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» 2020年10月21日 10時00分 公開

ニューノーマル時代の情シス 最新意識調査(1):調査で分かった「2025年の崖」の実態、日本企業の転落は既に内部で発生中

2025年の崖への転落は既に企業内部で始まっている――。デル・テクノロジーズが実施した最新の情シス意識調査は、恐れていた事態が数値としてはっきりと眼前に浮かび上がる内容でした。現状のITインフラを抱えたままニューノーマル時代のニーズに対応できずにいる情シスの現状を調査結果とともに見ていきます。

[PR/ITmedia]
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 3月期決算の企業が多い日本ではほとんどの組織が9月末に2020年度の上半期を終えたことでしょう。この上半期はいままで経験したことのない経営環境でした。IT部門や情報システム部門(以下、情シス部門)においても、全く予測できない環境でさまざまなタスクに忙殺されていたのではないでしょうか。本来であれば4年に一度のスポーツイベントが開催され「新しい時代の幕開け」を予感していたかもしれませんし、ここ数年盛り上がっているデジタルトランスフォーメーション(DX)の成果が結実する一年になったかもしれません。

 デル・テクノロジーズで主力製品のサーバである「PowerEdge」を担当するデータセンターコンピュート&ソリューションズ事業統括部門は、2020年9月、昨今の情勢を踏まえて情シス部門を対象に「情シス意識調査」を実施しました。調査は全企業を対象にオンラインで実施し、356社からの回答を得ました。回答企業の割合は企業規模3000人以上の企業が26.3%、300人以上3000人未満の企業が46.4%、300人未満の企業が27.3%です。

55%の企業が不景気を実感、中小規模の企業はさらに厳しい状況が明らかに

 コロナ禍を経て情シス部門にはどんな変化が出たでしょうか。本稿は景気見通しや今後のIT投資の意向、テレワークやBCP見直しの課題などについて、日本企業での調査結果を交えて紹介していきます(調査結果の全貌は本稿末で紹介します)。

 内閣府の発表によれば2020年4〜6月期の実質国内総生産(GDP)は前期比年率27.8%縮小しました。身の回りに景気後退が押しよせることを感じさせるニュースです。

 今回の調査で、まず尋ねたのは「回答企業を取り巻く景気状況」です。質問の結果、55.1%が企業を取り巻く景気予測を「不調」と回答しており、情シス部門は景気状況を深刻だと感じていることが分かりました。

 企業規模別では、従業員数3000人以上の企業で47.8%の回答者が景気を不調と見ています。300人未満の企業ではさらに多く、64.3%が景気の不調を感じているという結果となりました。このことから、中小規模の企業の方が景気後退の進行が早いことが推察できます。

 デジタル化を推し進めなければならない日本企業にとって、IT予算を減らすことは全くの問題外かもしれません。しかしIT予算は企業の設備投資全体の動向と連動していたという過去の流れもあります。

 財務省の「法人企業景気予測調査(7〜9月期)」(注1)によると、2020年度の設備投資額は前年度比で6.8%減の見込みとなりました。3カ月前の調査(4.4%減)からさらに下振れしています。「内需の一つの柱である設備投資も当面弱い動きが続くとみられる」との報道(注2)にあるように、企業では予算策定が難しい局面を迎えていると思われます。

図1

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現状のITインフラでコロナ禍に対応できていない企業は約7割

 コロナ禍をきっかけにテレワークは広く普及しました。テレワークの普及はDXを推し進める効果があったかもしれません。しかし、さまざまな理由でテレワークでは業務に完全に追従できてないことも実感され始めています。実際に、今回の調査ではテレワークを実施する企業の35.5%は業務を遂行する上で何らかの問題を認識していました。多くの企業がテレワークではカバーし切れない業務プロセスや仕組みを残している状況が見て取れます。

 各社ともさまざまな計画を重ね、自社に最適な情報システムを構築してきたはずですが、ニューノーマル下でそのシステムはきちんと機能したのでしょうか。調査では「ニューノーマル下のITインフラの対応力」についても質問しています。その結果をみると、7割近い企業が現状に対応し切れていないことが判明しました。軽微な修正で済む企業もあるでしょうが、「現状のままで対応できる」と回答した企業は32.8%に過ぎません。

 それでもテレワークを支えるネットワークの再設計や構築に着手する企業は64.3%に達しており、ネットワークアーキテクチャの再構築を含む大きな施策が実施されています。また管理をシンプルにすることも重要と認識されており、51.2%の企業でサーバやストレージの統合、集約化が急ピッチで進められています(調査の詳細は本稿末で紹介するホワイトペーパーに掲載しています)。

