データは「21世紀の石油」、集計作業「ゼロ時間化」で現場活用の仕組みを構築「データを使ったコミュニケーション」で何が実現するか

ビジネスにおいてデータ活用は不可欠だ。手作業や属人化、サイロ化を防ぎ、誰でもすぐにデータ活用の恩恵を受けられるような仕組みを作れば業務の効率や生産性を上げられる。その最初の一歩として、従業員が必要な売り上げデータを呼び出せるよう、柔軟な仕組みを構築した例を追った。

» 2021年09月24日 10時00分 公開
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 データはビジネス成功の鍵を握る「21世紀の石油」とも呼ばれる。データを重要な経営資産と位置付け、現場が積極的に活用できるような仕組みの構築に取り組む企業の一つがJR東日本クロスステーションだ。

 同社はJR東日本の駅構内の小売店や商業施設を開発および運営するJR東日本リテールネットと駅構内の飲食店を運営するJR東日本フーズ、飲料の製造卸や自動販売機を運営するJR東日本ウォータービジネス、東京駅の商業施設を運営する鉄道会館の4社が2021年4月に合併して発足した。4社の事業は「リテールカンパニー」と「フーズカンパニー」「ウォータービジネスカンパニー」「デベロップメントカンパニー」という4つの社内カンパニーに再編された。

JR東日本クロスステーション デベロップメントカンパニーの伊東 拓氏

 このうちデベロップメントカンパニーは「ecute」や「GRANSTA」など、かつてJR東日本リテールネットと鉄道会館が手掛けてきた「エキナカ」商業施設の開発や運営を担う。その中でデータ活用の取り組みを率いるのが、JR東日本クロスステーション デベロップメントカンパニーの伊東 拓氏(企画部 システムユニットリーダー)だ。同氏はもともと鉄道会館に所属し、営業やシステム関連の業務に従事してきた。その際に感じていた課題が、現在の活動のきっかけになったという。

知りたい情報までが遠い「手作業データ処理」に限界

 「鉄道会館は東京駅構内の商業スペースを店舗出店者さまにお貸しし、共同で売り上げの向上に取り組んでいました。店舗の運営に一番詳しいのは店長です。われわれは店長の売り場作りをお手伝いするために、売り上げ情報や鉄道の利用者数、新幹線の予約状況などを提供してきました。それらを基に共同でさまざまな施策を検討していたのですが、データの処理に『Microsoft Excel』(以下、Excel)を使っていたため、さまざまな制約がありました」(伊東氏)

 営業担当者は従来、店舗やエリアの売り上げデータを社内の売り上げ管理サーバからダウンロードしてExcelで集計処理をした上で、レポートにまとめて店舗や企業本部に提供していた。しかし、店舗担当者との打ち合わせの場で「昨年同月の売り上げを見たい」や「あのキャンペーンの売り上げが見たい」といった、他の切り口からデータを参照したいという要望を受けた際、即時に対応できなかったという。

 「準備していたレポートと違う視点でデータと見たいという要望を受けた営業担当者は、その都度社内に戻り、改めて売り上げ管理サーバにアクセスしてデータを取得し、集計処理をしてレポートを作成していました」

 データのダウンロードと集計が全て手作業だったため、新しい要望を受ける度にコミュニケーションが中断してしまう。打ち合わせ中に抱いた疑問や浮かんだアイデアを生かしきれないこともあったため、営業担当者から「打ち合わせをしているその場で必要な情報にアクセスしたい」や「データ取得作業をもっと効率化したい」という要望が出ていた。

データの取得や可視化の効率化を模索、しかし……

 当時、鉄道会館の営業部門からシステム部門に異動した伊東氏は、営業当時の経験から、まずレポート作成業務の効率化に着手した。営業部門時代に独自で取り組んでいたデータの取得や集計作業の効率化ノウハウの全社展開を検討するようになったという。

 「当時は全社的にデータ活用を推進する方針が打ち出された時期で、社内のあちこちでExcelによる集計が始まっていました。しかしExcel集計作業に手間がかかって営業担当者が本来の業務に注力できなくなったり、同じような集計作業がバラバラに実施されたりしていて効率が悪く、これらの業務を効率化する仕組みをシステム部門が提供することになりました」

 伊東氏は当初、Excelマクロを開発して営業部門に提供していたが、プログラムの保守や運用効果に課題があった。そこで次に検討したのが、ちょうど同時期に導入していた「kintone」を活用した集計とレポーティングだった。しかし、グラフィカルなレポート作成のためには「JavaScript」を使う必要があり、開発効率もさほど上がらないことが分かったため、売り上げに関するレポーティングでは採用を見送ったという。

 伊東氏は、kintoneが管理するデータをもっと手軽に集計し、可視化する方法はないかさらに調査を進めた。そこで見つけたのが、ウイングアーク1stが開発、提供するクラウド型BIダッシュボード製品「MotionBoard Cloud」だ。

 伊東氏は、kintoneに関するセミナーでMotionBoard Cloudとkintoneを連携させるデモを見て「必要なのはこれだ」と確信したという。早速自社に導入してさまざまな切り口で売り上げデータを集計/可視化するダッシュボード画面を作り上げた。伊東氏は当時を振り返ってこう語る。

