新時代に向けて旧来型SIからの脱却を図る富士通が新サービスに込めた思いと覚悟「かゆいところに手が届くだけ」のSIモデルを大転換

今までの“富士通らしさ”といえば、顧客に寄り添い、共に汗をかきながら二人三脚で歩む姿にあった。しかし、それだけでは新時代のビジネスのスピードには追い付けないと感じ、今までのSIモデルの大転換を図った。その真意とは。

» 2020年08月24日 10時00分 公開
[PR/ITmedia]
PR

 システム開発の手法において、日本と欧米では相違点がある。欧米ではユーザー企業自らが社内にエンジニアを抱え、パッケージソリューションなどを活用しながらシステムを内製で開発するのが主流だ。一方日本においては、SI企業がユーザー企業からシステム開発を請け負って、発注元企業のビジネスモデルに最適化したシステムをスクラッチで開発する、もしくはパッケージ製品をカスタマイズして対応するのが常だ。

 顧客に寄り添ったシステム開発が日本のSI企業の売りであり、また収益の源泉でもあった。そんな中、国内SI企業の代表格とも言える富士通が、ビジネスモデルの大胆な転換を打ち出した。同社が2020年6月に発表した「FUJITSU Hybrid IT Service」は、従来型のSIサービスとはコンセプトを大きく異にしている。

伝統的な日本型SIからの脱皮を図った「FUJITSU Hybrid IT Service」

富士通 島津めぐみ氏

 富士通の島津めぐみ氏(執行役員常務 デジタルインフラサービスビジネスグループ長)によれば、同社が提供してきた従来型のSIサービスではもはや顧客の要望に十分に応えるのが難しくなってきたため、FUJITSU Hybrid IT Serviceの提供を思い立ったという。

 「これまで当社は、お客さまの要望に応えるために個別に最適化したシステムを構築し、提供してきました。しかし近年におけるクラウドの普及やデジタルトランスフォーメーション(DX)の流れを受けて、お客さまはITに対してより一層のスピード感を求めるようになりました。個別最適のシステムを毎回一から設計して構築する従来のやり方では、こうした要望に十分に応えられないのではないかという問題意識がありました」(島津氏)

 また個別に一からシステムを開発していてはコストも高くつくため、「より早く、より安く」という顧客の要望に応えるためには、従来のSIのビジネスモデルを根本から見直す必要があった。個別最適型のSIでは、別のプロジェクトに流用できるような設計や開発内容でもその都度一から作り上げていたため、無駄な手間や時間がかかっていた。共通機能をあらかじめメニュー化して、それらを組み合わせてシステムを設計、開発できれば、これまでよりもはるかに早く低コストで顧客にシステムを提供できると考えた。

 そのためには、インフラやアプリケーション、セキュリティ、マネージドサービスなど、SIサービスを構成するあらゆる要素を統合し、全体最適の観点から再編成する必要があったという。

 「社内の組織の壁を取り払い、これまで個別に“点”として提供してきた各ソリューションを“線”で結んだ上で、ソリューションメニューとして再編成したのがFUJITSU Hybrid IT Serviceです。お客さまにとっては、富士通がこれまで蓄積してきた高機能で安心感のあるITサービスを、デジタル時代にふさわしいスピードとコストで利用できるようになります」(島津氏)

SIメニューをもっとシンプルで明快に 富士通が提示する2つの提供モデル

 FUJITSU Hybrid IT Serviceの具体的なサービス内容は、大きく分けて「デジタルインフラプラットフォーム」「デジタルアプリケーションプラットフォーム」「マネージドサービス」の3分野に分かれる。

FUJITSU Hybrid IT Serviceのサービス概要図(出典:富士通)

 デジタルインフラプラットフォームは、データセンターやネットワーク、クラウドといったインフラ要素全般を網羅する。またデジタルアプリケーションプラットフォームは、アプリケーションの開発や実行プラットフォーム、データベース、AI(人工知能)、ブロックチェーンといった各種ミドルウェアを含む。そしてシステム構築やクラウド移行のためのアセスメント、コンサルティング、クラウド移行、システム構築、システムの保守運用といった各種作業をマネージドサービスとして提供する。

 「プレフィックス型デリバリモデル」は、従来のような個別見積もりではなく、仕様や価格が定義された173項目にもおよぶ運用サービスメニューの中から顧客が必要なメニューを選ぶことで、要求レベルやケースに応じて最適なプランを迅速に選択できる。「サブスクリプション型デリバリモデル」は、各サービスが一体型契約で提供され、利用料に基づく従量課金と月額固定課金の2つの課金モデルが準備されている。顧客の予算やニーズに応じて柔軟なタイミングで各種SI、サービスを利用できるというものだ。

 島津氏は、「このサービスを利用することで、お客さまは『革新性』『経済性』『俊敏性』『信頼性』という4つの価値を享受できます」と語る。

 FUJITSU Hybrid IT Serviceは常に最新の技術を取り入れているため、顧客は迅速かつ低コストで最新テクノロジーの恩恵を受けられる。これが「革新性」だ。新たな料金体系によって、プラットフォームだけでなく、サポートサービスもサブスクリプション型で提供することで、従来のサービスで過剰だった要素を可視化、排除して、顧客と一緒になってITサービス全体をスリム化できる点が「経済性」。「俊敏性」とは、FUJITSU Hybrid IT Serviceが提供する「統合マネジメントポータル」をはじめとするツール群や自動化技術を活用することで、システム全体の状況を素早く把握し、迅速かつ柔軟な管理が可能になることを指す。そして国産ならではの強みを生かして、品質の高いサービスを日本特有のIT環境や制度に合わせて提供するのが「信頼性」だ。