 この他、調査では遠隔地でのITインフラ利用を想定したクラウド移行も進む状況も明らかになっています。また約30%の企業はクラウドで新しいシステムやアプリケーションを実行できるかどうかを検討し始めていることも分かりました。

図2

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BCP策定がされていても、半数の企業がITへの具体策なし

 2020年5月の内閣府の発表によると、2019年度の段階で事業継続計画(BCP)を策定していた大企業の割合は68.4%だったものの、中堅企業は34.4%でした。今回の調査では全体の62.9%の企業がBCPを策定しており、緊急対策以降、策定が進んできているということを実感できました。政府目標は「大企業でほぼ100%、中堅で50%」ですから今後もBCP策定企業は増加する傾向にあると考えられます。

 しかし情シス部門にとって大きな問題は、策定されたBCPが情シス部門に展開されたという話をあまり聞かないことです。BCPは経営資源を守りビジネスを継続していくものです。企業が持つ情報資産がとても大切なものになったいま、事前防災として、情報資産であるデータの保護を考慮したIT戦略に落とし込んでおく必要があります。この他、通常業務から緊急時へのテレワークの切り替えなどもBCPの中でカバーされるべきものかもしれません。

図3

 BCPを策定した企業の中で、BCPが情シス部門に具体的に展開されたことがあった企業の割合を調べたところ、54.5%に過ぎませんでした。残りの約半分の企業は従業員をリスクから守れなかったり、取引先への応答が遅くなったりと影響が出る恐れがあります。

 内閣官房情報セキュリティセンターが東日本大震災から2年経過した平成25(2013)年に「IT-BCP策定モデル」のレポートを発表しています。IT-BCPの正式名称は「情報システム運用継続計画」であり、非常時に適切な対応を取るために必要な事前対策や教育訓練などの平常における実施計画が含まれるものです。

 そこでは「現在の情報システムの対策状況に基づいた運用継続計画が策定されていない」と警鐘が鳴らされています。来年(2021年)で東日本大震災から10年が経過します。「のど元過ぎれば熱さ忘れる」の例えになることなく、BCPとITの関係を各社で検討していくべきでしょう。

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 現状のITインフラがニューノーマルの環境にそぐわないというのは前述した通りです。一方で社内のITインフラを支える情シス部門には別の課題もあります。

 経済産業省による「DXレポート」で言及されたいわゆる「2025年の崖」の問題の一つに、「有識者の退職などによるノウハウの喪失」があります。今回の調査でもその兆候が確実に見えました。それは情シス部門の若手従業員の育成問題です。

図4

 全体の53.9%に相当する企業で若手従業員のスキル育成や伝承ができていないことが判明しました。IT人材が顕著に不足しているため、そもそも採用することが難しいと世間一般では盛んに言われていますが、今回の調査からは採用できたとしてもスキルを装備する育成システムが確立されていないことがうかがえます。

 「情シス部門は人が育ちにくい」と言われることがありますが、現在はさらに状況が悪化していると指摘する声もあります。以前は初級者の失敗は学びの一環として許容できる雰囲気の組織があったものですが、最近はどの企業も即戦力を求める傾向が強く、余裕のない状態にあると想像されます。

 さらに問題を難しくするのが、世代間のギャップです。

 コンピュータが広く普及し始めたのは1970年代からです。当時を知る技術者は既に60歳を超えていますが、定年延長や再雇用などで現在も実務を担う現役のエンジニアもいます。結果として企業情シス部門の中は何世代ものギャップが生まれています。

 若手従業員の育成は喫緊の課題です。いろいろな考えや経験があると思いますが、若手従業員の気持ちを理解して、どのようなトレーニングシステムが適しているかなどを考えることが、現在の情シス部門の育成で最も大切なことなのかもしれません。

 また、現在の情シス部門の人たちが退職や転職などで会社を去る場合に、その人の持っているスキルや業務が社内で継承できる準備が整っているかどうかという深刻な問題があります。これについても4割の企業が継承できていないと回答しています。中小企業の事業承継問題が問われていますが、情シス部門内での技術承継も大きな問題になる兆しが見えています。

詳細な調査結果をダウンロードできます

 第一弾の「情シス意識調査」ホワイトペーパーでは、この記事ではカバーしきれていない詳細な図表や説明も加わり、調査対象の詳細分類、役職者割合、役職と企業規模別などの調査結果のクロス集計なども記載されており、所属企業やご自分自身との比較ができるものと思います。ぜひダウンロードしてご覧ください。


図5図6 画像をクリックするとダウンロードページに移動します

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2020年12月31日