日本流マネジメントからの脱却 ニューノーマル時代のグローバルガバナンスとは誰も責任を取らない、実態が見えない

コロナ禍も含めた国際情勢の複雑化は、海外で事業を展開する企業にとってかつてない試練となる。従来の手法によるグループガバナンスが難しくなる一方でリスク要因は増え、企業は海外子会社の管理手法の見直しに悩むことになる。ニューノーマル時代における、グローバルガバナンスのあるべき姿とは。

» 2020年07月15日 10時00分 公開
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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をきっかけに世界がニューノーマル時代へとシフトする中、海外に拠点を置きグローバルビジネスを展開する企業は今、さまざまな課題に直面している。

足立桂輔氏 KPMGコンサルティング 足立桂輔氏

 その一つに、国境をまたいだ移動の制限がある。日本から海外へ人材を派遣できないため、従来の「本社の人間を現地に送り、出張や駐在によって海外子会社の管理や業務支援をする」手法が難しい。今後は、日本人駐在員が現地にいないことを前提とした管理体制が必要になるだろう。

 KPMGコンサルティングのパートナー足立桂輔氏は、ニューノーマル時代の変化について「各国で海外子会社や営業拠点を再編し、サプライチェーンを現地で完結させる動きがある。また、今後、経営の現地化の動きはさらに加速するだろう」と語る。

駐在員任せの「日本流」海外子会社コントロールは限界だ

 足立氏によれば、そもそもCOVID-19以前から従来の管理手法には限界が来ていたという。

 「これまでの日本企業の多くは、各事業部がそれぞれ顧客の要望やビジネス状況に応じて海外子会社や工場を作り、それらの管理は本社から派遣された駐在員にまかせっぱなしにしていた。現地ではローカルルールに合わせてビジネスを展開しており、それが時として贈収賄や不正などのコンプライアンス事案の発生を招くこともあった。しかし近年アジアの新興国を中心に汚職防止や環境関連の法整備が進み、現地のコンプライアンス意識も高まっている。これまでのような『清濁併せのむ』経営はリスクになる」(足立氏)

海外駐在員任せのグローバル経営管理の「限界」とは 海外駐在員任せのグローバル経営管理の「限界」とは(出典:KPMGコンサルティング)

 「人材不足」と「リスクの変質」も従来型の管理を難しくした要因である。現地の駐在員は本社と現地の橋渡し役となり、時には現地に対する「目付け役」として機能する。しかし海外拠点が増加すれば、十分な管理能力を持つ本社人材の確保は難しくなる。

 「『現地では当たり前であってもグローバル基準では許されない』といった、価値観のギャップが大きなビジネスリスクにつながるケースもある。これからは駐在員任せの管理体制を見直し、本社管理部門がより深く現地に関与する必要がある。アジア新興国において海外子会社のリスク管理が十分にできていないのであれば、今後想定される、さらなるハイリスク国への進出は厳しいだろう」(足立氏)

 また足立氏は、日本企業ならではの「自前主義」がグローバル展開をさらに難しくしていると考える。「日本企業には自社拠点で自社の技術を使って、自社の風土を理解する人材によって事業を進めたいという意識があるが、今の時代に成長を伴う形でこれを実現できるほど体力のある企業は多くないからだ」(同氏)。

 同氏は、「海外事業においては、日本流のマネジメントを捨て去るのも一つの有力な選択肢だ」とも説く。国内向けと国外向けでマネジメントの考え方を切り替え、本社機能も「日本の拠点」として相対的に位置付けた上で、海外全体のビジネス環境に適したマネジメント手法を模索する道もあるという。

ニューノーマル時代の海外子会社コントロール、まず何を目指すべきか

 グローバルビジネスを進める際に経営管理部門が目指すものとして、足立氏は「責任の所在の明確化」「リスクの最適化」「見える化・標準化」の3つを挙げる。

 「責任の所在の明確化」は、主に海外拠点の経営責任の明確化を意味する。業績や営業上の責任はもちろん、特に管理業務やリスク・コンプライアンス領域に対する責任範囲をあいまいにしないことが重要だ。

 「例えば海外子会社で不正が発生した際に責任を取るのは、海外子会社自身か、本社事業部門か管理部門なのか、また、そのそれぞれはどのような責任を負っているのか、範囲がはっきりしていないことが多い」(足立氏)

 「リスクの最適化」は、ビジネスリスクへの合理的な対応とも言える。「現地法人や海外子会社に対し、ある程度は現地の環境に応じたリスクテイクの余地を与えながらも、グループとして『ならぬものはならぬ』という最後の一線を本社が示すべきだ」(足立氏)

