ワークスタイル研究者に聞く、コロナ禍の先の働き方、オフィスの在り方オフィスはもういらない?

今までの日本の働き方は対面で空気を読む「ハイコンテクスト」一辺倒だった。だがテレワーク型の働き方が当たり前の選択肢になったこれからは、働くことの文脈が変わるかもしれない。働き方のこれからを占う。

» 2021年03月22日 10時00分 公開
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 コロナ禍をきっかけに日本における「働くこと」の文化的な意味合い、「コミュニケーション」におけるコンテクストの在り方にはどんな変化があっただろうか。企業と従業員の関係や「仕事」そのものの文化的側面から日本企業のこれからの従業員との関係はどうなるだろうか。

 ワークプレイス、ワークスタイルを研究するコクヨ ワークスタイル研究所 所長の山下 正太郎氏と、「Work Life Shift」を打ち出す富士通の丸子正道氏(国内ビジネス推進統括部プロモーション推進部 部長)に話を聞いた。

テレワークへの対応に見る「ハイコンテクストな文化」「ローコンテクストな文化」の反応

1 コクヨ ワークスタイル研究所 山下 正太郎氏(写真右)と富士通 丸子正道氏(写真左)

丸子氏 コロナ禍をきっかけに働く環境は大きく変わりました。現在のオフィスの在り方についてどうお考えですか。

山下氏 今までの状況が全てひっくり返る変化というよりも、「いつかはこうなる」と予見していた世界に一気に近付いたと考えています。

 今回のコロナ禍は「人間の慣習」が途切れる出来事でした。物理的にオフィスに行けなくなり、自宅で内省する時間が増える中でそれぞれが「オフィスがなくても仕事はできる」と認識したはずです。これまでの慣習を断ち切って「考える時間」ができたのが2020年の体験だったと言えるでしょう。

 文化人類学者のエドワード・T・ホールによれば、日本は言語化されない「空気」や「雰囲気」を察することを重んじるハイコンテクストな文化とされています。他方、欧米は明文化しなければ相互理解がかなわないことを前提としたローコンテクストな文化です。ローコンテクストな文化におけるコミュニケーションはルールを重んじなければ成立しません。

 どちらがテレワークに向いているかというと、「空気」ではなくルールを重んじるローコンテクストな文化でしょう。ローコンテクストな文化で、時間と場所を選択できるABW(Activity Based Working)を導入する場合、ルールを提示すれば都合に応じて個々が判断しますから、「そのルールなら自分は家で働く」と自然に受け入れられるわけです。

 ハイコンテクストな文化を持つ日本の場合は、ルールを提示しても「とにかくいったん出社をして、同僚や上司と相談しながら働き方を調整しよう」と考え、誰からの強制がなくてもほとんどの人がそう動きます。こうした働き方は「業務内容の無限定性」に大きく関わっていますが、ルールが決められておらず、一人一人の業務内容はあいまいです。すると個々のメンバーが全体の空気を読みあわなければなりません。結果として常に一緒にいないと空気が読み切れないために不安になります。そのためオフィスに来て常にお互いの様子を見るわけです。在宅勤務やテレワークのルールがあっても、文化的には実践できなかったのが日本です。

2 コクヨ ワークスタイル研究所 所長/WORKSIGHT 編集長 山下 正太郎氏。コクヨに入社後、戦略的ワークスタイル実現のためのコンセプトワークやチェンジマネジメントなどのコンサルティング業務に従事。手掛けた複数の企業が「日経ニューオフィス賞(経済産業大臣賞、クリエイティブオフィス賞など)」を受賞。2011年にグローバルで成長する企業の働き方とオフィス環境を解いたメディア『WORKSIGHT(ワークサイト)』を創刊。また同年、未来の働き方と学び方を考える研究機関「WORKSIGHT LAB.(現ワークスタイル研究所)」を立ち上げ、研究的観点からもワークプレイスの在り方を模索する。2016-17年英ロイヤル・カレッジ・オブ・アート ヘレン・ハムリン・センター・フォー・デザイン 客員研究員、2019年より京都工芸繊維大学 特任准教授を兼任。

最もイノベーティブなシリコンバレーは日本型の文化だった!?

