データドリブン変革実現の“決め手”とは? SOMPOグループの全社展開事例に学ぶデータ活用人材1万人の育成も視野

多くの企業が単なるデータ活用にとどまらず、データ主導でビジネスの意思決定を推進する「データドリブン」な組織の構築を目指している。3つの柱で全社横断的に組織変革を進めるSOMPOグループの事例から実現のポイントを探る。

» 2021年12月01日 10時00分 公開
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 ビジネススピードが急激に変化する今、収集したデータを分析してビジネスのあらゆる意思決定に役立てる「データドリブン」な経営基盤を構築できるかどうかが企業の命運を分けると言っても過言ではない。この実現には何が必要なのだろうか。

 Tableauが2021年9月に開催した「Tableau Virtual IT Summit」の基調講演で、SOMPOホールディングス グループCDMO兼グループCIOの尾股 宏氏がSOMPOグループのデータドリブン変革について語った。

現場のリアルなデータを集め、デジタルそのものを事業化する

 SOMPOグループは保険事業を中心とした事業体で、従来、国内損保事業や海外保険事業、国内生保事業、介護・シニア事業の4つの中核事業を中心に事業展開してきた。

 SOMPOグループのデジタルの取り組みはこれまで、4つの中核事業をテクノロジーで支えつつ変革を推進する“サポーター”の立ち位置だった。だが2021年4月から、同グループはデジタルそのものを事業とする組織に生まれ変わろうとしている。

SOMPOホールディングス 尾股 宏氏

 中核を担うのが、保険事業や介護事業のトッププレーヤーであるSOMPOグループの強みを生かした「RDP(リアルデータプラットフォーム)構想」だ。グループが持つ約2000万人の保険契約者や約8万人の介護事業の顧客データ、グループ従業員約6万人のオペレーションによって得られる現場のリアルなデータを収集、活用して新たな顧客価値の創造につなげる。

 尾股氏は「収益改善を目指す取り組みで得られた示唆を顧客やパートナー企業に提供し、外販やマネタイゼーションも視野に入れている。中長期的に5000億円超のビジネスに育てたい」と話す。

経営直轄のCoE組織がデータドリブンを主導

 RDP構想の実現に向け、同グループは3つの軸で変革を進めている。1つ目はグループ全体のデータを統合するプラットフォームの構築、2つ目はデータ分析人材の育成、3つ目は部門の「脱サイロ化」を進めた上でのデータドリブンな企業文化の醸成だ。「この3つが一体となって、初めてデータドリブンな経営が実現できる」(尾股氏)

 SOMPOグループのデータプラットフォーム「JOY」は社内で収集したデータを統合し、BIプラットフォーム「Tableau」でデータを分析・可視化する。グループ会社ごとに専用のデータ区画を設けており、セキュリティを確保しつつグループ会社間でのデータ共有も可能だ。

 データ分析人材は、SOMPOグループ内で区分されているDX人材の4つの専門性「A=AI」「B=Big Data」「C=CX Agile」「D=Design」の中で「B」に属し、それぞれに対する研修プログラムを通じて育成される。

 データ分析人材に対する研修プログラムは「基礎レベル」と「ハイレベル」に分かれ、基礎レベルではTableauのさまざまな研修プログラムを実施し、ハイレベルではSQLやPythonを活用できる人材を育成する。「データ分野のDX企画人材の育成に注力している。数年後には、全従業員がデータを活用できるレベルに育成したい」(尾股氏)

 これらの仕組みを整えてデータを活用する際には、データ分析から得た結果をフィードバックして次の分析に役立てるアジャイルなアプローチが必要だ。このとき部門横断的に取り組みをまとめ、伴走しながら拡大を図るCoE(Center of Excellence)組織の存在が重要になる。

 「2020年4月に経営直轄のデータ統括室を設置した。データ統括室はデータ活用の支援に加え、データガバナンスを徹底して従業員が安心してデータを利用できる体制を整えている。データ活用プロセスをうまく回せれば、データドリブンな企業文化がグループ全体に浸透すると考えている」(尾股氏)

CoE組織による“伴走”(出典:SOMPOホールディングス説明資料)

4年計画でデータドリブンな企業文化を醸成 1万人の“Tableau人材”育成も視野に

 SOMPOグループはJOYとTableauの認知と浸透を軸にデータドリブン変革を進める。中期的にはJOYのユーザー数を1万人以上にし、Tableauを自発的に使いこなす人材を育成する計画だ。「TableauなしにはJOYも成立せず、データドリブンな企業文化も醸成できない」と尾股氏は言い切る。

 変革のロードマップは次の通りだ。初年度の2020年は下地作りに充てた。2021年に取り組みを開始し、成功事例の創出と全社的なTableauの認知、人材育成強化に努めた。2022〜2023年は利益貢献の拡大とグループ全体へのデータドリブン浸透を図る。ロードマップに沿ったデータ統括室のこれまでの活動は以下の通りだ。