 「見える化・標準化」は、グループ各拠点の業務手順を明文化、標準化する。標準化に伴いシステム化を進めればアナリティクスツールなどによるモニタリングを通じて、ルールからの逸脱行為や異常値の検出によってガバナンスを強化できる。

中期経営計画にガバナンス戦略を盛り込む

 足立氏は「グローバルガバナンスを支える経営管理実現のカギを握るのは、中期経営計画への事業リスクとガバナンスの確実な反映だ」と強調する。

 「中期計画といえば事業そのものの戦略がメインで、ガバナンスの項目が加わるのは『すでに発生した何らかの問題に対処するため』というケースが多い。本当の意味でグローバルガバナンスを効かせるためには、将来的なビジネス成長を見据え、将来に向けた投資の一環としてガバナンス施策を中期計画に盛り込む必要がある」(足立氏)

 グローバルガバナンスの取り組みは、システム構築からルールの策定、海外拠点への展開、人材の育成など多岐の領域にわたり、時間と労力がかかる。「本来であれば、3〜5年かけても間に合わない。中期計画で示すグローバルビジネスの『あるべき姿』から逆算し、将来起こり得るリスクも想定してグローバルガバナンスのプランを策定する必要がある」(足立氏)

 同氏は、中期計画において特に盛り込むべき事項に「管理部門(第二線)の権限強化」を挙げる。グローバルビジネスの健全性を考えると、本社の管理部門は「事業部門に対する第二のディフェンスライン」として、グループ企業の壁を越えて海外子会社などにけん制を効かせる体制は有効であるという。

グローバル経営管理は中長期的に目指す「グループ全体の姿」から考える グローバル経営管理は中長期的に目指す「グループ全体の姿」から考える(出典:KPMGコンサルティング)

グローバルガバナンスのあるべき姿をどう実現するのか?

 グローバルガバナンスを実現するために、特に中長期的に取り組むテーマとして、足立氏は「ITシステムの整備」を挙げる。

 「グローバル経営管理で目指す『見える化・標準化』を進めるためには、システムが重要な役割を担う。特にコロナ禍においては、海外子会社の業務をリモートで管理する必要性が高まるため、子会社業務のシステム化を進めつつ、データ分析のための基盤を整えることが重要だ」(足立氏)

野村圭太氏 日本マイクロソフト 野村圭太氏

 海外子会社ごと異なる業務システムが導入されている場合、データ分析は困難になる。特に小規模な拠点では「Microsoft Excel」や現地のローカルERPを使い、本社のシステムと連係させるために現地の人員がデータの二次加工をしているようなケースもある。そのような体制の場合はデータの一元管理ができず、データ共有の遅れや悪意ある改ざんに対してもガバナンスを効かせることは難しい。そのような状況を解決するためのカギとして、日本マイクロソフトのクラウドERP「Dynamics 365」が注目されている。

 日本マイクロソフトの野村圭太氏(ビジネスアプリケーション事業本部)は次のように語る。

 「かつて基幹システムといえば、オンプレミスで運用するものだった。オンプレミスのシステムは構築や拡張、アプリケーションの導入に多大なコストと時間がかかる。本社のERPに統合できず、海外子会社でローカルERPが使われ続けてしまった。クラウドERPのDynamics 365はハードウェアの初期投資が不要で、インターネット環境があれば迅速かつ簡単に導入できる。リモートで運用管理できるため、現地に管理者がいる必要もない」

 Dynamics 365を用いれば、オンプレミス環境では難しかった「グローバルでの業務データ統合」が容易に実現できるという。野村氏はニューノーマル時代のグローバルビジネスを支えるデータプラットフォームとして「Dynamics 365はベストプラクティス」と自信を見せる。

竹内隆浩氏 KPMGコンサルティング 竹内隆浩氏

 具体的にどうシステムを生かし、グローバルガバナンスを効かせるべきか。KPMGコンサルティングと日本マイクロフトが共催したWebセミナー「デジタル時代の海外子会社 ガバナンス強化手法」が参考になる。

 以下の動画でKPMGコンサルティングのシニアマネジャー竹内隆浩氏が、デジタル時代のガバナンス強化手法について、具体的にどんなソリューションやアプローチがあるのかを詳しく解説する。グローバルガバナンスの実現に向けた組織とITの在り方について、さまざまなヒントが得られるだろう。

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提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2020年8月2日

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