 「MotionBoard Cloudの導入によって、データの集計やレポートの作成を自動化してすぐに出力できるようになり、レポートティングにかかる工数をゼロにできました。また、以前よりもはるかに見た目や使い勝手、安定性に優れたデータの集計や可視化が可能になったと感じました」

「DEJIREN」で「LINE WORKS」からの売り上げデータ取得を可能に

 しかし、MotionBoard Cloudだけでは解決できない課題も残った。「誰でも気軽にデータ活用できる環境の提供」だ。当時のMotionBoard Cloudのダッシュボード画面は、現場部門の担当者が操作するにはハードルが高く、より現場でデータを活用しやすくするには、ユーザーのITリテラシーに依存せず、誰でも簡単にデータを可視化できるUI/UXが必要だった。

 そこで伊東氏が採用したのが、チャットツールとMotionBoard Cloudを連携させるウイングアーク1stの連携サービス「DEJIREN」だった。

 「DEJIRENを使えばユーザーはMotionBoard Cloudへわざわざアクセスすることなく、チャットツールを通じて必要な情報を取り出せます。kintoneとMotionBoard Cloudの連携にDEJIRENを組み合わせて、さらに高度なシステム連携が可能になると感じました」(伊東氏)

 伊東氏は、既に社内で利用していたチャットツール「LINE WORKS」とMotionBoard CloudをDEJIRENで連携させ、これまで営業担当者が毎日手作業で集計し、Excelにまとめて関係者にメール送付していた売上報告業務を自動化した。MotionBoard Cloudで集計したレポートをLINE WORKSのチャットbotを使って自動で共有し、人手を介さずにデータを取得できるようになった。

 「テレワーク環境から社内システムにリモートアクセスしてシステムを操作するような作業をせずとも必要なデータを取得できるため、業務生産性の維持と向上が期待できます」(伊東氏)

 さらに、LINE WORKSのチャットbotから売り上げデータを取得する環境の構築にも取り組んでいる。業務担当者がBIダッシュボードを利用せずとも、使い慣れたLINE WORKSのインターフェースで自由にデータを取得でき、より業務に生かせるようにするのが狙いだ。社内システムの操作なしでデータを取得できる仕組みは、特にコロナ禍以降では必須の要件だと考えたという。

LINE Worksを通した売り上げデータの取得画面(出典:ウイングアーク1st提供資料)

4社合併に伴うデータ統合のために「Dr.Sum Cloud」を導入

 旧鉄道会館は、MotionBoard CloudとDEJIREN、LINE WORKSを組み合わせたBIの仕組みによって、全社を対象に高度なデータ可視化の取り組みを始めた。その後、前述した4社の合併とJR東日本クロスステーションの発足が決定し、旧鉄道会館の事業はデベロップメントカンパニーに引き継がれた。その際、JR東日本リテールネットが運営してきた商業施設事業も編入されることになり、両社の業務プロセスやシステム、データ分析の仕組みを統合することになった。そこで同社が新たに導入したのが、ウイングアーク1stのデータ活用基盤「Dr.Sum Cloud」だった。

 「4社合併によって、10台の売り上げ管理サーバにバラバラのフォーマットで蓄積してあるデータを集約、統合する必要性に迫られました。その方法を検討する中でウイングアーク1stさんに相談を持ち掛け、提案いただいたのがDr.Sum Cloudで複数の売り上げ管理サーバのデータを集約する方法でした」

 Dr.Sum Cloudは、あらゆるデータソースのデータを統合して高速なデータ集計を可能にする。同社はこれまで売り上げデータを直接MotionBoard Cloudで可視化していたが、複数の売り上げ管理サーバのデータを一度Dr.Sum Cloudへ一元化し、そのデータをMotionBoard Cloudで集計して可視化、さらにDEJIRENでチャットツールへ連携するといったデータ活用の理想形が形になりつつある。

 伊東氏は今後について「将来的には売り上げデータだけでなく、他データの可視化にも着手したい」と語る。データの集約と統合管理を進めつつ、誰でも気軽に取得できる仕組みを整備することで、全社でデータ活用の流れをさらに加速させたいという。

 「事業環境が大きく変化する中で、効率的に事業を継続する方法を模索しています。事業の状況をリアルタイムで把握して意思決定や改善にすぐつなげるためには売り上げだけでなく、経費や賃料などの収支データの可視化も必要です。中長期的にはIoTの技術も取り入れたいと考えています。例えば営業担当者の各店舗への訪問回数や滞在時間などのデータを取得して店舗の売り上げとの相関を分析すれば、より効率的な営業活動を支援できるでしょう」

 伊東氏は2021年10月12日〜14日にウイングアーク1stが主催するイベント「updataNOW21」で、これまで取り組んできたMotionBoard CloudとDr.Sum Cloud、DEJIRENの活用に関する講演に登壇する。JR東日本クロスステーションのデータ活用をより詳しく知る手がかりになるだろう。

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提供:ウイングアーク1st株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2021年10月10日