「未来を見通す経営」の右腕になる CFO組織を導くデータ活用の新しい仕組みとは過去を分析するだけのCFO組織に未来はない

市場変化に対応した迅速な将来予測など、企業の経営に必要なデータ活用は複雑化している。中でもCFO組織には現場と経営層のニーズに寄り添い、過去と現在の状況を把握し、未来を予測する役割が求められる。その実現にはどのような変化が必要か。

» 2021年12月16日 10時00分 公開
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 企業のCFO(最高財務責任者)が率いる財務組織の役割が変化しつつある。実績データを基に過去の財務会計の状況を把握するだけでは将来を見通せないことから“経営層や事業部門のビジネスパートナー”として潮目を読む役割を求める声が強まっているのだ。

※本稿では、CFOが率い、企業の財務や会計、経営管理などを実行する組織をCFO組織と表記する。

 ではこれからのCFO組織が実践すべきデータ活用や基盤の在り方とは何か。財務/経理業務改革からデータ活用に至るまで、さまざまな業界のCFO組織を支援するKPMGコンサルティングの後藤友彰氏(執行役員 パートナー)に、データ分析関連ソリューションを手掛けるQlik Technologies日本法人であるクリックテック・ジャパン(以下、Qlik)の今井 浩氏(カントリーマネージャー)が聞いた。

CFO組織に求められる「役割の変化」

今井氏 CFO組織を取り巻く環境や求められる役割が、大きく変化しつつあるようです。ご自身はどう見ていますか。

後藤氏(以下、敬称略) 今日のCFO組織に求められる役割は、経理/財務オペレーションの遂行から経営管理・経営者の意思決定支援、非財務データの開示などにまで拡大しつつあります。

 実際に経営層や事業部門から「損益シミュレーションといった経営管理面で事業部門を支援してほしい」「事業ポートフォリオの再構築や投資判断のためのデータ分析/将来予測もミッションとすべきだ」「ESGやSDGsへの関心が高まったため、投資家を含め社外から求められる非財務データの開示に積極的に取り組んでほしい」といった声をよく聞きます。

KPMGコンサルティングの後藤友彰氏

 CFO組織が取り扱うデータの範囲も拡大しました。今日のCFO組織は、会計や財務、非財務分野も含めた幅広いデータを取り扱っていく必要性に迫られています。その最たる分野がESG(環境、社会、ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)でしょう。投資家が企業価値を測る指標としてESGの重要性が高まり、企業価値を上げる経営施策として、CFO組織が主導して環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に関する自社の活動状況を積極的に開示する動きが広がっています。

今井 役割の変化や扱うデータの増加に対応できているCFO組織はどのくらいありますか。

後藤 まだ限定的です。KPMGジャパンが国内企業のCFO組織を対象に実施した調査「KPMGジャパンCFO Survey 2019」からは、多くの企業でCFO組織が従来型の財務/経理領域を中心に業務を遂行しており、将来の見通しや意思決定にまで踏み込む“経営層や事業部門のパートナー”として経営改革やコーポレート戦略、リスクマネジメントといった業務を担うCFO組織は少ないことが分かりました。

KPMGジャパンの調査からは、従来型の役割にとどまるCFO組織の多さも明らかになった(出典:「KPMGジャパンCFO Survey 2019」)

CFO組織のデータ活用は“予測に基づく意思決定”にまで踏み込む

今井 ビジネスパートナーとしての役割を担うなら、CFO組織は経営データの活用方法も変革していく必要がありそうですね。

後藤 ご指摘の通りです。これまで、多くのCFO組織が実践してきたデータ活用は、社内で集めたデータを統合して月次や週次の売り上げなどの決算データを確認するといった、主に「何が起きたか」「なぜ起きたか」を分析するものでした。

 これからは「何が起きるか」を知るためのデータ活用が意思決定の観点からも極めて有益だと言えます。

今井 いずれも“過去に起きたこと”を理解するためのデータ活用だと言えます。

後藤 今後は「何が起きるのか」を予測し、予測に基づいて「何をすべきか」を判断する“未来志向の経営データ活用”が必要です。その際は、機械学習やAI(人工知能)などのテクノロジーの活用が不可欠になるでしょう。

今後必要になるのは「何が」「なぜ起きたか」を基に未来を予測し、適切な施策につなげる仕組みだ(出典:KPMGコンサルティングの資料)

システムのサイロ化で生じた“データの分断”が経営リスクを高める

今井 しかし多くの日本企業では、過去のさまざまなシステムでデータがサイロ化してしまって「何が起きたか」を知るだけでも時間や手間が掛かっているのが実情ではないでしょうか。

後藤 データの分断は、経営管理の難しさやリスクの増大を招くと私は考えています。日本企業は大手を中心に長い歴史を持ち、現在も長年のノウハウに基づく業務プロセスを大切に運用しているケースが多い印象があります。

