています。

――すでにVMOの設置や運用に取り組んでいる企業がある以上、何もしていない企業との差は急速に拡大していくのでしょうね。しかし貴社のような外部リソースを活用するにせよ、いきなりベンダーマネジメントに取り組むのは難しいと思います。まず何から始めればよいのでしょうか。

岡田氏: まずは、前述した「現状の可視化」です。メガベンダーの製品を中心に、コストがかかっている部分を棚卸しします。その結果、データベースの保守費用が高ければデータベースの第三者保守を行っているベンダーへの切り替えを検討したり、他のデータベースやクラウドサービスへの移行を検討したりします。ポイントは、棚卸しした結果を実現可能な“地に足の着いた対策”に落とし込むことです。これはボトムアップだけでは難しいので、CIO(最高情報責任者)や経営企画部門などのマネジメントレベルの人材が主導することが重要でしょう。

運用部門に負荷が集中してきた根本原因とは

武内氏: 川上から川下へ意思決定が流れるウオーターフォール型ではなく、川下から川上へ知見が還流する新しい意思決定の仕組みをつくり出すことがポイントですね。ウオーターフォール型の場合、川上の決断を川下が運用でカバーして処理するようなことが起きがちですが、それでは運用部門だけが苦労してしまいます。知見の還流によって運用の苦労を川上に戻し、ノウハウとして蓄積することが大切です。

――還流を作ってビジネスやIT運用を適切な形へとコントロールする。現状の可視化を基に、そうした役割の確立を目指すことがVMOにつながっていくのですね。

武内氏: そうですね。さらにVMOの主体は運用部門であることが望ましいでしょう。今までは、問題が発生しても運用でどうにかしていました。今後は契約段階から運用モデルを考え、最初から運用部門が主体となって意思決定の還流をコントロールすべきです。

――ただ、先ほどの岡田さんのお話のように、ボトムアップだけでは難しいのではないでしょうか。

武内氏: 厳密に言えば、ベンダーをコントロールするための戦略や方針を決めるのは経営層です。経営層はビジネス目標に基づいてベンダーコントロールのポリシーを決め、運用部門はそのポリシーやビジネス方針に沿ってベンダーとの契約を管理します。組織としてのIT戦略もなく運用部門だけで契約交渉をしては、これまでと同じになってしまいます。

岡田氏: 運用ノウハウの還流は、システムのライフサイクルにも関わる問題です。そのため、ビジネス目標に基づいて契約や調達の在り方を標準化し、そのポリシーに沿って管理や実装、維持をしていくことが重要となるのです。担当者の異動や退職があっても、ポリシーがあれば同じ品質のライフサイクルを維持できます。そのためにはITの運用部門だけではなく、調達や購買、法務など、さまざまな部署が連携して対応していく必要があるでしょう。従ってマネジメント層のリードも必要になるわけです。

ベンダーマネジメントを礎に「提案するIT部門」への変革を

――これまでは経営戦略にITが組み込まれず、ビジネス部門とIT部門は分断されてきました。専門知識を持つ外部リソースの活用によって現状を把握してコントロールする体制を築ければ、いわゆる「攻めのIT」実践の第一歩にもなるわけですね。ただ「IT資産の棚卸し」と言われて「これまでも行ってきた」と考える方も多いのではないでしょうか。

岡田氏: ベンダーマネジメントで管理するのは、テクノロジーそのものではなく「ベンダーとのリレーション」です。「物品の管理」ではなく「契約の管理」であることが根本的に異なります。

――ウチダスペクトラムと日本ベンダーマネジメント協会は、それをどのように支援しているのですか。

岡田氏: お客さまの「どうすればよいのか分からない」という声が多いことを受け、当社は「SLAM(ソフトウェアライセンス契約管理)」の講習を10万円から用意しています。ベンダーとの交渉を支援するため、ベンダー製品のコンプライアンス状態を正確に把握する棚卸しサービスも提供しています「Oracle Database」を対象にした「Oracle DBライセンスたな卸しサービス」は、50インスタンスまで240万円で提供しています(いずれも税別)。データベースの第三者保守サービス「Rimini Street」への移行や集中購買スキームの導入コンサルティングなども用意し、具体的な施策の落とし込みまで支援しています。

武内氏: 日本ベンダーマネジメント協会は、VMOの取り組みにおける経営層へのアプローチ方法、VMO推進のための人材育成や役割分担、システム開発の内製化とアウトソーシングの使い分けなど、さまざまな研修やアドバイスを行っています。

――先のトップダウン、ボトムアップという両面のアプローチを支援しているのですね。

岡田氏: そうですね。ベンダーマネジメントにとっつきにくいイメージを持つ方も多いのですが、だからといって放置すれば先に挙げたようなリスクが深刻化します。まずはわれわれのようなベンダーに声を掛け、解決のヒントを探ってほしいと思います。

武内氏: まず運用現場が「火事場の火消し」のようになっている状況を変えていくことが大切だと思います。また、「ビジネス部門が喜ぶIT」を提案しているだけでは、その組織は時代から取り残されてしまうでしょう。ベンダーマネジメントの機能を組織に根付かせてガバナンスの効いたビジネス戦略とIT戦略を実現するには、IT部門が社内に向けて「今のビジネスにはどんなITが役立つのか」「将来どんなテクノロジーが活用できそうか」などの、ビジネス戦略にのっとった提案をしていく必要があります。ベンダーマネジメントを礎に「技術の目利き」として、社の発展につながるIT活用を主体的に提案するIT部門への変革が強く求められていると思います。

――ありがとうございました。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2020年7月23日

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