もう先送りできない、経営課題として「SAP2027年問題」と向き合う方法古いシステムで困り続けるか、さっさと片づけてDXに笑うか

SAPによるERPソフトウェアの保守サポート終了、いわゆる「SAP2027年問題」が目前に迫っている。さまざまな課題の中で先送りにされがちだが、経営とITのレベルを引き上げるために対応は不可避だ。どうすればその一歩が踏み出せるか、具体策を探る。

» 2021年03月29日 10時00分 公開
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企業がSAP S/4HANA移行に足踏みしている「本当の理由」

 アイティメディアは2020年12月〜2021年2月、SAPユーザーを対象にアンケート調査を実施した。現在利用するERPのバージョンや移行の検討状況を調査したところ、現在利用するバージョンでは「SAP ECC」や「SAP R/3」が最多だった。「SAP S/4HANA(以下S/4HANA)」への移行を完了したユーザーは全体の2割程度と、まだ少数にとどまる。

 S/4HANAへの移行予定(全体)では移行検討中は20%ほどだったが、ECC6.0や R3のユーザーに限定すると、全体の8割近くが「移行を検討中」と回答している。サポート期間中とはいえ、ベンダーがS/4HANAへの移行を推奨する状況で、なおかつ「DXの足かせ」にもなりかねない古いシステムが、まだ残り続ける状況が見て取れる結果となった。

 課題を認識しながらも古いERPを使い続けるECC6.0やR3ユーザーが多く残り、移行は「検討中」(完了できていない)の状況が続いていると考えられる。

 NTTデータ グローバルソリューションズ(以下NTTデータGSL)の大坂剛弘氏(ゼネラルビジネス事業部 統括部長)は、国内におけるSAP ERPのS/4HANA移行の状況について以下のように語る。

NTTデータグローバルソリューションズの大坂剛弘氏

 「大企業では、まだ『移行計画がある』という程度ですが、何らかの検討はされており、進捗(しんちょく)が見られます。しかし中堅中小企業と成長企業では、全く検討が進んでいない例も珍しくありません」

 同氏によれば中堅中小企業や成長企業は、信頼できるパートナーに恵まれておらず「1人情シス」に代表されるように、領域ごとに専門家を配置し、人に依存した運用が続けられている。特に2020年は老朽化したシステムを使い続けながらのコロナ禍対応に追われ「とても移行のことなど考えられない」という状況もあっただろう。

 サポート切れが目前に迫る中で身動きが取れない場合は「第三者保守」の選択肢も魅力的だ。しかし大坂氏は、従来のERPアーキテクチャを温存することをリスクと捉えている。

 「とりあえずサポート切れを乗り切れたとしても、将来的にはアジリティへの要求などに対応しきれないリスクにつながります」(同氏)

より短期で、品質は高く、コストを抑えて導入するためのアプローチ

 NTTデータGSLは、NTTデータグループ内でSAP事業の中核となる専業企業だ。特に日系企業のグローバル進出支援を強みとしている。構成メンバーの多くは、国内企業におけるSAP導入の黎明(れいめい)期に携わった経験を持ち、20年程度のキャリアを誇る。大坂氏もその一人で、現在は同社が「ゼネラルビジネスエリア」と呼ぶ、年商1500億円以下規模の中堅中小企業および成長企業へのSAPシステム導入に関して陣頭指揮を執っている。

 「『お手上げだ』と思われていた導入案件を支援して『思いの外うまくいった』と評価された事例は、いくつもあります」(大坂氏)

 同社のゼネラルビジネス事業部の基本ポリシーは「より短期間で、品質は高く、コストを抑えて導入すること」だ。プロジェクトの初期段階から実機を用いて議論と検討ができるようパラメーターや標準Add-on、マスター、トランザクションデータをプリセットし、個別機能単位ではなくビジネスシナリオ単位で内容を確認できるS/4HANAテンプレート「GBMT for use with SAP S/4HANA」を提供している。特にゼネラルビジネスエリアの企業は、大企業よりもIT予算に限りがある点を考慮した支援が必要だ。

 また、同社は「2Tier ERP」の提案も得意とする。2Tier ERPとは、本社や地域統括会社といった高い管理レベルが必要な拠点にS/4HANAを適用し、コストの最適化を優先したい拠点に「SAP Business ByDesign」を適用するというものだ。2種の異なるERP間で受発注機能やマスターを連携させ、グローバル経営基盤に求められる管理レベルを満たしつつもトータルの費用を抑えられる。

移行手法に「第3の選択肢」

 S/4HANAへの移行手法としてよく知られるのが、従来の資産をそのまま利用する「Brownfield」と、それまでの資産を捨てて新しくS/4HANAに基幹業務システムを構築する「Greenfield」だ。Brownfieldは今まで通りにデータを使えるが、S/4HANAの新機能を十分に活用できない。また、今後のビジネスには不要なものも含めた全てのデータが継承されてしまうため、データベースの肥大化につながる。一方Greenfieldは、ビジネスプロセスの見直しや新機能の活用が可能になる半面、業務への影響やIT部門の負荷が高く、プロジェクト期間が長期化してしまう。

