DXを推進するためにはエンドポイントからデータセンター、クラウドサービスまでをつなぐデータの流れをどう設計するかが重要だ。Equinixが提唱するアーキテクチャとそれをシンプルに実現するための新しいサービスとはどのようなものか。
デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、グローバルで迅速に新たなビジネスを展開するためには「データをどう扱うか」が鍵になる。GAFAのような大企業と競合できるサービス品質を目指すためには、セキュリティを確保しつつ組織や地理的な制約を超えたサービス連携と、マルチクラウドを駆使したシステムの最適化が必要不可欠だ。
Equinixの日本法人であるエクイニクス・ジャパン(以降、エクイニクス)は、これを実現するシステムアーキテクチャ「エッジ・ファースト・アーキテクチャ」を提唱し、このアーキテクチャをより競争力のある形で実現するための機能とサービスの提供を開始する。本稿は、先行してサービスを開始している海外での活用事例を交えて最新の技術動向を紹介する。
エクイニクスはグローバル規模でサービスを展開するデジタルインフラストラクチャー企業であり、各種クラウドやエコシステムとの接続を担うインターコネクションサービスをはじめとしたさまざまなサービスを提供している。
エクイニクスは、その中でもDX推進に対する市場のニーズに合わせて、迅速かつ柔軟にエッジ・ファースト・アーキテクチャを実装するための新たな「エッジ」サービスの開発に注力している。
同社が考える「エッジ」には2つの種類がある。一般に「エッジ」は、エンドユーザーのモバイルデバイスやIoT機器、店舗、製造装置などがイメージされるが、同社ではこれを「ファーエッジ」(Far Edge)と呼ぶ。
もう一つのエッジはファーエッジから近い地点でレスポンス性能を維持しながらデータを処理する「デジタル・エッジ」だ。デジタル・エッジには、ユーザー体験とアプリケーションレスポンスの強化に向けて、エッジ処理用のコンピューティングやアクセス管理、サービス基盤、コンテンツなどが配備される。デジタル・エッジでは、ファーエッジを集約するため、インターネットやモバイル網、通信事業者などのアクセス網をキャリアに依存することなく自由に組み合わせて選択できる中立性が重視される。
2つのエッジに対して、エンドポイントのデータをビジネスに活用する基盤が「デジタル・コア」だ。デジタル・コアはパブリッククラウドや外部ネットワークと接続する際のゲートウェイとして、オンプレミスでの機密情報の保持や監査対応、BCPなどの機能を持つ。ハイブリッドクラウド基盤における、パブリッククラウドや自社固有のIT環境を適材適所で使い分けるための戦略的なロケーションとして位置付けられる。
デジタル・エッジがファーエッジから物理的に近い場所でレスポンス性能を高められるのと同様に、デジタル・コアはパブリッククラウドサービスやビジネスパートナーなどのデータ拠点に限りなく近接した場所に配置することで、より大規模でセキュアなデータ交換が可能になる。デジタル・コアは、日々進化するさまざまなクラウドの最新機能やリソースを制約なく活用するための基点と言える。エクイニクスはこれらの構成を併せてエッジ・ファースト・アーキテクチャと呼ぶ。
エクイニクスの内田武志氏(Global Solution Architecture - Japan、Senior Manager)は「エクイニクスでは5年以上をかけてグローバルの顧客事例4500件ほどを分析した『グローバル・インターコネクション・インデックス 』(GXI)の第4版を公開しています。2020年版ではクラウドサービスの採用に加えて、従来型アーキテクチャの急速な陳腐化を危惧して自社のITインフラをエッジ・ファースト・アーキテクチャに移行する企業が増えてきました。DX推進の過程で顕在化した『データをどう扱うか』という課題から、新たなアーキテクチャが求められるようになったと考えます」と語る。
エッジ・ファースト・アーキテクチャを迅速に実現するためのサービス群が「Equinix Fabric」と2つの新たなサービス「Network Edge」「Equinix Metal」だ。
Equinix Fabricは、世界中のエクイニクスのデータセンターとクラウドサービスなどの間をセキュアで高速に接続する仮想ネットワークサービスであり、一般企業からクラウドサービスプロバイダーまでさまざまな組織が広く利用している。
