実業務の課題解決から始める人材育成、DXに必要な思考プロセスとはDX化推進のキーパーソンは「ミドル層のコア人材」

世界中でビジネスがデジタル化する中、DXに乗り遅れる日本企業は多い。DXの本質は企業文化の変革にあり、その成功を左右するのは、企業風土を象徴する人材が変革を主導できるかにある。自社のキーパーソンをDX人材として育成する方法とは。

» 2020年06月26日 10時00分 公開
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DX実現に必要なのは「IT×人材×文化」

 日本企業の生き残りにおいて、デジタルトランスフォーメーション(DX)はもはや欠かせないキーワードとなった。経済産業省はDXの重要性について繰り返し言及しており、今やDXへの取り組みは企業にとって「待ったなし」の状態だといえる。日本企業が国際競争力を取り戻して今後のデジタル時代を生き抜いていく上で、デジタル技術をベースにビジネスを再構築するDXの重要性はますます増していくことが予想される。

 こうした流れを受け、企業間でAIやRPAをはじめとする先進デジタル技術の積極的な取り入れが広まっている。 しかし試みの中には経営視点での成果を挙げられず、頓挫しているケースが少なくないという。スイスのビジネススクールIMD(International Institute for Management Development)の教授を務めるマイケル・ウェイド氏は「DXに取り組んだ企業のうち、95%は失敗している」と述べる。

 ほとんどの企業がDXに失敗してしまう理由は一体どこにあるのか。NTTデータ イントラマート デジタルビジネス推進室 Evangelistの久木田 浩一氏は、日本企業がうまくDXを進められない最大の理由に「日本企業特有の伝統文化」を挙げる。

NTTデータ イントラマート 久木田 浩一氏 NTTデータ イントラマートの久木田 浩一氏

 「DXを実現するには、ただデジタル技術を導入したり製品やサービスをデジタル化したりするだけでは不十分です。経済産業省の言及通り、デジタル技術を使って組織やプロセス、企業文化、風土まで変革する必要があります。そこまでしないとデジタルネイティブのディスラプターにあっという間に飲み込まれます。すでに日本企業は顧客にベストな対応をするため、組織設計や製品、サービスにデジタル技術を取り入れたり、積極的な改革に取り組んだりしています。しかし企業文化や風土まで変革するとなると、一気にハードルが高くなります」(久木田氏)

 現場の努力だけで企業文化を変革するのは難しい。経営トップがDXの必要性をきちんと理解し、強力なリーダーシップを発揮して社内の文化を率先して変えていかなければならない。しかし社内文化は企業ごとに大きく異なるため、他社の事例をそのままなぞっても自社に合った変革は達成できない。

 また、経営トップが高い意識を持って変革に取り組んでも、現場がそのビジョンや価値を共有できなければ掛け声だけで終わってしまう。DXを実現するには経営陣だけでなく現場の社員一人一人がDXの価値を理解して、一丸となって取り組む必要がある。経営と現場の双方に変革する人材をそろえる必要があるのだ。

DXにはさまざまな切り口があるが、全てにおいて組織全体の意識改革が不可欠となる DXにはさまざまな切り口があるが、全てにおいて組織全体の意識改革が不可欠となる

 「DX実現のためにはデジタル技術だけでなく、DX人材を育てる必要があります。また、人材の意識やスキルが向上したとしても、全社一丸となって変革を進める文化がなければ取り組みは継続しません。従って『企業文化の変革』が重要になるのです」(久木田氏)

DX人材に求められる能力や要件とは?

