コロナ禍でも業務が回る、収益を伸ばせるRPAの使い方セミナーリポート「RPA適用、失敗と成功を分かつもの」

コロナ禍にある今、どうすれば業務を円滑に回せるのか。RPA総研が開催したセミナー「オンラインイベントリレー2020」のキーノート「ニューノーマル時代、『リモート勤務/人材不足でも業務が回る仕組み』とは?」に解を探る。

» 2020年08月31日 10時00分 公開
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withコロナ時代、どうすれば業務を円滑に回せるのか

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を受け、企業はリモートを前提にした働き方を求められている。だが短期間で導入したテレワークやシフト勤務に混乱、困惑するケースが少なくない。業務を円滑に回せない理由として特に目立つのは「コミュニケーションが取りにくい」という声だ。だが本質的な問題は、もっと深いところにあるのではないか。

 RPA分野の専門情報を提供するRPA総研は2020年7月27日〜8月7日、「オンラインイベントリレー2020」を開催した。キーノートは「ニューノーマル時代、『リモート勤務/人材不足でも業務が回る仕組み』とは?〜『今だから言える』RPA適用、失敗と成功を分かつもの〜」と題するパネルディスカッションだ。

 議論は、リモートワークの阻害要因となるビジネスプロセスの問題とRPAによる自動化が中心になった。RPA製品の導入を支援するSB C&Sの嶋 真氏、RPAを導入した企業として外食産業向けの青果卸売業を営むフードサプライの竹川敦史氏、RPAベンダー、オートメーション・エニウェア・ジャパンの米田真一氏が登壇し、RPAの効用を引き出すポイントを整理した。モデレータはアイティメディア統括編集長の内野宏信が務めた。

オンラインイベントリレー2020

RPA導入、今だから言える「3つの課題」

 議論は企業の現況を振り返ることから始まった。ディストリビューターとしてRPAの活用を推進する嶋氏は「デジタル化に対する姿勢によって、企業の取り組みに差が付いています」と指摘する。特にRPAによる自動化の定着が予想される今、デジタルを有効活用できるよう、業務の在り方そのものを見直す「ビジネスモデリングのスキル」が問われると言う。

 竹川氏は「コロナ禍によって売上が5割以上減るなど大きな打撃を受けました」と話す。半面、「新たな在り方にチャレンジするチャンス」にもつながった。「エッセンシャルワーカーが多い当社では、全社員がリモートワークに移行することはできません。そうした中、RPAを活用して新しい働き方を実現するとともに、新たなビジネスを展開することもできたのです」

 米田氏は「新たな働き方、新たなビジネス」という竹川氏の言葉を受けて、「喫緊の課題は事業継続ですが、やはりその先を見据えることが大切」とコメントする。「テレワーク関連のインフラ整備に対応した上で、ビジネスプロセスの整備を通じて顧客エクスペリエンスの管理、ビジネス回復力の確保といった“経営の本質的な課題”に取り組んでいくことが重要です」

先を見据えた対策が肝要 図1 先を見据えた対策が肝要(出典:オートメーション・エニウェア・ジャパン)《クリックで拡大》

 現状を乗り切り「本質的な課題」に対応するために、RPAをどう適用すればいいのか。前提として嶋氏が、導入が一巡した今だから言える「よくある課題」を3つに整理した。

 1つ目は、まだデジタルワーカーがデジタルトランスフォーメーションを推進する有効な手段であるという概念が広く普及していないことだ。また、「現場が自動化の必要性を訴えても、その答えとしてのRPAという選択肢にたどりつけない」ケースがあると言う。

 2つ目は、RPAが部署内など狭い範囲でしか活用されていないことだ。全社に取り組みがスケールせず、ROIも向上しない。

 3つ目はPoC(概念検証)で止まり、活用に至らないケースが少なくないこと。「どの業務がロボット化できるのか、そのリスト作りで悩むのではなく、とにかく作ってみることが大事だ」と提案する。

月間約500時間を削減 「本業への集中」で新規ビジネスを開発

 では、フードサプライはどのようにRPAを成果につなげたのか。竹川氏によると、導入のきっかけは深夜の事務作業を削減することだった。

 「人材が逼迫(ひっぱく)していたわけではありませんが、今後は採用が困難になるであろうことを見据え、RPAで先手を打とうと考えたのです。従業員には単純作業だけではなく“考える仕事”をしてほしいという思いもありました。クリエイティブな仕事に携わった人ほど定着率が高いことが分かっていたのです」(竹川氏)

 RPAで単純作業を代替することで従業員に余力ができる。それを使って本来的な業務に集中できるようになる。結果としてコスト削減、人材の維持、収益向上につなげられるというわけだ。

深夜の定型作業を自動化 図2 深夜の定型作業を自動化(出典:フードサプライ)《クリックで拡大》

 フードサプライは大きな成果を獲得した。日々の定型作業を自動化することで月間約500時間の削減に成功しただけでなく、「ドライブスルー八百屋」という新サービスを開発した。コロナ禍の影響で、スーパーでの感染に不安を感じる消費者と、野菜を持つ農家を結び付けるサービスだ。2020年4月に東京都大田区と千葉県野田市でスタートした当初から人気を呼び、2カ月で全国26施設にまで拡大した。

