SAP ECC 6.0のサポート終了に伴う“2027年問題”に関連し、多くのユーザー企業が「蓄積したデータをどこに置き、どう生かすか」という問題を抱える。スムーズかつ外部データも併せた幅広い活用をかなえる現実解とは。
「SAP ERP」を支えてきた主要ソフトウェアの一つ「SAP ERP Central Component 6.0」(以下、ECC 6.0)が、2027年12月にサポート終了を迎える。このタイミングを見据えてシステム更新を考えるユーザー企業にとって特に頭の痛い課題が、SAP ERPのデータ資産をどこに移行し、どのように運用するかだ。
SAP ERPの主要な移行先として「SAP S/4HANA」(以下、S/4HANA)を考えた場合、同製品が提供するデータ活用環境を使う方法がある。ただし、データの種類や活用の目的は多様化し続けている。とりわけ「SAP以外のシステムのデータとも組み合わせて活用したい」「多数のアドオンでSAP ERPをカスタマイズしているのでS/4HANAへの移行が難しい」といった場合は別の方法を考えざるを得ない。
「実は欧米でも、多くの企業がカスタマイズしたSAP製品の運用環境が複雑化し、S/4HANAに切り替えられないという問題に頭を抱えています」と話すのは、幅広いデータ活用ソリューションを手掛けるQlik Technologies(以下、Qlik)のマシュー・ヘイズ氏(SAP事業担当副社長)だ。
日本ではBIツールベンダーとして知られるQlikだが、実はSAP製品向けのデータ変換ソリューションツールやデータレプリケーションツールの提供においても長い歴史を持つ。
「レガシーなSAP ERP環境からの脱却は、欧米でも多くのSAP製品ユーザーが直面する課題です。新しい事業では新規導入したS/4HANAを利用しつつ、従来利用してきたECC 6.0と並行運用しているケースもよく見られます」(ヘイズ氏)
同氏によれば「長年SAP ERPに蓄積してきたデータを活用したい」あるいは「SAP ERPのデータと他システムのデータを組み合わせて分析したい」と企業が考えても、データモデルの変化や親和性の低さが原因で苦労するケースもあるという。
SAP ERPの導入企業は日本も欧米も大企業が中心で、大量のデータを扱う製造業といった業種が多い。近年、そうした企業のデータ活用に大きな変化が起こりつつあるという。サプライチェーンから得たデータを活用し、競争力の向上につなげるニーズが伸びているのだ。
「欧米のSAP ERPユーザーは以前から『SAP Business Warehouse』をレポーティングやBIツールとして使ってきました。近年は『より多様な分析を実行し、SAP ERPに蓄積したデータから得られる価値を高めたい』という要求が高まり、どうすればそれを実現できるかを各社が模索している段階です」(ヘイズ氏)
多くのSAP ERPユーザーが「データ分析の仕組みを刷新し、多様なデータを迅速に統合、分析したい」というニーズを抱える。組織横断で大掛かりなデータ分析を実現しようとすれば、もはやSAP ERPのデータだけを対象にした分析ソリューションでは不十分だ。
QlikはSAP ERP向けテストデータ管理ツール「Qlik Gold Client」やデータレプリケーションツール「Qlik Replicate」、データパイプライン自動構築ツール「Qlik Compose」、BIツール「Qlik Sense」といったソリューションを提供し、幅広いデータ活用のニーズに応えている。
同社はデータ活用の仕組みを見直そうとする企業にツールや製品を提供するだけでなく、初めに社内全体のデータを見直し、SAP ERPのデータ特有の複雑性を小さくすることから始めるようアドバイスしている。
自社が持つデータの種類や状態を把握し、その上で自社がデータ活用で目指すゴールを明確化すれば、どのような種類の分析やデータがどの部門に必要なのかもおのずと見えてくる。その時点で初めてQlikのツールやソリューションの導入価値を最大化できるというわけだ。
多様な分析のニーズを見据えて柔軟な分析環境を整えておくことは、新たな世代のデータサイエンティストたちの知見を生かしやすくする上でも重要だという。SAP ERPを扱ったことがなく、操作に必要な用語やスキルを知らないデータサイエンティストもいる。SAP ERPのデータをQlik Replicateで“非SAP ERP”のDWHに移行すれば、他のソースから得たデータとSAP ERPのデータを目的に沿った形で組み合わせ、より複雑な分析に生かせる。
