世界有数の売り上げを誇るIT商社が日本で仕掛ける「脱ハコモノ」化 6つの秘策とは

ITの売り方が変わりつつある。地方中小企業もIaaSやSaaSにシフトする中、従来型ビジネスモデルのIT商社がこの先も成長するために必要なのは何か。

» 2022年01月11日 10時00分 公開
[PR/ITmedia]
PR

 ソフトウェアやハードウェアの販売で世界をリードしてきたSynnex Corporationグループ。2020年6月、米国SYNNEX CorporationとTech Data Corporationが合併し、ITディストリビューターとして世界有数の売り上げを誇るTD SYNNEX Corporationが誕生した。その日本法人として、50年以上サーバやストレージといったIT機器の販売を手掛けてきたシネックスジャパンも2021年1月1日から社名を新たにTD SYNNEXとし、市場から優れたソリューションを集め、ニーズに合った形で企業や組織に提供する「ソリューションアグリゲーター」として大きく変わろうとしている。

 同社は、製品カテゴリーや商材の枠組みを超えた高付加価値のサービスを開発、提供する体制を整えた。ハードウェアを軸に「売り切り型」のビジネスを展開してきた販売パートナーの「モノ売り」から「コト売り」へのビジネスモデル変革も支援する考えだ。

 新体制の軸を担うのが「Cloud」「Security」「Service」「Solution Sales」「Education Sales」「Community」の6部門だ。各部門のキーパーソンに、それぞれの分野で進める挑戦を聞いた。

専門性の高いプラットフォームの情報を集約して企業のクラウド参入を支援

 クラウドサービスのアップデートのスピードは非常に速い。複数のサービスに関する最新情報を全て把握し、提案する必要がある中、今までオンプレミス向けサービスを提供してきたSIerも変化を迫られている。コロナ禍や人手不足をきっかけにDX推進やクラウド活用の在り方が議論される現在は、クラウドがどのようなメリットを提供できるかを慎重に見極めるべき時期だ。

 野村由貴氏らのマルチクラウドビジネス開発部は、「Microsoft Azure」や「Microsoft 365」「Google Cloud」「Google Workspace」といったクラウドサービスの提案を支援することをミッションとする。Microsoftと Google の2社から情報を集約しつつ、専門性が求められる領域についてはクラウド基盤別にチームを組織し、同社の販売パートナーを通したエンドユーザー企業への提案を支援している。

プロダクトマネジメント部門 マルチクラウド本部 部長 野村由貴氏

 「クラウドを提供した経験が少ない企業には、日本市場で成長のチャンスをつかむための支援が必要です。新しい分野への挑戦をどうスタートさせるべきか迷う企業も多いかと思います。われわれは、販売パートナーのビジネスを支援する体制、販売パートナーを通じてエンドユーザーを支援する体制を築きたいと考えています」(野村氏)

 クラウドベンダーが提供する情報の粒度はさまざまだ。それらを読み解き、既存のコアユーザーに提案するにはある程度の利用経験が必要なものもある。こうした状況も、地方の中小SIerが新規に参入しにくい点だった。

 野村氏のチームはこの点にも細心の注意を払う考えだ。

 「従来、当社のビジネスモデルはハードウェアを提供して終わりの『モノ売り』スタイルでした。しかしクラウドのビジネスは、導入後も顧客の課題に寄り添いながら情報をアップデートし続け、次の提案につなげる必要があります。そのためには、販売パートナーからの問い合わせはエンドユーザーからの問い合わせと考え、答えを一緒に見つけるアプローチが必要です」

中堅中小企業のセキュリティ強化策、新規取り扱いは情報の確度も重要

プロダクトマネジメント部門 ネットワーク&セキュリティ本部 ネットワーク&セキュリティ部 加藤大輔氏

 ネットワーク&セキュリティチームの加藤大輔氏は、ウイルス対策製品やネットワークセキュリティ製品を担当する。同氏はセキュリティソフトウェアメーカーに所属していた経験を持ち、技術もセールスノウハウも知り抜くプロフェッショナルだ。

 著名な大企業がランサムウェア被害に遭うきっかけに、サプライチェーンがある。サプライチェーンの中にいる中小企業にセキュリティ脆弱(ぜいじゃく)性があり、そこが攻撃の「踏み台」にされるケースだ。中堅中小企業のリスク対策の前線に立つSIerやエンドユーザーに対して加藤氏が推薦するサービスの一例が、マネージド型のセキュリティ対策だ。

 「中堅中小企業は、高度化する攻撃への対策を強化したくても、セキュリティの専任者を置けない実情があります。専門家の雇用も難しく、SIerがその役割を担うのにも限界があります。そのニーズにフィットするのがマネージドサービスです。販売パートナーは当社契約の事業者を介することでユーザー企業に提案しやすくなります」

 ネットワーク&セキュリティチームは新しい商品の取り扱いにも積極的だ。導入後のトラブルやサポート体制への不安などから慎重になる企業も多い中、メーカーとの強い信頼関係を生かした迅速な問い合わせ対応や情報提供に自信を見せる。

米国発、サービス専門組織が「見えないサービス」をワンストップで提供する体制

プロダクトマネジメント部門 サービスソリューション本部 本部長 立原伸治氏

 立原伸治氏が率いるサービスソリューション本部は2020年12月に新設された、TD SYNNEXを象徴する部門だ。米国では「SERVICESolv」というブランデットソリューションで知られ、プリセールスやコンフィギュレーション、モダナイズ対応を含むキッティングやテクニカルサポート、リユースやリサイクル、データ消去といった「モノではない」サービス全般をワンストップでエンドユーザーや販売パートナーに提供している。日本では立原氏らが中心になってこれらの提供サービスを拡大中で、ラインアップは「競合他社と比べても遜色ないぐらいにそろってきた」と語る。