丸子氏 コロナ禍をきっかけに、そうした日本的な働き方が大きく変わったわけですね。

山下氏 日本の場合、ベテラン世代がテレワークに苦労する一方で、仕事とプライベートを切り分けることを好む若い世代はコロナ禍の働き方を歓迎する傾向にありました。このギャップを埋めるには、新しい働き方のルールと文化が必要です。さまざまな世代が同じように働きやすさを求めるなら、ローコンテクストな文化を受け入れていく方がよいでしょう。一方で、イノベーティブな活動には、ハイコンテクストな文化の方が相性がよいと考えられています。

 ここが面白いところなのですが、コロナ以前に最もイノベーティブな働き方をしていたのは、企業の敷地内に従業員を住まわせるような、生活と仕事が一体となったシリコンバレー流の働き方だったという点です。今後の働き方も完全にテレワークになるわけではなく、イノベーティブな仕事をする際にはオフィスに集まることになるでしょう。

3 富士通 国内ビジネス推進統括部プロモーション推進部 部長 丸子正道氏
4 Work Life Shiftのコンセプト(出典:富士通)

丸子氏 私たち富士通は2020年7月、「Work Life Shift」というコンセプトを掲げ、自ら働き方を変えることを宣言しました。「Smart Working」(最適な働き方の実現)、「Borderless Office」(オフィスの在り方の見直し)、「Culture Change」(社内カルチャーの変革)の3つを柱に取り組んでいます。

 今回の対談で個人的に山下さんにうかがいたかったのは、「オフィス環境を変えることで、イノベーティブなアイデア創出にどうつなげられるか」という点です。

山下氏 人をクリエイティブにするには、「作りかけ」「未完成」を感じさせる、ある種のラフさが重要です。整い過ぎる環境は人間を緊張させます。アクティブに人を動かし、コミュニケーション量を増やすには、緊張させず、人が空間に介入しやすい環境を作ることがコミュニケーションの活性化につながり、イノベーションを起こしやすい環境を作ると言われています。シリコンバレーかいわいではよく「空間をハックできる=ハッカブル」と表現するのですが、空間にはコミュニケーションをデザインする力があります。

 皆が熱気を高め、「自分はこのためにこの価値観のために仕事をしている」と感じられることが重要です。空間から会社のカルチャーを感じ取れるようにする、言い換えれば、オフィスが組織の価値観を伝達するメディアになるということです。

丸子氏 当社の場合も対面でディスカッションや共創する場としてのハブオフィスと、高速なネットワークで快適にメンバーとつながることができるサテライトオフィスがあります。私自身も、実際にクリエイティブなものを生み出そうとする場合は、やはりリアルな場所が必要だと感じています。みんなで議論して、ホワイトボードに書く。それができないだけで、仕事を進めにくいと感じることは多いですね。

社内で実践した経験やノウハウを広く公開していきたい

丸子氏 従業員の働き方や意識についてはどうでしょうか。

山下氏 ミレニアル世代以降を「目覚めた世代(Woke Generations)」と呼ぶことがあります。彼らは自分の価値観や会社が提供する価値を考え、社会的に間違っていることがあれば明確にメッセージとして主張します。従業員はただ雇われるのではなく、例えばDEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)を重視し、おかしいところがあれば臆することなく指摘するのが世界的な潮流です。企業はこうした従業員とよいコミュニケーションを取るために、ビジョンや具体的な回答を明確に示す必要がでてきます。

 ですから今後は、ジョブディスクリプションに基づいた合意の下で働く「ジョブ型雇用」のように、企業と従業員が対等な関係性の中で役割や目的を明確化するローコンテクストな働き方が増えていきます。こうなると「オフィスに行く」という行動は、カルチャーの共有やテキストだけでは理解できない経験を伝えるなど、極めてハイコンテクストなコミュニケーションの場所になっていくと考えられます。

丸子氏 社内では部下の成長支援を目的として1on1ミーティングを定期的に実施しています。一人一人の従業員の未来を含めて、上司や管理職、経営層がどうサポートしていくかがこれまでより重要になってきたと感じます。従業員に真剣に向き合わないといけませんし、自分自身がジョブ型の人事制度にシフトする中で、部下の一人一人に対して何をどんな役割で任せるかを明確にコミットしないと、働く姿が見えなくなる可能性があります。そこも含めて難しい環境になってきたなと感じています。

