作業者の安全に寄り添い、管理者の負担を軽減する、ハンズフリーで実現する「現場DX」とは?人手不足の現場が本当に望む「工事プロセス全体のDX」へ

慢性的な人手不足や管理業務の複雑化に悩む現場には、デジタル技術による効率化や負担軽減が有効だ。しかし、部分的なデジタル化では逆効果になるリスクがある。安全確保と管理の効率化、負荷軽減を実現する「本当に必要なデジタル」とは。

» 2021年12月22日 10時00分 公開
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 フィールド業務のデジタル化が急速に進み、建設や工事現場の担当者がタブレットやスマートフォンで図面を確認したり、進捗(しんちょく)管理や日々の業務連絡をしたりする機会は一般化しつつある。

 デジタル化が進む背景には、社会インフラの老朽化や就業者の高齢化、若年層の減少、多国籍化といった切実な事情がある。人手不足に伴って1人当たりの作業や管理の負担が増えたことから、効率化やコミュニケーションの円滑化、生産性の向上が迫られている。

 しかし、急なデジタル化はリスクも伴う。「図面を確認する端末と進捗や日報を管理するシステムが別で、入力作業が以前よりも負担になった」や「デジタル化によって管理者や責任者の業務負荷が増加して全体のプロセスが増えてしまった」など、デジタル化のメリットを十分に享受できなかったり、デメリットの方が多くなってしまったりする状況も起こり得る。

NTTコムウェアの椋木大介氏

 フィールド業務におけるデジタル化の課題を解消し、工事プロセス全体のDXを推進するためのプラットフォームとしてNTTコムウェアが開発、提供しているのが「フィールドコラボ」だ。同社の椋木大介氏(ビジネスインキュベーション本部 ビジネスインキュベーション部 プロダクトマネージャー)はこう説明する。

 「インフラの老朽化や社会構造の変化によって工事の需要が増えている点に加え、進捗や証跡写真の共有、チェックリストの記入といった報告・管理業務も増加傾向にあります。デジタル技術の活用による効率化の取り組みは進んでいますが、情報がうまく連携できずに、むしろ管理負荷が高まっている現場もあります。フィールドコラボは現場で働く作業者とオフィスで働く管理者の業務をシームレスにつなぎ、一つのチームとなって働ける環境を提供することで現場と管理部門、双方の効率化を支援します」(椋木氏)

現場DXに「フィールドコラボ」が提供する3つのメリット

 フィールドコラボは、ITで次世代のインフラメンテナンスを実現する「SmartMainTech(スマートメインテック)」シリーズの一角を担う、工事プロセス管理と現場コミュニケーションを一体的に効率化するクラウドサービスだ。現場作業の報連相をチャットで管理する「チャット報告機能」や報連相の記録を案件にひも付けて作業ログデータとして自動的に登録する「工事進捗管理機能」、Webカメラやスマートフォンで現場と画像を共有して工事の確認依頼や相談ができる「遠隔支援機能」などを持つ。

 椋木氏は「工事の進捗情報や画像情報などと業務システムを連携させることで複数現場の管理も容易にして、現場のDXを支援します」と話す。

 現場のDXという観点から、フィールドコラボは3つのメリットを提供する。

 1つ目は「手間のない進捗管理の実現」だ。現場からの日々の報告を基に工事進捗を更新してリアルタイムで進捗を管理できるようにする。ITリテラシーを問わず便利に気軽に使えるため、報連相の抜けや漏れの防止にもつながる。

 2つ目は「スムーズな工事情報の引き継ぎ」だ。情報を工事単位、実施班単位で整理でき、複数の工事班にまたがる場合でもスムーズに情報を連携させられる。管理者も整理整頓された情報から書類など必要な情報を取得できる。

 3つ目は「証跡(データ)の自動収集と蓄積」だ。現場の会話や写真を工事プロセスとひも付けて自動的に蓄積し、業務システムと連携することで工事プロセスのDXにつながる多様なデータ活用を支援する。

フィールドコラボのサービス利用イメージ(画像提供:NTTコムウェア)

 「NTTコムウェアは、通信ネットワークや基地局内外の施工、設備管理など、実際の現場や管理者にもご利用いただくシステムの構築と運用を担い、通信インフラ工事をITで支えてきました。フィールドコラボには、そうしたノウハウや実績を生かしています」(椋木氏)