 モノ以外を含めたサービスをワンストップで提供できる体制を敷いたことで、販売パートナーはエンドユーザーへ販売パートナー自身の付加価値と合わせサービスを提供できる。これらのサービスをきっかけに次のビジネスチャンスが生まれることも考えられる。

 「米国では、サービス提案型のセールスの割合が5割にまで達しています。日本でも正式に『SERVICESolv』をリリースしましたので、今まで以上に社内の各部署と連携しながら機動的に動き、私たちのビジネスの幅を広げ、強みとしていくつもりです」(立原氏)

「TD SYNNEXの文教ノウハウを活用して新規参入、ソリューション開発を」

エンタープライズ営業部門 第4営業本部 教育広域営業部 逆井 匠氏

 教育関連は急速にIT化が進む注目の分野だ。ただし企業向けITとはITの調達プロセスが異なるため、経験がない立場での参入は難しかった。

 逆井 匠氏の担当は、7割が文教分野、残り3割が民間企業分野だ。2020年度は、全国の児童や生徒1人に1台の端末と高速ネットワークを整備する文部科学省(以下、文科省)の「GIGAスクール構想」が動き、小学校や中学校、高校へのタブレット端末やPCのニーズが大量に発生した。コロナ禍の影響で当初の計画を前倒しして導入することになったため、メーカーや販売パートナーとともに製品調達や納品で苦労したという。

 営業として突破口を開くのは逆井氏だが、その後はプロダクトマネジメント部門、エンジニア部門、ビジネスディベロップメント部門とも連携して提案のスコープを広げる。文科省がクラウド活用を奨励する状況も後押しし、例えば「端末は『Chromebook』で、データはクラウドに」といった組み合わせを提案する。

 「今後も販売パートナーを増やしていく考えです。当社には文教ならではの勘所や必勝パターンといったナレッジの蓄積があります。今まで取引がなかった方々とも新しい提案を考えていきたいですね。クラウドネイティブな販売パートナーとソリューションを開発し、一緒に横展開できればともに成長できるのではないでしょうか。文教が特徴ある領域であることは確かですが、“参入できない”と思い込まずにお声がけいただければと思います」(逆井氏)

「顧客の課題は実はシンプル。『攻め』と『守り』のポイントから解決策を考える」

ソリューション営業部門 ソリューション営業部 部長 米澤賢治氏

 米澤賢治氏が率いるソリューション営業部門は、エンドユーザーである企業に直接営業をかけながら、販売パートナーの技術支援も担う。現在のメンバーは5人。全員が前職でみっちり経験を積んだITのプロだ。

 「ITが急速に進化し、顧客のニーズは複雑化しています。しかしユーザー企業の要望を突き詰めると、シンプルに”攻め”と“守り”についての課題があることが分かります。例えば前者の代表的なものは『DXをどう推進するか』で、後者では『情報セキュリティをどう高めるか』などです。ユーザー企業も気付いていない部分に根本的な課題があるケースも多いため、訪問する企業については徹底的な事前調査をし、仮説を立てて『ここにお悩みではありませんか』という質問から入ります」(米澤氏)

 実際、ある教育機関は優良校認定を受けようとICT投資のペースを上げようとしていた。しかしコンサルティングの結果、情報セキュリティ品質の向上がより優先度の高い課題だと判明した。情報セキュリティ品質を改善させたところ、結果として優良校に認定されたという。

 DXの方向性に迷うユーザー企業は多い。冷静な視点で「解決すべき問題」を明らかにすることを、米澤氏は大事にしている。

ベンダー中立のITソリューションコミュニティーを目指して

DXMマーケティング本部 笠倉 環氏

 笠倉 環氏は「Varnex Japan」と呼ばれるメーカーと販売パートナーのためのコミュニティー運営に従事する。米国の本社が始めたコミュニティーの構想に基づき、日本においてはメーカー12社、販売パートナー42社が参加している(2021年12月時点)。メーカー主導でコミュニティーを立ち上げるケースはこれまでもあったが、ディストリビューターがメーカーと販売パートナーをつなぐケースは珍しい。

 この取り組みでは新たに「Varnex Japan Cloud Community」という、マルチクラウドに特化した分科会も立ち上げた。目的は大きく2つある。1つは、イベントや研修プログラムなど、さまざまなクラウドメーカーの情報を集約してリセラーに届けることだ。

 「分科会に参加すればさまざまなクラウドメーカーの最新情報が一元的に手に入ります、とアピールしています」(笠倉氏)

 もう1つは、会員企業間のコラボレーションを促進することだ。用途によってクラウドを使い分けるソリューションプランを開発し、成功事例が生まれたら水平展開していくといった活用も考えている。2021年12月時点で、Vernex Japan Cloud Communityには会員としてメーカーが約30社、販売パートナーが約60社参加している。

 「会員企業は日本のDXのために何ができるかを真剣に考えており、それは私たちの思いも同じです。最終的にはユーザー企業にもコミュニティーに加わっていただき、メーカーからはその取り組みを、販売パートナーやユーザー企業からは課題や要望を発信いただき、それらを双方に伝える橋渡し役になりたいと考えています」(笠倉氏)

 TD SYNNEXは製品やライセンスのみならず、ソリューションを創造し、高い付加価値を提供できる体制を整えた。何よりそこにあるのは、販売パートナーやユーザー企業の成功を第一に考える姿勢だ。商流の中で培った視野を生かし、ステークホルダーの誰もが笑顔になれる仕掛けを作ろうとしている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:シネックスジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2022年2月3日