現在、Qlik製品の活用が特に進んでいるのが欧米の自動車業界だ。英国の新興自動車メーカーとして注目を集めるINEOS Automotiveは、SAP ERPのデータを活用しやすくするためにQlik Replicateを導入した。
「実は英語圏の多くの企業にとって、SAP ERPのデータは扱いづらいものなのです」とヘイズ氏は話す。
SAPはドイツ企業であることから、同社製品のデータベーステーブルやカラムの各所にはドイツ語に由来する名称が使われている。SAP ERPで会社コード(Company Code)に相当するのは「BUKRS」だが、これは会社コードを意味するドイツ語「Buchungskreis」の省略形だ。こうしたドイツ語由来の略称は英語圏のユーザーにとっても難しく、SAP ERPのデータを扱う際のハードルになってしまうことがある。
「Qlik Replicateを使うと、BUKRSの代わりに『COMPANY_CODE』と英語で表記したり、日本語で『得意先』と表記したりすることが可能です。非SAP ERPユーザーでも扱いやすいデータに加工できることも、Qlik製品を使うメリットの一つです」(ヘイズ氏)
アジア太平洋地域のQlik製品導入事例としては、Mercedes-Benzのインド法人であるMercedes-Benz Indiaが挙げられる。同社はSAP ERPを含むさまざまなデータソースを使い、データの内容を迅速に確認しつつ直感的に可視化できるソリューションを探していた。
同社はSAP ERPを含めた複数社のソリューションを比較検討した末にQlik製品を採用し、複数の部門に導入した。その結果「各部門の異なるデータソースを接続し、データの全体像を把握できる」「部門を越えてデータにアクセス可能になり、サイロが解消された」「社内のあらゆるデータ分析のニーズに対応できるようになった」などの効果が生まれたという。
同社ではQlik製品によってデータ活用のプロセスがスムーズになったことで意思決定の俊敏性が大幅に向上し、ビジネス課題を解決する新たなアプローチをより迅速に発見できるようになった。
ヘイズ氏によれば、欧米の企業がSAP ERPのデータを活用するためにQlik製品を採用する主な目的は「コスト削減」「データの活用による売り上げや収益性の向上」「データの利活用による企業競争力の向上」などだ。
どのような業界であろうと、抱える課題の内容によって柔軟に活用方法を変えられることがQlik製品の強みだという。
「米国のある食品メーカーは、データ分析を駆使して社内のさまざまなオペレーションのコストを削減するプロジェクトにQlik製品を活用し、約1000万ドルの投資で約1億5000万ドルのコスト削減効果を得ました。別の食品メーカーは、最小限の投資でデータ分析の仕組みをモダナイズするためにQlik製品を活用しています」(ヘイズ氏)
ドイツの大手シリアルメーカーBruggenは、商品の原料を調達して製品を生産し、市場に供給するまでのリードタイムを短縮する目的でデータ分析プラットフォームQlik Senseを導入した。
同社は生産管理に利用するSAP ERPのデータや原料となる穀物の市場データなど、さまざまなデータを組み合わせて分析することで、予測精度を最大7%高めた他、需給予測の誤りによる生産過剰や不足を27%削減した。さらに、原料の適切な買い付けによって在庫切れや過剰在庫を防ぎ、原料コストを約30万ユーロ削減したという。
全ての企業がデータ活用の取り組みを最初からスムーズに進められるわけではない。SAP製品のデータの活用方法に悩む企業を、Qlikはデータ活用の大まかなビジョンを策定する段階から支援する。ヘイズ氏は「プロジェクトで得た戦略策定のノウハウも生かす形で日本企業のSAP ERPデータ活用を支援したい」と熱を込める。
「今日、世界のSAP ERPユーザーにとって、SAP ERPに蓄積したデータをいかに活用するかが大きな課題です。Qlikは、SAP ERPのデータを先進的なデータ分析に活用するための各種ソリューションを提供し、データからより多くの価値を引き出すお手伝いをします。今後も多様な企業のデータ活用を支援したいと考えています。SAP ERPのデータに関して困っているという企業は、初めに私たちに相談していただきたいですね」(ヘイズ氏)
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2022年1月14日