エクイニクスのデータセンターは、主要なクラウドサービスプロバイダーも利用し、接続拠点を置いている。そのためエクイニクスのデータセンターでEquinix Fabricなどのインターコネクションサービスを利用すれば、「Amazon Web Services」(AWS)や「Microsoft Azure」(Azure)などのパブリッククラウドへのセキュアで高速な閉域接続が可能になる。接続は同一拠点だけでなく、東京〜大阪間や日本〜海外拠点間も高速かつ信頼性の高い接続ができる。さらにコストや性能面でも競争力がある。
エクイニクスの吉田英一氏(Global Solution Architecture - Japan、Edge Solution Specialist)は同社が新たに日本でサービスを開始するエッジサービスの強みとして、これまで培ってきたインターコネクションサービスに集まるクラウドサービスやエンタープライズユーザーとの接続性を生かせる点に加えて、物理サーバや物理ネットワーク機器も仮想的にオンデマンドで利用できる点も強調する。
Equinix Fabric自体はこれまでも仮想サービスとしてオンデマンドで利用可能だったが、利用の際にはデータセンターにルーターなどのネットワーク機器やサーバなどの物理的なハードウェアを設置する必要があった。
こうした課題を解決してデジタル・エッジの構築を支援するのが、主要ネットワークベンダーの仮想アプライアンスを任意に組み合わせて利用できるNetwork EdgeとベアメタルサーバサービスのEquinix Metalだ。
これらのサービスによって、利用者はデータセンターにハードウェアを運び込んで自前で設置するなどの負担なしに必要なリソースを調達し、世界中で自由にデジタル・エッジを構築できる。迅速な立ち上げに加えて撤退に当たっても機器の償却や処分などの物理的な負担がなくなる。
Network Edgeには、Cisco SystemsやJuniper Networks、Palo Alto Networks、Fortinet、Silver Peakなどの主要なネットワーク機器ベンダーの製品がそろっており、ニーズに合わせて選択できる。
エクイニクスのエッジサービスにはさまざまなユースケースが考えられるが、ここではNetwork Edgeに関する3つの主要な事例を紹介する。
ユースケースの一つがクラウドサービス間の接続だ。下図のシナリオでは、自社のWebサイトをAWSでホストして顧客データベースはOracle Cloudを利用している。
アプリケーションのパフォーマンスを最適化するには、OracleのデータベースとAWSのWebサイト間の迅速なルーティングが必要だ。ここでは、Network Edgeで仮想ルーターを導入してEquinix Fabric経由で両方のクラウドプロバイダーに接続することで、パフォーマンスの向上とともに大幅なコスト削減を実現する。
「シンガポールで試算した際、データ移動コストの7割を削減できたケースもあります。コスト効果はデータ量が多くなればなるほど大きくなるでしょう」(吉田氏)
海外や遠隔地にあるリモートのデータセンターを経由してクラウドサービスに接続したい場合にはNetwork Edgeが有効だ。
この方法はリモート拠点の設備を最小限にとどめられる上に、遠隔操作でサービスの構築を完結できるので、システム立ち上げ時に現地に人員を派遣してリソースを調達する必要がない。リソースを引き払う手間も掛からないため、将来のビジネスの増減に迅速に対応できてリスクの低減につながる。
リモートアクセスのニーズが急増してパフォーマンス低下が発生した場合は、ハードウェアを追加するのではなく既存のVPN基盤の拡張としてNetwork Edgeを利用するとよい。Network Edgeで必要なVPNセッションリソースの増減を設定できるため、利用状況に合わせた柔軟なネットワーク運用が可能になる。
AWSやAzureなどのパブリッククラウドに接続する際もEquinix Fabric経由で接続できるため高いパフォーマンスが実現する。
エクイニクスのエッジサービスは、Network Edgeが2021年4月から、Equinix Metalが2021年6月から東京のIBXデータセンターで提供される予定だ。同社はサービス開始に際して、詳細な情報を提供する機会を設ける予定だ。
DX推進やコロナ禍対応など、企業のIT基盤には次々と新たな要件が突き付けられるが、こうした状況を乗り切り持続的な成長を支えるIT基盤のベストプラクティスと、エッジ・ファースト・アーキテクチャを実現する新しいエッジサービスを実際に体験してみてほしい。
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提供:エクイニクス・ジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2021年5月23日