 日本企業が培ってきた機能別組織の強さや、蓄積されたノウハウが全て悪いわけではありませんが、各組織を横断した連携が不得手な側面もあります。その特徴が情報システムにも反映された結果、システムのサイロ化やデータの分断が生じていると考えられます。データ把握の遅れが、そのまま機会損失や施策の遅れにつながっている状況だと思います。

今井 逆に、何らかの手段でサイロ化を解消して迅速にデータを把握できるようになると、企業の活動はどう変わるでしょうか。

クリックテック・ジャパンの今井 浩氏

後藤 私たちが支援したある製造企業の場合、かつては「何が起きたか」を知るのに1カ月を要していました。そこでデータ活用基盤を構築し、3営業日程度で「何が起きたか」が分かるようになったところ、問題が生じた場合の対策を速く考案できるようになっただけでなく、先々の見通しも立てられるようになりました。前倒しできる作業も多くなり、結果的に販売促進やサプライチェーン関連のコストを削減し、収益も改善しました。

CFO組織の新たなデータ活用基盤は“ERPのあるべき論”とは別立てで考えられる

今井 データのサイロ化をなくす目的では、日本でも2000年代から多くの企業でERPの導入と活用が進められました。ERPには本来「製品に実装された業界のベストプラクティスや標準に合わせて企業のプロセスを標準化する」という狙いがあります。

 しかしその結果、自社特有の業務に合わせてERPを大幅にカスタマイズする日本企業が多く出てきました。「SAP ECC 6.0」といった主要なERPの大型バージョンアップが迫る中「今の環境にとどまるか」「ERPの標準プロセスに移行するか」「別の道を歩むか」の選択に悩む企業が多いようです。

後藤 ERPのカスタマイズは、長年議論されてきた問題です。多くの日本企業がERPをカスタマイズした背景には、日本の商習慣に合わせる目的の他にも、先に述べた通り自分たちがこだわりを持つ業務や現場の創意工夫の積み重ねで成長を支えてきた業務を“強み”や“競争力”と捉えてきた側面もあると思います。

 そうしたERP環境をどう変えるか、結論をすぐには出せない組織もあるでしょう。CFO組織が未来を見据えた経営データの活用を進めるべきであると考えた場合、システムが全て一本化あるいは一元化されていなくても、データを集約する仕組みさえ整えれば可能ですし、自社の良さや強みを残すことにも役立てられます。

現場と経営層が“一つの真実”でリアルタイムにつながる

今井 ERPだけでなく、その周囲で現場が使うアプリケーション(「サラウンドERP」)にもデータがあります。2つの領域のデータをリアルタイムに融合させ、活用できる仕組みをつくることで、CFOや経営陣がリアルタイムに「何が起きたか」を知り、さらにAIや分析技術を駆使して「何が起きるか」を予測し、それを基に「何をすべきか」を判断する未来型経営の基盤を作るべきだという考えはQlikのコンセプトでもあります。

目的に沿って多様なデータを迅速に収集し、活用できる仕組みが今後の経営を助ける(出典:KPMGコンサルティングの資料)

後藤 その際に大切なのは「正しいデータや知見を素早く集める」という目的に沿って、柔軟なアプローチを考えることです。必要な真実や知見を迅速に把握できるなら、どのようなデータの集め方をしてもよいと思います。従来はこの仕組みをつくるのが難しかったのですが、最近はQlik様も含めて実現できる企業が増えてきました。

 同様の仕組みは、オープンデータをはじめとするオルタナティブデータ、社外のデータを活用するプロセスにも必要です。SNSの普及もあり、個人を特定しない形で多様なデータを取れるようになりました。社内の限られたデータを使うだけでは判断が偏ったり誤ったりする恐れがあるため、社外のオルタナティブデータも活用してリアルタイムに分析を進め、予測の精度を上げていくことが今後は標準になるのではないでしょうか。

ESG/SDGs対応では多様な非財務データの扱いが鍵に

今井 ESGやSDGsの観点では、非財務データへの対応も考える必要がありますね。

後藤 おっしゃる通りです。近年はCO2排出量をはじめ、非財務データの検討範囲も広がってきました。それらを経営管理データとしてどう組み込むべきか、まだ明確な答えは見えていません。データ基盤の整備を機に、早い時期から対応を検討することは重要だと思います。

今井 私たちベンダーも、必要なデータや計測法などについてお客さまと議論しながらあるべき仕組みを検討し、足りない製品や技術があれば研究開発を急いで補っていくべきだと考えています。当社は「オープン&アジャイル」をポリシーにしており、新しい領域への対応は得意とするところです。

後藤 今後ますます重要になるのはデータ活用の「スピード」です。究極的には「何が起きたか?」「なぜ起きたか?」をリアルタイムに把握し、さらに「何が起きるか?」の予測と「何をすべきか?」の意思決定までリアルタイムに実行できるデータ基盤の整備と活用を、CFO組織が中心になって進められるようになるといいですね。

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