作業者の安全を手間なく守る「音声による帳票作成、健康管理、危険作業の事前把握」

 2021年10月にリリースしたフィールドコラボの最新版には、さらなる効率化に加え「作業者の安全確保の強化」を図り、労働災害の中で発生件数が多い「墜落、転落」と「転倒」「熱中症」リスクに関する3つの新機能が加わった。

 1つ目は、手を使わずに音声で報告や帳票作成ができる「音声対話AIによるハンズフリーレポート」だ。作業者が「報告」と発話すれば、ウェアラブル端末のマイク経由でAIエージェントが起動して「測定値を読み上げてください」「特記事項はありますか」などと次の操作を指示する。作業者がナビゲーションに従って「30ミリ」「変色あり」などと発話すれば「測定値: 30ミリ、特記事項: 変色あり」といった帳票が自動作成されるため、高所作業や危険作業の際、報告のために手を離す必要がなくなる。作業者への手順の説明も簡単で、厚生労働省の転倒災害防止対策の点検対象となっている「ながら歩き」も防止できる。

NTTドコモの千葉 麻莉子氏

 音声UIは、NTTドコモの「ドコモAIエージェントAPI」を活用している。NTTドコモの千葉 麻莉子氏(サービスイノベーション部 第1サービス開発担当)は、音声UIの開発について以下のように語る。

 「こだわったのは『ハンズフリーでの完結』です。ドコモAIエージェントAPIの音声制御ライブラリを活用し、キーワードの発話だけで起動します。現場の騒音環境を考慮して検証し、データ活用のために外部サービス連携機能を使って対話データと管理ツールを自動で連携させることで、対話内容をお客さまごとに変化させたり、データをリアルタイムで管理ツールのデータベースに格納したりできるようにしました」(千葉氏)

 2つ目は「ウェアラブルIoTセンサによる作業者健康管理」だ。これまで作業者の健康状態は自己申告や映像でしか把握できず、体調不良は現場で表面化するまで分からなかった。そこでNTTPCコミュニケーションズの体調管理サービス「みまもりがじゅ丸」とフィールドコラボを連携させ、リストバンド型のバイタルセンサーで取得した作業者の脈拍情報と位置情報から分析した熱中症の恐れや脈拍異常などのアラートをフィールドコラボのダッシュボードで可視化する。

NTTPCコミュニケーションズの大蔵克之氏

 NTTPCコミュニケーションズの大蔵克之氏(営業本部 第一営業部 営業担当 主査)は、作業者の不調検知について以下のように語る。

 「作業者のバイタル情報を継続的に確認・分析することで本人の“いつもの状態”が把握できます。それを基準に“いつもと違う状況”の発生を検知し、事故や体調不良を事前に予防します」(大蔵氏)

 3つ目は「3Dモデルによる危険作業把握」だ。設備や構造物のデジタルツインを実現するNTTコムウェアの「Smart Data Fusion」との連携で実現したもので、構造物の高さを3Dモデル空間に描画し、工事前に作業空間を把握して作業手順や危険なポイントなどを確認できる。

フィールドコラボに加わった3つの機能(画像提供:NTTコムウェア)

協創という観点から、今後さまざまなサービス連携でデジタル化と現場の接点に

 フィールドコラボとの協創で得た知見をフィードバックすることで進化が進んでいると千葉氏と大蔵氏は話す。

 「今回の連携によってフィールド業務でのAIアシスタントのAPI活用にもつながりました。新たな現場の声を反映することは、AIのさらなる品質や機能強化につながります」(千葉氏)

 「みまもりがじゅ丸の脈拍情報と位置情報に『そのとき作業者がどんな作業をしていたか』という情報を加えれば、危険度の高い作業の可視化など、より精緻な安全管理ができます。今後も新たな形での連携を模索しています」(大蔵氏)

 椋木氏は、現場DXの活用を進めるため、メリットを届けていきたいと決意を語る。

 「現場のデジタル化の接点となるフィールドコラボで、今後もさまざまな機能拡張やサービス連携に取り組み、データ活用の幅をさらに広げていきたいと考えています。これからもビジネスパートナーとの協創や現場DXを進め、プロセス全体をデジタル化することで、効率的で安全な現場を支えていきます」(椋木氏)

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提供:エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2022年1月19日

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