 一長一短の2手法に対して、同社は第3の手法も提案する。シュナイダー・ノイライター・アンド・パートナー(以下、SNP)の「SNP トランスフォーメーションバックボーン(T-Bone)」というツールを活用した「BLUEFIELD」(SAP S/4HANA Selective Data Transition)だ。

 「BLUEFIELDは、移行対象をシステム設定に関わる部分と登録済みのデータ(マスター/トランザクション)に関わる部分とに分けて考え、システム設定に関わる部分を先行して構築し、データに関わる部分は必要性を判断しながら段階的に移行する方法です」(大坂氏)

 BLUEFIELDアプローチであれば、コストを抑えた短期間の導入と新機能の活用が両立できる。同社は、顧客企業のニーズに合わせて「Green」「Brown」「Blue」を使い分けられることをセールスポイントとしている。

移行を成功させた中堅製造業のDXサクセスストーリー

 大坂氏の手掛けたプロジェクトには、複数のアプローチを組み合わせたものもある。グローバル21拠点でビジネスを展開する製造業で、比較的規模の小さい13拠点は各国のERPパッケージを、規模の大きい8拠点はSAP ECCを利用していたという。

 同氏はこの状況に対して、GreenfieldとBLUEFIELDを採用した。導入体制を多重化しながらプロジェクト期間を短縮して、グローバル経営基盤を構築したという。SAPのコンセプトである「Intelligent Enterprise」の考え方にのっとり、取引先との連携や工場IoT化などのデジタルトランスフォーメーション(DX)も支援している。2019年9月から始めたプロジェクトを始め、2021年3月時点で12拠点の業務がS/4HANAで管理されている。

 「取引先連携においては、受注から出荷までに要する時間を最大で5分の1まで短縮することに成功しました。同プロジェクトは現在も継続しており、2022年3月までに全ての拠点をS/4HANA化することを目指しています」(大坂氏)

製造業A社におけるSAP S/4HAHA移行(出典:NTTデータGSL)

 また、大坂氏はグローバル展開のプロジェクトにおいては、プロジェクトの初期段階で本社の要件を十分に理解したメンバーが一貫して関わり続けるべきだと考えている。

 「海外展開の際に、各拠点にあるベンダーにロールアウトする例があります。しかし、本社の要望が十分に共有されないままの『丸投げ』が発生しやすく、プロジェクトの目的が見失われてしまうリスクがあります」(同氏)

 同氏は、中堅中小企業や成長企業にとってシステム投資は「ハードルの高い、重い決断」になると考えている。一方で、現状の「職人技運用」を続けることのリスクはさらに深刻だと見ている。

 「世界中でビジネスの先行きが不透明な中で、基幹システムに対する投資を決断するのは簡単ではありません。しかし古いシステムのままでは、現状の『社外からシステムにアクセスできない』『経営状況を把握できない』『グローバルレベルで在庫の把握ができない』『取引先とデータ連携できない』『属人的な職人技に依存している』といった課題がずっと続きます。全拠点をS/4HAHAで統一すれば、データもあっさり集まりますし、社外との連携もRPAによる業務の自動化も『最初の1回だけ』で済みます」(大坂氏)

 同氏は、重い投資でもDXの実現によって十分に回収ができると述べ、移行の前向きな検討に期待を見せる。

移行検討企業に向け、固定価格のアセスメント・PoCサービスを展開

 NTTデータGSLは、S/4HANAへの移行を検討する企業に向けて移行アセスメント・PoC(概念実証)サービス「i-KOU!」を提供している。同サービスは、現状把握とPoC、移行計画の策定、移行の実行までを提案するものだ。具体的にはアドオン機能診断や標準機能診断、事前検証環境の構築、移行方式の決定などを支援する。

 同社は上記それぞれをパッケージしたサービスと価格で提供する。例えばアドオン機能診断のみであれば250万円(税別)からで、目安となる費用を明確にしている。

 今後の展開として、同社は「プロセスマイニング」と「RISE with SAP」を注視する。現状の可視化をプロセスの観点から把握し、企業のプライベートクラウドシフトを支援していく意向だ。大坂氏の部門も専門チームを組織し、提供体制を整えている最中だという。

 プロフェッショナルの第三者による視点は、自社の課題がどこにあり、最適な仕組みが何なのかを知る手助けになるだろう。

 大坂氏は「SAPの2027年問題は重い課題です。自社だけで考えこまず、ぜひ相談してみてください」と述べ、中堅中小企業および成長企業のSAP S/4HANAへの移行とDXを支援したい思いを強調した。

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提供:NTTデータ グローバルソリューションズ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2021年4月19日