「ドライブスルー八百屋」という新ビジネスを開発 図3 「ドライブスルー八百屋」という新ビジネスを開発(出典:フードサプライ)

 「RPAが直接関係しているわけではありませんが、RPAの取り組みの中で得られたクリエイティブな発想が実を結びました。どうすればこの状況下で売上が上がるのか、それを考えられるスタッフが普通の企業よりも多かったのだと思っています」(竹川氏)

 さらに注目したいのは、RPA導入と活用の経験を基に、自らもRPAの販売代理店となったことだ。外食・卸売業界に向けた「デジタルワーカーシステム(DWS)」を提供し、業界内への普及を図っている。竹川氏は「RPAの適用は業務理解がカギとなります。技術と業務を理解する当社ならば技術の翻訳者になれると考えたのです」と話す。これもRPAが下支えした発想力の一環と言えるだろう。

RPA成功のポイントは「やろうという強い意志」と「業務のカスタマイズ」

 プロジェクトの成功要因を、竹川氏は「やろうという強い意志を持って望んだこと」「RPAで実行できるように既存業務をカスタマイズしたこと」と振り返る。

 「RPAは魔法の杖ではありません。『RPAくん』という1つの人格として扱い、『RPAくんはこれくらいの仕事しかできない』と理解して仕事をパスすることが大事です。そうすれば非常に仕事が速いスペシャリストになってくれます」(竹川氏)

 これはまさしく、嶋氏が冒頭で指摘した「デジタルの力を生かせるビジネスモデリング」の一例だろう。嶋氏は竹川氏の言葉を踏まえ、RPA導入成功のポイントを3つに整理した。

 1つ目は「一見難しいと思える業務プロセスでもRPAなら実現できる場合が多いと気付くこと」。例えば紙の電子帳票化などだ。「やろうという強い意志」があれば適用ポイントは自ずと見つかるというわけだ。

 2つ目は「RPAがエラーを起こしたときの対応を現場で確認しておくこと」。エラーや例外処理まで知っておけば、適切な導入箇所を現場主体で考えられるようになる。

 3つ目は「取り組みをリードできる人材の設置」。「CoE(Center of Excellence)のような導入推進の専門部署を設けることも望ましい」と言う。

 これらを実践するために、ツールに求められる要件とは何か。米田氏は「スモールスタートしやすいこと、かつスケールしやすいこと」と解説する。オートメーション・エニウェアの場合、ロボット開発のインタフェースがシンプルでスモールスタートしやすく、クラウド型なので取り組みをスケールしやすい。ロボットの集中管理も容易だと言う。この点は竹川氏にとっても製品選定の一基準になったそうだ。

パートナーの力を借りて、RPAによる業務改善サイクルを回そう

 RPAの取り組みを加速させるにはどうすれば良いのか。米田氏は「人とデジタルワーカーが共同作業できる環境を作ることが重要。問題を見つけ、対処方法を把握し、RPAで自動化して、業務を最適化するというフィードバックループを回していくのです」とアドバイスする。

RPAによる業務改善のフィードバックループ 図4 RPAによる業務改善のフィードバックループ(出典:オートメーション・エニウェア・ジャパン)《クリックで拡大》

 具体的には、まず業務を棚卸ししてRPAと人がやるべきことを切り分ける。その上で業務を効率的なプロセスに改善し、ロボット化する。さらにCoEを設置して全社的な取り組みに発展させ、ロボットの集中管理と継続的改善を図る。

 もっとも自社だけでループを回すのは難しいこともある。ポイントになるのが、知見を持った外部パートナーを活用することだ。取り組みの推進レベルを以下の4つに整理する。これを基に取り組みの阻害要因を見極め、SB C&Sやフードサプライをはじめとしたパートナーの力を借りることが有効だ。

取り組みの推進レベルとパートナー選びの基準 図5 取り組みの推進レベルとパートナー選びの基準(出典:SB C&S)《クリックで拡大》

 セミナー参加者へのメッセージとして、竹川氏は次のようなエールを贈った。「RPAは人の業務の幅を広げるツール。当社がそうであったように、デジタルネガテイブな業界(デジタル活用から遠いと考えられている業界)の企業でもRPAを活用できます」

 嶋氏は「RPAは“すぐそばにいる同僚”です。ぜひデジタルに寄り添って、ニューノーマルな働き方を作っていただきたい。今がデジタルの力を活用したゲームチェンジャーになれるか否かの分かれ目です」とコメントした。

 米田氏も「RPAは導入が目的ではありません。従業員と経営者、一人一人がハッピーになることがゴールです。一緒に取り組みを進めていきましょう」と訴えた。

 コロナ禍においては、目先の問題に視野が狭まってしまいがちだ。だが「先」を見据えて自動化に取り組むと、フードサプライのように新たな可能性が見えてくる。RPA活用のハードルは着実に下がっている。まずは「やろうという意志」を抱いてほしい。

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提供:オートメーション・エニウェア・ジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2020年9月30日