 DX人材は、一体どのように育成するのか。研修やトレーニングで自社の製品やサービスにデジタル技術を取り入れてもDXは実現しない。DXはデジタル技術を使って企業文化を変革するための取り組みであり、DX人材にはテクノロジーの知識だけでなく、自分たちのビジネスである業務プロセスやビジネスモデルを変える力が求められる。久木田氏によれば、多くの日本企業が「プロセスを変える力」に重点を置いてこなかったという。

 「日本企業はこれまで、個人作業の効率改善には力を入れてきたものの、部門や個人の作業をつなぐプロセスの効率はあまり重視してきませんでした。状況に応じて部署内で臨機応変に役割分担をして『あうんの呼吸』で器用に物事をこなし、プロセスを厳格に定義しなくてもビジネスを回せていたためです。しかし業務プロセスが部署をまたぐと、こうしたやり方だけでは通用しません。多くの組織が関係するほど意思決定の速度が落ち、顧客に価値を提供するスピードが遅くなってしまうのです」(久木田氏)

 タイムリーな価値提供を実現するには、顧客のオーダーを社内で処理してサービスを提供する一連のプロセスを最適化し、それに合わせた組織をつくり上げる必要がある。

 「欧米企業では当たり前にされている組織設計の手法です。しかし多くの日本企業は既存の組織体系に合わせてプロセスを設計します。そのためプロセスの効率が犠牲になり、顧客のオーダーに対して満足のいく価値を提供できなくなっています。これが日本企業の生産性の低さにも影響しています」(久木田氏)

 DX人材に求められるのは、これまでは見落としてきた問題点を洗い出してプロセス改革とデジタル技術で解決するスキルである。また、現場のアイデアを「絵に描いた餅」で終わらせないために、経営者に対して問題点と解決方法をロジカルに説明する能力も重視される。

実業務の課題から始めるDXワークショップ

 しかし久木田氏によれば、DX人材を計画的に育成するための方法論はこれまで存在していなかった。個人の経験や素養に依存するため人材の数が増えず、いつまでたっても企業文化の変革までたどり着けなかったという。

 そこでNTTデータ イントラマートは、前項で挙げたようなDX人材のスキル育成とデジタルプロセス化に力点を置いた研修サービスを、一般社団法人日本ビジネスプロセス・マネジメント協会と共同で開発。『イントラマートBPM実践ワークショップ研修』として提供している。この研修は、自社のビジネスは自分たち自身の力で作り上げるべきという考え方に基づき、同社が長年積み上げてきた業務改革や改善のコンサルティングノウハウを研修プログラムに再構成し、リーズナブルな費用で提供するワークショップ型の研修サービスである。

 「業務の現状(As-Is)を可視化してあるべき姿(To-Be)を定義し、それを実現するためのデジタルの仕組みを設計・実装した後に、その成果を計測・評価しながらPDCAサイクルを回す。こうしたBPMの手法はDXの取り組みと極めて親和性が高いのです」(久木田氏)

 DXにおいてもBPMと同様に、業務の現状を可視化して「どこに問題点が潜んでいるか」「何を改善すればいいのか」の洗い出しから始める。「これをせず、ただ現状の業務をデジタル化するだけのDXは、その効果が少ないか、もしくはかなり高い確率で失敗します」(同氏)。

 研修は週1回、計8回に分けて提供する。参加者は合計12人が3〜4人ずつのチームに分かれ、各チームが同時進行で受講する。前半は、「誰にでも理解しやすい国際標準のBPMN(ビジネスプロセス モデリング表記法)で現状の業務のやり方(As-Is)を正しく描く力と、当該業務の可視化力の習得」だ。中盤では、現在強いられている仕事のやり方が引き起こす重要な問題点を挙げ、普段は意識の外にあり自分たちでは解決できない制約条件をあぶり出す。続いて、改革が進まない真の原因である制約条件を取り払った後の「あるべき姿(To-Be)」を検討する。後半は、As-IsからTo-Beへの用意周到な移行計画を立案し、NTTデータ イントラマートが並走して共同でデジタルプロセスデモを作り、参加者が自分たちの業務のデジタル化を体感しながら、その姿を具体的な構想まで落とし込む。そして最後に、経営者が納得するロジックで構想書を作成し、最終日に経営陣の前でプレゼンをする。