プレフィックス型デリバリモデルの概要(出典:富士通)
サブスクリプション型デリバリモデルの概要(出典:富士通)

FUJITSU Hybrid IT Serviceの2つの重要コンポーネント

 エンタープライズシステムの構築や運用に必要なあらゆる製品、サービスを網羅するFUJITSU Hybrid IT Serviceだが、中でも同サービスの提供開始に合わせて大きく様変わりしたのが富士通のクラウドサービスだ。

 同社はこれまで、企業向けクラウドサービスとしてオープンソースをベースとした「FUJITSU Cloud Service for OSS」と、「VMware vSphere」をベースにした「FUJITSU Cloud Service for VMware」を提供してきた。これらは今回のFUJITSU Hybrid IT Serviceの提供開始に合わせて「FUJITSU Hybrid IT Service FJcloud」としてサービスメニューの一部に組み込まれ、それぞれ「FJcloud-O」「FJcloud-V」と名称が変更された。

 「今回のFUJITSU Hybrid IT Serviceの提供開始を機に『クラウドサービスはハイブリッドIT環境の構成要素の一部である』という考えをあらためて明確にするために、FUJITSU Hybrid IT Service FJcloudというブランド名に統合しました」(島津氏)

 VMware vSphereをベースにした「FJcloud-V」は、かつては「ニフクラ」のブランド名の下に、「中堅・中小企業が手軽に利用できるクラウドインフラ」というイメージを打ち出していた。しかし今回のブランド名の変更を機に、大企業がVMware vSphereを用いたオンプレミスの環境をクラウドに移行する際に最適なプラットフォームとして積極的に訴求するという。

FUJITSU Hybrid IT Service FJcloudのサービスモデル(出典:富士通)

 「Digital enhanced EXchange」(DEX)と呼ぶ富士通独自のネットワークサービスも、FUJITSU Hybrid IT Serviceの中核を担う機能として位置付けられている。DEXは、FUJITSU Hybrid IT Serviceによって富士通のデータセンターに構築されたシステムを他のシステムに接続する際の「ハブ」の機能を提供する。富士通が運営するデータセンターはもちろん、「Microsoft Azure」「Amazon Web Services」といったパートナークラウド、さらには顧客が独自に運営するオンプレミス環境との接続もサポートするという。

 「ハイブリッドクラウドやマルチクラウド環境においては、異なる環境間を結ぶネットワークの構築や管理が極めて煩雑でした。全てのネットワーク接続を単一のハブでシンプルかつセキュアに実現できるDEXを利用することで、お客さまは短期間のうちに容易に最適なネットワーク環境を構築できます」(島津氏)

DEXの概要図(出典:富士通)

FUJITSU Hybrid IT Serviceでビジネスに俊敏性を

 今後、DXの掛け声の下に企業システムのデジタル化はますます進み、またニューノーマル時代にふさわしい新たな働き方を実現するためにシステムの機能はさまざまなロケーションに分散するだろう。

 日進月歩のITの進化にしっかりキャッチアップしつつ、刻一刻と変化する世の中の流れに迅速に対応するためには、従来型の「個別最適」や「重厚長大」なSIのやり方が通用しなくなることは明らかだ。そうした時代の流れを先取りしたFUJITSU Hybrid IT Serviceは、一見挑戦的なビジネスモデルの転換に見えつつも、実は世の中の将来動向を冷静に捉えた上で生まれた、実践的なSIサービスなのかもしれない。

 最後に、島津氏はスピーディーに変化するビジネス環境とFUJITSU Hybrid IT Serviceの今後の在り方について次のようにコメントした。

 「日々お客さまとお話しする中でも、現代のSIにはますますスピード感が求められていることを痛感します。そうしたニーズに応えるために、これまで提供してきた従来型のSIサービスを徐々にFUJITSU Hybrid IT Serviceに切り替えていきます。将来的には、ITインフラを特殊なものとしてではなく、電気や水道と同じように誰もが当たり前に使うような身近な存在にしていければと考えています」(島津氏)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:富士通株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2020年9月23日

関連ホワイトペーパー

デジタルトランスフォーメーションの実現に向けて、IT基盤のクラウド移行を進める企業は少なくない。パブリッククラウドのメリットを損なうことなく、高いセキュリティと安定したパフォーマンスを実現するシステムの構築方法とは?

DXを加速させるため、オンプレミスからクラウドへとIT基盤の移行を進める企業が増加している。しかし、移行の過程では課題も多く、行き詰まってしまうケースも少なくない。成功のカギとなるのは、ステップを踏んだ段階的な移行だ。

DXを推進するカギは、やはりクラウドだ。運用維持の負担が大きいレガシーシステムから脱却し、攻めのITへの投資、さらに市場変化に柔軟な対応を実現する基盤となる。そこで、自社に適したクラウドサービス選定のポイントを紹介する。