 2020年4月にデータ統括室を立ち上げ、まずは活動をどのように進めるかのブループリント作りから始めた。同年7月の本社部門の代表者総勢100人が参加する大規模説明会を起点にユーザーから直接データ活用のニーズを聞き出した。

 2020年8月には従業員にJOYのアカウントを配布した。一度に全員ではなく、アンケートやミーティングを通じてデータ統括室が各部署のニーズを把握し、割当数を決定した。同時にユーザー向けセミナーやTableauのスペシャリストから従業員が直接助言を受けられる「Tableau Doctor」を開催し、従業員の理解促進に努めた。

 データ統括室の施策で特に大きな反響があったのは、2020年12月に開催した「Tableau Day 2020」だ。グループ初の試みであるデータ活用に関する社内イベントで、多くのユースケースを持ち寄って共有し、成功事例の横展開を促した。「理論だけでなく従業員に具体的な活用イメージを持ってもらうという点で、非常に有意義なイベントだった」(尾股氏)

 Tableau Dayでは、グループ会社の主要部署が幾つかのTableauダッシュボードを発表した。保険契約の更新に関する複数の指標を一つの画面にまとめ、部署ごとの着眼点に応じた掘り下げができるダッシュボードは特に好評だったという。尾股氏は「ダッシュボードで数百万件のデータを可視化したことに参加者は驚きを隠せなかった。データを一元的に見るだけでなく、そこからインサイトを導き出してビジネスに生かせる事例だった。従業員にダッシュボードの使い方を肌で感じてもらえたと思う」と語る。

 SOMPOグループは2021年から「Tableauプロジェクト」として、グループ全社展開を視野に入れた活動を始めた。具体的にはバックオフィス部門が他部門の要望に応じて幾つかのダッシュボードを作成して成功例を横展開する。

 尾股氏は「従来はニーズがあっても『誰がやるのか』『どうやるのか』というルールが統一されていなかった。Tableauプロジェクトが役割分担と連携手段となり、新たなビジネスの発見につながることを期待している」と話す。

 Tableauプロジェクトで作成されたダッシュボードは、2020年12月のTableau Day時点のものよりもさらに進化している。尾股氏は一例として、損害保険ジャパンによる法人取引先の企業分布ダッシュボードについて説明する。

 「従来は『Excel』で属人的に管理していた顧客企業の情報を統合し、業種や売り上げ規模で瞬時に切り替えてターゲット顧客を探せるようになった。活用ケースを知ることで、単に会社からあてがわれたツールを何となく利用するのではなく、日々の業務へのデータ活用が具体的にイメージできるようになる」(尾股氏)

Tableauプロジェクトで損害保険ジャパンが作成したダッシュボードの概要(出典:SOMPOホールディングス説明資料)

 取り組みの中ではさまざまな課題も発生する。データ統括室とビジネス部門で意見がぶつかる場合もある。その際は全体最適が図れるように調整するのが基本方針だ。課題によってはデータ統括室だけでは対処が難しいケースもあるので、Tableauをはじめとした外部の力も積極的に取り入れて解決に当たる。

 課題解決には経営層のコミットメントも不可欠だ。SOMPOホールディングスのグループCEOである櫻田謙悟氏自ら、データドリブンな企業になることを社内外に宣言していることも、課題が発生したときの解決へのモチベーションに大きな効果があると尾股氏は言う。

 「データドリブンな企業文化の醸成に『ショートカット』は存在しない。一つの成功の裏には多くの失敗がある。具体的なアウトプットを繰り返し、それを現場とCoE、経営層で循環させるのが重要だ」(尾股氏)

プロジェクトの成功はCoEの覚悟次第

 尾股氏は、講演のまとめとして「全社横断のプロジェクトをうまく回すには、CoEといった全体の要となる組織が必要だと実感した。情報のハブ機能として現場に寄り添い伴走する役割を担い、ビジネス部門の課題をわれわれが提供する価値の中に落としていく。逃げずに取り組むことで単なる押し付けでなく全社的な運動となってくる」と語る。

 データ統括室は今後もビジネス部門とのコミュニケーションを重ね、ユースケースを積み上げていく。「データ統括室は課題に答える組織であることをビジネス部門に実感してもらいたい。その結果、グループ全体のデータカルチャーがさらに成熟するはずだ。私自身もデータプラットフォームの進化のため、さらに専心する覚悟だ」(尾股氏)

 尾股氏は最後に「データ統括室のメンバーだけでは専門性を十分に提供できない。Tableauには引き続きわれわれに伴走してもらい、専門的な視点からのアドバイスを提供してほしい」と締めくくった。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2021年12月19日