 講師のレクチャーのもと、メンバーは1チームにつき1つのテーマについてディスカッションをし、最終日のプレゼンに向けて準備を進める。プレゼンは単なる研修の成果発表にとどまらず、経営陣が「実施する価値あり」と判断すればその場でプロジェクト化して実行に移されることもあるという。

イントラマートBPM実践ワークショップ研修のカリキュラム

 研修ではマンツーマンに近い形式で、「改革の”思考プロセス頭”への切り替え」(久木田氏)をしていく。内容の濃さを重視して一度に参加できる人数は増やせないが、受講者の数が増えるに従って組織の考え方がまとまり、企業文化も変わっていくという。

 これまで受講した企業は、受講の対象職位を拡大したり、受講生が講師となって部門内や関連部門に展開したりといった方法で研修を継続している。それでは、取り組みを拡大させるために最初に受講するべき人材はどこか。久木田氏はそれに「ミドルマネジメント層」を挙げる。

 「ミドルマネジメント人材は企業文化を象徴すると同時に、変革の『壁』になりやすい層でもあります。だからこそ、まずはこの中からトップの意思を受け継いで変革のリーダーになり得るコア人材を選抜し、この研修を受けてもらいます。そうすればその後、彼らが起点となって社内に変革の輪を広げてくれます」(同氏)

 研修の中では、変革を実現するために周囲や上層部を説得するためのテクニックも学ぶ。実際に目で見て確かめられるデモを実施したり、提案書や構想書のフォーマットを用意したりして「これなら間違いなく経営はGOサインを出すだろう」というレベルまで計画を練り上げるための具体的な方法をレクチャーするという。

デジタルツールとの組み合わせでさらなる効果を

 久木田氏によれば、同研修を受講した企業は明確な成果を挙げているという。同氏はこれまで開催した15回を振り返り「その全てがうまく運びました。これまでさまざまな制約によって改革を諦めていた人が、制約から開放される思考プロセスを身につけた時の成長にはいつも感動します。日本人は封印された能力が開放されると本当に優秀です。これまで受講した企業様からは、社長をはじめとする経営層よりお礼を頂いています」と力強く語る。

 「他社の業務を請け負うBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)企業が受講し、数億円のコスト削減効果を挙げた例も少なくありません。BPO企業は業務改善の成果がそのまま企業価値に直結するため業務改革/改善に対する意識が比較的高い。そうした企業で確実に成果を挙げていることから、一般企業のDXにおいても着実に成果を出せると自負しています」(同氏)

 同研修ではBPMの作法にのっとり、業務のAs-IsやTo-BeをBPMNで表現する手法を学ぶ。多くの社員がこれを学ぶことでBPMNが社内の共通言語となり、組織をまたいだプロセス改善を進めやすくなる効果があるという。

 NTTデータ イントラマートは、研修とツールの組み合わせによる改善プロセスそのもののDXも支援している。

 同社が提供するBPM製品にBPMNで表現したプロセス図を読み込ませることで、プロセスをそのままシステムに取り込める。画面を簡易的に開発できるツールや、RPA、AI、OCRなどのツールとの連携によって、業務の自動化や省力化も図れる。さらに、各業務プロセスを実行させ、進捗管理や実行に要する時間などを自動計測し、業務パフォーマンスの管理も可能だ。これらのデータの分析で得た知見を基に計画を立てることで、業務改善のPDCAサイクルを着実に回せるようになるという。

 「今後、さらに多くの企業にこの研修サービスを提供してDX人材の育成を支援したいと考えています。また、DXに役立つ具体的なデジタル製品やサービス、パートナー企業と連携したシステム構築、運用ソリューション提供などもします。それに加えて、活動を継続する企業が意見交換するような場の提供も実施していきます」(久木田氏)

 同氏は、DXがうまく進められない原因がどこにあるのか分からない企業やどこから手を付けるべきかで悩んでいる企業に向けて「まずは相談してほしい」と述べ、さまざまな切り口によるDX支援に自信を見せた。

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提供:株式会社NTTデータ イントラマート
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2020年7月25日

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