山下氏 その意味では、データを活用して一人一人の特性を把握したり、AIを使ってそれまで目に見えなかったスキルを見つけたりといった取り組みも進んでいるので、期待はしています。

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変わるオフィスの意味

6 Borderless Officeの3つの取り組み(出典:富士通)

丸子氏 前述したWork Life Shiftには3つの実践が含まれます。固定的なオフィスに全員出勤することを前提とした勤務制度や手当、福利厚生、IT環境などを全面的に見直し、時間や働く場所にとらわれない働き方の実践がSmart Workingです。

 Borderless Officeは、オフィスの在り方を3つに分けて再設計する取り組みです。オフィスを性質別に「ハブオフィス」「サテライトオフィス」「ホーム&シェアードオフィス」に分け、仕事の仕方を分類したのです。出社しなければできない仕事は会社でやり、家でできることは家でやります。実は、オフィスにはコクヨ製のファシリティも導入し、従業員が使うことを誇らしく思えるように作っています。これらと併せて、Culture Changeとしてジョブ型人事制度の導入など文化を変えていく取り組みも進めています。

――新しい働き方では「PCを設置したデスクに出向いて仕事をする」といった、従来の場所とデバイスの関係も変わりそうです。

山下氏 ジョブ型、分散型の働き方が広がると未来学者フィリップ・ロスが言う「アプリ中心主義」の働き方(App Centric Work)になると言われています。仕事場所や同僚を探す、休憩のためにコーヒーを予約注文するなど、仕事をするためにまずアプリを立ち上げ、アプリを中心に仕事をまわすようになると、端末の重要性も高まっていきます。常に手の届くところに置き、全ての起点になるデバイスへのニーズは大きくなってくるでしょう。

丸子氏 「アプリ中心主義」の働き方は非常に良く理解できます。感覚的には「モバイルPC≒オフィス」が近いのではないでしょうか。「PCを開いた場所が仕事場である」という体験はテレワークを通じて多くの方が理解したのではないかと思います。仕事をこなす場所としてのオフィスはモバイルPCが代替するようになるかもしれません。

 私たち富士通はモバイルPCがテレワークのキーになると考えています。テレワークの普及をきっかけにモバイルPCのニーズが高まったことを受け、現在もテレワーク向けの機能強化を進めています。弊社モバイルPC「LIFEBOOK U9シリーズ」は、コクヨさまにもご導入いただき、貴社従業員の皆さまにご好評いただいておりますが、このU9シリーズの最新機種では、エンドポイントセキュリティ対策の機能を強化し、より安全に快適にテレワークを実践できます。

山下氏 今後は物理的なオフィスの役割は見直されるでしょう。今までと同じノートPCで仕事をするのであれば、わざわざオフィスに来る必要がなくなります。オフィスはオフィスでなければできない仕事のためにチューニングされていくでしょう。例えば、複数のディスプレイや議論のためのダッシュボード、遠隔のメンバーを交えて議論ができるワークスペースなどが整備されていくのではないでしょうか。

丸子氏 山下さんがおっしゃるようなハイコンテクストな議論を求めてオフィスを使うとき、従業員がいちいちモニターケーブルなどの周辺機器を各自で持ち込むのは合理的ではありませんし、フットワーク軽く議論に出かける状況を作りにくくなります。

 富士通の場合、オフィス据え置きで大画面の液晶ディスプレイやポートリプリケータといった新たな設備を設置することでこうした問題に対処しています。小さな改善のように見えますが、ちょっとした気配りが組織の行動や発想を左右することがあります。私たち富士通は、大規模なテレワークを通じた経験から、そうしたノウハウも含めて時代に合った提案をしていきたいと考えています。

――ありがとうございました。

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 テレワークを実施する上で「ノートPCだけでは画面が小さく、作業がはかどらない」「移動のたびに、いろいろなケーブルの取り外しが面倒」などといった経験はないだろうか。

 モバイルPCにディスプレイやポートリプリケータなど周辺機器を追加することで、テレワークをもっと快適・便利にすることが可能だ。


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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2021年3月28日